43話
『地下闘技場』そのことがレインの頭をよぎっていた。
自室に戻り、つい先程行った場所について考えていた。
帝国には力が全てという魔族と似たような文化がある。
力ある者が取り立てられ、ない者は虐げられる。弱肉強食そのものだ。
皇帝も実の子同士を殺し合わせたりもしながら次期皇帝を決める。
帝国はそう言った文化があるからこそ、『剣闘試合』というものが半年に一回行われている。
参加する選手は、剣闘士と呼ばる。勝った時の賞金も一生遊んで暮らせる程貰えるため参加する人数は毎回多い。
それに優勝者には、十二使徒第一席セルビスと戦うことができる。
勝てばそのまま第一席に、負けても善戦具合によって、称賛される。
それに、『絶死』と言う二つ名、敵対した相手は絶対に死ぬと言われる程だ。第一席相手に勝つことは出来ないからそんな制度を設けているとも言える。
「演習試合……か」
ついに呟きが漏れた。
その声を聞き、側に控えていたセバスとアストレアが聞く体制に入る。
「いかがなさいましたか?」
アストレアが問いかける。
「帝国に剣闘試合とか裏試合とか闘う場が整っている。この国は、ハエが飛び回っているのがめんどく駆逐したが、混沌とした街もいいと思ってな」
「左様ですか」
「それでしたら、第100世界辺りに寄られてみては如何でしょう?」
セバスが提案してくる。
第100世界。世界は無数にある。
分かりやすく五帝たち、俺が創った神を超神としよう。それ以外を神として、その神らが創った世界が第10世界以降の世界だ。
その中で、第100世界は特に争いが絶えない世界だ。
上位の世界程平均レベルが高いが、高くなれば何故か争いが起こりにくくなる。
「それもいいんだけどな。今はこの世界を楽しみたい」
「ですが、一度御身の世界に戻られてはどうでしょうか?皆寂しがっていましたから」
「いつかな」
適当に答えてその話を終わらせる。
レインの世界。零の世界。虚無のエネルギーに満ちた世界。
創造物ーー我が子とも言える者たちが住む。子が父に長く離れていれば逢いたいと思うように、思っているらしいが、なんともまあ。
「何かとこの世界は特異点らしいからな、次元に歪みでも生まれてるんかな?くふふ」
「楽しそうですね、主」
「それもそうだろうさ!ここ数年ほんッッッっとに暇だったからな!」
笑いが出るのも仕方ないだろう。
日本にいた時も、こっちに来てから今まで、基本戦争の基盤を整えるために費やして来たのだ。
世界戦争を起こすのは簡単だ。魔王になるのも第三勢力になって何個かの国でも潰せば世界規模で戦争を起こすことが出来るからだ。
それをしないのはなんでか分かるだろう。
俺が楽しむため、だ。
「そう言えば、近頃おも……どうかしましたか?」
「クフ、クフフフ。始まるぞ!」
アストレアが話している最中にレインが、笑い出した。
「何が……ああ、そう言うことですか」
「ですがまだ準備している最中ですね」
レインの目の前にホログラムのような四角い透明の板が現れた。
そこには、鎧を着た者などが武器を買い込んだり整理している光景が映しだされていた。
場面が変わると、商人と思わしき人物が食料を大量に売っていた。
「これは、なるほど」
アストレアも分かったのか納得の表情を浮かべた。
そこに映る映像から分かる通り、戦争の準備をしているところだ。
「やっと動き出したな。皇帝も遅いぞ全く」
「自国の整理が終わったから動いたのでしょう」
約4年程前、近くにあった小国を傘下に治め、それに合わせちょっとした内乱が起きたせいで他国に攻め込む計画が遅れていた。
その後処理が終わり、やっと制服に取りかかったと言うわけだ。
「魔王陣営は何してるんだ?全く、力与えてどこにも攻めんとか……」
セバスもアストレアも微妙な表情になっている。
なんで、攻めないのか理由は分かっている。
もともと征服する準備はしていたが、想定外の強者がいたため配下の強化をしているらしい。まずは、全体のレベルを上げてからってことだ。
「まあいいや。あまりにつまらんなら消せばいいしな。その時は頼むぞ、アストレア」
「はっ、お任せを」
一週間後には、父上も帝国の準備に気付くだろう。
そして準備をし出すはずだが、今回は暴龍と使徒が出て来た場合は、相手によっては五帝に出てもらうつもりだ。
「暴龍はどうなっている?」
「皆強くなることに貪欲ですよ。当初とは比べ物にならないくらいに強くなってますが、聖人クラスはまだ少ないですね」
「私が2人程鍛えてもいいでしょうか?」
「いたのか?」
「いい線までは行きそうかと」
「好きにせよ」
セバスが鍛えたいと言って来たのは久しぶりだ。
よほど暇だったんだろう。
「暴龍の訓練様子でも見に行くか?」
『はっ』