81話 賞金
『決まったーーーーーーー!!!ミナリスの優勝だぁ!!!全試合一撃で終わらせた、まさに別格だああああ!!!』
ミナリスは、残りの試合も一撃で終わらせた。相手がどんな能力を持っていようとも姿すら見ることが出来ないなら対処の使用がないからだ。
この決闘試合を開いた主催者が、壇上に上がり、優勝者のミナリスを呼ぶ。
壇に続く会談を登っていく。一段一段上がっていくごとにミナリスの耳に声が聞こえてくる。「おめでとう」とか「すげぇ」とか「ミナリスちゃん可愛い」とか。だが、ミナリスの考えていることは違った。
(賞金いくらもらえるのかな?)
賞金のことしか頭になかった。
バーダン男爵の屋敷に行ってから、黄金の置物や寝室にあったアクセサリー類など、欲しくなっていた。盗賊から奪った……もとい、頂戴したお金は、宿代としてかなり消えていった。
他の冒険者と違って武器や防具、回復薬にお金をかけないで済む分、楽な方だが、宿代の他にもお金を使ったものがある。
それは、食費だ。
帝都に来てからのミナリスの趣味といえば、食べ歩きだ。
露店で出されている串焼きやたこ焼きなど、勇者が広めた食べ物が出されている。
復讐を誓って、ドュルジと契約した時からミナリスは常に戦闘の中にあった。そのおかげで、強くなれたが、そのころの食べ物といえば、魔物を狩って焼いて食べるくらい凄く美味しい、というわけではなかった。それが、帝都で食事をし変わった。もともと食べ盛りの歳だ。大量に食べても仕方ない。それに、強さに見合うだけのエネルギーを使い続けていることになる。それを食べることで回復しているから、たくさん食べている。その量にして、約成人男性の3~5倍は食べている。
お金も無くなるだろう。
それもあって、持っていた資金も底をつきそうだったため、この決闘試合は渡りに船だった。
そして、決闘試合など戦いの場を開くのは基本的にお金が有り余っている貴族たちだ。常に娯楽を求めている上流階級の貴族は、闘いという場を自分たちで作って、強者を戦わせようと考えたことが始まりだ。帝国は強さが絶対だ。弱ければ奪われ、強ければ得る。弱肉強食という言葉がよくあてはまるだろう。
今回の主催者となっているのは、ブラコニーチェ伯爵だ。
外見はまだ若い。30代くらいだろう。金髪を撫でつけた髪形をしている。
『僅か10歳にして、それ程の強さ感服した!どうだ、君さえよければ私に仕えない?』
突然の勧誘に伯爵を護衛していた騎士たちが驚愕に目を見開く。
「いえ、結構です」
そして、すぐ断ったことに、再度驚く。
『はっはっはっ。やはりか、君のような強者が一貴族に使えようとは思わんよな!では、改めて、優勝おめでとう。これは賞金だ。受け取り給え!』
「ありがとう!」
子袋を受け取ると、ずっしりとした重みを感じた。小袋自体は小さいが、中身をちらっと見た感じ、全部白金貨だった。総額いくらになるだろうか、それを考えただけで、ミナリスの顔に笑顔が浮かぶ。
『気が変わったらいつでも我が家に来てくれ。最高のおもてなしをすると約束しよう。……幼い強者に拍手を!!!』
会場に集まった観客が拍手をする。
だが、ミナリスは周りには目もくれずお金をもらったらそそくさと退場していった。
闘技場から出てミナリスが向かった先は、宝石店だ。
元々賞金を得たなら来ようとしていたところだ。
煌びやかな外観に、見とれながらも中に入ろうとする。
すると、入口のところで止められた。
「あの、ここは子供が来るようなところではありませんよ」
「大丈夫だよ!」
「どちらのご令嬢でしょうか?」
年齢だけ見て、判断したがよく見ると、ミナリスの着ている服はどれも高級なものだ。慌ててどこかの貴族の娘かもしれないと思い始め、聞く。
「ん?貴族じゃないよ!」
そう言われほっとしたのも束の間、ポケットから出したギルドカードを見て驚愕に笑顔を保てず顔が引き攣る。
「えっと、冗談はいけませんよ?Sランクのカードに偽装するなんて犯罪ですよ?」
「本物だよ。ギルドマスターに問い合わせてもいいよ!」
「っ!」
そこまで言われれば、疑うわけにはいかなくなる。
