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【短編】レジェンド・オブ・ブレイブ~伝説の勇者が未来に行ったら、インフレが酷すぎて死にそうです~

作者: Tonkye

 ——一〇二二年




「あとは……俺に任せろ!」


 そう叫んで、俺はこの世界を恐怖に陥れている元凶である魔王・『ヴェルダード』の前に立った。

 銀色の長髪、雄々しい角、漆黒のローブを纏った美丈夫だ。



「くっ、情けないが、最後はおまえに任せるぞ、『クロイド』!」


 眉目秀麗な青年、世界最強の剣聖と呼ばれる『ハヤテ』が、ボロボロの身体を剣で支えながら俺の名を叫ぶ。


 おまえが死力を尽くして魔王の体力を削ってくれたんだ。 絶対に無駄にはしないから、あとは俺に任せとけ!



「頼みます、クロイドしゃん!」


 探索から隠密までこなすスペシャリストのシーフで、獣人類の少女『カリナ』は、既に立ち上がる気力もなく、地に附したまま願うように俺の名を叫ぶ。


 小さな身体で、死線を潜り抜けながら魔王の動きを制限してくれた。 その献身的な働きに必ず答えなければ!



「小僧……討ち洩らしたら許さぬぞ!」


 長寿のエルフ族の王族にして大魔道士……魔女とも呼ばれる『ロンダリーフ』は、既に魔力を使い尽くしているにもかかわらず、俺に対して愛ある悪態をつく。


 本来ならエルフ族は他種族との交流を拒むハズなのに人間である俺たちと手を組み、様々な魔法を駆使して魔王と渡り合ってくれた。 俺の魔法の師匠でもあるから頭が上がらないのもあるけど、これで負けたら本当に何されるか分かったもんじゃ無いからな。



「クロイド……無茶はしないで!」


 そして、俺の故郷でもあるサウスブレット王国の王女でもあり、俺の恋人でもある聖女『アリストリア』……愛称を『アリス』は、心配そうに俺の背中に手を添える。 そして、添えられた手から流れて来た魔法により、俺の身体に力が漲ってきた。


 魔王を倒したら、俺たちは結婚する約束をしている。 国王も、世界を救った勇者であれば結婚を許すと言ってくれた。



 俺は勇者だが、剣ではハヤテに及ばず、俊敏性でもカリナには及ばない。


 魔法も、結局師匠を超える事が出来なかったし、回復魔法や補助魔法はアリスほど使いこなせない。


 どれも一番にはなれなかったけど、どの能力も使いこなせる。 それが勇者の特殊能力だが、強みはそれだけではない。 勇者は、対魔族に特別な力を発揮する加護を与えられている。


 だから、この最終決戦の最終局面で、仲間たちの死に物狂いのお膳立てのおかげで、魔王との最後の対峙を迎える事が出来たんだ。



「……やはり最後は貴様か、勇者よ」


 魔王ヴェルダードもここまでの戦いでかなりのダメージを負っている。


「ああ、俺が、おまえを倒す! そして、世界に平和をもたらすんだ!」


 勇者にのみ扱えるとされる聖剣·グラディスカリバーの剣先を魔王に向ける。



「平和だと? くだらん! 世界は混沌こそを求めているのだ! 争いこそ、この世界の本分!」


「それはおまえの言い分だ。 人も、獣人も、エルフも、誰だって間違える事もある。 でも、どんな困難に陥っても、手を取り合い、助け合い、苦境を乗り越えられるんだ。 俺がこの場にいるのも、俺たちを支えてくれた多くの仲間たちが目的を同じくして、おまえという厄災に立ち向かったからだ!」


 そう、俺が……俺たちがここまで来るのに、多くの仲間たちが力を貸してくれた。 そして、多くの仲間たちを失った。


 そんな仲間たちのためにも、俺はここで魔王を討ち倒す!



 聖剣を天に掲げる。 そして、勇者である俺のオリジナル魔法、究極闘気=アルティメット·フォームを発動する。


 アルティメット·フォームは、俺の身体能力を一時的に倍まで高めてくれる。 当然身体への負荷は半端ないから多用は出来ないし、魔法が解けた際には全身バキバキの激痛に襲われるが。


「魔王……これが最期だ! エクストリーム·ストラッシュ!」


 聖剣に残り全ての魔力を纏わせ、魔王に斬りかかる。 正真正銘、俺の全てを振り絞った究極の技だ。


「よかろう……我も、究極奥義で迎え撃とうぞ! ダーク·グラビティ·ストーム!」


 俺の目の前に、漆黒の亜空間が現れる。


 だが、止まれない……いや、止まらない! 例えこの身が消え去ろうとも、必ず魔王をしとめる!


「ウオオオオオオッ!!」


 亜空間に突入すると、俺の身体は無数の刃が斬り刻む様な激痛に見舞われたが、お構いなしに突破し、聖剣を魔王の胸に突き刺した。



「グフッ……見事だ……勇者よ……」


「へ……へへっ……そりゃどうも……」


 手応えはあった。 だが、俺もまた、意識が遠のいていく感覚に襲われる。



「勇者よ……今一度聞こう。 おまえは……なぜそこまでして戦った? そこまでして守るものが……人にあると思ってるのか?」


「……なきゃ、俺はこの場にはいねーよ」


 魔王を倒した。 脳裏に、仲間たちの笑顔が浮かぶ。 死んでいった仲間たちの笑顔も……。



 これまでの人生が走馬灯の様に蘇る。


 幼い頃に魔物に両親を殺され、孤児として育った。


 今度は、大切な人を自分の手で守りたい。 それだけを糧に、強くなるために血の滲む様な努力した。


 魔王の復活と共に、俺は勇者として目覚めた。 そして、魔王を倒すべく旅に出たんだ。


 その間、多くの出会いと別れを経験した。 生きるのが嫌になった事もあったし、何度も死にかけた。 でもその都度、仲間たちが俺を支えてくれたんだ。



「人は……捨てたもんじゃ……ねえぞ……魔王……」


 そう呟くと、俺の意識は途切れそうになる……。



「クックックッ……よかろう。 我を討った貴様に、未来を見せてやる……。 そして、その目で確かめるが良い! 貴様が、命を懸けてまで守った人間たちの……子孫たちの愚かさをなっ!」



 ----亜空間が勇者を包み込み、そして消え去った……。



「……さあ、貴様が見るのは果たして希望か、絶望か? クハハハハッ……ゴバァッ!」


 魔王は……最後に心底楽しそうに笑った後、絶命し、その身もまた消え去った……。





 一〇二二年二月。 恐怖の象徴だった魔王ヴェルダードは勇者クロイドの手によって打倒された。


 だが……その後、勇者クロイドの姿を見た者は、誰もいなかった……。






 ………………


 …………


 ……


 ……俺、死んだのか?



 目の前が真っ白だ……。 その上、身体は魔王との死闘のせいで自由に動かせない。


 もう、瞼も開けられないんだろうな……。 最後に、アリスの事を目に焼き付けて死にたかったけど、無理…………と思ったら、瞼が開いた。 簡単に開いた。


 目の前には青い空。


 あれ? 魔王の待つ玉座では魔王の亜空間が形成されていたので、空どころか辺り一面漆黒の亜空間だったハズなのに?



