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高梨・大地に立つ、がッ! そこはラメェ!!

作者: 漢汁

高梨大地:26歳独身、彼女あり。ライブハウスでギター弾くが、ウケは良くない。

マク○スのドッグファイターのリクエストをたまに貰うと、とんでもなくテンション高くなる。

町田涼子:28歳独身、彼氏あり。彼氏の大地にギターでの稼ぎをやめて、とっとと実家の農業継いでほしいと思っている。結婚願望高く、ヤンデレ。


「うっし、じゃぁ……俺の歌を聞けぇ!!」


 どっかの赤くて全身浴の可変戦闘機に搭乗してるのに、歌しか歌わない人のようなセリフを言いつつ、ギターをかき鳴らす。

 ここは都心だが、人通りの激しい場所ではない。小規模の地下1Fのライブハウス。

 そこで、彼は歌い、ギターを弾き、お客のリクエストに応じる。たまにノリのいいピアニストが参加したり、ドラマーやらキーボード、ベースと豪華なライブが出来上がることもある。

 大地は、それが楽しいのだが、彼女である町田涼子は良しとしない。

 理由は単純。彼女は、とっとと結婚したいらしい。

 なぜ結婚か? 理由は、婿養子がほしいだけなのだ。

 大地は2人兄弟の次男であり、長男は既に結婚済みだ。子供もいる。両親も孫を見れて問題ないと思い、大地を捨てるような形で放置プレイ状態。

 対して、というより、似たような状況なのが彼女、町田涼子。

 彼女も2人姉妹の次女であり、長女は結婚し、嫁いでしまっている。彼女は次男である大地を婿養子にしようと企んでいた。それは両親の意向であり、彼女も姓を変えたくなかった。

 大地自身は、特にそういったことに関してはどうでもよかったらしく、何気ない会話で、さり気なく確認したところ、本当にどうでも良かったらしい。それどころか、そのせいでギターの話で1時間半は一方的に喋ってきた。ちょっと不満だった。

「うっし、体が温まってきたようだぜ!! 次はリクエストを弾くか。アニソンでイイヤツ無いか?」

「……ダンベル何キロがいいっす」

「ラジャザーツ!! では、マッチョ、いっきまーす、アムロいっきまーす」

「「うおぉぉぉ!!!」」

 なんであんなにサブカルやらアニメは興味あり、でもなぜかドラマ見ないという、人としてはちょっとアレな人。でも、ギターは上手い。一体何時何処で練習してるのか、疑問に思う。


『シャー……シャァ……シャアー……』


 それ違う、全然違う歌じゃないか!! 赤い人来ちゃうよ。

 涼子は心の中で突っ込んだ。



「シャー、キシャーッ!! シャァ・・・ゲホッゲホ……」


 大丈夫なのかな? と、気にし始める涼子であった。が、気薄であることが数十秒後に判明する。


『インテグラード、ディオスティグマディ・ディオグランツェ』

 どこからか、妙な声が聞こえてきた。耳から入ってくる音は、大地のギターとボイスとその他の歓声等なのだけど、何故か脳に直接届くような女性の声色がハッキリと聞こえてきた。

『我よ、かの場所へ転移させよ』

 今度は明らかに日本語で聞こえた。何か嫌な予感がする。

『始め……る』

 あ、それ、電車でなんちゃら的なゲームで聞いたセリフ。

 そう思っていた涼子は、自分の周辺に、見たこともない文字と下方から放たれる光に注視し始める。

 今日のライブでは、そのような特殊演出などセッティングできないし、予定もない。何なの? と思いながら様子を見る。

 嫌な予感がする。念の為、光から離れておく。

 他の人たちも、驚いた人もいれば、困惑する人もいる。多いのが多かった、サプライズ演出だと思っているのか、興奮気味な人たちが多いこと。

 共通する点は、皆その光から離れていったこと。


 果たして、舞台の所、もう地面だろう。その現象の元凶らしきモノが出現するが。

「何だ!? 俺の歌を聞けー!!」

 違うだろバカ!! と思いながらも、その現象を目視する。

 こういった現象が起こった場合、何かが出てくるとか、爆発するとか、最近だとどこか知らない世界に転送されるとかが定番らしい。

 その場合、下手したら、自分達がどうなるかもわからないので、迂闊に手を出さない。

 でも、おバカな彼はテンション高いまま、その元凶らしき物体に手を出す。

 今回のケースでは、地面から何かが出現しているようだけれど……髪が長い人の形をしている。しかし、頭には人には本来生えているはずのないツノやら、見え始めた身体には、今時の服装とはかけ離れたドレス? なのか? を着ている訳であるし、どうも嫌な予感しか浮かばない。

