51話
sideブルムド
ブルムドの朝は早い。
早朝5時に起き、まず鍛錬から始まる。
素振り1000回、そして、魔法の練習をする。
王国最強という肩書に恥じぬよう日々鍛えている。
騎士団長として、城に行き今度は騎士団の訓練を行う。
ブルムドを慕い騎士団に入った人も多く、ブルムドのキツイしごきにも耐え着いてきている。
だが最近は、騎士団の仕事が少なく不満が募っているのを感じていた。
その理由も分かっている。
(最近出来た、暴龍騎士団のせいだ。レイン殿下の直属の騎士団らしいが…………)
暴龍騎士団。実際にブルムド自身が会ったことはない。
ただ分かっているのは、とてつもなく強い、と言うだけだ。
ブルムド自身も、この世界では強者だと思っているが、帝国十三使徒には勝てない。
前に、戦ったことがあるが、手も足も出ずに負け、生かされた。
それは、団長になる前のことだったが、強くなった今だからこそ分かる。完全に遊ばれ、実力の1割すら出していなかったと。
そして、今戦ったとしても勝てないことも。
それが分かっているため、今回の戦争は、いくら殿下の言だとしても、看過できなかった。
騎士団も暴龍のみ。人数にして僅か700。いくらなんでも少なすぎる、と。もちろん進言した。だが、王も殿下も「何もするな」といって聞かなかった。
戦争が始まり、相手に使徒が2人も来ていたことが分かり、人数の差に突出した個人戦力の差。
ブルムドも勝てるとは思っていなかった。
しかし、実際始まってみると呆気ないもので、暴龍騎士団にはたった1人の犠牲も出さずに、帝国軍をほぼ壊滅状態にしてしまった。途中使徒が出てきたが、団長と思わしき人物が瞬殺していた。
ブルムドは、戦争の状態をレイン殿下と一緒に、でぃすぷれいなる機具で見ていた。
そして、使徒が倒された時に自分の目を疑った。
女の使徒が一瞬で首が落とされ、それに激怒した男の使徒が必殺の一撃を放った。
この攻撃を自分が受けていたなら、反応出来ずにやられていただろう。その攻撃を、団長は躱すこともせず、多分、剣を一線したのだろう。多分なのは、あまりにも剣速が速すぎて見えなかったからだ。
自分では勝てない使徒をあっさりと、しかもその後に、暴龍騎士団が帝国軍を殺し回っていた。
その時に使っていた魔法もブルムドの理解を超えていた。
爆発したと思ったら、10mはあるだろうクレーターに、剣を一振りしたら目の前の敵が数百人一斉に凍ったりと、騎士団の一人一人が使途に匹敵する勢いだった。
その時の光景が戦争が終わった後もずっと頭に焼きついていた。
ただの騎士団員があの強さ、何か秘訣があると思い、ブルムドは暴龍騎士団の訓練模様を見せて欲しいとレインに懇願し、参加することになった。
そして今日がその日だ。
ブルムドが城内を歩いているとなんの気配もなく後ろから声がかかった。
「ブルムド・レイガースですね?」
「っ!?そうだが……あなたは?」
振り返り、自然と戦闘態勢になった。
しかし、相手はなんの反応もせずに佇んでいるだけだ。
敵意がないことに警戒を解き、改めて目の前の人物を見る。
容姿は整っており、年齢は20歳程。自分の半分程の年齢しか行ってないはずなのに、その佇まいからは一部の隙もない。
「あ、私は、暴龍騎士団団長です。名前は無闇に言わないようにしているのでご理解のほどを」
「了解した」
だが、そんなことを言われたら、知りたくなるのが人というものだ。
鑑定をしてみたが案の定弾かれた。
(やはり、この者も人の枠から逸脱した存在か……)
着いて来て下さい、と言われ後を着いていく。
(ん?ここは……殿下の部屋、か)
着いた先はレインの部屋の前だ。
その扉に対し、魔力を流し込み開ける。
すると、現れたのはレインの部屋ではなく大勢の声が聞こえる何処かだった。
「ここは……?」
「我々暴龍の訓練場所の一つです。ここは、個人の能力を上げるための施設で、このペンダントを」
そう言われ渡されたのは、血のような赤黒い結晶だった。
なぜこれを渡されたのか分からなかったが、スライド式のドアを開け中に入った瞬間に分かった。
「ぐっ!」
入った瞬間体が重くなり片膝をつきそうになる。
「これ、は……?」
「ここの場所は、重力を変えることが出来きます。実際にここの重力は、150倍程になっています。そのペンダントは2倍までになるように中和させることが出来る物ですね」
「なるほど、しかし、150倍、か」
「レイン様に課題が出されている者たちですね。張り切って課題の倍率まで耐えれるように訓練しているところですね。……それで、参加されますか?」
「ああ、せっかくの機会だ。まず何をしたらいい?」
「そうですね、ではmいつもやっている素振りなどがいいでしょう」
剣を渡され、いつものように素振りを始める。
数回やっていて気付いた。全てに重力がかかっているため、一回一回の重さが半端じゃない。
しかもこれで、2倍しかかかってないと言う。周りを見ると、暴龍騎士団員が重力などかかっていないかの様に訓練をしている。模擬戦をしている者を見ると、剣が見えない程の速さで振っている。
それがどのくらいすごいこのなのか、体験してみた今なら分かる。
それに負けないように黙々と剣を振り続ける。
どのくらい経ったのか。
1000回を振り終えた。
腕に力など入らず、筋肉が痙攣している。
大量の汗が顔を滴り落ち、今にも倒れそうだ。
「く、これで、終わった……!」
座り込んだ時に、拍手する音が聞こえた。
「おめでとうございます。素振り1000回、あなたのステータスでは出来るはずもなかったのですが、根性だけでやり遂げましたか」
ブルムドは大きく息を吸い、乱れた呼吸を整える。
「では、団員と戦ってみますか?」
息を整え休んでいると、急に言われた。
その時に、ブルムドはこの中で、どのくらいの強さなのか気になり始め、戦ってみたいと思っていたところだった。
「ああ、やってみたい!」
この場でブルムドは、王国騎士団団長ではなく、1人の剣士として男として、強いこの騎士団と戦ってみたいと思っての発言だ。
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