56話
sideレイン
「あははははははっ、くふふ、ハハハハハハハハハハ!」
俺の笑い声が部屋に響く。
俺がこれ程笑っているのは、大きく状況が動いたからだ。
街が何個も滅んだ。それも、魔族によって。
急に攻撃された街には、準備など何もしていなかったがため容易く滅ぼされた。常駐していた軍では守ることも出来ずに蹴散らされた。
これにより、国一つ、街数個が魔族により占領されたことになる。
俺は、戦いが起こったならば、テレビに映るようにしているため、リアルタイムでその争いを見ていた。魔族が街を襲撃するにあたって準備しているところから、襲撃が終わって占領するところまでたっぷりフルで見れる。
「いやー笑った、笑った。久しぶりにこんな笑ったわ」
「主様」
セバスが、お茶を差し出してくる。
それを受け取りながら、またさっきの画面に戻す。
「ここ、ここ。こいつら馬鹿だろ。戦争が始まったってのに、準備すらしてないなんて、平和ボケか?日本じゃあるまいし」
「そう言えば、地球の方で動きがあったようですよ」
セバスにそう言われ、眼を飛ばす。
すると、確かに物資の動きが通常の10倍程に上がっている。
「おお!戦争が始まるのか!しかし、むむむ」
「何を迷われているので?」
「地球に行くか、そのままこっちにいるか……悩ましい」
むーむーと腕を組みながら悩む。その時閃いた。
「地球とこっちを合体させたら!」
「それだと、歪みが」
「分かってるよ、でも俺がやれば済むことだしな〜。魔法対化学って面白そうなんだがな」
「それでしたら、37世界とがよろしいかと。あそこは、化学が発達しすぎた世界ですので」
「あそこは、ダメだろ。完全に力の差がありすぎる」
「それもそうですね。外部的武装で神にすら届く力を手に入れた者たちがいますからね」
神に届きうる力を手に入れる世界の者たちはいる。
この世界は、上位の世界だが、その中でも上の下だ。37世界は上の上、相手にならない。なんとか戦えるのは使徒などこの世界でもトップクラスの強者だけだろう。
「んじゃ、ちょっと出かけてくる」
「おや、出かけに行かれるので?」
「ああ、少し面白いことが起こるからな。直接出向く」
「……直接、ですか?」
返事は返さず、笑うことで答える。
セバスは何も言わずに一礼する。
俺は、一目向けそのまま転移する。
★★★★★
sideローガン
「おいっ!こっちに持ってこい!」
「はい!」
俺は、銀狼盗賊団を率いている。
今日だけは失敗してはいけない。あるお方との取引のためのブツを奪われたり無くしたりしたとしたら、殺されてしまう。
「おいそこ!どこにもぶつけるなよ!」
「はい!お頭!」
木箱が30個、木箱1つで20キロもの重さがある。
それを、団員2人で丁寧に持ち運ぶ。
銀狼には、50人程の団員がおり、最近入った新人が5人、合わせて55人になる。
「お頭。あの、新人大丈夫ですかね」
「どうした?」
部下のジョンが小声で話しかけてくる。
しきりに周りを確認し、聞き耳を立ててないかを入念に確認した後、俺の耳に口を近づけ小声で話し始めた。
男の息が、かかり顔を顰めたくなるのを、気合で我慢する。
「新入りが怪しい動きをしているんです」
「何?本当か?」
「ええ、あいつらが運んだものを少し持ってみたところ、少し軽い気がして」
「横流し、か?」
「それは、まだ。どこに持っていってるのかまでは分からないんですが、明らかに中から引き抜いているのは、間違い無いです」
「そうか……」
本当にそんなことが行われているのなら、放っては置けない。
今回ばかりは、処分して終わり、では済まされない。
俺たち銀狼は、人数は少ないが強い。ただの街程度なら落とせるだろう。しかし、今回の取引相手は、そんな俺たちを全滅させることが出来る相手だ。文字通り失敗したら首が飛ぶ。
「お頭!」
「どうした!」
部下の1人が慌てて、俺を呼ぶ。
顔には、傷跡があり、今まで戦闘していたようだ。
「何があった!」
「ぐふっ……俺たち嵌められました!」
血を吐きながら答える。
腹を見ると、刺し傷があり剣で貫かれたのだろう。一呼吸するたびに血を吐き、体温も低くなって来ている。
「おい!しっかりしろ!」
「あ、あいつらが……!カーターたちが裏切ったんです!」
「やっぱりか……」
それだけ言うと、大量の血を吐き、目の焦点も合わなくなって来た。
「お、おかしら……か、かたき、を」
「クッ、分かった、後は任せろ」
俺の中に、怒りが沸沸と湧き上がってくる。
友を仲間を部下を殺された。それも自分の人選ミスのせいで、裏切りという形で。
力尽き、殺された仲間の仇を討つため、カーターたちを探す。
だが、どこにいるか分からないため、片っ端から探し回ろうと思った矢先、悲鳴が聞こえた。
聞こえた方向に全速力で走って向かう。
そこで見たのは、部下が後ろから剣で串刺しにされているところだった。
俺は怒りに任せ、部下を殺した奴を蹴り飛ばし、斬りつける。
「クソが!カーターテメェ何やったか分かってんだろうな!?」
「はい?お頭、まさか俺がやったと?」
「オメェ意外にいねぇだろうがよ!」
