79話 二回戦
『さて、二回戦が始まりました!!!東ゲートからは、ミナリスぅ!!!その外見に似合わない恐ろしい力と速度!またもや一撃なのでしょうか!?対して、西ゲートからは、冒険者期待の新人デイバーだ!!!登録初日でCランクまで上がった天才です!』
一回戦と違いミナリスにも声援が送られる。
場内に行くと、デイバーが待っており話しかけてきた。
「わぁお、本当に子供だ。友人の又聞きで聞いていたけど、びっくりだ」
「何か用なの?」
「いやいや、特に酔うというほどのものでもないけどね、ホルストンさんが君のような子供にやられたっていうのが信じられなくてね」
「ああー弱かったからあまり覚えてないや」
「っ。そうか、ホルストンさんは、俺の憧れの人だったんだ。それが、こんな子供にやられるなんて何かの間違いだと思っていたから、手加減するつもりだったけど、気が変わったよ」
人当たりのいい笑顔を浮かべ話していたが、今は、眼が笑っていない。隙あらば殺す、そういう目をしている。
『ミナリス、すぐに終わらせろ』
「うん、分かっているよ」
「何を一人で喋っている?命乞いしてももう遅いぞ!」
ミナリスは、SランクやSSSランクばかり見ているし、その実力もミナリスからしたら弱すぎて、たいして強くない、というように思ってしまっている。しかし、世間からしたら、SランクどころかAランクですら羨望の眼差しで見られ、憧れの的だ。そして、どの時代も強い者を慕う人は多い。デイバーもホルストンに憧れて、冒険者になった一人だ。
『試合開始!!!』
合図と同時にデイバーがミナリスに突撃する。
使っている武器は、剣の幅が小さく、一般的な剣より少し長い。剣の扱いが上手くなければ刀身を折ってしまうだろう。
だが、どれだけ自分に合った武器を持っていようと、それを扱えようと基礎となる肉体能力の差がありすぎれば意味がない。
その証拠に、ミナリスが一歩踏み込んだだけで、デイバーと正対し驚きに目を見開く。
その顔を手で掴み地面に叩きつける。
「がはっ」
「ふぅ」
しーん、と会場が静まり返る。
またもやミナリスが一撃で決めたからだ。一回戦の試合では、ミナリスは全く動いていないように見えていた。つまり、一部の人はホルストンの自爆だと思っている人もいたが、今回はきっちりとミナリスがしたことを会場にいる全員に分かるような方法で倒した。
だからこそ、静まり返っている。先の戦いが偶然じゃないと分かって。
『お、おおおおお!!!!ミナリスの渾身の一撃が決まったーーーーー!!!二回戦も一撃だ!もうその実力は疑いようがありません!10歳の少女、恐るべき力だーーーーー!!!!』
実況の声に観衆が我に返る。
まだらに拍手が起こり、ミナリスへの声掛けをする。それに対して、何の反応も示さず入ってきたゲートに戻っていく。
急いで、救護班が駆け付け、デイバーの状態を見る。
「おい!大丈夫か!」
「回復魔法を早く!」
「う、うぅ……」
デイバーが呻き声を上げ、一命は取り留めた。
「しかし、さっきの試合見たか?」
「あ、ああ」
戸惑った声で救護班の二人が会話をする。
子供が勝ったということにももちろん驚いているが、それ以外にもある。それは、デイバーの状態だ。
「まさか、あの一撃だけで、歯がほとんど折れている。それに、鼻もだ」
「ああ、後、後頭部だな。それが一番酷かった。半分程凹んでいたからな」
そう、打ち付けられた衝撃で、地面は蜘蛛の巣状にひび割れている。それだけで、衝撃の大きさが分かるだろう。そして、地面に頭が半分めり込んでいた。生きていたのが不思議なくらいだった。
「どんな強さでやったらこんなになるんだよ」
「本当に10歳なのか?」
「魔族ってことはないか?」
「いや、冒険者登録の時に、ギルドマスター直々に相手をしたらしい」
「まじかよ!?」
観客も試合の衝撃から立ち直り興奮を思い出したかのように沸いた。
控え室に戻ったミナリスは明らかに避けられているのを感じる。
(なんで避けられてるの?)
『お前が圧倒的に強いことが分かったからだ。反感を買わないように関わらないようにしているのだろう』(そういうものなの?)
『人間とはそういうものだろ』
決闘試合は人数によって戦う数が変わる。
例えば、10人程しか参加していなければ、二回程しか戦わなくていいが、数十人いたならば、その分やらなければいけなくなる。そして、基本的に日を跨ぐことはない。そのため、魔力の配分や疲労度などを考えて試合をしなければならない。その点、ミナリスは魔力も体力を気にしなくていい。
そして今回の決闘試合は、参加人数16人。中々に多い。多すぎるときは、団体で戦わせ生き残った者がトーナメントに行けるが、今回の場合はそこまでは多くない。
だからミナリスが戦う回数は、4回だ。残り後2回ということになる。
『それでは行くか』
(うん!)
ミナリスが対戦者のデイバーを一撃で倒したのは、観客に強さをアピールしたかったわけではない。この後にやることがあったからだ。
幻惑魔法を掛け姿を消す。
ミナリスが向かった先は、貴族街だ。
二大公爵であり、ミナリスの親の仇であり復讐相手である、ワァルモーゼ公爵の別邸に行くためだ。
公爵ということもあり、自分の領地を持っているが、帝都にも自分の屋敷を持っている。そして、まずはどこに住んでいるのか、など忍び込む方法を考えておかねばいけないため、今から探し、出来れば忍び込んでみようと、思っているわけだ。
『行くのはいいが、どうやって見つけるのだ?』
「あ、どうしよっか……」
ぎぎぎぃ!!と止まる。
全く考えていなかったのだ。
「え、と、えとえと……」
『とりあえず落ち着け。貴族街ならば、帝都に暮らしている貴族もいるはずだ』
「確かに!」
『そやつらから情報を得ればいい』
「なるほど!さすがドュルジだね!」
分からないなら、分かるやつに聞けばいい。当たり前の答えだ。もちろんただ正面から行っても話を聞いてもらうどころか追い返されるだろう。
なら、やることは一つ。
「忍び込もう!本命の前の試しで!」
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