ざまぁされるヒロインに転生した私の奮闘とその結末。
ややこしいので先に書いておきます。
架空乙女ゲームのヒロイン=前世の小説の電波ヒロイン=今回の小説の主人公(表記:ヒロイン)
架空乙女ゲームの悪役令嬢=前世の小説の主人公=今回の小説の主人公の敵(表記:主人公)
「きゃうああああぁぁああ!!」
今女子らしくない悲鳴を上げた気がする。
が、そんなことはどうでもいい。本当にどうでもいい。
危惧するべきは私、マリアンナがざまぁされるヒロインだということだ。
思い出したのはここが数えきれないほど読んだ異世界転生小説のひとつであること。乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公が、電波ヒロイン率いる逆ハー軍団を蹴散らして断罪エンドをひっくり返すこの作品は、最近のお気に入りだった。
でも、だからと言って。
「ヒロインに転生したいわけじゃないんだよ…」
鏡の中で頬を揉む美少女は紛れもなく私。肩ほどで揃えられた艶のある栗色の髪。ローズクオーツをはめ込んだかのような大きな桜色の瞳。さすが(架空の)乙女ゲームヒロインだけあって、可愛らしい見た目をしている。
が、小説の彼女は酷い。
婚約者ある男性にベタベタ付きまとうわ、いじめを自作自演するわ。しかも終盤では『ワタシはこの世界のヒロインなんだから、ワタシの思い通りになるの!』と言い出す始末。
正直、頭沸いてるとしか思えない。
小説中ではそんな電波ヒロインであったが、幸い今私は何もしでかしていない。普通の…いや、ヒロイン設定で庶民だけど珍しい光魔法を使えて男爵家に引き取られたという経歴はあるけど、普通の男爵令嬢だ。大丈夫、大丈夫。
じゃあ無害に攻略対象やら悪役令嬢(この場合は主人公になるの?めんどっ)に近づかなければいいよね。私平穏に暮らしたいし。何事も平凡が一番だよ、うん。
よし、決めた!
一、主人公(悪役令嬢)に近づかない
ニ、攻略対象に近づかない
三、常識ある行動を心がける
この三ヶ条を守って学園生活を送ろう!そうしようそうしよう!
目指せ、明るい未来!
消し飛ばせ、ざまぁエンド!
で。
なーんであなたが目の前にいるんですかね。
「えーっと、王太子殿下?」
「何かな?」
目の前にはニッコリ微笑む王太子殿下。私は今教室出たところをいきなり拉致られ王子専用の執務室に放り込まれてお茶してる。てか王太子何かなじゃねぇよこっちが聞きてぇわ貴様。
おっと、口調が乱れた。
「私に何か用ですか?婚約者さんが待ってると思うんですけど」
早く行ってやれや主人公(悪役令嬢)溺愛しとるんやろ相思相愛なんやろさっさと解放しろやゴラァ。
とは口に出さず控えめに微笑んだ。にこにこ。
すると王子はハァっ…と憂いを含んだ溜息をして、言った。
「それなんだけど…僕と僕の婚約者であるエリザベスを離して欲しいんだ」
「……は?」
…聞き間違えですかねー。今、王子から信じられない言葉が聞こえた気がしたんですけど。
「聞き違えてないよ、マリアンナ・ファーレン嬢。僕は、他ならぬ君に、僕と彼女を引き離して欲しいんだ」
心読まれた!?
思わず口許が引きつる。そんな私の様子を見て王子は心底愉しそうに唇を歪めた。
「…何で、私に?」
「彼女が君のことをとても気にしていてね。君なら出来るんじゃないかなと」
「どうして彼女を引き離したいんですか。殿下とエリザベス様は相思相愛と噂になってますよ」
「それは…」
「彼女の行動によって事件が多発している。僕も仕事の息抜きで街に出れば、毎回のようにその場にエリザベスがいる。最近はその度合いがさらに酷くなってね」
あー、それは電波ヒロインがやってたやつかな?『今日は〇〇で××様の好感度アップのイベントがあるの〜』みたいな。
「おまけに新事業を次々打ち出し家計は火の車。一部に熱狂的なファンはいるものの貴族らしからぬ思想で王政の世を脅かすのではと思われてる。もはや後ろ盾としても効力を発揮しなくなったから切ってしまおうかと」
そういえば小説では主人公、いろんな事業を展開して知識チートしてたなぁ。
「…はぁ」
…全部裏目に出てない?
