71話 ゼロの世界
sideレイン
今俺の前には、頭が4つある犬の獣がいる。
全長5m程の体躯で、口から涎を垂らしながら、俺を食べようと殺意を向けてくる。
そして、この獣がレインの転生した世界に解き放たれた場合、わずか数日で滅びるだろう。それも人間だけじゃなく、魔族もエルフも獣人も竜も龍も全てだ。
それほどの存在だ。そして、いまレインはどこにいるかというと、自分の世界に戻ってきている。つまり、ゼロの世界ということだ。
『グルルルルルル!』
威嚇しながら睨んでくるが、すぐに攻撃に移った。
地面を踏みしめ、大きな口を開け俺の頭から食べようとしてくる。
しかし、
「消えろ」
ただその一言で、圧倒的な威圧感を放っていた獣が存在ごと消えた。
「ったく、久しぶりに帰ってきたと思ったらこれかよ」
「主、どうですか、久しぶりの自分の世界は」
「まあ、やはりここには、虚無のエネルギーが満ちているな。ここなら、普段抑えているもの開放してもいいからな。とはいえ、なんだってあんな雑魚が上層にいるんだ?」
さっき消した獣、ガルムは下層にいる獣の一匹だ。あの世界では、ありえない程の力を持っているが、ここでは、ただの雑魚に過ぎない。
ゴブリンみたいなものだ。
「主がいなくなり、パワーバランスでも崩れたのでしょうか?」
「それもおかしいだろう。あいつらがいるんだぞ?」
「確かに、ならば、ガルムが強くなったのでしょうか?」
「それはないだろう」
ここでは、力のバランスは絶対だ。
下層、中層、上層という風に分かれており、もちろん上層に近ずく程強さが跳ね上がっていく。
そして、俺たちがという言うより、俺の住居がある場所は最上層だ。そこには、獣ではなく人が住んでいる。
国は一つ、俺を王としておく国ただ一つだ。住んでいるものは、俺に創造された者が暮らしている。神がおり、人間も暮らしている。だが、神が人前に姿を現すことはほとんどないが。
俺が今いる場所は、上層。ガルムがいるはずのない区域だ。
なのに、いるということは、何かが起きた、または変わったということだろう。
「なら、一気に飛ぶか」
「もう、よろしいので?」
「ああ、こいつらも変わっていないようだしな」
ここに来るまで、上層の獣を相手にしていたが、俺が別の世界に遊びに行っている間に強くなっているかと思ったが、変わっていなかったため、興味が失せた。
わざと転移を使わず歩いていたが、もういい。
その場から音もなく消え、現れた場所は、玉座の間だ。
上段にある玉座に向け歩みを進める。そして、座る。
すると、数秒もせぬうちに次々と気配が現れる。その数、優に1000を超える。
1分経つ頃には、揃い終わった。
声を合わせ言う。
『ゼロ様、お帰りなさいませ!!!』
その言葉には、一切のブレもなく、心からの言葉だと分かる。
それに対し、俺は鷹揚に答える
「ああ、今戻った。それで、変わりないか?」
俺の問いに、前にいた髪を腰まで伸ばした美しい女性、アウラが代表して答える。
「はい、ゼロ様がおられない間、きちんと治めてまいりました」
「そうか、なら、なぜ、ガルムごとき雑魚が上層にいるんだ?」
「!それは、ラルズが中層、上層に渡り、狩りつくしたためであります」
冷や汗を垂らしながら答える。別に起こっているわけではないが、俺の気分を損ねたとでも思ったのだろう。
これまでの会話も皆跪いて聞いている。立っているのは、セバスのみだ。俺の後ろに控え、立っている。
「そうか、別に起こっていない。それに、そろそろ面を上げろ」
「はいっ!」
アウラが元気よく顔を綻ばせ、返事をする。アウラだけではなく、他の面々も嬉しそうに顔を上げる。
「さて、今俺は、ある世界で遊んでいる途中だ」
「存じております」
「それで、しばらく離れる。それからまた戻って来よう」
「なら、わたーー」
「いや、お前たちは誰も連れて行かん」
アウラが自分も連れて行ってほしい、と言いだしたが、話を途中で切り答える。
「お前たちの力は強すぎる。もちろん、この世界にいるもの全てに言えることだ。それほどまでに、弱い世界だ」
「…………」
皆黙って聞いている。俺は続けて言う。
「世界のレベルは全く高くないが、面白い人種が多い。俺を楽しませるものたちがな。そんなに時間はかからないだろう。それまで待っておれ」
「分かりました。それまで、この世界を統治行きます」
「頼んだぞ」
唇を噛み、答える。だが、俺の頼んだという言葉で、ちょろい程喜ぶ。
それで、大丈夫なのか……。
「では、行ってくる」
『いつまでも、待っております!』
示し合わせたかのように言う。
俺は、転移をし、ウィルムンド王国に行く。もちろんセバスもついて来ている。
「どうでしたか、久しぶりの皆は」
「ああ、相変わらずだな」
「そうでございますね。主に会えて皆嬉しく思っていましたね」
「それに、俺がいなくてもちゃんと統治できていたな」
王がいなくなっても、大丈夫な国は一番いい。俺が遊び惚けてもいいからな。
それは、そうと、
「暇してたな」
「中層、上層の獣共を狩りつくしているほどですからね」
その数億はくだらない。時間が経てば自然と湧いてくる。それを狩りつくすとは、もちろん一人ではないだろうけど、とんでもないことだ。
「さて、挨拶も終わったし、こっちに集中するか」
「どうなっていますかね?」
「さてさて、おお!」
ウィンドゥを開き、悪魔契約者のミナリスを視る。
そこには、ついに親の仇がいる帝国の首都に着いたところだった。
「これから、地道に近ずいていくのか、強襲をかけるのか。どっちかな」
本当にこの世界にきて全く飽きないな。
面白いやつが多い。
「諦めてくれるなよ?」
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