42話 地下闘技場観戦
これからは、主人公がたくさん出るようになると思います。
多分…………頑張ります…………。
『決まったーーーーー!!!グレルの勝利だぁぁああああ!!!!』
『くっそーーー!!負けた!』
『いいぞーーー!!グレル!!!』
グレルと呼ばれた男が剣を掲げ観衆にアピールしている。
コロッセウムに似たこの場所に、何百人もの人が集まり殺し合いを見に来ている。
所謂、闇試合や裏試合と言ったことが行われる場所である。
そこに、俺は、招待を受けて来ていた。
「どうですかな?うちの選手は」
「全然だな」
「殿下に比べればそうでしょうな!」
VIPルームにいるため試合がよく見える。
帝国の貴族、伯爵であるシニス伯が聞いてくる。
前襲われていたところをたまたま助けたら、俺のことを知っていたらしく、自宅に招待したいとのことで知り合いになった。
王族をそんな簡単に、しかも他国の王族をとなれば面倒なことになるが、俺がお忍びで行っていたこともあり、ちょうど暇していたから着いて行った。
それから、何かとあってこうやって帝国に招かれ遊んでいる。
裏試合のため、もちろん相手が死ぬまでやることが普通だ。
地下というだけあって、地上に音も漏れにくい。万が一も考え『防音』の魔法までかけられている。
ここでは、賭けが行われており、貴族や大商人など金持ちが集まることもあって、金の動きが大きい。
数百万単位で行われ、非公式のため賄賂なども送って勝たせる奴もいる。
闘技者のレベルもこの世界では高い方だ。
冒険者崩れや盗賊崩れ、犯罪者や奴隷になった者などが戦っている。
優勝者にも賞金が与えられるし、貴族の目に留まれば雇ってもらえるかもしれない。そのため、奴隷落ちした者など死に物狂いで頑張るわけだ。
闘技場の広さは、だいたい野球場くらいの広さだ。
広さからも分かる通りAランク並みの選手が結構いる。
今、戦ったグレルもAランクSランク未満ってところだ。相手は、元Aランク冒険者だったため、かなりいい試合になるはずだった。
しかし、グレルはAランクの中でも上位の強さを持っていたため多少傷を負いながらも勝てた。
負けた選手に賭けていた人たちが嘆き、勝った人たちは、グレルを応援する。
会場は空気が震えるほど熱狂しているけど、俺は退屈だ。
「まあな、Sランクとか出ないのか?」
「冒険者でも、AランクとSランクでは強さの次元が違いますからね。……それに、なかなかそんな選手がいないのですよ。いたとしても、実績がある者だと戦いたいと思うものも少なくて」
「そうか」
片手にグラスを持ち、最高級のワインを飲みながら観戦する。
年代物のため、香ばしい香りが漂い、シニスが欲しそうな顔をしているが30代のおっさんには需要などない。
見るだけではなく、自分にもと言い出したところで、次の選手が入場して来た。
『次の選手は、疾風で名の馳せたゼンゲルゥゥウウウウウ!!!対するのは、今回が初挑戦で全くの無名!名をケルドニー!!!』
ケルドニーと呼ばれた人物は、ローブを被っていて、体格もゼンゲルに比べ細い。
対するゼンゲルは、筋肉が盛り上がりいかにも戦士然とした体格だ。
圧倒的に、ゼンゲルに賭けられており、ケルドニーに賭けているのはかなりの大穴狙いだ。
「殿下はどっちが勝つとお思いで?」
「ローブの方だな」
そう言いうと驚いた表情を浮かべた。
「相手は、犯罪すら犯さなければ、Sランクになっていたと言われるほどですよ?」
「体格とかを見て決めているんじゃ意味ないぞ?」
「確かに、殿下も線は細いですからね。それで、なぜケルドニーが勝つと思われたので?」
「見てれば分かるぞ」
そう言って、目を試合に向けると今にも始まる瞬間だった。
『それでは、試合、開始!!!!!!』
まず初めに、ゼンゲルが動いた。
その巨体の割に、『疾風』の二つ名を持っているだけあって速い。
一般人では黒い線が走っているように感じるだろう。
手には大剣。一眼で業物と分かる。
肩辺りに構え、ケルドニー目掛け一直線に走る。
巨体にスピードが合わさり、その一撃をケルドニーの頭に振り下ろす。
それに対し、ケルドニーは手に持った細い剣、エストックと呼ばれる剣を、ゼンゼルの一撃を紙一重で避け、腕に向けて一刺。
『ぐわぁあああああ!!』
ゼンゲルの悲鳴が上がる。
肘を貫通し、それを引き抜き次は足に突き刺す。
再度ゼンゲルの悲鳴が上がった。
止めを刺すため、喉に突き刺した。
口から、血の泡を出し倒れた。
観衆はしーんと静まりかえり、一拍のうち大歓声がおこった。
『まさかの大番狂わせ!!!無名のケルドニー、ゼンゲルの攻撃を全く受けず僅か3撃で沈めたぁあ!!これには、観客も血の涙だ!!!!』
それもそうだろう。ケルドニーに賭けた人は10倍以上勝ったことになる。
観衆の9割ほどがゼンゲルに向け罵声を浴びせている。
「ほ、ほんとに勝った……。なぜ分かったので?」
「簡単だ。レベルの違いだ。ゼンゲルとかいうやつはAランクなんだろう?」
シニスが頷く。
「あのローブは、Sランク以上。正確にはSSランク並みだな」
「っっっ!?まさか!?そんな誰が」
「冒険者登録はしてないみたいだぞ。旅人って感じか。賞金目当てだろうな」
1人飛び抜けて強い強者がいるため、ケルドニーで決まりだろう。
今回の出場者に、こいつ以上に強い奴はいなかった。
「つまらん。俺は帰るぞ」
「え、いや待って……あ、ちょ…………」
その場から転移する。
転移した場所は、帝国にあるBARだ。
ここは、小さい路地を通らないと来れないため、なかなか知られていない。
潰れそうな程ボロボロだったが、たまたま見つけ店主を気に入ったから手助けした。
「っこれは、レイン様ではないですか」
「邪魔するぞマスター」
「ええ。このように過ごせるのはレイン様のお陰ですので、いつでもお越し下さい」
「なんかあったらいつでも言え。その魔道具も遠慮なく使えよ」
「こんな高価なものまで。感謝しても仕切れませんよ」
心からの笑顔を浮かべお礼を言ってくる。
今の内装は、日本にあるような高級BARをモチーフに改装した。
椅子も机もグラスも全てこの世界にはないものを使っている。
客も増え、知る人ぞ知る高級店みたいな感じになっている。
酒も日本製を卸してある。
「おすすめを」
「畏まりました」
少し待つと、ワイングラスに注がれた酒がきた。
ぱっと見赤色だが、光の当たり具合によって茶色にも見える。
一口飲む。
「む、甘い感じだな」
「はい、蒼草と言われる薬草を使っているので、甘味が強いですね。滅多に出回らない薬草なんですが、たまたま見つけまして、どうでございましょう」
「いいぞ、美味い。ブルーリーフってどこにあるんだ?」
「南にあるモルンド山の頂上付近にあると言われていますが……もしかして」
「ああ、今度撮って来てやる」
「本当ですか!?」
「ああ、一週間後くらいでいいか?」
「そんなに早く!?」
標高10000mを超える山だ。
それに加え、魔物もいるとなればわざわざ登りに行く奴なんていない。
グラスにある酒を飲み干し席を立つ。
「じゃあ、また来る」
「ええ、ええ。お待ちしております」