94話 名付け
新作を書きました!
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sideヨルダウト
「報告を聞こう」
鷹揚に奪い取った城の玉座に座りながら、召喚した暗黒騎士の報告を聞く。
「近くの国、及び街や村を制圧致しました」
「王族、人間の実力者と思われる人物は、無力化し一ヵ所に拘束しています」
跪きながら淡々と報告する。
「よくやった。……さて、お前たちにも名をやらんとな」
「「ありがとうございます」」
恭しく頭を下げ礼を述べる。
ヨルダウトは、うーむ、うーむと唸りながら考え込む。
そして、右の暗黒騎士を指さしながら言う。
「お前は、オーウェンだ」
「ありがたく頂戴します」
「そしてお前は、アンドレアだ」
「ありがたく頂戴します」
もう一度頭を下げ敬意を表す。
「うむ、これからも余のために励め」
「「はっ!」」
「それで、人間はどこに集めている?」
捕虜、と言わなかったのは、ヨルダウトは戦争をしているわけではないからだ。ヨルダウトからしてみれば、人間は下等生物。対等に扱う方が難しい。捕虜ではなく、玩具と言える。
「はっ、それならば、最後に攻め入った国、エルスドール王国という国に集めております」
「そのエルスドール王国に近い国、ブランド王国には、『勇者』と言われる者たちがいるとのことです」
「たち?だと……まさか複数いるのか?」
「はい、勇者召喚により団体で異世界より現れたとのことです」
「なるほど、異世界か……それで、勇者らは強いのか?」
ヨルダウトの思惑としては、勇者が強ければ、強くなるよう手助けをし、すでに対等に戦えるのであれば、遊び、強くなる見込みがないのであれば、殺そうと思っていた。
「それが、SSSランクの魔物を倒せるレベルではあるとのことです。それに、中に一人別格の勇者がいるらしいのですが、直接見たわけではないので確かなことは……」
「そうか、追々分かるだろう」
オーウェンの報告にヨルダウトは嬉しそうに答える。
凄まじい成果だ。
たかが一日で、国を3つ、そしてその国近辺の街や村は、死霊軍に殲滅せしめられた。これにより、人間の国は約半数にまで減った。弱小国家は同盟を組んでいるが、こんなにも早くほんの1時間程で国が滅ぶのならば、援軍など間に合うわけがない。それに、暗黒騎士のオーウェンとアンドレア両騎士とも逃げられないように結界などを用いていた。それにより、ネズミ一匹逃げることが出来ず、滅んだという情報もまだ伝わっていない。
というか、暗黒騎士が強すぎる。
死霊がいなくても、一体で国の一つや二つ楽に滅ぼせる。
しかも、殺せば殺す程、死霊は増えていく。街の国の住人もその一員になっている。つまり、数百万規模の死霊の軍隊がいる。
「では、案内せよ」
オーウェンとアンドレアが立ち上がり、転移門を出す。
転移した先は目的の国の上空。
ヨルダウトの性格からして、国の中や城壁の外、地上には意味もなく転移はしない。上空に転移する理由は、国を一望出来るからだ。眼を通してみれば、建物をなど無視して見れる。
「ここか……確かに一ヵ所に集まっているな」
見渡す限り、城下には、死霊、死霊、死霊。
生きている人間は、王城の一室に固まっていた。
王都の惨状は、さながら地獄絵図だ。死者の国となっている。
すると、ヨルダウトは、王都の一角を見つめる。
「ふむ。オーウェンよ」
「はっ」
「あそこに、まだ生きている人間がいるぞ」
「っ……申し訳ございません!」
空中に跪き、土下座をしながら謝る。
ヨルダウトが見つけたものは、建物内ではなく、地下に逃げ込んでいる人間たちだ。
そこは、大きな建物だ。貴族の家だろう。
「よい、責めているわけではない。お前たちは、力はあるが産まれたばかり。つまり、赤子のようなものだ。ならば、見落としもあるだろう。これからは、よく眼を凝らして確認するように」
「はっ!ありがとうございます!」
怒っていないことに安堵し、これからは、同じ失敗をしないと誓った。
確かに、まだ産まれた間もない。一度の失敗で、即処分、そんな王ではない。ヨルダウトは、自分が楽しむためならどんなことでもやる。必要があれば、配下も捨てるし、殺す。必要であれば、どれだけ失敗しても殺さなかったりする。要するに気分次第ってことだ。そこは、主であるレインと似ている。
「よし、オーウェン。お前の失敗だ。お前が殺してこい」
「了解しました!」
高度を落とし、目的の屋敷の上まで降りていく。
「はあ!」
腰から剣を抜き、一振り。
斬撃が9つに分かれ、飛ぶ。
屋敷を粉々に破壊する。
「どこから、入るのだろうか。我が主も見ておられることだし、もう失敗は許されない」
二度は許されるとは思っていない。
しかし、今回のは失敗とも言えないことだ。見落とすことは誰にでもある。絶対に失敗の許されない任務とかなら別だが、今回のことは本当にヨルダウト自身全く気にしていないため、オーウェンの心配は杞憂と言える。
「あそこか」
目をやった先には、地下へと通ずる隠し扉があった。
屋敷は斬り飛ばしたのに、そこだけ綺麗に残っている。それだけ頑丈に作られているということだ。
「行くか」
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