本気で切り掛かったにもかかわらず、あっさりと躱される。
そればかりか、反撃され肩に傷を負う。
「クッ、実力を隠してたのか!」
「当たり前じゃ無いですかぁ。全くおめでたいですねぇ」
「何が目的だ!」
「目的?元々俺たちは、お頭の中までも部下でも無いんですよ」
「何?」
驚愕している間に、カーターの顔にニヤつきが表れた。
俺は、嫌な感じがし、すぐにこの場から離れようとしたが、遅かった。
「囲まれた!」
「もうあなたは終わりですよ。これだけの人数からは逃げられません。それに、俺よりも弱い」
「…………」
確かに、カーターの言う通りだ。さっきの攻防で分かったが、俺の実力では、カーター1人にすら勝てない。それに、俺を囲むように、20人もの人が囲っている。その中には、銀狼の仲間もいた。
「お前は、ライジャか!お前も裏切ったのか!?」
ライジャ。カーターが来るよりもずっと前から一緒にやって来た仲間だった。
「こっちの方が報酬がいいからだ」
「そんな、そんなことで!俺の仲間を!家族を裏切ったのか!?」
「そこだよ。盗賊団だろ?何が仲間だ。何が家族だ。お前は甘いんだよ」
俺は、盗賊団で、奪い殺すが仲間だけは大切にしていた。
それが甘いことも分かっていた。それを承知で、俺について来てくれた。だが、不満を持っていた者もいたこと本当は気付いていた。
「お喋りはそのくらいでいいしょう。あなたには死んで貰います」
「クソ!」
悪態をつくことしかできない。
じわじわと距離を詰めてくる。
遊んでいるのか、絶対に逃さないためなのかは分からないが、ゆっくりと確実に囲いは狭くなっている。後、5mになった時、俺は、目の前の男目掛け駆ける。
いきなりのことに、男は戸惑ったのか反応出来ずに首を切られる。
「チッ!一斉にかかれ!」
「おう!」
俺は内心舌打ちする。さすがに、この人数は捌けない。なんとか致命傷は避けるが少しづつ傷を負う。
「オラァ!」
返り血を浴び、確実に一人一人減らしていくが、集中力が切れたのか、遂に致命傷となる攻撃を受けてしまった。
「やっとかよ」
「さすが銀狼の頭張ってただけのことはあるな」
「ったく、何人持ってかれた?」
「6人だ」
「まじか……俺らの攻撃を凌ぎながらそこまでやるか……」
驚いたような声が聞こえてくるが、俺の体は動かない。
(クソ!こんなところで終われるか!あいつらの仇をッ!)
「確実に仕留めましょうか。団の頭だけあって何をするか分かったもんじゃありませんからね」
そう言って、とどめを刺すように命令する。
唇を噛み締め、敵が打てないことに、仲間に謝りながらその時を待つ。
しかし、いつまで経っても衝撃が来ることはなかった。
硬く閉じていた目をゆっくり開ける。まず目に入ったのは、光が当たりキラキラと輝いている金髪だった。朦朧とする意識の中で、俺は、天使を見た。
「お前何者だ?」
「ふむ。死にかけか」
カーターの警戒した問いに応えることもなく、呟く。
すると、俺の体があったかいものに包まれた。
(これは…………傷が、治ってる?)
「起きろ。傷は治した」
「おま……あなたは?」
「お前は何者だ!」
遂に切れたのか、カーターが怒鳴った。
すると、
「うるさい、少し黙れ」
目の前の人物がそう言うと、カーターが地面に潰れた。
何か重い物に上から押し潰されたように。
「ぐぅ……!貴様ッ何をした!」
カーターの問いにまるっきり無視しながら、俺に対して話す。
「お前力が欲しいか?」
「何、を?」
「あいつらに復讐する力が欲しいか?」
復讐。その言葉を聞いた時、心臓が跳ねた。
仲間の仇が取れると思い至ったためだ。
三度目の問いがかかる。
「力が欲しいか?」
この問いに、力強く頷きながら答える。
「欲しい!あいつらを殺せる力が!」
「いいだろう」
すると、体が引き裂かれるような激痛が走った。
「ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
自分の喉から出たとは思えない程の絶叫が。
あまりの激痛のため叫びで、喉が裂ける。血を吐きのたうち回る。
腕がボコボコと音を立て、皮膚が裂ける。体が壊れ、治り、また壊れ、また治る。
どれくらい経っただろうか。
永遠とも思える時間の中、痛みに耐えた。痛みの欠片すら残らずさっぱりとした気分だ。
「どうだ?」
「これは……!」
自分の内から圧倒的な力を感じる。
魔力など以前の数十、いや、数百倍。ステータスもかなり上がっているだろう。
「力を与えた。これで復讐出来るだろう?」
「俺に力を与えて何がしたい?」
「暇つぶしだ」
ちゃんとした答えを言うつもりはないのか、本気なのか分からない答えを言われた。
だが、もはやそんなことは関係ない。これだけの力があれば、復讐が出来る。
いつの間にか、カーターにかけられていたなんらかの魔法も解け、動けるようになっている。
殺気立った目でこちらを睨んでいるが、自分から仕掛けてくる気はないようだ。
それなら、
「お前ら全員殺してやる!」
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