59話 復讐者誕生
本作には、神や悪魔が出ますが、既存のものと違うこともあるかもしれないので、そのへんご理解下さいませ!(笑)
神は人を助けない。
人は危機的状況、絶望的状況になると、助けを求める。
それは、仲間だったり、知らない誰かだったりするが、一番は、神に助けを求めるだろう。
だが、神が直接助けることは、ない。
神に求めても、祈っても、助けてくれないとなれば、誰に求めるか。
悪魔だろう。
過去にも、悪魔に助けを求め、それに応じた悪魔が、願いを叶えた、という事例はある。
悪魔は契約を守る。だが、契約するには代償が必要だ。願いを叶えるために、魂をもらうというのが、有名だろう。
そして、ここにも1人、絶望的状況に嘆き悲しみ、助けを求める人物がいる。
★★★★★
sideミナリス
年齢にして、10歳程の少女が街を出て、森に入る。
息を切らしながらも、決して歩みを止めずに、走り続ける。
息は切れ、心臓はバクバクと破裂しそうな程高鳴っている。
地面に落ちている葉っぱや、小枝に足を取られ、今にも転けそうだ。いや、膝や洋服を見ればもう数度こけた後だろう。膝と掌には血が滲んでいる。
「はあ、はあ、はあ……っだれ、か……!」
小さなかすれた声で、助けを必死に求める。
肺は必死に酸素を求め、心臓の音が頭から聞こえてくる。
しかし、少女は、走り続ける。
なぜなら、立ち止まれば、自分が死ぬことが分かっているからである。
「神様……!ミナを助けて……!」
必死に神に助けを願う。
しかし、少女の淡い願いは、無残にも叶えられることはない。
「きゃっ!」
これまで走って来たことにより、体力はとうに底を突いていた。それにより、小さな歪みに足を引っ掛け倒れてしまった。
そこへ、少女が逃げていた元凶の声がする。
「もう終わりか?いい加減諦めろ」
諦めるよう言い聞かす。そこへもう一つ声がした。
「ミナリス、お前が逃げれると思うな」
「兄者、もう殺そう」
「そうだな。万が一にも逃げられても困るしな」
呼び方から察するに、この2人は兄弟だろう。
兄の方が、どこからともなく剣を取り出す。弟の方は、腰に挿してあった短剣を抜く。そして、少女ーーミナリスに近く。
「ひっ」
小さく悲鳴を上げる。
それも仕方ない。まだ、10前後の少女が大の男に迫られるだけでも恐ろしいのに、武器を持ち、明らかな殺意を持って、自分を殺しにかかっているのだ。この状況で、怖がらなければ、感情がないのか、状況の意味がわかってないのか、この状況を跳ね返すだけの力があるのかのどれかだろう。そして残念ながら、ミナリスには、目の前の2人を殺せつだけの力はなかった。
「こ、こないで……!たすけてよぉ……おかぁさん……!」
そんなことを言っても助けがこないことは、よく分かっていた。
なぜなら、
「お前の親は殺しただろ」
「ッッッ!」
目の前で、父親も母親も殺されていた。2人の犠牲により今まで逃げ続けれたと言ってもいいだろう。
しかし、現実は、ただの少女であるミナリスには酷すぎた。
目には涙が滲み、溢れ地面に落ちる。
「さて、そろそろ死んでもらおう」
ぺたん、とお尻を地面につけ、後ろに下がる。
しかし、足には重りが付いたように動かない。恐怖に体の力が抜けているからだ。
それでも、助けを求める。
「誰でもいいから、ミナを……ミナをたすけて!」
「だれも助けになんてこない」
「そうだ。兄者と俺から逃げることは不可能だ」
剣を振り下ろせば易々とミナリスの細い首を落とせる距離だ。
その時、2人にも、そして、ミナリスにも予想外のことが起きた。
兄が剣を振り上げた時、漆黒の光がミナリスを包んだ。
突然のことに、兄弟2人は後ろに飛び距離をとった。それが、後悔するとも知らずに。
漆黒の光に包まれながら、ミナリスの頭に声が響いた。
『お前か?助けを求めたのは?』
「だれ……?」
ミナリスは、突然のことに驚き、先のことも相まって、頭に直接声が聞こえたことに恐怖を感じる。
『我は、ドュルジ。悪魔だ。それで、お前か?』
「私を、助けてくれるの……?」
『お前は、力を望むか?』
「欲しい……!お母さんとお父さんを殺したあいつらを、殺せるくらいの力が……!」
『ならば契約だ。お前の望む力を与えよう。代償は10万の魂だ』
「うくっ……うぅ……」
漆黒の光がミナリスに入り込む。異物が入ってくる感触に、顔を歪め耐える。
「何が起こった!?」
「兄者!この魔力は!?」
ミナリスから放たれる圧倒的魔力に2人が気圧され、踏み込めない。
光が全て吸い込まれ、ゆらゆらとミナリスが立ち上がる。
「力が……!」
今までにないくらいの力を自分のうちから感じ、驚く。しかし、次の瞬間には、普通の少女では絶対にしないようなニヤリとした笑みを浮かべる。
「この力があれば……こいつらを……!」
『っ!?』
ギンッと睨むと、2人が息を飲む。
ミナリスは、悪魔との契約により手に入れた力の使い方を自然と理解できた。右手をスッと前に出す。
すると、黒い炎が現れた。それを、兄の方目掛け飛ばす。
「ッッッッ!!!」
「え?」
悲鳴すら上げることが出来ずに、燃え尽きた。骨すらも残らず、ものの数秒で人が消えた。
面白いと思ってくれた方評価して貰えると嬉しく思います!
☆☆☆☆☆お願いします!!!
評価してくださった方ありがとうございます!