1 奇妙な笑み
梅香る、春。
新学期への生活に向けて、教師が生徒に学校方針を説明している。
(ゲームしたいな、早く帰らせろ)
桐岡舞は、教師の話に全く耳を傾けず、窓の外ばかり眺めている。
幼稚園時代では、「蝶々の舞ちゃん」と呼ばれるほど優しい性格だったが、小学校に入学したとたん、不良になってしまった。
遊びたい、という気持ちが強かったのか、勉強せず、公園に通う毎日だった。
「舞さん、どこか具合が悪いんですか?」
教師が舞に聞く。
「はい。すごく頭が痛いです。」
「そう、保健室で休んできなさい。」
(バーカ。生徒にすぐ騙されるやつに、教師なんて勤まるかよ、クズ。)
舞は、学校の先生の性格を全部把握している。
騙されやすい先生、そうでない先生。
区別は付いている。
「あら、最近保健室に来る事が多いわね、桐岡さん。」
保健の先生である夏井秋穂は、舞の新担任同様に騙されやすい。
「ごめんなさい、頭が痛くて・・・」
「そう、一番奥のベッド、空いてるから、そこで休んでなさい。」
秋穂はそう言うと、再び視線をパソコンへ戻した。
(バーカ、今すぐ担任やめろ、50代超えても独身の秋穂め。)
舞はそう思いながらベッドに横になった。
(腹減ったなあ~)
舞のお腹が音を立てる。
『下校時刻になりました。各自、荷物をまとめて帰りましょう。』
舞は飛び上がった。
舞は教室に戻り、荷物をまとめて家へ帰った。
「ただいまー。」
舞は靴を脱ぐと、2階の自分の部屋に入った。
本棚には、『戦国武将列伝』や、『真田十勇士』など、歴史系の本がずらりと並んでいる。
舞は歴史オタクなのだ。
舞は本が好きだ。だが、それ以上に好きなのは、ゲームだ。
『信○の野望 大志 パワーアップキット』や、『出世ゲーム 太閤記』など。
どちらにしても、歴史オタクである事に変わりは無い。
「舞ーっ。」
そう叫んだのは、舞のクラスメート、佐藤春真だ。
舞と同じく、なかなかの不良だ。
「何ーっ。」
舞は窓を開け、大きな声で叫ぶ。
春真は、奇妙な笑みを浮かべていた。
「遊びに行こうぜ!」
「どこに行くの?」
舞は聞いた。
「・・・ここでは言えない場所。」
春真は何かを企んでいる。
舞にはすぐに分かった。




