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超越神の世界旅行  作者: sena
第5章 不死者侵攻編
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89話 騎士長の意地

 戦術、戦略、個々の技術。

 それが必要なのは、


「実力が拮抗している場合のみだ」


 余を相手にする場合には、実力差など明白だ。どれだけ戦略を練っても、剣術、槍術などいくら鍛えても意味がない。


「そして、今の状況もそう言える。余の言っている意味が分かるか、()()()?」

「何を言っている!化け物めっ!!!」

「総員!かかれぇ!!!!」


 国の人間を殺していたら、騎士を名乗る者が現れ、殺していった。

 それから度々現れたが、救援を待つでもなく突撃して死んでいった。


 だが、王城に着いた時に余を待っていたのは、数十の騎士たちだった。

 人間でいうところの一流といったところだろう。


 陣形を組み、それぞれの武器を手に、連携しながら攻撃してくる。


「クソ!なんで、()()()()()()()()!?」


 騎士の一人が唾を飛ばしながら激昂しながら言う。

 それもそのはず、余が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。攻撃自体が余の肉体に届いていない。肉の体ではないがな。


「そもそも、この魔力如き破れないのであれば、余の命には届かん」

「化け物が!!これでもくらえ!!!震撃!」


 手に持った剣が振動している。


「はあああああああ!!!!」


 魔力を練り上げ、ますます激しく振動する。

 火花を上げ、余の魔力とぶつかっている。が、一ミリたりとも進んでいない。


 一人の騎士だけでなく、余の周囲を取り囲み、連携を生かして攻撃してくるが、全て同じ結果だ。


「『心臓破壊(ハートブレイク)』」


 何かを握り潰すような動きをする。


「がふっ」


 騎士の一人が、血を吐き倒れる。


「ふむ。これが効くのか」

「マルコ!?貴様何をした!?」


 仲が良かったのか涙を流しながら、激怒する。


「なぜ泣く?たかが死んだだけで」


 人間は近しい者が死んだだけで悲しむ。それは、昔から変わっていない。


「お前みたいな化け物には分かるか!人の感情を持たない化け物が!」

「確かに、余は死者だからな。お喋りはもういいだろう。精神破壊(マインドブレイク)


 余に飛び掛かっている最中の騎士も、攻撃のために魔力を高めている騎士も、技を出そうとしている騎士も急に、外傷もなく倒れる。

 その名の通り、精神を破壊する魔法だ。廃人になったとも同然である。


「これが、この国最高戦力か?他愛ない」


 落胆のため息を吐き、歩みを進める。

 人間は少し小突くだけで、死んでしまう。

 だからと言って、わざわざ手加減するわけではないが。


「無駄にでかいな。あまり、城は壊さずにするか」


 後に余の城となるからな、と呟き、生命探知を使う。生きている生物を探知する魔法だ。人間を把握するのにこれ程打ってつけの魔法はないだろう。


「上に雑魚5人、まぁまぁが1人か……固まっているな。王族か」


 一ヵ所にまとまっている。王城の戦力は先のでほぼ全部だったのだろう。


「『黒孔』」


 掌を上に向け、魔法を使う。

 黒い球体が現れ、上に浮いていく。上がるにつれ徐々に大きくなり直径1mになったところで天井に当たる。

 天井が球体に当たった所から削り取られたように消失する。


「行くか。飛行(フライ)


 ふわぁと飛び上がり、上の階に行く。

 城の構造を無視し、一直線に目的の場所に向かう。ただ、城を壊さないように、柱には傷をつけない。


 そう言っている間に、着いた。

 ここは、


「寝室……か?」


 扉を開けようと手を掛けたところで、爆発した。


「これは、(トラップ)か……しかし、この程度でやれるとでも思っているか?」


 構わず、扉を開けると、上から殺気を感じた。左手を上げ、攻撃を防御する。


「ふむ、これは中々の攻撃だ」

「傷一つつかずにっ!」


 雄叫びを上げ、気合を入れながら力を高める。

 ぐぐぐっと余が押し込まれる。

 もちろん、力で負けたのではない。圧に床が耐えられなかったのだ。


「はぁっ!!!!」

「ぬおぉ……」


 そのまま押し切られ、床を突き破る。

 かなりの力で押し込まれ、地面を削りながら進み、激突して止まる。


「ここは、地下か?はぁ、またもや地下に来てしまった。飛ぶのも面倒だ、跳ぶか(転移するか)








 sideブルーノ

 俺は、バルキファナ王国の騎士長、ブルーノだ。僅か28歳という若さで団長になった、若き天才ってやつだ。

 自分でいうのもなんだが、才能もあり、努力もした俺は強い。


 辺境の国ということもあり、他の国と戦争になったことも数回しかなく、魔物が出ても、最高Aランク程度だ。俺は、ソロでAランクを倒すことが出来る。ゆえに団長になれたとも言える。