「そうだ! 魔王は……っ痛でぇっ!?」


 勢いよく上体を起こすと、死闘によって痛めた身体が悲鳴をあげるが、それどころではない。


 決着がついてなかったのなら、のんびりしてる暇など無いのだから。



 ……だが、辺りを見渡しても誰もいない。 どうやらだだっ広い草原に、俺は倒れていたようだ。


「どうなってんだ一体? ここ、どこなんだよ?」


 身体が痛むが、先ずはこの状況を把握しなければならない。



 なんとか気合いを入れて立ち上がるが、やはり周りには誰もいない。


 ……ちょっと、思い出してみよう。


 俺の全てを注いだ最後の一撃は、間違いなく魔王に致命的なダメージを与えた……ハズ。


 で、魔王は最期に俺に向かって何か叫んでいた気がするんだが……駄目だ。 ちゃんとは思い出せない。


 なんか、貴様が守ったなんちゃらを拝ませてやるとか言ってた気がするんだが、肝心のなんちゃらの部分を聞き逃したというか、もう意識が途切れてたっていうか……。



 とにかく街か村を目指して、ここが何処なのかを聞き出さないとな……で、気付いたんだが、俺は野原に倒れてたんだが、直ぐ側に堅くて黒い地面が道の様に延々と続いてる。 これはまさか……舗装?


 俺は乗り物酔いしやすく、ボコボコの路面を馬車で移動するのが苦手だったから、せめて土の道を綺麗に舗装してくれと立ち寄った街の領主に常々進言していたんだが、結局魔王との決戦までに対応してくれた街はなかったのに、まさか実現してくれた国があったのか?



 ……と、道の向こうから何か大きな塊が猛スピードで近付いて来た。


 いや、なんだあれ? 馬より速いぞ?


 黒い塊はドンドン近付いて来る。 尻から黒い煙を噴き出しながら。


 あんな魔物見た事無いぞ? うわ、なんか唸ってる? まさか、俺の事を獲物として見てるのか?



 自然に手を腰元にやるが、聖剣が無い。 どころか、鞘がない!? 魔王との決戦でどこかへやってしまったか?


 ……と、黒い塊はもう目の前にいた……


「うわっ!!」


 横に飛んで突進を回避する。 武器も無いし魔力も空なんだ。 先ずは間合いをとって、どうするか考えなければ!



 大きな黒い塊の魔物は俺の前を通り過ぎた所で急停止した。 予想通り、俺を狙ってるらしい。


 よく見ると大きな塊の身体は頑丈な鉄の様な皮膚に覆われている。


 今の俺には武器も無く、魔力で身体能力を強化するのも難しい現状、生身の肉体であの皮膚にダメージを与えるのは難儀だな……。



 すると、魔物が片手を広げ、なんと中から人間が飛び出して来た。


「貴様、どこ見て歩いておる!? もう少しで轢く所だったではないか!」


 魔物から出て来た男が、何やら俺に叫んでいる。 え〜? まず、なんで人が? もしかして、喰われてたんだろうか? だったら、まだ安心出来ない!


「今だ、早く逃げろ!!」


 俺は突進して魔物のケツに蹴りを入れる。 少しでも時間を稼ぎ、その間にこの男を逃さなければ! 、俺の攻撃が効いてケツがベッコリと凹んだ。


 もしかしたら、倒せるか? でも、今はこの男を逃がす事が……


「き、貴様あああっ! 強盗かああっ!?」


 男が胸元から小さな黒い塊を取り出し、俺に向ける。 つーか、強盗だと?


「何言ってんだ? 早く逃げろよ! コイツはまだ死んでないぞ!」


 実際、魔物はまだ俺に向かって屁を引っ掛けてるのだ。 つーか、臭い! なんか、普通の屁より身体に悪い匂いがする!



「……訳の分からない事を言いおって。 貴様、本当に強盗か……? なんにしても邪魔だ、死ねっ!」


 大きな音と共に、小石程度の物質が男の持った塊から放たれる。 その軌道は俺の脳天に向かっていて、避けなければ直撃するだろう。


 瞬時にアルティメット・フォームを発動。 なんとか首を横に傾けると、小石は俺の頬を掠めて通り過ぎていった。


「え? 避けた?」


 男は避けられた事が意外だったのだろう。 呆けた顔をしている。


 ……確かに、今のはたかが小石だからと馬鹿に出来ない攻撃だった。 スピードも、アルティメット・フォームがあったから避けられたんだし、掠っただけで俺の頬に傷を付けたのだから。


 もしや、この男は喰われていたのではなく、魔物の仲間だったのか?



「おまえ……魔王の手下か?」


 身体に鞭打ってアルティメット・フォームを発動したから、もう魔力は残っていない。 それでも、残りカスを振り絞って闘気を纏う。


「ヒ、ヒイィッ!?」


 俺の闘気に圧され、男は後退る。 自分で言うのもなんだが、この程度の闘気では魔王軍配下の師団長クラスでもビビらないハズ。 ……って事は、この男は武力よりも知略に長けた魔王の配下か?


「おい、魔王をどこにやった?」


 この男が傷付いた魔王を匿ったのだろう。 なら、直ぐにでも見つけ出してトドメを刺さなければ。


「た、助けてくれええっ!」


 男は俺に背を向け、一目散に逃げ出した。 ……させるか!


「ぐっ……クソっ!」


 駄目だ、残りカスの魔力すら尽きてしまい、脱力感から膝を着く。


 ここまで、ここまで追い詰めたのに……。


 仲間の顔が目に浮かぶ。 俺の最期の攻撃の為にその身を懸けてくれた、俺に全てを託してくれた仲間たちの顔が。



「スマン……みんな」


 聖剣を失い、ここがどこかも分からない。 こんな状態で気を失えば、俺は魔王軍に囚われるか、最悪殺されるだろう。


 あと少し……あと少しだったのに……。



 ふと、人の気配を感じた。 どこから? ……勘違いでなければ、この黒い魔物の中から。


 まだ、魔王の配下が隠れてたのか? でも、ならば現状で隠れてる理由は無いだろう。


 もしかして、魔王? 傷付いた魔王を、この塊の中に匿ってたのか?


 仮に、魔王だとしたら……こんな俺を目の前にして動けない程のダメージを負ってるのだろう。 なら、今の俺でもとどめを刺せる。


 だがもし、魔王の配下なら? ……イチかバチかだが、やるしかない。



 俺は塊の側面の取っ掛かりに手を掛け、思いっ切り引っ張ると、思いの他簡単に塊の手が開き、中に何者かが俺に向かって手をかざしてるのを目にした。


「うがっ!?」


 その瞬間、俺の身体を強力な電撃が襲う。


 雷系の魔法か? ……にしても、かなりの威力だ。 ……やはり、魔王の配下だった……か……。



 薄れゆく意識の中で、俺を攻撃した者を見上げる。


 ……女の子? なぜ? さっきからなぜなぜばかりだが、とりあえず魔王ではなかったし、魔人でもない?


 人間だ。 人間が、何故俺を?



