第十一話 見張りの盗賊
私の感覚が森に入ってから鋭くなったような気がするが、これが狩人の血なのか……いやっ、フレイクの記憶にはこんな事は経験していない。
そうなると……あの獣人族の俺か? たしかインベルガーだったよな、記憶だけが戻ってから一日もしない内に死んだからな、あまり思い入れは無いんだよな。
するといきなり目の前が暗くなった。
『あのさ、君はおかしいよ、なんで君は人間なのに獣人族特有のその感覚が使えるんだい。もう記憶だけのはずなんだけどな』
もしも~し、いきなり人を呼び寄せないでくれるかな、心の準備ってものがあるんだからさ。
『どうでもいいだろ、それよりも確かに君は珍しい存在でこれまでの君達の記憶の欠片を持っているんだけどさ、その上で力が使える何て……面白いね』
そうか? 魔王の記憶の中にある魔法を試したけど使えなかったぞ、それよりもさこの私は本当に私なのか? 何だか考え方も少し変わったように思えるんだけど。
『そりゃぁ、これまでの君も君なんだから影響は少なからずとも受けているだろうね、ただね、君は間違いなく冴えない男の辻本修也だよ、自信を持ってよ』
自信って何をだ……お~い……何だよ、まだ会話の途中でしょうが。
「おいっ何をボサッとしているんだ。お前が言い出したんだろ、早くその場所に案内するんだ。まさか出鱈目じゃないよな」
いきなり現実の世界に戻されて戸惑ってしまうし、数分は向うに行っていたと思うがその間の私は……今は考えている場合じゃない。
「嘘なんか言える訳無いでしょ、私の後について来て下さい」
一気に敵を倒したいが、向こうは此方に気が付いていない様子なのでバレないように少人数で仕留めるしかない。
そして運が良いのか悪いのか分からないが、ギルド長と二人で確認しに行く事になった。
森の中を音を立てずに慎重に進んで行く、ギルド長の体型では偵察は不向きかと思ったが、この私より動きがスムーズだ。
「まだ進むのかよ、これが真実だったら不味いな」
「静かにして下さい。もう見えるはずですよ」
ギルド長が嫌がっていたのは、見張りがいる場所は私達が配置につく場所の近くで、そこからアジトが見渡せる場所だからだ。
そして時間的にも下にいる味方の冒険者がもう少しで姿を見せてしまう。
けど私の風魔法を纏わせた矢なら魔獣に比べたら簡単に仕留める事が出来るだろう。
「やるしかねぇ~んだが、お前だけじゃな、もう一人連れて来るんだったよ」
「そんな時間は無いですよ、たかが五人なんで見ていて下さい。儂がやってやるからな」
何だか分からないが既に何をするのか頭に浮かんでいるが、今、私は何て言ったんだ?
儂だと?
「お前に出来る訳無いだろ、俺が出るから援護しろ、せめて一人は仕留めてくれよ」
「五月蠅いな、いいから黙っとれ」
両手を地面に付けると見張りの盗賊達の足元から魔法で出来た土の槍が出現し、両手両足を串刺しにしていく。
「ぐわぁぁぁぁっ、何だこれは、不味いぞ、敵襲だ」
「いってぇ~、敵がきたぞ~」
「お前、何で殺さないんだよ、遊びじゃないんだぞ」
「そうですよね……リプレイ」
何故だか分からないが、私と同じ魂では無いはずのリシオの記憶に引っ張られたような気がする。まだ人間をいたぶりたくて仕方ない私もいるが、その気持ちを必死に押さえ込むしかない。
「やるしかね~んだが……」
「行きます。苦しまずに死んでくれ」
頭の中が黒い闇に包まれそうになる感覚があるが、その闇に取り込まれる前にイメージ通りに盗賊達の足元か一気に頭部を貫く槍を出現させた。
「ごっ」
「うっ」
(つまらない奴め)
ふざけるな、この身体は私の物なんだよ、勝手に使わせてたまるか。
(…………)
おいっ何とか言ってみろよ。
(…………)
まさか、魔王は俺の中で生きているとかじゃないよな……お~い、ちょっと聞きたいんだけど、お~い。
「駄目か、上手くいかないもんだな」
「何を言っているんだ? お前何時の間にこんな事が出来るようになったんだよ、凄いじゃないか、それなのにどうしてF級のままでいたんだ」
「いやぁ~そうですよね、まぁ使えるようになったのは最近でして……」
そう言っては見たが、何故か今はあの魔法が使える気がしない。それどころか身体の中が何か変な感じがする。
それは私が初めて自分の意思で人を殺してしまったからなのだろうか、記憶の中では何度も殺したことがあるが、現実となるとこうも感覚が狂うのだろうか。
ちなみにだが、魔王を除いて一番人を殺したのは勇者だった。それだけ修羅場にいたのだから仕方が無いが、ちょっとな……。
◇
「何ですかこれは、まさかギルド長が土属性の魔法を使えるなんて思いもしませんでしたよ」
少し前に合図を送ると直ぐに後続の冒険者がこの場所にやって来て、串刺しのまま死んでいる盗賊を珍しそうに眺めている。
「俺じゃねぇよ」
「えっまさか……そんな冗談要りませんよ」
「俺が魔法何て使える訳ねぇ~だろ、使えていたら何で現役の時に使わねぇ~んだよ」
「そうですよね……えっ、まさか、こいつですか」
「それしかいねぇ~だろうが」
普通ならこれで私を見直してくれる展開になるはずだが、彼等は信じようとはせずにギルド長が魔道具で倒したと結論してしまった。
「私がやったのに……」
「信用が無いからな」
それ以上は無いも言わず、ただ私の肩をそっと叩き、アジトの確認しに行ってしまった。
なぁ私の中にいるフレイクよ、聞こえるのかいフレイクよ、君が、いや、僕がした事の結果がこれなんだよ、分かるかい僕よ。