王子はその美しい御尊顔を無駄にキラキラさせて微笑む。なんとなくわかってたけど意外に気やすいな、王子。
「エリザベス様を離したい経緯はわかりました。でも私には荷が重いです。とても光栄なことですが、辞退させていただきます」
「おや、それは残念。それなりの褒賞は用意するよ」
「申し訳ございませんが」
こういうのは相手にしたら負けなのだ!深々と頭を下げる。
王子はティーカップを置いて、スッと目を細めた。
「僕、王太子なんだけど」
チィッ!!
それから私は頑張った。それはもう、本当に頑張った。
ちょいちょいタイミングを見計らって邪魔するように王子をかっさらっていったり、二人で話そうものなら颯爽と割り込んでいったり。つくづく、三ヶ条全く守ってねぇやって思ったね。
時には小説のヒロインと同じことをした。ええ、めっちゃ恥ずかしかったですよ。隣で王子笑ってたしね。チッ!!
そして、私の涙ぐましい努力の結果。
「エリザベス・マルクス!私は貴様との婚約を破棄する!!」
卒業パーティーにてこーんな茶番をすることになったのでした。あはははは、なんでだろーなー?
「殿下、こんな公衆面で婚約破棄なんてしでかしていいんですか?」
「大丈夫だ。両陛下にはある程度事情を説明してある。もう彼女の妄言にも我慢ならなくなってきたしな」
「…そうですか」
ステージ上で王子とこそこそ小声で話し合う。もちろん婚約者…であったエリザベスにはこの話は聞こえない。
会場は学園の大広間。シャンパン色のシャンデリアが幾つも吊り下がり、階段には深紅のカーペットが敷かれている。楽しげなお喋り声や芸術品のような出来栄えの料理たち。煌びやかで華やかで美しい世界。なんとなく『ブルジョワ』という言葉が頭をかすめた。
今日、王子はエリザベスのエスコートではなく私のエスコートをしている。あっちの怒りのボルテージは最高潮。学園でも散々やってきたので、私は王子を誑かした悪女的ポジションにいるらしい。そっか、そりゃそうか。
そして、凛と背筋を伸ばしステージ下から私たちに向き合う一人の少女。
麗しい猩猩緋の髪を縦に巻き、つり上がった金色の瞳の持ち主は悠然と微笑んでみせた。
そう、彼女こそが王子の悩みの種、エリザベス・マルクス公爵令嬢。
扇子で口元を隠し、余裕をひけらかす彼女の周りには、(架空ゲームの)攻略対象たちが庇うように立っている。小説にもこんな構図があった。確かヒロインの方が逆ハーしてたけど。そう考えると、さすが悪役令嬢、もとい主人公。あーややこしい。
「殿下、婚約破棄の理由をお聞かせ願えますか?」
王子はフッと不敵に微笑むと、私を抱き寄せた。おいよせ、やめろ。その密着必要ないだろうが。
「脱税、隠蔽、秘密漏洩…」
「…え?」
虚をつかれたように目をまんまるするエリザベス。そうだよね、ここ本来ならマリアンナをいじめたとかいう支離滅裂な罪だもんね。でも生憎様、そこまでうちの国の王太子は腑抜けてなかったみたいよ。
「あと架空売上や不当な資産評価、禁呪の使用。ざっとこんなところか。裏も全て取れているが、何か言いたいことはあるか?」
「え、う、嘘よ…そんなことやってない!!」
「無駄だ。マリアンナ、証拠を読み上げろ」
「はい」
公爵家の長年にわたる不正の数々。さらにエリザベスが生まれて新たな事業を推し進めたせいで、負債はかなりの額に跳ね上がっている。あーあ、気軽に知識チートなんてしようとするからだよ。どうせアイデアだけ出したら技術者がなんとかやってくれると思ったんだろうなぁ。
結局、世間はそんなに甘くなかった訳だけど。
「ーー以上です。正式な裁きについては後日王立裁判所にて判断が下される予定です」
「ありがとう、マリアンナ。ちなみに証拠を集めたのも彼女だ。彼女は私の協力者としてよくやってくれたよ」
「…う、嘘よ嘘よ嘘よ!!」
急に喚き始め、顔を歪めるエリザベス。心酔した者以外は異変を感じたり一歩身を引く。
「なんで、なんで小説通りにいかないの!?」
お前が電波なんかーい!!