 そして、俺の故郷、愛すべき守るべき国が過去最大の未曽有の危機に瀕している。


 たった一体の魔物に攻撃され国は亡びた。城下は破壊しつくされ、兵士は全滅、騎士は俺一人しか残っていない。

 もはや、バルキファナ王国を壊滅した。


 それでも、俺は、忠誠を誓った陛下とそのご家族を守るために命を懸ける。


「皆、済まない……」


 唇を噛みしめ、()()()()()()騎士たちに謝罪する。

 もう、あの化け物を殺すことが出来ないのは最初の攻撃で分かっていた。ならば、陛下たちを逃がすために、命を賭して時間稼ぎをしてもらった。


 だが、全くの無駄だと分かった。

 戦闘音がすぐに聞こえなくなったからだ。騎士たちでは勝てる相手ではない。なら、全滅したと考えるのが妥当だろう。

 すると、後ろから不安そうな声を掛けられた。


「ブルーノ……私たちはどうなるのでしょう?」


 聞いてきたのは、王妃だ。ここには、陛下と王妃、第一王子、第二王子、第一王女、第二王女、まだ赤ちゃんであられる第三王女の5人だ。

 王女二人も互いに抱き合い体を震わせている。無理もない、一夜どころか数時間で自国が滅んだのだ。恐怖を感じるなという方が無理だろう。王子も強がっているが、顔が引き攣っている。陛下でさえ強張った顔をしている。


「大丈夫です!私が何とか化け物を引き離すので、その間に隠し通路から逃げてください!全力で、です!」

「ブルーノ、お主は……」

「ええ、国に陛下に忠誠を示す絶好の機会ですので!」


 ニコッと不安を感じさせないように笑い、安心させるように言う。

 陛下の、「感謝する」という言葉を聞けただけで、嬉しく思う。

 実際死ぬことは怖い。これから、対峙する化け物は今まで会ったどんな魔物より強力だろう。それも圧倒的に。俺が、死ぬことは決まりきったことだと思う。


「……それでも、避けられたら意味がない。確実に完璧に決めなければ」


 そのためにも、隙を作らなければいけない。

 開けてくるだろう扉に罠をしかける。爆発させる魔道具を設置する。振動を受けることによって、発動する仕掛けだ。


「両王女殿下、そんなに不安がらないでください!私が必ず逃がします!」

「で、でも、ブルーノが……死んじゃう」

「ええ、死ぬかもしれません。でも、恩ある陛下を守るためになら、この命さえ惜しくありません」


 真剣な表情で伝える。

 実際、本当に心から思っての発言だ。

 その時、扉が爆発した。


「来たか化け物……」


 聞こえないように小声で呟き、気配を消し、跳躍する。

 やはり、毛ほども効いた様子はないが、想定内だ。爆炎に紛れて、視界からも姿を隠る。跳躍した勢いのまま天井を蹴り、加速する。


 完全なる不意打ちだというのに、化け物は左手を上げ防御する。

 剣と手が当たった瞬間激しく火花が散る。


「ふむ、これは中々の攻撃だ」

「傷一つつかずにっ!」


 嫌味としか取れないことを言うが、怒りに我を忘れるようなことは決してない。

 腕に力を入れ、魔力を限界まで絞り出す。


「おおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 喉が張り裂けんばかりに叫び、限界以上に力を出す。

 これでも、この敵に傷さえつけることが出来ないのは分かっていた。それでも、諦めない。目的は別にあるからだ。


(落ちろっ!化け物がっ!!!!)

「はぁっ!!!!」

「ぬおぉ……」


 最後のダメ押しとばかりに、気合を入れ剣を押し込む。

 そしてついに、床が耐えることが出来ずに抜ける。

 驚いたような声を出し、地面に落ちていく化け物を眺め、後ろに飛ぶ。そして、倒れこみそうになるのを堪えるが、片膝をついてしまう。


「はぁはぁはぁはぁ、ぐっ……結局ダメージは与えられなかったか……」

「ブルーノ!」


 第二王女が涙を堪えながら抱き着いてくる。


「はぁ、はぁ、マルティナ様、いけません、よ……」

「無事でよかったです!」


 ついに泣き出した。剣を持つ握力も残っていないが、気持ちに応えるべく抱き締める。


「陛下、なぜ逃げていないのですか?」

「なに、お主ならやってくれると思っていたぞ。それに、我らが逃げたならば、先に狙ってきそうだったのでな」


 緊張の糸が解けたのか笑いながら言ってきた。

 信頼されているのは嬉しいが、今回ばかりは危なかった。それに、いつまでも抱き着いている第二王女を引き離す。


「嫌です!」

「そういわれましても……」


 困った顔をしながら、どうすればいいか迷う。

 相変わらず、陛下は笑っているし、殿下の好意は前々から気付いていた。それでも、身分の違いはあり、必要以上に近づくことが出来なかった。それでも、この際だ。言ってみてもいいかもしれない。

 大きく深呼吸し、


「陛下」

「なんだ?」

「もし、もし、あの化け物から逃げることが出来たのであれば、マルティナ様と付き合うことを許していただきたい!」


 第二王女が、目を見開き嬉しそうな顔をする。


「ふふ、ふははは!我が騎士、ブルーノよ!その時はお主たちの仲を認めよう!」

「ありがとうございます!お父様!」

「ありがとうございます、陛下!」


 今度こそ、きちんと抱き締める。


 だが、俺の幸運はそこまでだった。奇跡は二度は起こらない。


 もう、剣を握る力も残っていないし、魔力ももう枯渇している。


「早く逃げましょう、陛下」

「そうだったな。行くぞお前たち」


 いつまでもここにいるわけにはいかないため、すぐさま行動に移す。

 震える体に力を入れ、何とか立つ。


 だが、絶望は始まったばかりだった。


 もう二度と聞きたくない声が聞こえてきた。


「どこへ行く?下等生物(人間)










魔法のレベルは、1、2は下級魔法、3、4が中級魔法、5、6が上級魔法、7、8が超上級魔法という感じになっています。そして、9,10(Max)が神の領域といった感じです。(ただし、状況や使い手などにもよるので、一概にレベルが全てというわけではありません)

それに、ハクが使っているのは、魔道。魔法の上位互換という風になります。



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