分断
分断というのは危うい状態ではあるね。とある大国でその国の首長となる人を決める選挙が行われただろう。二人の候補者がいて、国民に、さあどちらを選びますかという、決断を迫ったわけだ。ある人はこの人を選び、また別のある人はもう一方の人を選んで、という風に、国民一人一人に選挙権が与えられているので、一人一人が、この人だという方に投票したんだ。結果、あの人がいいいやあの人はダメだこの人がいいいやこの人はダメだあの人がいい、という応酬の繰り返しで、国が分裂してしまった。地面に線を引いてこちら側とそちら側は違う、といった分断じゃない、ここで言う分断は、もっと精神的なものだ。あの人を選ぶのならこの人ではないから敵だ、という感じに。目印なんてどこにも無い。この分断をどう収集していくのかが、課題の一つになるのだろう、直接選挙というものの凄まじさをまざまざと見せられたね。選挙は終わりを迎えつつあって、当選確実となった方の候補者が、自分に投票しなかった人たちに向けて、我々は敵ではありません、とメディアを通じて語りかけたらしいが、好判断だ。真っ先にそれをしなきゃいけない。何せ、まれに見る接戦だった、小数点以下二桁のパーセンテージまでもつれたところもあったみたいだぜ、国民、特に落選した方に投票した人たちは気が立っているんだ、なだめる必要がある。大統領なんだから。すかさずそれをやってのけたのは、評価に値する。それにしても、落選した方の候補者に対する中傷を映像で見たが、なんて直接的なんだ。まるで、喧嘩で負けて倒れている人に、そこにつばを吐きかけるような、そんな感じ。その負けた候補者がよく言っていた、ルーザーという言葉を、これ見よがしにメディアの前で俳優がやってのけて、更にはそれに対して爆笑の渦なのだから、いや、さすがだな。まかり通るんだねえ。なんて言うか、軋轢がすごいね。メディアと落選者との、さ。ここまでするのか、おもしろいけど。不謹慎ながら笑ってしまった、中傷なんだから笑ってはいけないのだが、あまりに動きがコミカルで表情もおもしろかったからさ。まったく、あの演技力には舌を巻くよ。さすが、成功しているだけのことはあるね。真似したくなってくるよ。でも、落選した方も人間で、一つの人格なんだから、あんまりいじめるのはよそうよ。かわいそうじゃん。いじめちゃダメだよ。彼も頑張ってたんだから。ところで亡命するのかねえ。するなら日本にいらっしゃいよ。