第一話 ブチ切れたおっさん
楽しんで読んでくれたら幸いです。
少し書きためたので今週は一気に投稿していきます。
「はい、有難うございます、それでは明後日に納品させて頂きます」
これで今月のノルマは達成したな、後の契約は来月の為に残しておかないと……今日はもう帰っても良いだろ。あの誰もいない家に……。
「うわぁぁぁ~、そこのオヤジ逃げろ…………」
えっ私の事……………………。
◇
ついさっきまで光に溢れていた世界にいたはずなのに今は闇に包まれ、そして何の音すら聞こえてこない。
どなたかいますか、此処は何処ですか、お~い、誰か~、あれっ私の声が変な風に聞こえるな。
『ちゃんと聞こえているよ、いいかいちゃんと話すから落ち着いて聞いてくれるかい』
えっ誰? 何で頭の中に声が響いているみたいだ。気持ち悪いな。
『酷い言われようだな、まぁいいけどさ、あのね、残念だけ君は死にました。さぁ僕と一緒に旅立とうじゃないか、暫くすれば何かに生まれ変われるかも知れないよ』
へっ? いきなり何を言っているんです。いやいやこれから私は帰るんですよ、邪魔はしないでくれませんか。あのぅそれとお願いですから灯りを付けてくれませんかね。
『ほらほら落ち着きなよ、死人が帰れる訳無いだろ。それにこの状況を考えれば普通じゃない事が起こっているって理解してくれないかな。君らしくないなぁ』
私らしくですか……ふざけろよ。何が君らしくないだ。お前は誰なんだよ。
『どうした、どうした。そんなに思念を強く出すと五月蠅いじゃないか」
知るかよ、いきなり私が死んだとか、君らしくないとかいうからいけないんだろ、そもそも何だ。私なら死を簡単に受け入れなくてはいけないのか。何があって死んだんだよ。最近は病気などした事ないんだぞ。
『そりゃそうさ君の死因は病気じゃ無いからね、君は建築現場の足場が崩れた時に下にいたから巻き込まれたんだよ』
それで私が死んだと、ふざけろよ、どうして私がそんな目に遭わなくちゃいけないんだ。何か悪い事でもしたか、いいや私はしていないはずだ。私は四十九年間自分を押さえて生きてきたんだからな。
『何でまたそんな事をしていたんだい』
そんな事だと。いいか、揉め事が少ない人生を送りたいからに決まっているじゃないか。私はね、目立ったことはせず、静かに慎ましく生きていたんだ…………それなのにどうしてなんだ。あ~~~~昨日妻はどっかの男と家を出て行ったんだぞ。
『そうなんだ……けど可愛いい一人娘がいたよね』
可愛い娘? 娘はなぁもう十年以上口を聞いてくれないんだ。小学生の頃から何だぞ。幼稚園の頃はパパと結婚するって言ってくれたのにだ。
『それは、どう言っていいか』
私が一体何をしたって言うんだ。自分なりに家族の為に頑張っているんだぞ。それなのに結果がこれかよ、ふざけろよ畜生。
『家庭は上手くいかなかったかも知れないけど、仕事は順調に出世していたんだよね、良かったじゃないか』
はぁ何が順調なんだよ、確かに出世もそれなりにしているし成績だってそれなりには出しているけど、私はねぇどんなに頑張っても一番にはなれず、そこそそでしか無いんだよ。どうせ何もかもが中途半端な男なんだよ。わぁ~~~~~~。
『ほらほら落ち着いて、会社ではお荷物じゃ無いんだから良いじゃないか、それにさ、もう忘れて次に行こうよ』
五月蠅い。じゃあ私は一体何なんだ。辻本修也という男は何をしたんだ。悪い事も良い事もしていない。何なんだよ。
私はね、もっと自由に生きたかったんだよ。それをずっと我慢して生きてきたんだ。そうしたら何かが待っていると信じていたんだ。
それなのに死んだだと、いい加減にしろよ。
そうだっ、誰だか知らないが私に人生を返せ、輝くはずだった未来を返してくれ、会社や家族の為に尽くしてきた時間を返せよ。それが出来ないなら弁償しろよ、この私の人生を金に換えてくれ。
『だから落ち着きなって、それなら次の人生でそうなるように生きればいいだろ』
それは私としてなのか、なぁどうなんだよ。
『魂は勿論君だけど、育つ環境が違うから今の君とはちょっと違うんだよな……説明はちょっと難しくてね』
知らないよそんな事は、だったらいいかこの勝手に終わらせた人生を金に換えて次の私に持たせてくれよ。だったら大人しくするさ。
『いや、そんな事は出来る訳無いし、聞いた事も無いよ』
何だと、だったらこの事を意地でも覚えて全部ばらしてやる。この世界には酷い神がいるって事をな。
『ちょっとそれは無理だし僕は神とかいう存在じゃないんだけどな……んっどうしてなんだ。何で君には身体があるんだい』
知るかよ、大体ここは暗くて身体があるかも見えないんだ。まぁいい、じゃあどうするんだ。私に身体があると言うのなら暴れてやろうか、何処でもいいから連れて行くんだ。暴れて暴れて無茶苦茶にしてやる。
『何だかなぁ、君はそんな男じゃ無いだろ。僕の知っている辻本修也とは思えないよ……分かったよ、どうなるか分からないけど君のまま転生させてあげるよ、その結果その魂は消えてしまう事になるかも知れないけど、いいよね』
えっ……消えるのはちょっと止めて貰えませんか……私が少し取り乱してしまったかも知れませんね……あのっ聞いてます?
◇
何処だろうか此処は、清潔感があって高級な調度品が揃っているこの部屋は……それに目の前にいるブロンズの髪の女性は誰なんだ。緑色の瞳に吸い込まれそうだな。
「お坊ちゃま、ホフマンお坊ちゃま、どうされたのですか」
「えっ私は……あぁ僕は……何でもないです」
私はホフマンでもあるが、辻本修也でもあるんだ。
前作とは違った小説になったのかと思います。
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