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第九十四話 痛みを伴う戦い

 クレイグは俺達が来るのを待っているらしく、窓から見ると腕組みをしながら浮かんでいた。


「いいなぁあいつは空中浮遊の魔法が使えるのか」

「何じゃお主は仕えんのか、儂の記憶の中にあったじゃろうに」

「あのさぁ俺が知っているのは一部分だと思うよ。貴方もそうでしょ」

「余り気にしていなかったが、確かにそうかも知れんな」


 この部屋の中にいた執事達は全て出て行くとともに、この城の中にいる者を無理やりでも連れ出すように命令をして貰っている。


「貴様ら~いい加減にしろ~」


 天井から戻って来るクレイグに対して障壁で待ち構えていたのだが、まるで何も無かったかのように俺の障壁を通過し、その手に持っている名刀【愚者の光の剣】が

腹に吸い込まれ、上半身と下半身の二つに分かれてしまった。


「ぐぃぼぉ、リプレイ」


 今度は私だけでなくリシオにも強固な障壁を出してもらってもう一防げるのか挑戦してみる。


「そんなんであ奴に通用するかの」

「あのさぁ文句があるなら攻撃も手伝って欲しいんだけど」


 そう言っては見たがリシオは私が死んでもクレイグと戦わないだろう。先程身体が半分になりながらリシオの方を見たが、助けようとも攻撃しようともしないでただ私を見ていた。


「儂は戦わんと言ったじゃろうが、だったら儂の魔力を貸してやろうか」

「要らないよ、魔族のそれは相性が悪いんだよね、さぁそろそろ怒り出すぞ」


 後数十秒でクレイグが怒り出すが、その前にムックからの連絡が届いた。


『ご主人様、問題なく屋敷に到着致しました。多少の動揺はありますが問題はないでしょう』

『そうか、こっちはまだだから待っているんだ』


「貴様ら~いい加減にしろ~」


 全く同じ動きをしているクレイグは今回はリシオの障壁のおかげで簡単には壊せず弾き飛ばされている。


 頭を振りながら立ち上がったクレイグは両手を前に伸ばし爪を突き立てることで障壁を壊すとににやけながら迫って来る。


 だが油断したクレイグに待っていたのは勇者の魔法である【聖なる籠】で最大限に気配を消したいたその魔法は一気にクレイグを籠の中に確保する事に成功する。


「ぐががががががががっ、何だこれは」

「勇者が生きたまま拘束する為に使用する魔法だよ、これは魔族でも破る事が出来ないんだぜ」


 ただし魔王に対しては数秒拘束するのが精一杯とは言わないでおく。


「貴様はもしかして勇者なのか」

「違う事ぐらい分かるだろ、さぁもう諦めたらどうだい」


 徐々に魔力を抜き取っているが、それに抗うかのようにクレイグが身体を動かしている、

 動く度に身体を切り刻まれて行くがクレイグの力は魔王には及ばない様で、かなりの出血をするだけで抜けだせる気配はない。


「もうすぐ意識を失うと思うから、話すなら今が最後の時間だよ」


【聖なる籠】はクレイグから魔力を奪い、より一層強固な物に変わっていく。捕まってから十秒以内に壊さないともうこの魔法を克服するのは不可能に近い。


 隣で立っているリシオのその表情は無表情のままだが、何故か私にはその心が泣いているように見えている。


「クレイグよ、その中で無駄に暴れると余計に魔力を奪われるぞ、もう諦めて儂と少し話をしないか」


 リシオは今の平凡な顔から辻本である私の顔に変わり、そしてどんどん歳を重ねていく。


(何だかな、元は私の顔だからいまいち気持ちが乗らないな)


 私の思いとは違い、クレイグは苦痛と怒りが合わさった表情から目を見開いて驚愕の表情へと変わっていく。


「じっさまじゃないか、生きておられたのですか……そんな馬鹿な」

「儂は人間では無いのでな、どうじゃ、勇者でもない只の冒険者にも敵わないんだ。もう諦めて儂と一緒に何処かで静かに暮らさんか」


(えっそうなると殺さなくていいのかな)


 クレイグはリシオの言葉を聞いて涙を流し始めると、最初は透明だった涙が徐々に暗い涙に変わっていく。


「まかさ本当に魔族だったとはな、父上を信じた俺が馬鹿だったよ、いいか魔族は生きていちゃいけないんだよ、全て殺してやる」

「クレイグ……」


 余りにもリシオが可哀そうなのでこの会話をやり直させてあげたいが、そうなると俺の魔力が無駄になり、同じ仕舞うので魔法を作れない可能性があるんで諦めるしかない。 


「お前はそれでも本当に人間なのか? 何故話を聞こうとしないんだよ」

「何だお前は、まさか魔族の味方をするのか……んっそうか、私が暴れなければ魔力が吸い取れないんだな、この檻がもろくなっているじゃないか」


(正解だよ、最初で壊せなかったら後はこの魔法が自滅するのを待てば数分で壊れるんだよね)


「おいリシオ何を落ち込んでいるんだよ、あのさぁ悪いんだけどこの周りに強固な障壁を張ってくれないかな、そうすると楽になるんだけどな」

「いくら強固な障壁でもあ奴は破って来るだろ」


「いいから早くやるんだよ」

「何だかのぉ」

「ふんっ此処から出たらその障壁もろともお前らを潰してやるさ」


「悪いけど魔王に劣るあんたには無理だな……メギド」


 この部屋の全てを潰すようにリシオの最大にして最強の魔法が降って来る、俺達に当たらないようにしてはあるが、障壁越しでも全身が火傷の様にただれてくる。


 何もかもが壊れ、周りは全て溶岩の海へ変わると、リシオはシューヤを安全な場所へ連れ出した。


「馬鹿な事をしたもんじゃな、お主は瀕死じゃないか、儂が側に居なかったら死んでいたかも知れんぞ」


 リシオは自分の身体を傷つけながらも回復魔法を唱えている。




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