58話 人間の業
sideレイン
「いやーよかったよかった」
自室に戻ったレインは、先のことを思い出して思わず微笑む。
「ああ言うさっぱりした、復讐もいいな」
最近は、戦争のことしかあまり考えてなかったけど、一度戦争を起こしたことによって、渇きが潤されつつあった。それにより、ほかのことにも取り掛かれるようになり、今回の復讐劇を起こした、と言うわけだった。
よく、「復讐はなにも生まない」だとか、「復讐は虚しいだけ」だとか、言っている奴がいるが、そんなのは自分がそれほどの絶望を味わったことのない者が言う、戯言だ。
「やはりこう言う世界だ。裏切り裏切られと言うものに事欠かない」
日本ですら、あったんだ。文明レベルの低いこの世界では、余計だろう。
「もっと、こんな感じのやつに力を与えてみるか?それとも……適当にばら撒いてみるか?」
突発的に力を手に入れた者が考えるのことは、大体相場が決まっている。
自分が最強だと思い、世界征服やら何やらしたり、英雄、勇者に憧れるか、力を隠しひっそり生きようとするか。大きく分けて2つくらいだ。
支配する側になるか誰かの元に下るか。
それは、一度別の世界で検証済みだ。
最初は、急に手に入れた力に怯え、恐怖し、その力に驕る。その時は面白かったから、いいところで、力を取り上げてみた。
そしたら、階段から転げ落ちるようではなく、足元の地面が消えたように垂直に落ちていった。
「あれは面白かったな。自分の力が無くなったのを必死に隠そうとしていたけど、隠し通せるわけでもなく、最後は裏切りられて殺されたからな。ほんと傑作だった」
思い出し、笑い出す。
「しかし、何でだろうか。力を持つと、英雄に憧れ、誰かに使われる」
そんな者もいた。国に仕え、必死に国のため国民のために、身を粉にして戦った末に、敵がいなくなれば逆に危険な存在として処分される。それが主な流れだ。
魔王とか悪の親玉を倒せるってことは、それ以上の力を持っていることに他ならない。その力を危険視する。今までは、頼って来たのに、それが自分に向くかもしれないと言うだけで、排除しようとする。
「しかし、それが人間だ、そう言うふうに創ったからな」
もし、もしも、完璧な完全な人間を創ったとしたらどうなるか。
なにも、失敗せず、争い、ちょっとしたいざこざすら起きず、とても退屈な世界だろう。
確かに、人は完全を目指す。それは、自分が不完全だから目指すことであり、その過程が面白い。
実際、そんな世界も創ってみたが、ほんとつまらない。
皆が皆、正しいことをし、間違いを犯さない。
「人には、心があった方がいい。それがなければ、ただのロボットだ」
「さてと、復讐者のことは、後で考えるとして、まずは、あいつらのことだ」
あいつらとは、魔王軍のことだ。
きちんとしっかりと、侵略していっている。そのことに危機感を持った国が同盟を結び出したり、人族の国が団結し出した。他にも、獣国や聖国にも同盟を持ちかけたりしている。
獣国は、その名の通り、獣人が治める国だ。獣王と言われる、一番強い者が王になる国だ。獣人、獣と人が混ざったような見た目をしているため、人族の中には、排他的な者もいるくらいだ。それを差し置いて、同盟を持ちかけるくらい今の状況に危機を持っている、と言うことになる。
聖国は、聖王と言われる者が治める国だ。聖属性の魔法に適性のある若い女性が聖女などと持て囃され、有名な、聖騎士と呼ばれる騎士がいる。十三使徒と並ぶ程知られている。聖国は、自分たちからは戦争を仕掛けることはないが、一度仕掛けられればその武力を知ることになり、自分から仕掛けようと言う気がなくなるような仕打ちをされることとなる。
「まあ、その実、聖女に選ばれるのは、見てくれのいい者が選ばれ、ただの偶像のような者だがな」
物語にあるように、神から信託を受けれる、なんてことはない。そんなことがただの人間にできるわけがない。
「しっかし、同盟を組むのは、自国では対処できない国同士が結ぶんであって、いくら使徒が減ったとしても、帝国は同盟に関しては無視か」
レインの考えとしては、定刻まで団結し出したら、魔族が強くなったとしても、分が悪いだろうと踏んでいた。
今この現状が、一番いいパワーバランスであり、戦争が長く続く力関係だ。
そのため、今の状態が長く続けばいいなと思っている。できれば数十年単位で。
「次は、いつかな?」
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