思わず心の中でツッコんだ私は悪くない。ただ、王子が真剣な顔をして、私を背に隠した。
直後、彼女が豹変する。唇が大きな三日月をかたどり、飛び出すのではないかと言うほどに開かれた眼。悪鬼のような表情で彼女はわらっていた。
否、狂っていた。
「あはははははははハハハははははハはハハ!!!」
背筋に薄ら寒いものが奔る。震えを止めようと力みすぎて白くなった拳に王子が手を重ねた。
「なんで、なんで、なんで!!ワタシがこの世界の主人公なのに!これでうまくいくはずなのに!!」
絶叫。
髪は振り乱し、美しかった姿の見る影もない。瞳のハイライトが失せて暗く沈んでいる。そうして喚いていた彼女は私を見てーー嗤った。
「そうだ、リセットすればいいんだ」
ぽつりと声が、届いた。
ドレスの裾が翻る。目の前を過ぎる銀の光。ああ、そういえば武器を隠せるドレスもあったんだっけ。
一瞬遅れてくる痛みを覚悟して目を瞑ったときーー
「やめてもらおうか」
キィンっという耳障りな音。予期していた痛みはこなかった。
この低く、甘く、爽やかな声の主は。
私を守るように立つ、背中の主は。
紛れもなく、未来のこの国を背負う王太子だ。
「衛兵、連れて行け」
喚く彼女の声が遠ざかっていく。
ーー終わったのか。
そう思った途端身体の力が抜けた。立っていられない。王子が苦笑して手を貸してくれる。
「マルクス公爵令嬢の処罰は後に下されるだろう。あとになってしまってすまないが、今日は卒業パーティーだ。皆思う存分楽しんでほしい!」
パチンと王子が指を鳴らせば陽気な音楽が流れ出す。徐々に踊り始める人が増え、会場が賑やかになっていく。色とりどりの花が咲くように、令嬢のドレスが揺れた。
「…僕たちも、踊らないか?」
そう、照れ臭そうに手を差し出す王太子殿下。
「…婚約破棄してすぐに別の女とダンスですか」
「酷い言い草だな。ダンスだって立派な社交のひとつじゃないか。情報交換もできる」
「わかってますよ、冗談です。でも、ただの社交っていう理由で踊りたくないんですよ」
「それじゃあ、彼女から解放された祝いっていうのはどうかな」
「ふーん、いいじゃないですか。それなら、踊ってあげなくもないです」
そうやって軽口を叩く。
こんなやりとりも今日で最後だろう。この国の王太子と、男爵令嬢。どうやったって釣り合わないのはわかってる。
だから、この期間に芽生えた淡い感情に蓋をして。
「マリアンナ・ファーレン嬢。私と踊ってくれませんか?」
「ええ、お受けします」
ふわりと笑い、その手を取った。
これで私の、ざまぁされるヒロインの話はおしまい。王太子は無事に王となり、私は魔法を教えながら田舎でのんびり暮らすーー
とは、ならなかった。
「…なんで、私ここにいるんですか」
「さあ、なんでだと思う?」
そう飄々と返すのは王太子時代からほとんど変わらない王。相変わらず、さらさらとした金髪に青い瞳の人外じみた美貌は今も健在だ。
あれからマルクス公爵家は取り潰し。エリザベスは不正にはほとんど関わっていなかったけど、禁呪を使ったのと私、ひいては王(当時は王太子だったけど)にナイフを向けたのが決定打となり、幽閉。今は地下牢で、貧相な食事を食べながら神に懺悔しているそう。
攻略対象達は禁呪の影響下にあったため謹慎で済ましたらしい。エリザベスが使っていたのはおなじみの魔法、魅了。ただ、長い間かけられ続けて廃人状態のまま戻らなくなった人も少なくない。
そしてあの事件の後、すぐに王は王太子だった彼に王位を譲った。戴冠式のスピーチはそれはそれは素晴らしかったと風の噂で聞いたけど。私はパーティーが終わって速攻で姿を消したから見れなかった。
だって、ただの協力者として、友人として、彼を見ることができなくなっていたから。
だから行方を眩ませたのに、何という体たらく!