 そして……その少女の顔を見た俺は、驚いて言葉を失ってしまった……。



「アリス……?」



 ……いや、ちょっと違う。 アリスは一八歳の魅力的な女性だったが、今目の前で俺を見下ろしている女の子は、アリスに似てはいるが、若干幼い……まだ十代半ばだろう。



「強盗風情がこの私を……。 いや、もしかして私を殺す為に雇われた殺し屋ですか?」


 殺す? むしろ助けるつもりだったんだが。 それにしても似てる……念の為確認してみるか。


「君は……アリス、アリストリア·サウスブレッドじゃあ無いよな?」


「白々しい……アリストリアとは私の祖先、アリストリア·サウスブレッド様でしょう。 そんな確認がいるのですか?」


 祖先? 意味が分からないが、とにかくこの少女はあのアリスでは無いって事は確定だな。



 少しだけ冷静になってきた。 目の前の少女は、明らかに俺を警戒している。 

 色んな可能性が考えられるな……。 この子も魔王の配下なのか、さっきの男に拐われてこの魔物に囚われてるとか……それとも、さっきの男もこの魔物も少女の敵ではなかったのかだが……。


「そうか。 ひとつ、聞きたいんだが、さっきの男は、君の敵か? それとも味方か?」


「……『エドヴァルド』は、私の執事です。 でも、この私を置いて逃げるなど、執事失格ですけどね」


 ……やっちまった。 だとすると、完全に俺が悪者じゃないか?


「す、すまない、勘違いしてしまって……俺は君たちを襲うつもりはなかったんだ」


 いかにも苦しい言い訳だ。 少女も不審な者を見る目つきで俺に視線を送っている。



 あ……目眩が。 もう、限界だな……。



 すると、執事のエドゥアルドが逃げて行った方向から、またも別の大きな黒い塊の魔物が近付いて来るのが視界に入った。


 もしかして、この魔物が応援を連れて来たのか? だとしたらまずい。 せめて、誤解を解かなければ。


「本当に、申し訳なかった。 魔王との戦いで力を使い果たして……訳も分からず気が付けばこの場所にいたんだ……。 決して、君たちを害するつもりは……無かった」


「魔王? 魔王とは、あの?」


 良かった、魔王の存在は認識してるみたいだ。 なら俺が勇者だと知ってもらえれば……駄目だ、もう本当に限界だ。


「俺は……勇者として、魔王と戦って……少しだけ……休ませてくれないか? 目覚めたら……この償いを……する……か……ら……」



 そこで、俺の意識は途絶えてしまった。




 《アリエス視点》



 私、アリエス·サウスブレッドは、王立魔法専門学校から久しぶりに王都へ帰る途中、何者かの襲撃を受けました。


 その者は車のフロントガラスを蹴破り、威圧だけでエドヴァルドを逃走させてしまったのです。


 この私を襲撃するなど、余程の実力者か、もしくは命知らずのお馬鹿さんか……と感じた私は、男が車のドアを開けると同時にサンダーボルトを放った。



 すると男は、瀕死の状態にも拘らず私に謝罪し、しかも訳の分からない事を聞いてきたのです。


 アリス……アリストア·サウスブレッドは、世界で最も有名な伝記に登場する一〇〇〇年前の英雄譚の主人公、勇者·クロイドと共に魔王を討ち倒した伝説の聖女であり、私の祖先……一三代前の女王·『アリエル·サウスブレッド』の姉の名前です。


 伝記では、アリストリア様は魔王討伐後、女王の座を捨て、行方不明になった勇者クロイドを探す旅に出たと語られています。


 そして……勇者・クロイド。 命と引き換えに魔王を倒した英雄として、一〇〇〇年経った今も伝説の救世主として語られる存在です。 眉目秀麗で、強く優しい、素晴らしい人物だったと語り継がれています。


 何を隠そう、私の永遠の憧れでもあり……というより、全世界の女性が一度は憧れる存在なのです。


 アリストリア様と婚約していたという事実には少しだけジェラシーを覚えてしまいますが、クロイド様を追いかけて旅に出たアリストリア様のその後がどうなったのかは謎に包まれています。 そんな二人の悲恋もまた、女性が好む儚い恋物語として伝わっているのです。


 そんなアリストリア様の名前を、今目の前で意識を失ってしまった男は口にし、その上魔王と戦っていたなどと言ったのです。 ……どんな世迷言でしょう?



 でも……、攻撃しておいてなんですが、この男は暗殺者でも強盗でもなかった気がします。 悪い人では無さそうですし、確かに怪我も酷い。 それこそ、魔王とでも戦ってきたのかと疑ってしまうほどに。


 しばらくすれば、エドヴァルドが応援を呼んでくれると思うので、それまで待つしかありませんね。


 この者も、目覚めたら償うと申してますし……でも、一応王女である私を襲撃した事実がお父様に知られれば、問答無用で処刑されかねません。 ここはエドヴァルドとも口裏を合わせてあげないといけませんかね。



 そんな事を考えてると、王都の方から車が近付いて来ました。 多分、エドヴァルドが呼んだ応援だと思いますが……。


 やって来た車は私たちの車の前で止まると、中から屈強な男性が降りて来ました。 見た事無い方々ですけど……。


「アリエス王女だな?」


「そうです。 貴方は……」


「そうか。 なら……付き合ってもらおう」


 男性は、目にも止まらぬ動きで私の眼前へ迫り、私の目の前に手を向けるとスプレーが発射されました。


「な!? なに……を…………」


 ……この私が不覚を取るとは……。 最初の傷だらけの男は囮だったのかもしれませんね。


 そこで、私の意識は途切れたのでした……。





 《クロイド視点》



「クロイド……どこ?……どこなの!?」


 魔王との最終決戦の場所……魔王城玉座の間。 


 魔王が死んだ事で亜空間から開放されたアリスが、多分俺の事を探している。 その瞳からは、涙が溢れていた。


(アリス……俺はここにいるぞ?)


 ……だが、反応は無い。 どうやら俺の声はアリスには届いていないようだ。



「アリス……小僧は魔王の命と引き換えに、魔王の放った異次元の穴に包まれて消えた。 ……恐らく、もう……」


 師匠が項垂れている。 いつもは美しく豪放磊落な姿が嘘の様に、見た事も無い程に沈んだ表情で。



「嘘っスよ……クロイドしゃんが、死ぬワケ無いっスよ!」


 カリナが現実を受け入れられないとばかりに、泣きながら首を横に振る。



「俺は……魔王との最後の交錯が見える場所にいた。 ……ロンダリーフの姐さんの言う通り、クロイドは闇に飲まれて消えた……。 その前にも、魔王の攻撃で全身をズタズタに斬り裂かれていた。 あの傷では、もう……」


 普段表情を変える事が少ないハヤテまでも、沈痛な面持ちで項垂れている。



「いえ……クロイドは生きています。 だって、これが……このディスティーノ石のネックレスが赤く輝いたままですもの!」


 ディスティーノ石……。 アリスと結婚を誓う際、俺がプレゼントした稀少な宝石だ。


 この石は愛を誓った二人が互いに互いの石に少量の血を垂らす事で、片方が死んだ時は赤から黒に色を変える。


 アリスの首に掛けられたディスティーノ石のネックレスは赤く輝いたまま。 つまり、相手である俺は死んではいないという事になる。


 ……そりゃあ俺、生きてるし。



「私……クロイドを探します。 皆さん、私はクロイドを見付けるまで国には帰りません。 それまで……いえ、国はもう妹に託します。 お父様にはそうお伝え下さい」


「アリス、何を言っておる? 御主は次代の王国を担う王女となる存在じゃろう? それに、妹君はまだ幼いじゃろう?」


「私が王女となる時、国王になるべきは一人だけ。 だから、私はクロイドを見つけます。 必ず!」



 なんなんだ……この光景は? なんか、俺が魔王と戦い、意識を失った後の出来事みたいじゃないか? なんでそれが見えてるんだ?


