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最終話

 王の間は跡形も無く消え去り、その代わりに溶岩の池が出来てしまいリシオは淡々と冷却魔法で冷ましているのでこの辺りが蒸気で包まれ蒸し風呂の様になっている。


 その表情は無表情なのだが、両目の端から流れているものが汗なのかそれとも涙なのか私には判断できない。


「えっそれって何だよ……」


 その顔に気を取られて気が付くのが遅くなってしまったが、リシオのローブの裾から砂のような物が流れ墜ちていてもう靴を全て埋めてしまっていた。


「何だか生きているのが嫌になって来たんじゃ、もうこのまま消滅しようが構わんわい」

「勝手に諦めるなよ、そうだ、冷却魔法で魔力が少なくなったんだろ、だったら俺から魔力を吸えばいいだろ、いいから諦めんなよ」

「もういいんじゃ、今のこの世界は儂には合っていない様じゃ、まぁいつか復活するかそれともこのまま消滅するかは……」


 最後言葉を言わないままリシオの身体は全て砂のようになり、そして風に吹かれて消えてしまった。


「何やってんだよ、防げただろうが」

「馬鹿なじっさまだよな、まぁあいつの魔力は美味しく貰ったがな」


 溶岩だった床は完全に個体となり、その下から半分以上の顔と身体を失ったクレイグが這い出てきた。その姿は醜く異形であり、もう人間とは思えない。


「お前はリシオの魔力を奪って命を取り留めたんだろ、馬鹿な事をしたもんだな」

「良くそこに気が付いたな、まぁいいどうだい恐怖に震えているのかい」


 既に何度も【リプレイ】をしたがリシオには俺の言葉が届かずにこの世界を離れる事を選んだ。もしかしたら人間とも魔族とも言えない存在になってしまったクレイグを見たくないのだろうか。


「その言葉も何度も聞いたよ」


 クレイグは身体の形状を変えまるで竜のような姿へと変わっていく。


 何故だか知らないが度々その姿は違っているが、この姿になったのは一番多くそして一番楽に倒せる姿だ。


「何を意味わからんことを、もういい、その身体を私に寄越すんだ」


 これからの結果は何回やっても同じだし、クレイグがリシオにしたように足元から魔力を吸われているのに気が付いていない。


「貴様も出来るのか」

「当たり前だろ、それに俺に会うように魔力を変換も出来るんだぜ」


 自分の魔力をが俺に流れているのにようやく気が付いたようだが、その瞬間に背後から迫っている【重力玉】に吸いこまれた。


「お前の失敗はリシオからそのままの魔力を抜き取ったからだよ、人間には魔族の魔力は合わないんだ。だから感覚が鈍くなるんだよ……なぁ管理者さんよ、これで良かったのかい、そうじゃ無いだろ」


『あぁ僕はもっと元気なリシオになって欲しかったんだよ、魔族なのに人間の気持ちを持った存在は彼しかいないからね、まさか全てを捨てたくなるとは残念だよ』


 クレイグを倒す事が出来ないリシオはただ見守りながら苦しんでいた。管理者は何もしないリシオが多分つまらないのだろう。もっと人間らしくなるか魔王に戻るかが見たかったんだと思う。それに稀有な存在のリシオと同じく稀有な存在で因縁のある私を協力させたらどんな事が生まれるか試したかったはずだ。


「どっちでも良かったくせにな」


『そんな事はないさ、僕はそこまで酷い存在じゃないんだよ、まぁいいやこれで君はもう僕の言葉を信じないだろうな、残念だけど話すのはこれが最後にしようか』


「ちょっと待てよ……お~い、お~い、逃げやがったか」


 まだ聞きたい事があると言うのに何処かに行ってしまったようだ。管理者はこれで最後だと言っていたがそんな事は無いと私の勘が告げている。



 ◇



 あれから直ぐにムックを呼びよせるとリシオが消滅してしまった事聞いて大粒の涙流し始めた。

 そしてムックはいつかリシオがこの地で復活するかもしれないと期待を込めてこの地に留まる事を決め、ラティアとの話し合いの結果、多少姿を変えたムックは聖獣として王家の守る事になった。


 クレイグ一派を反逆罪として処分したラティアは王の座について他国との戦争終結に向けて奔走している。


 俺とアーリアはこの国で侯爵になる事が決まったそうだが、その事は滞在先の宿で近衛兵が現れ突然聞かされた。


「あの、直ぐにでもラティア国王の元に行って欲しいのです、お二人とも侯爵となり、領地も与えられますので」


「そんなの俺はどうでもいいかな、俺には領地経営なんて嫌だからな、それより自由が良いかな」

「そんな事を言わないで下さい、さぁもう行きましょう」


「ほっておいてくれよ、そんなに五月蠅いんだったら次に街か国に行こうか」

「そうだね、もう此処にはいる意味が無いしね」

「ちょっと待ってくださいよ、アーリアさんそもそも故郷じゃないですか」


「誰も家族は生きていないからどうでもいいかな」

「俺が家族で良いんじゃないか」

「ふっ恥ずかしいセリフだね」


 この世界で本当の意味で自由になった私はただそれを満喫している。この生活がいつまで続くのか分からないが目的が見つかる迄これで良いと思う。


 アーリアも一緒に仕事をしたりしなかったりだし、結婚もしていなければ付き合ってもいない変な状態のままだ。

 いつまでもこの関係が続くとはそれこそ思えないが、もう少し私がしっかりするまでこのままでいようと思う。


 今回は100話が目標だったのでこれで終わりにいたします。


 此処迄読んでくれて有難うございました。


 同時に新作を投稿していますのでそちらもよろしくお願いします。

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