85話 復讐完了
sideミナリス
「ぐっ何をした!?」
「ここからは逃げられないよ」
ワァルモーゼ公爵が少しづづ後ろに下がって逃げようとしている。
(まぁ逃げられないのにね)
『今日ここで終わらせろ』
「うん、分かっている」
「何をごちゃごちゃ言っている!行くぞ!」
雄叫びを上げ、勇敢にもミナリスに突撃していく。だが、これは、勇敢ではなく蛮勇だ。勝てないと自分でも分かっていながら、主君を守るために命を懸けて時間稼ぎをしているのだから。
しかし、実力が伴っていなければ意味がない。
「げふっ!?」
「お前はそこにいろ。あはは、ははははは!!!!やっとだよ!やっとこの時が来た!!!」
「そんなザキが一撃?馬鹿な!?」
スッと避け、カウンターと決めて沈める。内臓が潰れ、骨が折れ、立ち上がることも出来ずに悶絶する。なまじ強いと楽に死ぬことが出来ない。
「げはっ、ごほっごほっ、ごうじゃく、おに……」
「ザキ!何を遊んでいる!!!」
「無理だよ!体はボロボロ!再生手段がなければ時期に死ぬんだよ!!!ははははは!!!後はお前だけだ!!!」
高笑いを上げるたびに、魔力が吹き荒れる。
ミナリスの持っている大量の魔力のせいで、空間が震えている。
「なんで!なんで!パパとママを殺したの!!!」
悲痛にくれた声だが、涙は一滴も零れていない。顔には、常に笑みが浮かんでいる。
「それは奴が裏切ったからだ!そもそも、だれのおかげで、十三使徒になれたと思っている!!!」
「裏切りって、パパはそんなことしないもん!」
裏切りと言われても信じられるわけがない。
ミナリスはたくさんの愛情を注がれ育たれてきた。とても優しくいい父親だった。
「奴め、我へ反逆しやがって!何もかもあいつのせいだ!それに、公爵に歯向かっただけでも死刑なんだ。十三使徒としての機密の情報も持っている!死んで当然だ!!!」
「そんなことで殺したの!パパが意味もなく反逆するはずもないもん!」
「違う!すべてあいつのせいだ!我を裏切り、帝国を裏切り、挙句の果てには我が秘宝まで奪い去っていきやがって!そのせいで、我が陛下から……クソ!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」
頭を振り地団太を踏み、もう聞きたくないとばかりだ。
「もういい!死ね!」
黒炎を出し、塵すら残さず消し飛ばす。
最後はあっけなく死んだ。
「はぁはぁはぁはぁ……やった、やっとよ、パパの仇討てたよ……!」
『どうだ?気分は晴れたか?』
「うん!凄く気分がいいよ!でも、もっと苦しめてから殺せばよかったなぁ」
『それは、お前が決めることだ。それより、そいつはどうする、生かしておくのか?』
「え?誰の事?」
『そいつだ、そこに転がっているやつだ』
何のことか分からず、ドュルジに言われた通りに目を向けると、気絶している騎士を見つけた。
「あ、そういえばいたね。で、この人誰?」
『知らん。公爵ならば、護衛の一人二人程度いるだろう』
「護衛?弱かったよ?」
『お前からすればな。そんな奴でも、こいつらからすれば強かったのだろう。それで、復讐は終わったが、まだ、代償を払い終わっていないぞ』
「魂のことだったよね!覚えてるよ、ちゃんと!」
『そうか、ならばいい。ゆっくり行こうではないか』
「うん!」
晴れやかな、憑き物が落ちたような笑みを浮かべ、歩いていく。
これから、悪魔の力を使い何をしていくのか、まだ誰も分からない。
ただ一人を除いて。その人物はというと、
sideレイン
「あーーーやっぱり、すぐ終わったかーーーー」
椅子に座りながら、背もたれに体重をかけ足をバタバタさせている少年が言う。
見た目、完全に10歳にもなっていないだろう。
もちろんこの人物はレインだ。なんでこの恰好をしているのかというと、ただの遊びだ。
なんでも、ミナリスに会って戻ってきたクリスティがこの少年の姿がいいということから、なっているだけである。
「それもそうでしょう。彼が力を与えているのですから」
「そういえば、前からドュルジのことかってたよな」
「ええ、自然に生まれた神であることもそうですが、加減していたとはいえ、私に傷を与えたものですから」
そう、ドュルジは、セバスに傷をつけたことがある。本人は加減と言っているが、加減というレベルではない程縛ってのことであるが、傷は傷だ。
それに、ドュルジはレインが創った神ではない。最初から理から外れていた。
「だが、やはり復讐はいい」
「そうですね。愛と憎人間には色々な感情がありますからね」
「そうだな、そう創ったからな」
「嬉しいのですか?」
この場にはもう一人いる。それはクリスティだ。
レインを膝に抱え、抱っこしている。というか、クリスティの頼みでなければ少年の姿などになっているわけがない。レインを抱きかかえて喜んでいるクリスティの顔は放送事故レベルだ。セバスですら、若干引いている。
「自分が創ったから、というのはどうでもいい。そこに愛情などないからな。人間には何の感慨もない。ただ、一番感情が揺れ動きやすい生物ではあるからな」
「どう見ても、クリスティさんが、一番感情の揺れ幅が大きいでしょうに」
「確かにな」
ついさ先日まで死んだ目をしていたのに、レインに呼ばれたと言うだけで生気が戻った。それで、今に至る。
「復讐をし終わり、準備は整った」
「ええ、後少しすれば気付くでしょうね。ドュルジの方は気付いているようですし」
「なんの話です?」
「ミナリスに会って何か感じなかったか?」
「えーと、邪気を少々」
「そうだ。ドュルジと契約し悪魔に関り、その力を使いすぎたせいで変質しかけていた。クリスティと会った時にはほぼほぼ染まり切っていたんだよ」
「なるほど!それが、完全に染まったということですね!」
「そういうことだ。ステータスの種族も悪魔となっているだろうな。後は、ドュルジとの契約も切れているだろう」
「悪魔との契約は基本的に期間がありますからね。何かを願いそれを叶えれば術者の魂を貰ったりなど」
「今回は純粋な力を与えた。しかも、召喚主であるミナリスも悪魔になってしまうという状態になってしまった。なら、そこで契約は終わりだろう。ミナリス自身が気付くまで話さないつもりとは」
「余程気に入ったようですね」
セバスの目もいくらか優しい。
「もう、ミナリスは用済みですの?」
クリスティが酷いことを言う。全くどうしたらこういう思考になるのか、親の顔が見てみたレインだった。
「いいや、後で、戦争に関わるはずだからな。その時までにもっと強くなってもらわんとな」
「そうですか?その時は妾が戦っても?」
「任せる」
「やった!レイン様ぁこのままどうですかぁ」
濡れた瞳を向けながらレインの体をぎゅっと抱き締めながら言う。
はたから見れば、美少女がショタを抱きながら怪しい目で見ていることになる。怪しい雰囲気満載だ。
「それでは、私は席を外しますかな」
「それでは、行きましょ!」
目にハートを浮かべながら抱き上げ、寝室に連れて行こうとする。
「このままするのか?」
「はい!このままでお願いします!……(これで、アシュリーに勝てます!クフフ!)」
白けた目を向けられる。
だが、それすらも快感に感じる変態だった。
もう、救えないのかも知れない。
「はぁ、親の顔が見てみたいものだ」
「レイン様ですよ!」
「そうだった」
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