44話 セバス……指導する?
ポイントなど増えているのを見てニヤニヤしてしまいますw
暴龍専用の訓練施設はいくつかある。
自主練用や軍団練習などの用途に分けて使えるようにだ。
レインたちは今、暴龍騎士が訓練している施設の一つに来ていた。
ここは、300人程が集まり、訓練している場所だ。
扉を開け中に入ると、ズシンッと空気が重くなった。
それも比喩ではなく、この部屋の中の重力が重いためだ。
通常の100倍。普通の人ならぺちゃんこになっている程の重さがかかる。
この施設は、重力の変化や空気の濃度など色々と設定出来る様に創ってある。
そんな場所で、暴龍騎士団の面々は一生懸命訓練に明け暮れている。
1人がレインたちを見つけ、跪く。それを見、周りも気づき跪く。
それを、手で静止、訓練を続けるように言う。
「それで、どいつだ?」
「えーと、あの者とあの者でございます」
「剣の才はないように思われますが……」
「アストレア違いますよ。あの者らは剣ではなく体術に才がありますので」
「なるほどな。セバスも悪魔なのに魔法よりも体術を使う変わり者だしな」
悪魔とは本来、体術など児戯で魔法を使う。悪魔の体は精神体、魔力体で出来ているためだ。
セバスは魔法も使えるが、殺す時の感触が自分の手でやった方がいいと言うことで直接殺すことを好む。
まあ、そこは、悪魔らしいが。
「ここで指導するか?別室行くか?」
「では、主の部屋にある一室を使ってもよろしいでしょうか?」
「構わん構わん。もし、暴龍を宿せるくらいになったら言え。その時は、騎士の構成を考えんといかんかもな」
そう言い、目を訓練している騎士たちに向ける。
重力がかかっていると言うのに普段の動きが出来ている。
それはつまり、動けるだけの力があるってことである。ならまだ上げていいだろう、と思いレインは、その場所から動く。
コントロール出来る、コンソールの場所に行く。
そこには、今の環境の設定レベルが映っており、その重力の項目を100倍から200倍まで上げる。
上げたら、元の場所に戻る。
そこにいたのは、地面にへばっている騎士団がいた。
「ぐぅ……ぅ……う、動けねぇ…………!」
「クッ…………どうしたんだ!」
「な、に……が…………?」
レインはため息を吐く。隣にいるアストレアも眉間に眉を寄せている。
この中で無事なのは、戦士系のステータスの高い者と重力魔法を使って相殺している者だけだ。
重力をかけて鍛えているのにそんなことをしている数人に魔法を無効化し使えなくする。
すると、「ぐげぇ!」とカエルが潰れたようんな声を出し他のみんなと同じように倒れる。
150倍程度ならまだ、地面を舐めるような無様をしなかっただろうが、200に上がったことによって耐えるまもなく潰れてしまっていた。
「お前たち、体に力を入れろ」
「そん、なこと!……いった、って……!起きれません……!!!」
「そう、です!重くて……!」
声を出すのも辛いのか辿々しく応える。
もう一度ため息を吐き、重力を100倍に戻す。
「はぁ!はぁ!……助かった……!」
「ううぅ、体がいてぇ」
「し、死ぬかと思った!」
起き上がることもせずに、うつ伏せのままで息をつく。
「お前たちは、まだ倍率を上げてないのか?」
「はっ!自分たちはまだ、100倍までしかやっていませんでした!」
「そうか」
レインが質問すると、暗い感じの金髪を刈り上げているいかにも不良のような男が、間髪入れずに応える。
「それなら、どんどん上げていけ。1000まで達すれば褒美をやる」
褒美と聞いた瞬間、皆の目が輝いた。
前にも、レインの言った任務を無事にクリアした者が武器を欲しいと言ってきたため、レインの持っている財の一つを与えた。レインの使っている武器一つ一つが神器以上の物だからだ。
それからというもの、何かを命令されたりした時、褒美を与えると言われた時、はっきりと分かる程目がギラギラしている。
「とりあえず、今日は、150だ」
「ぐげぇえ!」
「ぐぼっ」
「はぐぅ」
またも、潰れそうになるがギリギリのところで耐えた。
だが、数人程完全に気を抜いていたのかまた地面とキスをすることになった人もいた。中には、足の関節から耐えきれずに折れた者もいた。
足を肩幅より広げ大をする時のようにして、耐えている。
骨が折れた者には、回復をかけて放置する。
「何やっているんだ。身体強化があるだろう」
その一言に、今気付いた、とばかりに目を逸らしながら強化し出す。
中でも、強化さえすれば動けるようになったのは、獣人の者たちだ。
獣人は、魔力が少なく、魔法が使えるものがあまりいないが、身体能力が高い。
「じゃあ、俺は行くが、頑張れよ」
と、声をかけ、退出する。
その瞬間、「よっしゃー!!褒美は俺のものだぁ!」とか「まーけーるーかー!!!」なんて声が聞こえてくる。
★★★★★
sideセバス
主からの許可が下り、目当ての人物に向かって歩き始める。
私が近づいていくと驚愕の表情を浮かべながら、不安に思い始めているのか少し顔色が悪い。
「クラスとバールバン来なさい」
「俺たちが何か……?」
「セバス様、失敗でもありましたでしょうか?」
不安に問いかけてくる2人に対して、「君たち2人を私が鍛える」それだけ言うと、出口に向け歩き始める。
その後を、慌てて着いて行った。
私が向かったのは、主がいつも訓練ーーあれを訓練と言っていいのか分からないがーーをしている部屋に行く。
主の部屋に入り、黒い扉を開ける。
「あの、セバス様。ここは?」
「ここは、主の部屋です。あまり無闇に触らないようにいなさい」
『は、はいっ』
確かにこの部屋は、この世界の文明レベルからは考えられない物であるため目がいってしまうのも仕方がない。
特にテレビなど映画の画面の半分ほどの大きさがある。
このように綺麗な液晶もこの世界にはない。
「ほら、ぼーっとしてないで早く来なさい」
扉を開けると、そこには、野原一面が広がっていた。
2人は、その光景に唖然としている。
扉を閉めると、すぅっと消えるように見えなくなった。
そこで、2人に向き直り、説明をする。
「ここに連れてきたのは、君たちの素質が別の物だったからです。それを見、私が、教えようと思いまして」
本当は、ただ、何もしない毎日は暇だから、と言う気持ちは内心に隠したまま話す。
「それで、素質とはなんなのでしょうか?」
「クラスは剣を、バールバンは槍を使っていますね?」
2人が頷く。
「2人には、剣や槍などより体術の方が合っていると思うのですよ」
なので私が来た、と説明した。
「とりあえずどのくらいやるのか見てみましょうか。構えなさい」
私は、拳を構えながら言う。
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