86話 不死の王
sideレイン
「さて、と。強すぎた帝国の力はほぼ半減し、周辺国家は連盟を組み、パワーバランスは大体整った」
「そうでございますね。……しかし、ここは、埃まみれですねまみれで」
「仕方ない。地下だからな」
「なぜこのようなところへ?」
レインは今セバスを連れて、王城の地下にいる。
地下牢があるさらにその地下だ。
元々は凶悪犯罪者を入れてい置く牢獄だったが、そこまでの犯罪者はここ数十年現れていなかったため、今は使われていない。
薄暗く、蜘蛛の巣が張り巡らされ、通路のいたるところに白骨死体がある。鉄格子だけは魔法が掛けてあるのか当時の綺麗なままだ。壁にも魔法が掛けてあり崩れる様子はない。
凶悪犯罪者というだけあり、強かったため逃げることが出来ないように頑丈に作られている。
なぜ、こんなところにレインが来ているのかと言うと、
「そろそろですね」
セバスが言うや否や、一際頑丈に作られている扉のない壁に着いた。
レインは壁に手を翳し、魔力を流す。
ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴゴゴ。
と音を立て、壁が徐々に左右に開いていく。
そこからはさらに暗くなり、普通の人間では目視すらできない程だ。完全な闇に閉ざされながらも、レインもセバスも昼間と変わらないように見えている。
迷いなく歩みを進め、進んでいく。
「それより、気になったのですが……」
「どうした?」
セバスが、歯切れが悪いような、言うべきかどうか迷っているような感じて聞く。
「なぜ、その姿なのですか?」
「これがどうかしたか?」
レインはその場でクルリと回り、ニヤリと笑いながら言う。
「なぜ、1歳の姿のなのですか?」
そう、昨日までは、10歳のショタの姿だった。
しかし今は、赤ちゃんと言える姿で歩いている。よちよちと可愛らしく歩いているが、場所があっていない。
「ただの遊びだ」
「まあ、主がいいのなら何も言いませんが……」
「しっかし、歩きにくいな。肉の体は」
神とは普通は霊体だ。地上に降りるときでさえ、基本的に霊体のままだ。レインは、一応人から生まれたため、肉の体を使っている。しかし、その状態でも年齢も姿形も自在に変えれるが。
「着いたな」
そんなこんなで話していると目的も場所に着いた。
そこには、死が充満していた。
さらに歩みを進めていくと、しわがれた声がした。
『久しぶりの客だな。何用だ?』
「ほぉ、意外なものだったな」
「不死の王ですか。ここは、視てませんでした。」
そこにいたのは、玉座に腰掛けた骸骨だった。
それだけ見ればアンデットの王と言えるが、その骨の体を厳重に鎖で巻かれ動けないようにされている。さらに幾重にも封印の魔法が掛けられ力を抑えられている。
「吸血鬼から、不死者となったのですか。これはこれは、主が意外と言われるのも納得ですね」
『っ!?貴様ら何者だ?』
「まぁ慌てるな。取り敢えずその封印を解こうか」
パチンっと指を鳴らす。
すると、体を覆う程あった鎖が、パキンっと音を立て、粉々になった。
『なに!?簡単に余の封印を……!?』
「その程度封印にも入らん。これで、数分もすれば力は戻るだろう」
そう言っている間にも辺りの魔力を吸収し急速に回復している。
封印しているものの一つに、常に魔力を吸収するという効果があり、それによりほぼ枯渇状態が続いてた。
『ククク、余を解放してくれたことには感謝するぞ、人間』
「うむ。感謝しまくれよ、骸よ」
『だから、一瞬で殺してやろう』
回復した魔力をふんだんに使い魔法をレイン目掛け放つ。
だが、主人に殺意を向けられ何もせずにいるような性格をしていないものだいる。
『暗黒星雲』
不死の王が手を前に出すと、闇が溢れ出した。膨大な闇がレインたちを覆いつくそうとしたところで、セバスが動く。
「主に殺意を向けるものは如何なる者でさえ許されるものではありません」
ぐっと拳を握り、迫りくる闇を殴る。
『は?……何が、ごっ!?』
バッと闇が晴れ、呆然としている不死の王に正拳突きと喰らわす。
ボキボキボキと音が鳴り、バラバラになる。
しかし、魔力を吸収し再生する。
『ぐっ!何が起きた!?』
「封印を解いてもらえたからと言え、いきなり攻撃するとは。主の命がなければ殺していましたよ」
「よいよい。面白いではないか」
レインは笑っている。レインの体が一瞬にして大きくなり、普段の青年の姿になる。
「もう戻られるので?」
「ああ、こっちの方がいいだろう?」
『何者だ!』
もうすっかり再生し終えた不死の王が、怒鳴り散らす。今まで一撃で死にまで追いやられたことがなかったのだ。
「中々の威力だな。ふむ。3000年前に封印されたが、殺せなかったから封印という手段しか取れなかった、ということか。だが、勘違いするなよ。俺らはお前を消し去ることが出来ることを忘れるな」
『ぐっ……』
セバスの攻撃が手加減していたことが、分かったため何も反論できない。
それに、自分の魔法が効かないことも理解できた。
「死なないのは、魔力が続くまで。だが、周囲から魔力を取り込めるから、ほぼ無限に再生できる、か」
『…………』
「それに、魔力が無限にあるわけでも、俺たちに効く魔法を持っているわけでもない。お前が勝てる要素などない」
『…………何が望みだ』
「俺の軍門に下れ」
『余を配下にするということか』
「ああ。だが、基本的に好きにしてくれて構わん。国を亡ぼすもよし。魔王と手を組むのもよし。好きにやってくれていい」
『なに?それだけでいいのか?』
「ああ。ただ、何もしないというのはなしだ。俺が求めるのは、争いだ。平穏などいらん」
レインの方をじっと見つめ、考える。
『分かった。軍門に下ろう。それで、余は何と呼べばいい?』
「口調はそのままで構わん。俺は、レインだ。まぁ、好きに呼べ」
『では、主殿、と呼べせてもらおう』
片膝をつき、敬う態勢を取る。
『まずは、今の魔王軍を見てみようと思う』
「クク、今の魔王は強いぞ。俺が力を与えたからな」
『それは、楽しみだ』
それだけ言うと、鏡のような漆黒のゲートが現れ、その中に入る。転移の一種だ。
姿が消えたところで、レインが口を開く。
「あ、名前つけるの忘れてた」
「主…………」
セバスがジトッと見てくる。
「まぁいいではないか。ますます面白くなりそうだな」
「そういえば、なぜ奴がここにいると分かっていたので?知っていたのですか?」
「いや、神眼で視た時に偶々地下に眼をやってな、その時視えた」
この空間は不死の王を閉じ込めるために、あらゆることが出来ないことになっている。例えば、この中で魔法を使うことも、外からここに転移することも出来ないようになっている。それなのに、不死の王が魔法を使えるのはそれ程の存在だったということだ。故に、不死の王自身も厳重に封印されていた。
「さて、と。俺らも戻るか」
「はい」
転移でその場から消える。
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