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仮面夫婦  作者: ツヨキチ
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現実味のない離婚

私の母には好きな人がいる。

それに父は気づいていない。

そう明美は思っていた。

そして、それが間違っていたことに気づいたのは昨日の夜だ。


明美は混乱した。

要は、父は実は気づいていたのに気づいていないふりをしていて、さらに母は気づかれているのを知っていてもそれに気づいていないふりをしていたのだから。



昔から父と母はよく喧嘩をしていた。

その度に離婚の話を持ち出していたのだが、結局離婚することはなかった。

離婚の話が出る度に、それなりに悩んだこともあった。

ただいつまでも実行されない現実味のない離婚という言葉に次第に慣れていくのだった。


明美が生まれた時から、明美は父と母、それぞれに互いの愚痴を聞かされていた。

さすがに生後間もない記憶はないが、少なくとも幼稚園の時には、母から父の愚痴を聞いていた思い出はある。

時には、離婚について悩みを相談されたこともあった。

小学校低学年くらいまでは離婚という言葉に幼心に傷つき、そればかり考えてしまうこともあった。

さすがに物心つくくらいになると明美は面倒くさそうに、そんなにお互い否定するくらいなら離婚した方がいいと答えるのであった。

しかしどんなに離婚の話をしようと、結局私たち子どもを理由に離婚をすることはなかった。

その子どもたちである私たちがそれぞれ就職し、親元を離れることになった今でも、父と母はまだ離婚はしていない。


こんな調子だから、父と母のことについては、ある時から心配するのをやめていた。

そもそも離婚したいという本人たちの意志すらも怪しい離婚問題は、永遠と解決することはない。

ただ心配した労力と時間を思うと、無駄に怒りを覚えるだけだということに気が付いたからだ。

離婚すると、どんなに大騒ぎして、いくら明美が親身になったとしても、結局どうでもないのだ。


しかし、だ。

母の恋人が父公認だなんて許されるものなのか。

いやいや恋人ならまだしも、母の一方的な片思いだ。

相手も既婚者で、子どももいる。

報われることのない恋をもう25年以上もしているのだ。

韓流スターのおっかけとは話が違う。


もしも、もしも母の片思いが勘違いだとしても、二人でデートに出かけたり、旅行までする仲なのは、友達の領域を超えるのではないか。

お互い気がなかったとしても、それはやっていいことの幅を越えているとしか思えない。


もしかして、父が母の片思いをする気持ちを本気にしていないということか。

それか、もう母に対して気持ちがないから、好きにすればいいということなのか。


だったらなおさらお互い自由でいるために離婚をすればいい。

恋愛をすることは自由で自然なことだ。

ただ結婚をしている限り、恋愛をすることは裏切りとなる。




だから明美にとって結婚は効率の悪いことだと思っていた。

そんな明美が結婚することになるなんて、明美自身想像できなかった。

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