「見つけるのにかなり時間がかかったよ。君、隠れるの上手いね」
「上手いって…証拠、残らないようにしたはずですけど」
「え?ああ、確かに証拠はなかったけど。僕の影たちに君が行きそうなとこ片っ端から調べてもらったんだ。もし見つからなかったらって、ヒヤヒヤだったよ」
微笑む王。対して私は仏頂面で不機嫌を隠そうともしない。
おいそこの王付きの従者、主人にこんな態度を取るのは不敬なんだからさっさと追い出してほしい。そんな微笑ましいものを見る目でお茶のおかわりを注がないでほしい。私は帰りたいのだ。
「で、説明願いたいんだけど?隣国の第三皇女、マリアンナ姫?」
そう。あの断罪パーティー後、私の方も波乱万丈だった。
目的地の田舎街で平和に暮らしてる時にどこぞの国の使者が来訪。その人たちによれば私は隣国サリューリアの皇族の隠された落胤らしい。そして国に帰ってきてほしいと。
そのとき抱いた私の感想はひとつ。
こんなとこばっか乙女ゲームしやがって!!
まあそりゃそうか。小説で主人公は『ヒロインは王子と結ばれて幸せになるエンドもある』と言ってたけど、庶民男爵令嬢が王妃になるって貴族ブーイング待ったなしだよね。
なるほど。そういう隠されし設定があったから身分の差も解決したと。
ただ、現実は非情である。せめて逃げてくる前だったらもっと利用する方法があったかもしれないけど、私はもう決心してしまったのだ。今更帰って『私王族だったんだー、結婚して!』とか馬鹿でしょう。
ともかく、私は断った。ここで暮らすと決めてしまった。私は庶民らしくひっそり過ごすから見逃してくれ。王族を名乗ることはしないから、と。
それで納得したらしい使者は帰っていった。そしてその2、3日後にいきないきなり拉致られ王宮に放り込まれて今お茶してる。あれ、この流れデジャヴ…。
「私自身も隣国の皇族の血を引いていると知ったのは数日前です。でも市井で暮らすと使者には言ってありますし、今後も皇族を名乗る予定はありません。だから残念ですが、あちらへの抑止力にはなりませんよ」
努めて冷静に告げる私に、つまらなそうに指を組む王。
この人の考えることがわからない。
こんな時に呼び寄せて何がしたいのだろう。今の私は男爵令嬢の肩書は持っているもののほぼ庶民と同等で、隣国の皇族ではあるけれど自らその地位を蹴っている。国の益になどなりやしない人物だ。
ああ、胸の奥がじりじり焼けるような感覚がする。早くこの場から出なければ。芽生えた感情を閉じ込めた蓋が開く前に。
この感情に名前をつけてしまう前に。
「隣国の人質にも政略結婚の道具にもならない。こんな役立たない奴など捨て置いてください。遠き地で、私はあなたの幸せを心から願っています」
深々と礼をした。顔は上げられない。
早く、早く出てーー
ガチャンッ!