 ともかく、俺はここにいる。 アリス、皆、俺はここに…………





「アリスッ!! …………あれ?」


 暗く、モヤッとした部屋……牢屋か?


 あれは夢だったのか? 俺は……そうだ、勘違いで人を襲ってしまったんだった。 で、どうやら罪人として牢屋にぶち込まれたって訳か。 ……少女には目が覚めたら償いはすると言ったのだが、誤解は解けなかったか。


 まあ、完全にやり過ぎただろうからなぁ。 飼い馴らした魔物の顔面ぶっ潰したり、執事を脅したり。 とにかく、次会ったら平謝りしよう。


 ここがどの国なのかはまだ分からないが、俺は勇者として過去に一通り全ての国に立ち寄っている。


 魔王軍との交戦に加勢したり、魔王を倒す為の神器を集めたり。 聖剣もその神器の一つだったのだが、どうやら魔王との戦いで無くしてしまった。


 聖剣·グラディスカリバーは、神に選ばれた勇者にしか扱う事は出来ず、対魔族に絶大な威力を発揮する剣だ。


 正直、魔王との再戦を見据えると、聖剣が無いのは非常に厳しい。 そう、今の俺の力では。


 アルティメットフォームも、更にパワーアップする必要があるな。 聖剣を差し引けば、倍になるだけでは到底足りない。 せめて三倍……つまり、その負荷に耐えうる肉体を作らなければ。


 それに使える魔法も、もっと鍛えないと。 攻撃魔法は師匠に及ばなかったが、少なくとももう一段階上のクラスの魔法を使えなければ話にならない。


 当然剣技も。 願わくば、剣聖と呼ばれるハヤテのクラスまで鍛え上げたい。



 相討ちとはいえ、魔王を追い詰めた事は俺にとっても大きな自信となった。

 これまでは、もう俺の戦闘力は頭打ちだと思っていたが、なんだかまだまだレベルアップ出来そうな気がするし。


 それもこれも、まずはここを出てからだ。 夢ではアリスは俺を探そうとしていたが、実際にアリスならそうしてくれているかもしれないのだ。

 正直、国王なんて荷が重いのだが、アリスは王女にもかかわらず魔王討伐のパーティーメンバーとして俺を支えてくれた。 なら、アリスが王女となる時は、今度は俺が彼女を支えてあげなければ。



 それにしても……目覚めてから数時間経過してるが、門番すらもやって来ない。 おかげで魔力回復に専念してた為、かなり魔力が回復出来たし、その魔力を基に回復魔法でダメージも少し回復した。


「オーイ、誰かー、いないのかー?」


 待ってるだけじゃ埒が明かないと、思い切って叫んでみる。 だが、返事は無い。 俺の声だけが虚しく空間に消えて行く。


 弁解しようにも相手がいないんじゃどーしようもないぞ?


「オーイ! 頼むから、もう一度話だけでも聞いてくれー!」


 魔力が回復した今、ここから脱出するのはそう難しくはないが、出来れば手荒な真似はしたくない。 まあ、国の上層部に俺が勇者だと伝えてくれれば開放してくれるだろうが……なんか嫌な予感がする。 そして、俺の嫌な予感はよく当たる。


 両親が魔物に殺された時。


 孤児院が悪徳領主に取り壊された時。


 初めて魔物と戦った時。


 仲間を失った時。


 そして……魔王と向かい合った時。


 今思えば、魔王と戦うのはまだ早かったんだろうか? 戦う前から、俺は心のどこかで勝てないかもしれないと臆していたのかもしれない。



 で、現状なんたが、俺の悪い予感が当たるのであれば、俺はこのままじっと待っていても碌な事にならないんだろう。 


 ……仕方ない、とりあえずここを出て、誰かいたら様子を見て事情を説明しよう。


 大丈夫。 俺は勇者だ。 それを証明する聖剣は失ったが、勇者だけの魔法·アルティメットフォームを見せれば……。




 《アリエス視点》



 目が覚めると、私は手足を特殊なロープで縛られた状態で暗い部屋にいました。


 ……これは、もしかしなくても誘拐……ですよね。


 誰の仕業かは想像がつきますが、まさか私に対してさえこんな強硬手段に手を染めるとは……我が血筋ながら情けない。



 その時ドアが開き、私を気絶させた男が入って来ました。


「起きたか。 手荒な真似をお許し下さい、アリエス様」


 男は、言葉とは裏腹にゲスな笑みを浮かべました。


「兄様? それとも弟のアレクセイ? どちらの仕業ですか?」


「さあ、私は別の人間に頼まれただけでして、殿下が関わってるかなど知る由もありませんよ」


 相変わらずのゲスな表情。 可能性が高いのはアレクセイ……いや、アレクセイを支持する貴族たちの仕業でしょうね。



「私をどうするつもりです? 殺すのですか?」


「王女を? まさか。 そんな事をしたら、私は不敬罪であの世逝きじゃありませんか」


 殺すつもりは無い? なら、何が目的なんでしょう?


「殺すなんて……あまりにも勿体無い! 私はねえ、貴女を表舞台から消す事が出来ればそれでいいんですよ。 王女を消せとは言われたが、殺せとは言われてませんからねぇ」


 男の表情が更に卑しさを増す。 ああ、反吐が出そう……。



 男は胸元から注射器を出しました。 


「これから王女様には気持ちよ〜くなって頂きます。 そして、コレが無ければ生きていけない程になった頃合いで、他国に売らせて頂く。 クックックッ、高く売れるでしょうねぇ〜、なにせ、王族にしてこの美貌だ。 おっと、勿論調教は私が担当しますよ〜。 もう、コレとナニの為なら喜んで股を開く具合いになるまでね!」


「……ああ、ゲスの極みですね。 嘆かわしい……。 本当に嘆かわしい」


 私の嘆く姿に興奮したのか、男は涎を垂らしはじめました。


「んっっっ……いいねええぇっ! その眼! そのどこまでも汚物を見るような眼! たまんねぇ〜、たまんねぇよぉ〜! そんな眼ぇした女が、コレであっという間に奴隷みたいになるんだからよぉ〜」


 さて、悔しいですけど、この男は佇まいからしてかなりの実力者みたいなんですよねぇ……。 かといって、こんな男の言いなりになるのも、奴隷として売られるのも、死んでも嫌ですし。


「愚か者……。 私はアリエス・サウスブレッドですよ? 貴方の言いなりになる位なら潔く死を選びます」


 死に対する覚悟は出来ている……。 そう、王族の一員として生まれた時から。


 でも、ただで死ぬつもりはありません。


 私だって、幼少の頃より王族としてそれなりの武術と魔法を学んで来たのですから。


 相性的に、この男に真正面から立ち向かっても勝てるかは微妙でしょう……部屋も狭いですし。 なら、私には抵抗する気が無いのだと油断させ、その隙きを突く。



「なんだい王女様。 まさか、自害なんて出来ると思ってないでしょうね? ご自慢の魔法は手足の自由は奪ってるから意味は無いでしょうし、舌でも噛みますか? クックックッ、そしたら死に至る前に回復して差し上げますよ? 無駄に痛い思いをするなんて馬鹿らしいじゃありませんか?」


 男がゆっくりと近付いて来る。 一歩……二歩……三歩…………今だ!


