77話 ミナリス、追いかけます!!
一回戦が終わり、控え室に戻ったらひと悶着あったが、ミナリスは特に気にした風はなく、二回戦に向けて準備をしていた。
待っている参加者にはいくつかの出来ることがある。まずは、控え室で自分の試合が来るまで待っていること。もう一つは、他の参加者の試合を見ること。もちろん、次が自分の番だったりしたら控え室にいなければならないが、試合に間に合えばいい。
ミナリスは、後者だった。ただ、目的は違うが。
ミナリスは、観客に紛れ観戦していた。幻惑魔法を使って。試合が終わり、次の試合まで、食べ歩きをしようとしていたが、ミナリスの試合を見ていた住人に声を掛けられ、あっという間に囲まれたからだ。最初は気をよくしていたミナリスもあまりにしつこいため嫌気がさし、ついには魔法まで使って逃げ出した。
というより、ドュルジがそう提案しなければ、囲んでいる人たちを皆殺しにしていた。魔法を使う準備までしていた。危うく、帝都で殺人事件を起こすところだった。人が多い街中で。
そうなれば、ワァルモーゼに近づく前に指名手配なりされて堂々と街中を歩けなくなる。
それで、観客に紛れて観戦している理由は、復讐とは関係なく、単純に強い参加者を調べるためだ。ミナリス自身が楽しむために。でも、それが、叶わないことはミナリスがよくわかっていた。なぜなら、対して(とはいえ、100近く上がっているが)レベルが上がっていないのに、ステータスの桁が2、3つは違う。
一回戦に戦った相手がAランク、ギルドマスターがSSSランク。人類最強クラスのSSSランクでも、あの程度だった。まだ、奥の手があったとしても、ミナリスは魔眼一つ使っていない。
それでも多少は戦える相手がいればと思っての観戦だ。
『あいつはどうだ?』
「だめだよ。だって完全に素早さだけしか取り柄がないじゃん」
『ふむ。だが、魔法も使っているぞ』
「そういうことじゃないよ」
今戦っている参加者も名のある冒険者らしいが、全く脅威を感じない。
普通にしては、早いのだろうがミナリスからすれば遅すぎる。文字通り止まって見える。そこに、魔法が加わったからと言って、強くなるわけじゃない。今も、水魔法を使って防御と攻撃をしているが、その間足が止まっている。早く動きながら、魔法攻撃が出来ていない。
「ね?全然使いこなせてないでしょ?」
『確かにな』
声に出して喋っているが、幻惑が効いているため周りには聞こえていない。
その時、一瞬視線を感じた。
「っ!」
バッと視線を感じた方向を見る。そこには、フードを被った何者かがいた。
『ミナリスも感じたのか。しかし、このレベルの魔法を看破出来るとは、なかなか強そうだぞ』
「うん!絶対逃がさない」
ミナリスが見た瞬間フードを翻し人の波に紛れた。魔力を追おうともフードに隠蔽効果があったのか魔力を感じることが出来ない。しかし、色が視えていれば関係ない。
『どこに行ったのか分かっているのか?』
「うん!こっち!」
迷いなく進んでいるミナリスに疑問を持ったドュルジは、迷った挙句聞くことにした。
『……どうやって魔力を感じない相手を追っている?』
「えっとね、昨日あたりからから、人を見ると色が視えるんだ!それは、人それぞれ違っているから!」
『なるほど?……なに?』
「魔力は隠せてもその色までは隠せないようだし、覚えたから!今度はこっち!」
二手に分かれている道を右に曲がる。
『それって、(魔力ではない。それなら、魂を色として認識しているのか!?)』
「なんか言った!?」
『そこを、左だ』
「分かってる!」
そのまま追うこと数分。最初から姿が見えずに追いかけているため、中々追いつけなかったが、徐々に近づいて来ている。
『ん?街並みが整ってきていないか?』
「へ?ほんとだ!」
ミナリスは知らずに貴族街に入り込んでいた。もちろん入口には、兵たちが門番としているが、ミナリスは、追ってきていたため正規の門を通らず裏道というべきところを通っていた。そこには、門番もおらずすんなり入れたわけだ。
すると、大きな屋敷の前で止まっているのが見えた。
「やっと追いついたよ!」
「…………」
「それで、君は何者なの?参加者より強そうだね!」
「…………」
黙り込み、一切言葉を発しない。何かを待っているように。
「ねぇ、黙ってないで話そうよ」
何度も話しかけたが、反応がない。ただ、戦闘態勢にはなっている。
また、話しかけようとしたとき、ミナリスは首を逸らす。
ミナリスの頭目掛け、投げナイフが飛んできた。
「隊長、こいつですか?」
「ああ」
追いかけていた人物と同じようなローブを着た人物が3人増え、4人になった。
恰好から見るに、全員男のようで、多分暗部の人間だろう。
「抹殺対象の少女、ですか。確かに反射神経は良さそうですけど、全く強くなさそうですよ?」
「見た目で侮るな。あのお方が危険視しているのだ」
「了解。隊長の命令には従います」
自分の武器を構え、殺気を募らせる。
『暗部が殺気を発したらだめだろう』
「やっと喋ってくれたね!やっぱり仲間をまってたのかぁ。それに、あの方ってのに気になるね!」
必要以上に会話をしないのか、あれ以来口を閉ざし、徐々に距離を詰めてくる。
「ま、関係ないか」
ミナリスはおもむろに地面を殴りつける。
すると、地面から灼熱の炎が噴き出し近くにいた一人を包む。
「があああ!?熱い!?熱い!?たい、たいちょう……たすけ…………」
仲間が死んだのに同様一つしなかった。
「そういえばまだ、あれ使ってなかったなぁ」
『あれを使うのか?』
「うん、初めて使うけど……」
ミナリスの雰囲気が急に変わったことに危険な何かを感じたのか、声を発さず連携をとっていた暗部の者たちが、隊長の怒号でとびかかる。
「今すぐ殺せ!!!!」
ミナリスは、一言そのスキルの名を言う。
「不浄世界」
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