63話
少女の魂は黒く染まって行く。
「ぎゃあ!」
「くそっ!なんなんだよ、お前!」
「この、化け物が!」
黒い剣が空を走り、男たちの首を刈る。
黒い鎌が首を刈り取る。
黒い刀が数度振られ、屈強な体がバラバラになる。
合計、148人の人を殺した少女。ミナリスは、黒刀についた血を払い、鞘に納める。
「ドュルジ!このかたなって言うのすごく斬れやすい!」
『……我が使っていた武器だ。その、黒鎌も黒剣も瘴気を凝縮したものだ。そして、瘴気の扱いに慣れていけば徐々に使える武器も増えていく』
「へぇ〜、それも、ドュルジの能力?」
『そうだ』
契約時に得た力の使い方は分かるが、もちろん全部が分かるわけではない。そして、すぐに使えるものでもない。
だが、ミナリスは、ドュルジの想像を遥かに超えて使いこなしていた。
物覚えがいい、そんなレベルの話ではなかった。元々、魔眼も魔力が大量にあれば得ることが出来るわけでもないし、ただの人間が瘴気を扱えるわけがなかった。
瘴気を言うのは、人間が触れるだけで、狂っていますようなもので、それを武器にするなんてことあり得るわけがなかった。悪魔と契約し、その力を使えるとしても。
その瘴気の塊とも言うべき武器を次々を使いながら、敵を倒していく。
「今どのくらい?」
ミナリスが聞いているのは、どのくらい魂を集めたのか、だ。
『9万8318だ』
「やっぱり遠いね」
数字だけ見ると、とても少なく感じるが、その実1682人もの人間(魔物を含む)を殺していることになる。
次の街に行くまでの道中、現れた盗賊を殺し、その中で手加減することも覚え、アジトを聞き出し、ついさっきアジトに乗り込んで、皆殺しにしていたところだった。
ドュルジからすれば、日に日に強く、残虐になっていくミナリスを危ぶんでいた。
もう既に、4分の1が黒く染まっていた。
『ミナリス。体に違和感などないか?』
「違和感?特にないよ!」
『そうか……』
「あっ!」
『どうした?』
「前に比べて、反応とかが良くなったんだ〜。これって、私が強くなっているってことかな?」
『…………』
それを聞き、眼を凝らす。
すると、ミナリスが悪魔に変質しかけているのが分かった。
『っ』
(まさか、我の力を引き出し過ぎたのか?いや、そんなことで悪魔になどなれん。……やはり瘴気のせいか……肉体ではなく魂レベルで変質し出している。このままいけばそう遠くないうちに……)
「……ジ!ドュルジってば!」
『ん?どうした?』
「もう!さっきから読んでいるのに無視するなんて!」
『少し考え事をしていた。……それで、どうかしたのか?』
「もうすぐルシンティアに着くよ!」
『ルシンティア?ああ、今向かっている街の名か』
「そうだよ!すごく大きんだ!」
『ほう。どのくらいだ?』
「うんっとね、とっても!」
『それでは分からん』
大きいと言われても、どれだけ大きいのかは分からない。
だが、ミナリスの感じからして、故郷の町よりは圧倒的に大きいことは分かる。
それに、ドュルジはあることが気になり、それどころではない。
「とにかく、いっぱいいっぱい人がいるの!これでたくさん殺せるね!」
にぱっと笑い、可愛らしい笑顔を浮かべる。頬に返り血をつけながら。
「今度は強い人がいるといいなぁ〜」
『……』
この歳にも関わらず若干戦闘狂になりかけている。
それを、眺めながらドュルジは思う。
(ああ、親とはこう言う気持ちなのか)
と。
sideレイン
「ぷっ、ククク。悪魔が本気で入れ込んじゃいけんだろうが」
「そう言われながらも顔は笑っていますよ」
「面白いからな」
レインは、ミナリスとドュルジの会話を聴きながら笑う。
悪魔とは原来、人を誘惑し陥れる存在だ。それが、人間の少女に入れ込み、親の気持ちのようなものを感じるなど面白くないはずがない。
「しっかし、あの少女素晴らしい逸材だな」
「そうですね。このままいけば、魔人になるのは時間の問題ですね」
「ああ、それに、もしかすれば半悪魔にもなりそうだ。やはり、魔力がほぼ無限というのは、大きなアドバンテージだな」
「瘴気までも使いこなそうとしていますし。ですが、これは手を貸したことになるのでは?」
レインは以前この2人には手を出さないと言っていた。
しかし、セバスの物言いからすれば、レインが何かしらした、と言っているようなものだ。
「何を言っているんだ?何もしていないではないか」
「…………」
「神の御心ってやつだ」
「左様で」
実際に、レインは何もしていない。
ただ、レインが面白そうだと思ったことが、その想いを汲むため世界が動いただけだ。
普通では扱うことが出来ない瘴気を扱えるようになったり、急激に魂が変質したり、そう言ったことがたまたま起こっているだけだ。
「さてさて、ミナリスはどこまで行けるかな?」
面白い!
続きを読みたい!
と思ってくれた方評価して貰えると嬉しく思います!
☆☆☆☆☆を貰えるととても喜びます!お願いします!!!
そして、評価してくださった方ありがとうございます!