 私の魔力を見くびったツケです。 一瞬で手足を縛っていた縄を風魔法で切り裂き、一気にかたを付ける!



「失礼します……ああ! いた!」


 ……と、その瞬間、あの、先ほど私たちを襲った男性が現れたのです。




 《クロイド視点》



 結局牢屋から脱出したものの、人の気配もなく、薄暗い建物の中を彷徨い歩くと、漸く人の声がする部屋を見付けた。 問答無用で攻撃されたらどうしようと不安だったが、このまま脱走するのも偲びないと扉を開けてみると、さっきのアリスに似た少女と厳つい男が立っていた。



「すまない……誰もいないみたいだから、勝手に脱出してしまった。 でも、逃げるつもりは無いんだ! ただ、さっきも言ったが、君には悪い事をしたから償いたいし、誤解も解いておきたいんだ」


 少女は不思議な表情で俺を見ている。 驚いたのか、安堵したのか……一つ言えるのは、この厳つい男は少女にとって好ましくない相手かもしれないということ。



「テメェ、傷だらけで気絶してたからどうしようか迷ったが、ちょうど働き盛りの男の奴隷の注文があったから連れて来といたのに……どうやって牢屋から脱出した?」


 男はあからさまな疑惑の目を俺に向けている。 俺の経験が言っている……コイツ、間違いなく悪党だ。


 という事は、あの少女も俺と同じく連れ去られたのか?


「お嬢さん、ちょっと聞きたいんだが……助けが必要か?」


 少女は微妙な表情を浮かべたが、小さく頷いた。 なんか……余計な事したのかな?


「助けだと? クックックッ、貴様、この俺が何者かも知らず、助けるだと?」


 この余裕。 それに、身に纏う雰囲気が、この男が相当な実力者である事を俺に知らしめてくれる。 コイツ……魔王軍の師団長クラスかもしれない。


 魔力は大分回復したが、魔王との戦闘で負ったダメージはまだかなり残っている。


 俺たち勇者パーティー以外の人間でこれだけの実力者はそう多くない。 油断も出し惜しみも出来ないな……。



「俺は勇者クロイド。 貴様の名を聞こう」


「あん? 勇者? クロイド? クックックッ……テメェ、頭オカシイのか?」


 え? 強敵と認めたから名乗ったんだけど、名前言っただけで笑われた? あ、もしかして信じてもらえなかったのかな?


「俺は正真正銘、勇者クロイドだ。 魔王との決戦中、気が付いたらそのお嬢さんが現れ、魔物と間違って攻撃してしまったんだ」


「え? まだその設定で話続けんのか? つーか、おまえがこの王女様を襲ってくれたおかげで誘拐するのが楽だったぜ」


 うっ……俺が誤って足止めしてしまったからこのお嬢さんも拐われてしまったのか……。 これは絶対に助けて、償いをしなければ。



「……信じるも信じないも貴様次第だ。 勇者の力をその身で味わってみるんだな」


 油断は出来ないし、下手に戦闘が長引いてお嬢さんを人質に取られても困る。 最初から全力……アルティメット・フォームを発動する!



 真っ白なオーラに身を包んだ俺に、男は驚愕の表情を浮かべた。


「うおっ!? なんて圧力だ……ただの妄想癖のあるガキんちょじゃねーって事か」


 ガキんちょってなんだよ!? 確かに、この男は俺より身長が高いが……。


「まったく、こりゃあ俺も本気出さねーとまずいな……」


 悪いがただでさえ俺の素の身体能力は人類ではトップクラスだ。 例外としてパーティーメンバーのハヤテやカリナがいるが、それもアルティメット・フォームで上回れる。



「悪いが手加減はしない!」


 何にしてもこの男が並では無いのは間違いない。 接近して打撃を叩き込む!


 だが、俺のパンチを男はブロックした。


「チィッ、重てー打撃だな!」


 いや、ちょっと待てよ! 今のパンチを見切った上にブロックしただと?


「テメー、ブーストの魔法を使えるのか……。 でも、残念だったな。 それなら俺も使えるんだぜ!」


 ブーストの魔法? なんだそれは……と考えてると、男の身体を真っ白なオーラが包み込む……えっ? なんで?


「さ〜て、お互い身体能力を強化した事だし、殺し合うか……」



 なんで? なんでこの男が、勇者の特権であるアルティメット・フォームを!?



 どーゆう事だ? まさか、コイツも勇者の資質を? ……いや、勇者は現世に一人と決まっている。 つまり、俺がいる限り、俺以外の人間が勇者に選ばれる事は無いのに!