乱暴にカップをソーサーに戻す音。彼は、弱ったと言いたげな表情でぐしゃりと髪をかき混ぜた。
「まさか本当に伝わってないとは…」
何、なんの話?
困惑。私が状況を把握する前に王が私の前に立ち、手を取る。
「私の妻になってほしい」
「は?」
コンマ1秒で返す。
いや待って、今のセリフまでにどんな経緯があったよ。むしろデメリットしか述べてないはずなのに。
…駄目だ私、期待しちゃいけない。期待したら、きっと後悔する。
「…どうして、私に?」
「まず君が隣国の皇族っていう点でひとつ。次に、卒業パーティーで普通の男女とは思えないくらい距離が近かっただろう?君に断られると、私も外聞が悪い」
「…あれか」
ええ、ええ、私も近いと思ってましたよ。抱き寄せられたとき、身を庇われたとき、手を重ねられたとき。
まさか、はかられていたとはね!!
「無理です、お断りします。まず私は隣国の皇族は名乗らないと先程伝えたはずです。それに外聞なんて、賢王と名高い陛下ならいくらでも変えられるでしょう」
「残念だが、君が皇族を名乗らなくても君が皇族の血を引いていることは変わらない。君が断ったら、隣国との友好同盟に亀裂が入るんじゃないか?」
ノータイムで反撃してくる王。さっき見せた弱った表情などかけらもなく、私が見たことのない『王』といった風格を見せている。
確かに、私が皇族の血を引いているのは事実。重要なのは私が庶民らしく暮らすとかいう部分ではなく、隣国の皇族がこの国の王の願いを断ったこと。
この人の支持は侮れない。隣国の使者は優しい人だった。隣国の民たちもいい人だと言っていた。私が不名誉だと叫べば、信じて協力してくれると約束してくれた。そんな人たちに、迷惑なんてかけたくない。
酷い、脅すなんて卑怯だ。
そんな気持ちを込めて王を睨みつけると、温度のない瞳がこちらを射抜く。
冷たい、冷たい、深い青の瞳。
「だから、僕と結婚してくれないか?」
でも、ここで頷けば私の望んだ未来になる。私が逃げ出す前に思い描いた、御伽噺みたいな理想の大団円エンディング。
そんな幸福な終わり。
「…いや、です」
いやだ。
浅ましい。諦めが悪い。感情なんてとっくに蓋から溢れて、名前を持っていた。
いやなんだ。
そんな、義務とか責任で結婚するのは。まさか自分にこんなわがままな面があるなんて知らなかった。子供っぽい願いだと笑われてもいい。これが私の答え。
「……ごめんなさい」
ぎゅっと唇を噛んで、俯いた。
今度こそ、終わってしまう。沈黙が長く感じられた。
「…そんなに嫌か」
その声の、なんと弱々しいこと。
思わずパッと顔を上げると、彼が泣きそうな顔で笑っていた。痛々しそうに口角を上げて。
「どうしたら好きになってもらえる?君は何にも興味などなさそうで、僕がこんなに追い詰めたって断る。もう何をしたらいいか思いつかない」
嘘だ。嘘、嘘。私よ、期待したら後悔するって何度も言い聞かせてきたじゃない。
そんな心と裏腹に、心臓の音がどんどん煩くなっていく。
「ーー僕は、君が好きなんだ」
紡がれた一言。そのたった一言。
夢にまでみたもの。
「えっ」
ざまぁされるヒロインになって、色々苦労してきた。王子に無茶振りされるし、周りから反感買うし、挙げ句の果てナイフで刺されそうになるし。
…でも、最後は幸せな未来を掴めたってことで、いいのかな。
「あ、あのっ私ーー」
焦りまくった私が今までの気持ちやら何やらをぶちまけて取り繕うまで、あと5秒。
それを聞いて彼が盛大に笑い出すまで、あと30秒。
私たちが結婚式を挙げるまで、あとーー