82話 邂逅
あと少しで復讐出来る、と思います。
「これは?」
「これは聖剣を出すことが出来るのです!」
「聖剣?」
「そうです!」
ふんすっと鼻息荒く説明する。
(ドュルジ!聖剣ってなに?)
『まぁ一般的には勇者が使っている剣だな』
(強いの?)
『聖剣にもランクはある。これはただの神聖魔法を内包しているだけの剣だな。一応聖剣を名乗れるレベルではある』
「あの、どうしました?」
「え。これって使えるの?」
「もちろんです!ただ、魔力が必要なので、使える人は限られますが、ミナリスさんなら大丈夫でしょう」
「そういえば、会った時も魔力が多いって言ってたけど、なんで分かったの?」
「恥ずかしながら、なんとなくですが、魔力を感じることが出来るんです」
「視れるとかじゃなくて?」
「ええ、そこまでの能力ではありません。自分より多いか少ないかくらいですので」
「へぇー」
一度使ってほしいと言われ、指輪を嵌める。
そして、その大量の魔力を流す。
「うわっ!」
オーナーが溢れ出した光に、目を瞑る。
指輪が光り一本の剣が現れる。
「ほお!これが聖剣!凄い!!!」
「…………」
オーナーは、現れた聖剣に目を輝かせる。
対してミナリスは、無言になった。
「どうしました?聖剣ですよ!?」
「あーうん。ちょっと思ってたのと違って……」
『まぁ、そうだろうな。我が武器には遠く及ばんからな』
「え!?そうでしょう、そうでしょう!本物の聖剣を見るのが初めてなんですね!」
思いっきり勘違いをしている。
オーナーは、剣が強すぎることに言葉が出ないと思っているが、ミナリスは、聖剣が弱すぎると思っていた。
「そうじゃなくて、これ、凄く弱くない?」
「え?」
「だってほら……」
瘴気の剣を出し、オーナーに見せる。
「ひっ!?なんですかそれ!?」
「これが私が使っている剣だよ?あれ?」
瘴気の剣を出した時から、聖剣が徐々に黒く染まりだした。
『ほぉ、久々に見たな。魔剣になるのか』
「魔剣?」
「魔剣!?そ、そんな……聖剣がぁ!?」
ついには、全部真っ黒になった。
聖剣が魔剣になってしまった。
「あ……あ……あ……」
白目を剝き、呆然としている。
「あれ?お兄さん?」
『そっとしておいてやれ、一生に一度見れるかどうかだろうからな、人間からしたら。その聖剣が魔剣になったとなれば、そうなろう』
「というか、なんで魔剣になったの?」
『なったというより、浸食されたが正解だ。もちろん瘴気によってな』
「え、瘴気ってそんなに危ないの!?」
『ああ、聖剣ですら、この様だ。人間なら触れるだけで危ない』
「なんで、私は使えるの?」
『それは、追々説明しよう』
ミナリスが気に入ったのは、身体強化のスキルが付与されている指輪だけだった。
「あ、金額聞いてないや」
「へ、へへ……」
「あのーお兄さん?ちょっとー」
肩を掴んで、ガクガクと揺さぶる。
「はっ……私はいったい……」
「お、気が付いた!あのね、これ欲しいんだけど、いくら?」
「あ、ああ、それは、金貨350枚になります」
「はいこれ!」
ポイッとお金を出す。
「え、本当に持ってたんですか!?」
「疑ってたの?」
「い、いえ、ただ今すぐに払われるとは思っていなくて……」
「決闘試合に勝ったって言ったでしょ?」
「あ、そうでした」
忘れていたのか信じていなかったのかミナリスにとってはどっちでもいい。
払い終わると、個室から出て行った。
最後に声をかける。
「またのご来店を!」
「またね!」
早速手に入れた指輪を指に嵌める。
「おっ、身体強化のスキルって言ってたけど、つけた瞬間から効果があるなんて!」
『その代わり魔力を常に吸われている状態になるが、お前には関係ないな』
「うん!無限だもんね!」
店から出て、ルンルン気分で近くの屋台目掛け歩いていく。
そして、買おうと近づいて行ったところで、ドゥルジが珍しく大声を上げた。
『馬鹿な!?なぜここに、帝王がいる!?』
「え、どうしたの?」
びっくりして、足を止める。
そして、ミナリスに怒鳴るように、警告する。
『ミナリス!しゃがめ!!!』
「え?」
突然のことに意味が分かっていないが、取り合えず、今までの付き合いでドュルジのことは信頼している。
突然のことにも反応し、しゃがもうとするが、間に合わない。そのことが分かったドュルジは、瘴気の盾を造り出し、ミナリスを守ろうとする。
だが、軽く、そう、初めからなかったかのように容易く蹴破られた。
そのまま、その足は、ミナリスの腹を貫き、吹き飛ばす。
とんでもない勢いで飛んで行ったが、ミナリスの体を瘴気が覆い傷を治す。
「がはっ、ぐぅ、痛い……ドュルジ何が起きーー」
そこまで言って、ドュルジがいつもと違うことに気づいた。
『ぐあああ……はぁはぁ……まさか、魔界にいる我にまでダメージが来るとは、さすが、というべきか』
「どうしたの!ドュルジ!」
「ドュルジ?」
音もなく現れた女性に警戒心全開で戦闘態勢に移る。
『ぐ、多次元攻撃を混ぜてくるとは、お久しぶりですね、雷の帝王よ』
「あ、やっぱりドルじゃない!何でここにいるの?」
そう、ミナリスにいきなり危害を加えたのは、五帝の一人、雷帝クリスティだった。
普段は大人しいクリスティだが、クリスティを知っているようなことをいきなりドュルジが言っていたため、反射で蹴ってしまった。
クリスティからすれば、小突いただけだが、それがドュルジが本気で生成した盾が意味をなさないレベルの攻撃だった。
「え、ドュルジこのお姉さんだれ?」
『取り敢えず、そこに入ってから話しましょうか』
「まぁいいけど」
いきなり敬語で話し出したドュルジに違和感しか感じないミナリスだが、先の一撃で自分では反応もできなかったため、口出しできない。
クリスティの了承を得たところで、近くにある喫茶店に入る。
さっき起きた争いの後は、何もなかった。ミナリスが吹っ飛ばされて巻き込んだ市民も飛ばされて壊れた建物も一切何もなかったかのように元通りになっていた。
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