「どうしたナリキリ野郎。 得物を出せよ」


 男が両手に短剣を持って身構える。 対して俺は、聖剣を失った為に素手だ。


「相変わらずステゴロか? クックックッ……舐められたもんだな、この……俺がな!」


 男が素早い動きで間合いを詰め、双剣で俺を攻めたてる。 速い上に熟練の短剣捌きだ……これでは避ける事に専念せざるを得ないし、素手では攻撃に転じる事が難しいぞ。


「ほう! この俺の攻撃をそれだけ捌けるとは、口だけじゃ無いみてーだな」


 クッ、隙が無い! こんな人間がまだいたのか? 勇者パーティーにスカウトしたいくらいだが……


「フンッ!」


 前蹴りを当てて間合いを離す。 その間に右手に火属性魔法·ファイヤーボール、左手に水属性魔法·アイスランスを発動した。


「ぐっ……なっ!? 属性の異なる魔法の同時発動だと!?」


 魔法そのものの威力では師匠に勝てないと思った俺は、異属性魔法同時発動を身に付けたのだ。


「同時に喰らえ!」


 ファイヤーボールとアイスランスを放つ。 一応ダメ押しで追撃もしとくか。



「チッ……異属性魔法の同時発動には驚いたが、こんな最下級魔法で俺が倒せるか!」


 男が腕に魔力を込める。 そして、俺の二つの魔法がアッサリと跳ね返された。


「舐めやが……ごはぁっ!?」


 俺の拳が男の鳩尾にめり込む。 魔法は跳ね返されたが、追撃しておいて良かった。 その上、一気に仕留める為にアルティメット・フォームを発動して突進したのだ。


 男は血反吐と共に胃の内容物を吐き散らしながら倒れる。 コイツには驚かされたが、なんとか倒す事が出来たな……。



「さて……大丈夫だったかい?」


「…………」


 少女は俺の問いかけに応えない。 どこか探りを入れてるような視線だな。


「だから、何度も言うが、俺が君たちを襲ったのは勘違いなんだ。 本当にすまなかった」


 これに関しては平に謝るしかない。 否は完全に俺の方にあるのだから。


「……私としては、まだ貴方がこの男の身内の可能性も捨てきれないのですが……」


 漸く口を開いてくれたが、まだ疑ってるみたいだ。


「身内なら争わないだろう? 俺も君と同じく拐われてここにいるんだから」


「……あっ!?」


 少女が俺の後方を見ながら驚いた様に声を上げる。 まさかと思ったが、俺は瞬時に少女を抱えて飛び退くと、復活した男の刃が俺のいた場所の床を叩いた。


「確かに鳩尾を直撃したハズだが……」


 普通なら、少なくとも数分は呼吸困難に陥るハズ。 なのに、この男は多少効いた素振りは見せているが、平気で立っている。


「フン! 俺を誰だと思ってる? さっきの攻撃は確かに効いたが、その程度で俺を倒せたと思ったのか?」


 男は自分の腹をさすりながら、俺を睨みつける。 その表情には既に油断は無い。 完全に俺を強敵と認め、気を引き締めたものだった。



「なぜ、おまえほどの実力者が誘拐などに加担してるんだ? もっとその力を振るうべき場所があるんじゃないか?」


 この俺と互角に戦える実力。 魔王の手によって追い詰められている人類にとって、それがどれだけ貴重な力なのかは、勇者である俺が一番よく知っている。


「振るうべき場所ねえ……俺は、それを奪われたから、盗賊に身を落としたんだよ!」


 吠えると同時に、男が俺に斬りかかって来た。 鋭い! かわすので精一杯だ!


「今からでも間に合う! 俺と、一緒に魔王を倒そう!」


 誘拐などするこの男の内面は許せない。 でも、魔王を倒す為には綺麗ごとだけでは足りないんだ。 もし、俺たちのパーティーにこの男が加入すれば、今度こそ魔王を倒せるかもしれないんだ!


「まだ言ってやがるのか? 勇者も魔王も、一〇〇〇年前の虚像だろーが!」


 一〇〇〇年? 何を言ってるのか分からないが、今は余計な事を考えてる余裕は無い。


「どうしても、協力出来ないんだな?」


 男の攻撃をかわしながら、最後の問いかけをする。


「ハッ! いい加減にしろよナリキリ野郎が!」


 そうか……やはり無理か……。 この男には人類の未来など、関係ないって事なんだな。



 ……無責任にも程がある。


「なら……もう容赦はしない。 アルティメット・フォーム・スリー!!」


 俺の身体を纏うオーラが白から赤に変わる。 正真正銘、魔王と戦った時同様の全力だ。


「なっ……なんだそのブーストは!? あ、ありえない!」


「そうか。 もう手加減できないから、死んでも恨むなよ」


 強化した拳を、男の顔面に叩きこむ。


「おげぇっ!?」


 男は、壁を突き破って外へ、どうやらここは二階だったらしく、地面を転がってからピクリとも動かなくなってしまった。



 強敵だったが、なんとか倒せたな。


 アルティメット・フォームを解く……魔王との決戦から間を開けずに発動したため、身体中の痛みが酷い。


「だ、大丈夫ですか?」


「あ、ああ、君こそ、本当に申し訳なかった。 でも、これで俺があの男の仲間だって誤解は解けたかな?」


「ハイ。 流石にあそこまで完膚無きまでに叩きのめしたのを見させられたら信じざるを得ませんから。 あらためて、助けて頂いてありがとうございました」


 良かった、とりあえず誤解が解けて。


「それにしても、なんで君は誘拐なんてされたんだ? しかも、あんな実力者が駆り出されるなんて、もしかしてどこぞのお嬢様なのか?」


「ハイ、私は……アリエス・サウスブレッドと申します」


 サウスブレッド……。 それは、この国の国名にして王族の名。 つまり、俺の愛するアリスの性だった。



「サウスブレッド? サウスブレッドって……王族だよな? え? サウスブレッドの王族や貴族は一通り会った事あるけど、こんな年頃の子俺は知らないぞ?」


「お会いした? ……私の記憶にはありませんが……そうです、お恥ずかしながら、サウスブレッド王国の第二王女です」


 俺が不思議そうにしていたからか、アリエスは遠慮がちに自分の身分を告げた。 ……のだが、第二王女はアルジだろ? この子、何言ってんだ?


「……悪いんだが、冗談はやめてくれ」


「信じられませんか? そうですよね、誘拐された当事者になるような王女を見たら、この国の王族に不信を抱くのも無理は無いでしょうし……」


 いや……そういう訳じゃ無いんだが…………そうか、この子は自分の素性を悟られたくないんだ。 だから王族の身分を語って……でも、バレたら不敬罪だぞ?



「……まあいいさ。 すまないんだが、俺はもう行かなくてはならない。 君たちを誤って襲ってしまった償いは、今回君を誘拐から救ったって事でチャラで良いかな?」


 知られたくないなら深く掘り下げる事も無い。 俺が国王に報告しなければ不敬罪にもならないんだから。


 それに、今は早くパーティーの皆と合流し、次回の魔王との決戦に備えなければ。 正直、また魔力を使い果たしてしまったし、アルティメット・フォームの使い過ぎで身体中バキバキだから、しっかり休まないと。



「あの、それでは私の気が済みません。 宜しければ城へお招きしますので、お礼をさせて下さい」


 城? いやいや、折角見逃してやろうとしてるのに、俺を城になんて連れてったら全部バレるだろ? ってゆーか、そもそも城には誰も彼も簡単に入れる訳じゃないだろ?


「いや……俺も城へ向かうつもりなんだが……」


「え、そうなのでしたか? なら話が早いですね! 今迎えを呼びますので、是非御一緒に」


 そう言うと、アリエスは何もない空間から小さな石版を出した。 ……えっ? 今のって、手品? いや、魔法か? なんで何も無い所から物が出て来たんだ?


「……私です。 ……ええ、誘拐されましたが無事です。 実行犯は外で気絶してます。 ……そう、今から場所をメールしますので、至急迎えと、憲兵隊をお願いします」


 ……この子、正気か? 小っさい石版に話し掛けてら。


「……どうしました? なぜそんな憐れんだ目で私を見てるのですか?」


「え? いや……うん、まあ、その……その石版、光るんだな」


「ああ、最新型のマイフォンイレブンです。 まだ市場には出てない機種ですから、珍しいんですね?」


 マイ……フォン? なんだそれ?


「あ、うん、ちょっと珍しかったんだ。 アハハ……」


 なんかこの子、変な子だな……。 やっぱりあまり深く関わってはいけない気がして来た。 御一緒になんて言われたけど、丁重にお断りしよう。



「じゃあ、俺はこれで」


「目的地は一緒なのですから、是非乗って行って下さい。 それに、まだお名前を伺っていませんでしたよね?」


 あ、そういや正式には名乗ってなかったか。 一応さっきの男には名乗ったんだが、聞こえてなかったかな?