 光が収まった頃、出てきた少女(?)なのか、こう訊ねてきた。

 少女の形をしているが、物体Xとでも名付けてやろう。

 髪は白いので白髪か? と一瞬思ったが、年齢的にまず無いだろうと。例外はあるけれども、とりあえず銀髪というヤツか。

 瞳は紅い。血のような濃い色をしている。

 スレンダーな身体つきをしており、白いドレスというのか、薄着の絹のような衣服はよく似合っている。他はブレスレット等の装飾品かな。豪華なものだと思う。

 一番目を引くのは、頭部の角と、長い耳だ。エルフというヤツかな? ゲームとかでよくでてきた。

 

 そんなことを考えているうちに、光は収まっていった。角と物体X(少女)は瞑っていた瞼を開き、大地が立っているステージに目を向ける。

 そしで、大地を下から上へと視線を流し、大地に眼を向ける。


「そなたが、私のマスターか?」

 ――日本語だ。

「は?」

 周囲は静かになり、大地もギターを弾く手はとまり、ピックは右手からポロリとと落とす。出てきた声は、少々間抜けな一言。

「ふーむ、違うな。こう言えば良いのか」

 少女は少し考えこむ仕草をしてから、改めてこう言った。


「あなたが、私のご主人さま?」


 ――刻は動き出す。


「ぶっ殺してやるぞ、テメェ!!」

  殺意の波動って、こういうことなのかな?

「……はっ!? ど、どうどう、涼子、頼むから!!」

 ついとりみだしてしまったようで、申し訳ございません。

 ……じゃなくて、何なのよこの子。

「初めまして、わたくしはアルティメリア・リア・ドラグーンと申します」

「あ、ご丁寧に。だいち、高梨大地です。日本語お上手ですね」

「予め学んでおったからの。で、となりの小童は?」

「ざっけんな……ゴホン。所謂つがいという関係の、涼子と言います。姓は必要ありませんよね」

「姓はないのか、下賎の出身かぇ……」

「はぁ!? 町田ですけど何か? ねぇ大地、コイツ殺してもいいですか? 良いよね?」

 懐からノコギリ出し始める涼子に慌ててお願いする。つーか今ライブ中だったんですけど。そしてどうやって持ち込んだ? 何故そんなもの携帯している?

「安心せい、今は時を止めている。そして、その女の武具程度では、私に傷一つもつけられぬぞ」

 どーりで、この修羅場でなんにも言われない訳か、と思う大地だった。だが、修羅場は終わってなかった。

「へー、あーいえばそう言う何ちゃらって居ましたね。だったらロンよりショウ子です」

 と、そのままノコギリをアルティメリアの首筋に持っていき、流れるような動作で引いていった。



 結果、弾かれて終わった。

 悲しみの向こうへたどり着かなくて良かった。

「な、なんで……」

onzでわなわな震えている涼子が、力なく問う。

「言ったであろう、竜族は貴様の武器程度では傷つけられぬとな」

 聞いてない。

「わかった、私の完敗よ」

「ならよしとする。では、敗者は一体何をしてくれようぞ?」

「最初と比べて、急に偉そうになったな……」

「竜族と人族? どちらが長命でそのぶん知識を蓄えれる頭脳の容量を考えてみよ」

「はい、そのとおりですね」

 ……トカゲの分際で。

「今、何か失礼なことを思わなかったか?」

「滅相もございません」

 怖ッ!!

「で、小童、何をしてくれる」

「……何でもする」

 あ、それ一番言っては駄目なセリフ。

「ほぅ、今、何でもするって言ったな?」

 ほら。

「ならば、我と共に、異世界に冒険へ、い・か・な・い・か?」

 ですよねー、私は遠慮しときます。

「拒否権はないぞ。あと、大地だったかな。お前は我のマイマスターだ。私を大切に扱ってください」

 なんか態度が変。

「小童、お前、あんぱん買ってこい」

 ひどい。

「だーれが買うか、つーかあんた何歳? 私、22歳だけど」

 さり気なく歳をサバ読む。

「赤ん坊だな。我は186歳かな? 人間換算では18といったところか」

「え"……」

 見た目は10代で、ロン毛の銀髪だから、年下っぽいと思ってたが、へー、長寿だね。

 胸は・・・残念だが

「ヲイ、今失礼なこと考えなかったかな? 素直に言い?」

「い、いえ、別に」

 所謂、ロリババァかよ、非常に面倒くさい。


「さて、何処に向かっておるのかぇ?」

「決めてませーん」

「一狩りしてから帰ります」

 待った!! それ、駄目なやつだから。竜族狩りに行くとか、アウトだから。同族的に。ほら、いるでしょすぐそこに。

「あ、あー、魚類でも狩ってくかなぁー」

「良いのう、カエル探すのなら任せんさい」

「木の枝取ってくる」


 こうして、彼らの冒険は始まった。



「そういや、転送してなかったのぅ」

「いや、異世界転送は結構、マジやめて」

「用水路でザリガニ釣りましょう」

 アメザリは可能な限り駆逐してください。

ごめんなさい

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