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第十話 フレイクのせいで

 入口にあった立て看板を見て依頼を受けようと決めた冒険者がこの寒々しい広い部屋に集まっているが、その中にはあからさまに私に対して嫌そうな表情を隠すことなく向けてくる者達がいる。


 気持ちは分かるんだよな、ゴブリン程度で逃げ出す奴なんて一緒に依頼を受けたくないのは分かるけど、私はフレイクであってフレイクじゃないんだよ。


「てめぇ~何でここにいるんだ」


 ゴンッ。


「痛いじゃないか、リプレイ」


 まさかいきなり殴って来る奴がいるとは思わなかった。


 …………。

「てめぇ~何でここにいるんだ」


 ボゴッ。


 拳を受け止めて爽やかな笑顔を見せる予定だったが、私の非力な力では受け止めきれず、そのまま殴られてしまった。


「もう一度だ。リプレイ」


 …………。

「てめぇ何でここにいるんだ」


 今度はその男の拳は私には当たらず通り過ぎて行く。


 やはり【リプレイ】するなら躱すに限るな。ただ可哀そうにその拳が後ろにいた冒険者に当たったから迷惑を掛けてしまったけど。


「おめぇなにすんだ」

「うるせぇな、てめぇはこいつ以下なのかよ」

「何だと~」


 馬鹿馬鹿しい事に私の事を無視して二人で殴り合いの喧嘩が始まってしまった。


 これが冒険者なのか? ちょっと怖いんですけど。

 だけどこの世界の大勢の人は同じ村や街で一生を過ごすそうだから、それが嫌なら冒険者か兵士か商人になるしかない。

 私が過去を活かすのなら商人だと思うがその考えはもう捨てたんだ。


「何をしている。お前ら出て行くか」


 恰幅のいい、顎髭を生やしたこの人は……あぁギルド長か、まだ同化が完全ではないせいなのか思い出すのに少し時間がかかってしまう。


「お前もだぞ、ゴブリン程度で逃げ出したくせに参加しても意味無いだろう」

「いえっ、もう逃げたりしません。それにフレイクと言う名は捨てて、今日からシューヤと言う名で生きて行こうと思います」

「はぁ~~~何だそれ」


 そうだよな、最下層の私が改名なんて呆れるのは分かるけどさ、そんな冷たい目で見ないで欲しいな。


「お~い、みんな聞いたか、この馬鹿は名前を変えるんだってよ、それで違う人間になるつもりらしいぞ」


 ギルド長のその言葉がこの部屋に響き渡ると、この中は蔑んだ笑いで包み込まれた。


 あぁ笑いたければ笑えばいいさ、ただこの依頼が終わったらこいつらの私を見る目は変わるだろうよ……変わらなければ、どこか遠くの街に行こう。


「名前を変えて何がしたいのか知らんが、お前はこの依頼で失態を見せたら冒険者の資格は永久に剥奪してやるからな、そうしたらお前は元の世界に戻るんだ」


 何でここまでこの人に言われなくちゃいけないんだ……あぁギルド長は父親の親友であの店を紹介してくれたのか……冒険者になる事を反対したのにフレイクが無理やりなったのね、それであのパーティにねじ込んだのか、それに名付け親だと……何やっているんだフレイクよ。


【リプレイ】


 残念ながら五分間では間に合わず、この部屋は笑いに包まれている。それに名付け親だと思い出す前に改名を本人に宣言したのだから、その態度は当たり前だ。


 私のおかげでこの部屋の空気が和んでいるが、その空気を一変させる為にギルド長は思いきり壁を叩いて自分に視線を集めさせた。


「いいか、盗賊のアジトが判明したから直ぐに行動を開始するぞ、良いという者だけ表に止まっている馬車に乗り込むんだ」


 このような依頼は珍しいことで、相手が盗賊と聞いて考え直す声が聞こえ始めたが、入口にいる二人のB級冒険者の男達がそいつらを睨みつけると、その声も大人しくなってしまった。

 それでも参加しないと言い出す者もいたが、彼等はこれが解決するまで表に出れる事は無いだろう。



 どうしてここまで運が悪いのだろうか、馬車は五台もあると言うのに、それに何でギルド長が現場にいくんだよ。


「……い、おいっ聞いているのか、フレイ……何だっけ」

「シューヤの予定ですけど、まだ登録してませんのでフレイクでもいいです」

「そんなに俺が付けた名前が気に入らなかったとはな」

「そんなんじゃないです」


 ギルド長は最初はかなり怒っていると思ったが、その目の奥をみると悲しみの方が強いようだ。落ち着いたら正式に何かちゃんとした理由を考えて謝った方が良さそうだ。


 ただ今はそんな事を考えている場合じゃない。記憶の中には盗賊を殺したことはあるが、現実にはこれが初めての経験になる。


 指示は全ての盗賊を殺す事で、それを聞いた私はもっと動揺するかと思ったが何故かそれを素直に受け入れている。

 これは何度も転生した結果なのだろうか。


 既に会話の無くなったこの中は居心地が悪いが、暫く耐えていると馬車は止まり、此処からは森の中を各グループに分かれて歩いて行く。

 この先に待っている役目によって人数は違うが、私のグループは五人となっている。


 久しぶりに一人ではなく他人と森の中を歩いているので何だか嬉しくなってくるが、この感情はフレイクの記憶のせいだと思う。


 んっ何だこの感覚は、フレイクじゃないよな。


 私が感じたことを話すか話さないか悩んだが、もしかしたらの事を考えて、前を歩くギルド長の肩を叩いた。


「あの、この先に誰かが待っているんですけど、ご存じですか」

「いや、この先には誰もいないはずだが……まさか奴らの見張か?」


 今まではこんな事は無かったが、今日に限って見えない場所にいる連中の人数までもが感じられている。


書きためていたのがそろそろ無くなって来ましたが、今週は一日二回の投稿をしたいと思います。


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