「クロイドだ。 一応、勇者として認定されてるんだが……」


 そうだな、これで俺が本物の王族と面識があるんだと知ってもらえれば、アリエスも虚言を改めてくれるかもしれない。 実際、俺はアリエスの本当の素性など言いたくないのなら聞かなくてもいいしな。


「勇者……クロイド……様ですか? ……えっと、本当にクロイドが大好きなんですね。 私もですけどね」


 ん? なんか、思ってた反応と違うぞ?


「勇者クロイドは一〇〇〇年前、魔王から世界を救った英雄ですからね。 それに、我が王族とも深い関わりのあった人物ですし、私の先祖でもあるアリス様との悲恋の物語には全世界の女性が一度は涙する関係でしたからね」


 …………ちょっと待て。 この子の言ってる事はなんなんだ? 俺の存在を知ってるし、アリスとの関係も知ってる。 でも、一つだけ大きな相違点がある。


「今は……今は、創世記何年なんだ?」


 嘘だろ? そんな訳無いよな? 今は創世記一〇二二年だよな?


「今ですか? 今は創世記二〇二二年二月ですが……」


 膝から崩れ落ちる。 まだ、今のアリエスの言葉を認められない自分がいる。 いや、そんな話ある訳が無い! 一〇〇〇年も未来へ来てしまったなんて、信じられるか!



「ど、どうしました、怖い顔をして……」


「……適当な事言ってんじゃねえっ!!」


 衝動的に床に拳を打ち付けてしまう。 認めたくない。 嘘だと、今のは冗談だと言ってくれ!


「ああ……な、なにを!?」


「ふざけんな! 今は一〇二二年二月だろ? 俺は、俺はさっきまで魔王と戦ってたんだ! アリスとの悲恋? 俺は魔王を倒したらアリスと結婚するんだ! ふざけた事言ってんじゃねーぞ、偽物が!!」


 何度も……何度も床を殴りつける。 やるせない想いを抱きながら。


「や……やめて下さい! 血が……」


 ハッと我に返り、骨まで見える拳を見て、俺は自分がやってしまった事の愚かさを認識する。



「すまない……」


「いえ……どうしたんですか、突然」


 なんて言ったらいい? ただでさえ俺自身が状況を把握しきれていないのに、過去からやって来たなんて言っても通用するか? ……ん? ふと、胸元を見る。 そうだ、やっぱり全てアリエスの虚言だ。 これが、その証拠だ!


「……本当にすまなかった。 だが、これ以上嘘を言うのはやめてくれ」


「さっきから何を言ってるのか分からないのですが、今は間違いなく創世記二〇二二年二月ですよ?」


「違うね。 君が何の目的で俺を騙そうとしているのか分からないが、これを見るんだな」


 そう言うと俺は、胸元からネックレスを取り出す。 アリスとお揃いの、ディスティーノ石のネックレスを。


「これはな、お互いを想い合った者同士が身に付ける事で、お互いの生存を確認する効果があるんだ。 見ろよ、このディスティーノ石を、赤く輝いてるじゃないか! つまり、アリスがまだ生きてるって証拠だ! もし一〇〇〇年も経ったって云うんなら、アリスが今現在生きてられる訳無いんだからな!」


 そうだ。 このディスティーノ石が輝いてるって事は、今も何処かでアリスが生きてるって証明なんだ。


「それは……幻とされるディスティーノ石? 今では米粒程の大きさでも、庶民なら一生遊んで暮らせる程に高価な宝石なのに、そんな大きさで?」


 俺たちのディスティーノ石は、生産地の領土を危機から救った際に領主からプレゼントされた物で、大きさは直径一○センチ程はある。


 でも、今は石の価値とかはどうでもいいんだ。


「とにかく、俺はアリスを探す! 一〇〇〇年後の未来だと? ……ふざけるな!」


 そうだ、アリスやパーティーの皆と再会出来れば、ここが一〇〇〇年後だなどと馬鹿らしい話が嘘だって証明にもなるんだ。


 こんな所に……しかも、王族の名を騙り、俺に偽りの情報を植え付けようとする人間と一緒になど、これ以上いてられるか!



「お、お待ち下さい!」


 背を向け、部屋を出ようとする俺をアリエスが呼び止めるが、俺はそれを無視して、先程男が転落した際に突き破った壁から飛び降り、地面に着地した。


 嘘だ。 嘘だ嘘だ嘘だ。 ここは未来なんかじゃ無い!


 この時の俺は、これ以上アリエスと一緒にいるのが怖かったのかもしれない。 見たくもない、信じたくもない現実を認めざるを得なくなってしまう事が。



「貴様は!? 強盗!!」


 着地したその先に、倉庫の入口付近にはアリエスの執事が黒服の男を五人連れ立っていた。


「……アンタか。 さっきはすまなかった。 お返しと言ってはなんだが、誘拐されたアリエスは助けたから、それでチャラにしてくれないか」


 人と話す気になれなかった俺は、少し素っ気無い態度をとってしまう。


「お嬢様を……助けた? ペインは? 赤髪の男はどうしたのだ?」


 ペイン? ……赤髪の男……ああ、アイツか。


「倒したよ。 中々の手練れだったけどな。 ああ、そこに転がってるじゃないか」


「ペインを倒した? 奴は元Aランクハンターだぞ? どこぞの馬の骨とも分からぬ奴に負ける男ではない……」


 その執事の言動に、俺は違和感を覚えた……。



「……エドヴァルド。 迎えに来たのですか?」


 執事と喋ってる間に、アリエスも外へ出て来てしまった。 ……あんな感じで窓から飛び出したばかりなのに、恥ずかしい……。


「お嬢様……よ、よくご無事で」


 無事だったアリエスを見る執事・エドヴァルドの表情は、俺の予感が合っているのだと確信させる。



「アリエス、執事さんはこの誘拐に一枚噛んでるぞ……」


「な、何を言い出すのだ!」


 おいエドヴァルド、そんなに焦ったら認めてる様なもんだぞ。

 現に、アリエスもエドヴァルドの態度に疑問を抱いた様だ。


「エドヴァルド……。 私が無事だと聞いて、何故そんなに不満気なのでしょう? そもそも私は、私を置いて逃げ出した貴方などではなく、城の方に電話で迎えを呼んだのに……何故貴方がこの場に居るのでしょうね?」


 なんだ、アリエスも最初からエドヴァルドを怪しいと考えてたのか。



「フフフッ……こうなれば構わん! アリエスお嬢様、そこの小僧もろともこの場で始末してくれるわ!」


 エドヴァルドの背後の男たちが、一斉に小さな黒い塊をこちらに向ける。


「……正気ですか? エドヴァルド」


「フン! ちょっと魔法の才に優れただけの小娘が、跡取りに名乗り出るなど百年早いわ!」


「なるほど……貴方は幼少のアレクセイの世話をしてましたね……。 やはり首謀者はアレクセイですか」


「チッ、やはりこの場で消すしかあるまい。 殺れ!!」


 一斉に、黒の塊が光った。


 あそこから飛び出した小石は恐るべきスピードと威力だった。 俺だけならまだしも、アリエスでは避けきれない!