それ程、冒険者ひいては帝国で強者であるギルドマスターの権威は大きい。
ミナリスはあまり強いと思わなかったから、よく分からないかも知れないが。
「確認しますのでお待ちください!」
ミナリスを放置し、走って奥に行く。
待つこと数分。
息を切らして戻ってきた店員の他にもう一人男性がいる。
「私がここを経営しているオーナーです。それで、あなたが、Sランクの冒険者ですか。なるほど、桁外れの魔力だ」
「お兄さんも冒険者だったの?」
「ええ、武術は全く駄目だったんですが、魔法には適性がありましてね、Bランクまで上がることが出来たのですが、以来の途中で見つけたエメラルドがきっかけで、この宝石店を」
「へぇー、それで、入っていい?」
「ええ大丈夫ですよ。その前に、ギルドカードの確認を」
ギルドカードには、いくつかの機能がある。偽装防止のためだ。
カードを受け取って確認し終わったら、カードを返す。
「はい、大丈夫です。では、どうぞ」
「はぁい!」
やっと入れることに、目を輝かせる。
中に入るごとに、綺麗な宝石が目に入る。光を反射しキラキラと光っている。
奥に行くと魔道具も置いてある。
「魔道具もあるの?」
「そうですね。魔法が使えることは話したと思いますが、その中でも付与魔法が得意でして」
自分で加工しているということだ。宝石だけでなく、それを加工し売っている、ということだ。
小さい1㎝くらいの小さな宝石から拳大の大きさのものまで、様々だ。
魔道具も指輪型、ネックレス型、腕輪型など、いろいろ取り扱っているようだ。
「なんの効果があるの?」
「こちらの指輪には、魔法軽減の効果があります。こちらには、物理軽減。ネックレスの方には、各耐性があります」
かなりの種類がある。さすが、貴族御用達、というわけだ。
店内を見ても、煌びやかに衣装を着た女性たちが多い。ミナリスを見るたびに、なんで子供が?という表情をし、隣にいるオーナーを見てますます疑念が沸きあがっているようだ。チラッとチラッと視線を感じる。
「そして、こちらが、増幅系になります。このブレスレットが、体力増強、こちらが魔力増強となります」
「二つ以上効果が付いたやつないの?」
「複数の付与が付いたものは、高価になりますが、予算の方は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫!決闘試合で勝ったからその賞金がたくさんあるんだ!」
「それは……!おめでとうございます。それで、複数の付与でしたね。こちらに来てください」
そう言い、奥の方に連れていかれる。
個室のようだ。
案内された個室でしばらく待つと、いくつかのアクセサリーが入った台を持って入ってきた。
「すみません。こちらは高価なものであるため、個室に案内させてもらってるんですよ」
「盗られたりするから?」
「そうですね。私も帝都で大きい店だと自負していますので、強盗が入っても貴重なものだけでも、盗られないように厳重に保管しているんです」
「それで、これがそうなの?」
「はい」
そう言って一つ一つ説明する。
「まず、これはミスリルを編み込んだネックレスになります。付与効果は、ステータス全3%アップとなっています」
よく、ステータスをプラス数十とか、そういうのは見たことがあるだろう。だがそれは、強くなればなるほど意味をなさない。しかし、%なら、どれだけステータスが上がっても腐らないからだ。
「そして、これが、スキル付与の物になります。迷宮で見つかった物で私が買い取ったんです。効果は、身体強化と自己再生が付与されています。この身体強化は、重複可能なので、一際高いですが、高価は保証しましょう」
「おおお!!」
蒼い宝石が嵌っている指輪で、角度によって赤にも見える。
そして効果も破格だ。倍率にもよるが、重複しないなら倍々になるということだ。
「そして最後のが、こちらになります」
そう言って、最後に出されたのが、神聖な光を出している指輪だった。
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