65話
「あ、どうしよ…………」
ミナリス、消えた壁を茫然と見ながら、呟く。
軽く試して、見ようと思って使っただけなのに、跡形もなく壁が消え、外の景色が見えている。
『だから、待てと言っただろう』
「ごめんなさい」
しゅん、としながら素直に謝る。
しかし、誤ったとしても、消えた壁は戻らない。
「どうしよ。壁消えちゃった」
『逃げろ』
「え、いいの?」
『今回は仕方ない。正直に言えば徴兵に呼ばれるだろう』
「わかった!……ごめんね、宿のおばさん」
最後に一言宿に向けて謝り、消えた壁から飛び降りる。
そのまま、街を覆っている城壁(約5m)を飛び越えて逃げる。
「あはは!なんか、楽しい!」
夜逃げ同然の行為に何か楽しくなったのか、笑い声を上げながら走るスピードを上げるミナリス。
『静かに……いや、せっかくだ。もう一度街に戻れ』
「え!」
凄まじい砂煙を立てながら止まる。
もうすでに、街から数キロは離れているが、ミナリスのステータスからすればすぐだ。
「どうして?」
『もうあの街に滞在しないなら、あの場所で魂を稼げ』
「なるほど!」
ドュルジが言っているのは、町に戻って、人を殺してこい、と言っているのだ。
確かに、あの街はミナリスの故郷よりも何倍も大きい。つまり、人が多いってことだ。
数百、いや、数千は殺せるだろう。魔法を広範囲で使えば街すら潰せるだろう。
「ねぇねぇ、ドュルジ」
『どうした?』
「あの街を魔法を使って全員殺したらダメなの?」
『…………ミナリスはそれでいいのか?』
「何が?」
『そうか、そこまで……』
ドュルジの声が哀れみを含んでいる。
しかし、ミナリスにはいつもと違うな〜くらいにしか思っていない。
『いや、分かった。今までは、国に追われて、強者が出てきたら対処できない可能性があったが、魔眼まで手に入れた今なら、大丈夫だろう』
「ということは!」
『ああ、あの街を滅ぼそう』
「やった!」
街一つを滅ぼすことに喜ぶ10歳の姿がそこにあった。
もうすでに、何の魔法を使うのか楽しそうに考えている。
その間も、街に向けて走っている。
「ふぅー着いた!」
『どうやって殺るのか決めたのか?』
「うん!やっぱり、訓練は実戦の中でした方がいいと思うんだ!だからね、何人かは街の中に入ってやりたいなって!」
『そうか、ならば行くか』
「よぉし!やるぞぉ!」
もう一度城壁を越え、街の中に入る。
そのまま、家の上を伝って路地に行く。
そこには、やはり目的の者たちがいた。
「みっけ」
小声で言う。
ミナリスが、路地に入ったわけは、そこには、数人ほどたむろしているものがいた。
今の時間は、夜中だ。日本風に言えば、不良が夜に集まって何かしているみたいな感じだ。
「まずは1人目」
バレないように、静かに1人目の背後に立ち、口を押さえ首を短剣で掻っ切る。
「ごぽぉ?」
周りは気付いていない。
「なんかさぁ面白いことないかぁ?」
「ニールはなんかあるか?」
「俺か?別にないな、また、冒険者でもやるか?」
「冒険者、ね。この街にギルドないじゃん」
「それな。めんどくせぇしな、街に行くの」
そうなのだ。大きな街だが、冒険者ギルドがない。なぜなら、Fランクの魔物が数匹出るくらいだからだ。それなのに、徴兵がいる理由は、魔物が少ないから盗賊が集まりやすいため、この街が狙われることが多かったからだ。
「だよなー。また襲うか?」
「次徴兵に捕まったら終わりだぞ?」
「何だ?怖いのか?」
「んなわけねぇよ。ただ、捕まったらめんどくせぇだろ?」
「ちげぇねぇ」
声を上げながら笑う。
前に一度、捕まった者を知っているからだ。
「そう言えば、なんか少なくね?」
「あ?何が?」
「人数だよ」
「あー確かに……っておい!」
「うるせーよ、大声なんか出して」
「いいからあれみろ!」
「何だっ….ひっ」
「おい!ガミ!死んでんのか!?」
「誰がやったんだよ!」
「出てこい!くそがっ!」
ミナリスはずっと、屋根の上に隠れながら狙っていた。
話しているところで、あまり喋っていない者を選んで一人一人殺していた。それも暗殺者のように、口を押さえ込んで声が出ないようにして、首を一気に掻っ切るようにして殺していた。
殺しているのがバレたミナリスは、自分から出ていくことにした。
「あーあバレちゃった」
「誰だ!」
ミナリスは、屋根から飛び降り、姿を表す。
「何!?」
ミナリスの姿を見た男たちが驚愕の表情を浮かべた。
ミナリスが殺したのは、3人だ。それをしたのが、こんな少女だと言うことに、一瞬呆然とするがすぐに、下卑た笑みを浮かべミナリスに近づいていく。
「お前がやったのか?」
「そうだよ?」
「ククク、なら、反撃してもいいよな?」
ミナリスまで、手を伸ばせば届く距離に来た。
しかし、ミナリスに手を伸ばした瞬間に腕が落ちた。
「へっ?あ、あ、あ、う、腕があああ!?」
「サンガ!くそ!お前らやるぞ!」
「う、腕が、助けてくれ!助けーー」
「うるさい」
いつの間にか手に、黒刀を持っていた。それを無造作に一振りし、男の首を斬る。
それに、少しびびったが女にそれも子供にやられたまんまだとプライドが許さないのかやめることが出来なかった。
「獄炎ー死落鳥」
真っ赤な炎の鳥が現れ、空に向けて飛び、男目掛け急降下する。
「うわああああ!熱い!あつ……?あれ?熱くない?」
熱さを感じなかったことに不思議そうに首を傾げていたが、急に力が入らなくなったかのように足から崩れ落ちた。
そして、炎の鳥は、二人目目掛け飛び立ちまた急降下する。
さっきの光景を見ているため、避けようとするが、あまりにも速ぎるため避けれずに右足にくらう。それなのに、さっきの男と同じように崩れ落ちた。
「な、何をした!?」
「これはね、死落鳥って言って、体の中を焼く魔法なんだよ。それに、掠っただけでも焼かれるから気をつけてね」
そんなことを言われても、無理なのは分かっている。
残り、後3人。
面白い!
続きを読みたい!
と思ってくれた方評価して貰えると嬉しく思います!
☆☆☆☆☆を貰えるととても喜びます!お願いします!!!
そして、評価してくださった方ありがとうございます!