 俺は咄嗟にアリエスの前に立ちはだかり、アルティメット・フォームを発動して身体能力を高める。 それでも大ダメージは免れないが、アリエスを見殺しには出来ない!!




 ……………………おかしい。 来るハズの衝撃が来ない。


 ふと目を開けると。無数の小石が宙に浮いた状態で止まっていた。


「……なめられたものですね、私も」


 後ろから、底冷えするような声が聞こえた。


「おのれっ、撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!!」


 またも黒い塊から無数の小石が放たれるが、その全てが俺の目の前で止まった。


「エドヴァルド……まさか、この程度で私を殺せるなどと、本当に思ってたのですか?」


 よく見ると、俺の眼の前に電撃の膜……バリアーが張られていた。


「おのれ~、“雷撃のワルキューレ”……まさかこれ程までとは……」


「そう、私は雷撃のワルキューレ……私にとって、拳銃など脅威ではない。 さあ、その身に雷を受けよ! サンダガ・フォール!!」


「うぎゃああああああああああああっ!!」


 激しい光と共に、巨大な稲妻がエドヴァルドたちに落ちた。



 ……つか、なんだこの魔法? サンダガ・フォール? サンダラ・フォールなら知ってるけど……?


 エドヴァルドたちは、黒焦げになって倒れた。 多分、全員即死だっただろう……。



 唖然としてアリエスを見つめていると……


「すみませんでした……なんか、内輪揉めに巻き込んでしまって……」


 アリエスは先程の冷淡な声とは打って変わった可愛らしい声で、申し訳なさそうに俺に謝った。


「あの……今の魔法って……」


「ああ、今のはサンダガ・フォールですよ。 まあ、私のサンダガ・フォールは、他の方が放つサンガー・フォールの威力を誇りますけどね。」


「サンガー・フォール? えっと……サンダーの上位版がサンダラだったよな?」


「ええ、そうですよ。 サンダガはサンダラの上位版ですし、サンダガの上位がサンガー。 私は更に上のサンダジャをマスターしてるので、雷撃のワルキューレなどと呼ばれてるのですよ……ちょっと恥ずかしいんですけどね」



 サンダラの上? 師匠ですら、サンダー系はサンダラが最上位だと言ってたのに、更に上の上の上があるだと? どれだけ進化してんだよ!? ……進化……進化?


 だったら……本当にここは未来の世界で、魔法も同様に進化してるってのか?


「嘘だ……そんな訳あるか!」


 認めたくない……認めたくないのに、認めざるを得なくなるのは、そう遅くはなかった……。



 フラフラと倉庫を建物を出て、街の表通りと思わしき場所に出た瞬間、俺は見た事もない現実を直視してしまったのだ。



 目の前を走る無数の鉄の塊。


 忙しなく歩く数万の人々。


 至る所で点灯している赤黄青の光。


 何処からか聞こえてくる軽快な音楽。


 なにより、城をゆうに超える高さの建物が所狭しと……延々と建ち並ぶその光景は、間違いなく俺の住み暮らした世界とは異なる世界だったのだ。



「あの……もしかして、貴方様は本当に……勇者クロイド様……なのですか?」


 背後からアリエスの声が聞こえる。 追って来てくれたのだろう。 あれだけ取り乱し、嘘つき呼ばわりしたのに……優しい子だ。


「ああ……俺はクロイド。 魔王と戦った……一〇〇〇年前の勇者だ」



 振り向けなかった。 女に涙を見せるのは男の恥だと聞いて育てられたから。


 だから、黙って空を……青空の見えない曇り掛かった空を、じっと眺める事しか出来なかったんだ……。










 ~~おまけ



 《アリエス視点》



 …………………………んきゃああああっ!


 どうしましょう!? 今、目の前にいるのは、本物の! 本物の勇者クロイド様!?


 信じられない! 信じられないです!


 いえ、まだ、本当だと信じ切ってはいけません! だって、クロイド様の銅像は世界各地に存在しますけど、もっと身長が高く、凛々しい顔付きでしたもの。 いや、でも目の前のクロイド様も、美男子の銅像と比べると幼さが残ってる美少年で、私的にはこちらの方が唆られます。


 それに! いくらなんでも一〇〇〇年前の人物がタイムスリップして現在に至るなんて、どんな空想科学小説なんでしょう!? しかもそれが伝説の勇者クロイド様!?


 はあーーーーーーっ、今自室にいたなら、ベッドの上で悶え狂いそうです! おっと、思わず涎が……。



 でも、これが事実なら、大変な事になるでしょう。 なんせ、ある意味伝説の、歴史の教科書でも最もページを割く出来事の当事者たる勇者が、現代社会に現れたのですから。


 というか、そもそも誰もそれを信じるとは思えませんが……。


 それに、今目の前に座って窓の外を眺めるクロイド様は、どこか抜け殻の様になっています。 ……それはそうですよね。 クロイド様にとってここは一〇〇〇年後の未来。 周囲の環境が全く異なる世界なんですから。


 ……私に何が出来るでしょう? 父や有力貴族に、彼はタイムスリップした勇者なのだと認めさせるのが良いのでしょうか? ……いや、私の頭がおかしくなったと笑われるだけでしょう。 仮に認められたら? なんだか余計に話がややこしくなりそうですし……。



 そうだ。 そういえばクロイド様は、アンネ様が生きてると言っていました。 それはどういう事なんでしょう?


 私もディスティーノ石の効果は知っています。 クロイド様がアンネ様と血の契約をしたのなら、確かにクロイド様のネックレスが光り輝いていると云う事は、アンネ様が今現在も生きている事を意味しているのですから。


 アンネ様の消息は、魔王討伐後にクロイド様を探す旅に出た所までしか知らされてません。 もしかして、アンネ様もタイムスリップを? ……クロイド様がタイムスリップしたのだとしたら、考えられない話ではありませんよねえ。



 何にしても、この世界でクロイド様は現状孤独な存在です。 なら、私が……いや。私しかいない。 私が、クロイド様にこの世界でも生きる意味を作ってあげたい。


 今回の誘拐事件で王族の陰湿な後継者争いになんてもう嫌気がさしました。 勿論、今回の主犯に対してはタダで済ませるつもりはありませんけど、私がクロイズ様を助けなければ。 そう、私だけが、この時代のクロイズ様の理解者なのだから……。





 レジェンド・オブ・ブレイブ~伝説の勇者が未来に行ったら、インフレが酷過ぎて死にそうです~


 to be continued ?


※お読み頂きありがとうございました。


こちらの作品はこの後の展開がまったくの白紙ですが、評価が良ければ続きも考えてみようかと思います。 気に入って頂けた方は是非、感想、評価、レビュー、イイねの方を、宜しくお願い致します。



※別作『漆黒のダークヒーロー~ヒーローに憧れた俺が、あれよあれよとラスボスに~』の方も、本編が完結して現在【異世界編】を連載しております。 宜しければこちらの方も是非!

https://ncode.syosetu.com/n1651fp/

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[良い点] サンガー懐かしい!(サンダガよりも初代のサンガー派
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