4話 世界のレベル
「セバス。どうだった?」
「は。やはり勇者召喚をするようでした。最近、魔物が増えてきているようで周辺はそれにおわれているようです。魔王の方にも動きが」
セバスと呼ばれた男は、本名セバス・チャン。初老で白髪をオールバックにし、執事服に身を包んだ男だ。
人間の姿をしているが、その正体は、あくまである。それも、俺が創ったため全体的にスペックは高い。セバス単体で世界を消滅させることも可能だ。
ずっと昔、何兆年前に世話係として誰か欲しくなり創ってみたものの、圧倒的に高スペックで今も執事として役に立ってくれている。
他にも配下はいるが、必要になるたびにこちらに呼ぶとしよう。
「相手になりそうなやつはいたか?」
「いえ、主の望むような人物はいないようです。それにこの世界では、最高レベルが550。初代勇者がこのレベルで、未だ誰も超えるどころか500台に達した者もいないようですね」
「やっぱりか〜〜〜。1000にも、満たないようなら下っ端にも届かないな。魔物、または魔王軍はどうだ?」
「魔王の現在のレベルが490、少し鍛えれば化けるかもしれませんが、今は雑魚ですね。魔物ですと、各龍王が高レベルかと、白龍王に至っては、894レベル、他の龍王も700を超えていますので」
龍王、さすがは龍の王といったところか。昔は、全体的にレベルが高かったのだろう。よくあることだな。
「それにしても、一体でも人里にこれば滅びないか?」
「たしかにそうですが、人前には現れないでしょう。龍の谷と呼ばれる所に、高レベルのドラゴンが住んでいるみたいで、各々龍王は、自分の領土からでないとのことです」
まぁ、そうだろう。龍という上位種は、人ごときには興味を示さない。一般的に、ドラゴンスレイヤーと呼ばれているものは、竜を倒したことでそう呼ばれている。
竜と龍。似ているが、全く、強さの次元が違う。簡単に言えば、竜が経験を積み進化することで龍となれる。
「いかがなさいましょうか?」
セバスが聞いているのは、会いに行って見るのか放置しとくのかを聞いている。
「そうだな今は放置しとこう。どうせすぐに、状況は変わるからな」
「帝国は、どうだ?」
「帝国には、十三使徒と呼ばれる人物がいるようです。世間には、『超越者』と言われていて皇帝の守護者らしいです」
「強さはどうだった?」
「第一使徒、セルビスがレベル348で最高レベルです」
第一使徒が最高だということは、数字が小さいほど強いということだろう。
ウィルムンド王国は、帝国と並ぶ大国と言われているが、軍事力という点では圧倒的に帝国が勝る。
「なんか、色々ダメだな」
「主の望むレベルではありませんな」
「この世界は、失敗だったか?」
「主に失敗などございません!絶対なる至高の神、全ての創造主であるあなたに、失敗などあり得ましょうか!すべては、主の望むままにあるのですから」
その通りだな。
「それより、国王に呼ばれてましたよ」
「ああ、護衛をつけろってことだろうさ。15にもなって誰もつけていなからな世間体を気にしてのことだろう。第一王子に、護衛をつけないことに王宮でも声が上がっているみたいだしな」
セバスは、もはや苦笑いだ。
セバスでも十分すぎほどだし、そもそも、俺に護衛など必要ない。
「早速行くか」
★★★★★
sideヴィスト
コン、コン
書類を見ていると、ドアを叩く音がした。
入る許可を出すと、思っていた通りレインだった。未だに自分の息子が、神だとは信じ難いが、あれを見せられては信じるしかないだろう。
「護衛のこと、だろ?」
「!そうだ。お前も、もう15だ。周りの目もあるが王子という身分で護衛一人いないのはおかしいしな」
言おうとしたことが、言い当てられて驚いたがレインのことだと思い直し本題に入る。
何人か選抜しているためその中から、選んでもらおうとまとめた紙を出そうとすると、
「それなら丁度良かった。俺の配下からつけよう」
そういた瞬間、レインの背後に5つの魔法陣が現れ光を放った。
光が収まると、現れたのは、男2人に女3人である。みな、歴戦の猛者以上の力を感じるが隠しているのかよくわからない。
「そ、その者たちは?」
「こいつらは、右から、剣帝アストレア、炎帝アドニス、空帝アシュリー、雷帝クリスティ、聖帝エレインの5人だ。五帝という。実力は、そうだな一人一人が世界を相手に余裕で勝てるな」
「なっ!?」
なに!?この者らにそれだけの力が?それによく見れば、
「気づいたみたいだな。そうだ、こいつらも神だ」
やはり、ただの人間に世界を相手取った大太刀周りなどできない。だが、レインに聞いた話だと神は天界から地上には干渉できないというルールが存在するはず。
「俺達には関係ないぞ。詳しくは言わないがな。これでいいだろう?」
ニヤリと笑いながら言ってきた。
ま、まあ仕方ない。選ばれた人物(いや、神物か?)は、予想の遥か上を突破していたが、護衛をつけるという目的は達しているしいいだろう。
こちらが頷くと、レインが「戻れ」と言い五帝が姿を消す。転移で元の場所に戻ったのだろう。そして、レインも出て行こうとする。
その去り際に、
「あ、そう言えば勇者を召喚する国があるみたいだぞ」
え、
たっぷりと時間をかけて意味を理解すると、
「なぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
驚愕の声が執務室に響き渡った。