36話
時間が経つのは早いもので、もう半年が過ぎた。
待ち遠しかった学園に行く日の3日前だ。
久しぶりにあった健たちはレベルも上がり、強くなっていた。ただ、未だに人殺しのや人の死ぬところを見たことはないみたいでそこが少し懸念に思っているところだ。
健に会うと文句を言われ、殴りかかられたけどカウンターで沈めてしまった。
あんな勢いでこられたからびっくりしてしまったじゃないか。
僕が、この半年何をやっていたかというと、この世界で『冥府』の名を冠する所の一つである冥府の森と言われるところに籠もっていた。
奥に行くほど魔物が強くなり、そこの主に至っては、SSSランク以上と思われる魔物がいた。
それに、冥府の森の中に祭壇がありそこには一振りの剣が刺さっていた。禍々しい雰囲気で、一目で魔剣だと分かった。
その時は、レベルも200になっていて自惚れていて、何も確認せずに抜いたら魔力を滅茶苦茶に吸われ危うく魔物が周りにいるにも関わらず気絶しかけた。
赤黒い刀身に、血管を思わせる模様がドクンッドクンッと波打ち、とても厨二心をくすぐられたからだ。
仕方ないと思う。目の前にめっちゃかっこいい武器きがあったんだもん。仕方ないよね。うん。
乗っ取りとかじゃなくて良かったと思う。でも、自我はなかった。おっかしなぁ、よく、可愛い女の子の声が聞こえたり、擬人化したりする作品って多かったから、もしかしたらって思ってたんだけど。
まあ、それでも破格の性能だったから使うけど。多分光輝くんの聖剣より強いと思う。
そんなこんなで、一応はやるべきことはやったはずだ。
レベルも300を超えたし、称号も『勇者』から『真の勇者』へと変わり効果が上がった。
完全に上位互換となって、ステータスのインフレが止まりません!レベルも上げるのが楽しくなってやっていたけど、どこまで上がるんだろう?
100がMAXってわけじゃないし、12000なんて化け物もいたわけだけど。
それに、100いくごとにステータスが上がることから、何かの区切りかボーナスみたいだと思うけど未だ謎だらけだ。
あと魔族にもあった。
その者がどれ程の強さかわからないけど、全くと言っていいほど脅威を感じなかった。
冥府の森に行く途中にある村が襲撃を受けていたから助けた時、王都を出た直後ですら余裕で勝てたんだ。最強クラスじゃないにしても、そんなに警戒するか?って感じだ。
と、半年の経験はこのくらいでいいとして、今僕がどこにいるかと言うと、またまた訓練場だ。
王城にいる時は、基本ここにいる気がする。
対戦相手は、光輝くんだ。
僕が戻ってきたことを知ったら、ベットで横になって休んでいたにも関わらず引っ張り出された。
なんでも自分も強くなったから戦いたいんだと。どこの戦闘種族だ全く。
「こい!聖剣!!!」
なんかスキル名言ってるし。今まで言ってなかったのに。
聖剣が現れる時の光もバージョンアップしている。
(あれ?なんか成長してない?あの剣)
そう、興味本位で鑑定してみたら、聖剣の持つ能力が上がって強くなっている。まだ僕が手に入れた魔剣よりも弱いけど、聖剣自体が強くなるんなら別だ。
『全ステータス5倍』に『魔力供給』なんて言う新しい能力が付いている。
僕の魔剣は、魔力を吸えば吸う程、斬れ味と強度が上がっていくっていう単純だけど強い。魔物の、それもSランク以上の魔物の血を大量に吸わせてきたため、同格くらいの武具だとサクッと斬れると思う。
「行くぞ!太樹!!!うぉぉぉおおおおお!」
なんで、ラノベとかで声を上げながら向かっていくんだろう?と思っていたけど、実際に見るとやっぱりいらない掛け声じゃね?って思ってしまう。
上段からの攻撃をサイドステップで躱して、同じ攻撃を仕掛ける。
ただこの時まで、僕は素手だ。腕を振りかぶった時に、手に入れた『空間魔法』の中に収納していた魔剣を取り出して攻撃する。
その魔剣を見た光輝くんが顔を引き攣らせる。
それもそうだろう。勇者が持っているような見た目じゃないし。魔王が持ってそうな感じだし。闇のオーラが出てるしなんか不穏な感じがするし。でもかっこいい!
っと、それは置いといて、聖剣を横にし盾がわりにする事で防御しようとする。
僕の魔剣が聖剣に触れた時僅かな抵抗を感じ、スパッと斬れた。もともと、剣しか斬るつもりがなかったから光輝くんの体には傷一つ付いてない。
「なっ、なっ、なっ……」
な、な、な、しか言えてないぞ光輝くんよ!僕の剣と自分の柄と少ししか残っていない刀身を交互に見て絶句している。
表情が、「そうな馬鹿な!?」って感じで笑ってしまいそうだ。
「っぷっぷぷ」
あ、笑っちゃった。光輝くん、顔真っ赤にしちゃってるよ。
なんかカッコよく聖剣を召喚しといて、雄叫びを上げながら向かってきたにも関わらず、一合出来ずに聖剣斬られるとか、恥ずかしすぎるでしょ。
「な、なんなんだ!その剣!?!?」
「魔剣ですけど何か?」
口をパクパクさせながら、こっちを見ている。
あ、今なら豆投げたりして遊べそう。
なんて思っていると、なんか喚き出した。
「いやいやいや!反則でしょ!?その剣!」
「自分で手に入れたものだよ?」
「そうだとしても!……そうだとしてもさ!」
「それを言うなら、光輝くんの聖剣だって、強くなってるじゃん」
「それは、俺に合わせて成長するから、俺が強くなればなるほどコレも強くなるんだよ!」
「まあ、そうじゃないと意味ないよね。前の剣対して強くなかったし」
驚愕のカミングアウトに、またもや絶句する光輝くん。
いや、少し考えれば分かるでしょ。
スキルでの召喚とは言え『聖剣』が僕の作った魔法剣と互角に戦える方がおかしい。しかもレベル1の時に作ったやつに。
これも調べて分かったことだけど、聖剣などの上位武器には僕が知っているだけで5種類ある。
まず、光輝くんの持っている聖剣、成長型。
これは、持ち主が強くなればなるほど剣も鋭さ、耐久、新たな能力などを得るタイイプだ。
そのかわり、最初は他の同格の武器より弱かったりする。
そして次に、万能型。
これは、ステータスにも特殊スキルもある万能タイプだ。
全体的に平均以上だけど、特化している武器には敵わない。
そして、特化型。
何かに特化している物だ。
例えば、異常に切れ味が良かったり、異常に硬かったり、剣のステータスはそうでもないけど、特殊スキルが強かったり、など何かに特化している武器のことだ。
そして、強化型。
これは、剣自体が条件を満たすことによって強化されたり、代償を払う事によって強くなる武器のことだ。
僕の魔剣もこれに当たる。魔力を吸う事、血を取り込む事によって能力が上がる。他にも、代償の度合い(五感のどれかを失ったりなど、重い代償とか)によって、滅茶苦茶な効果を発揮する物もあるみたいだ。
最後に、知性ある武器。
所謂インテリジェンスウェポンのこと。
AIだったり人格を持っていたり、霊的存在が憑依してたりなどパターンはあるけど。
とこんな感じで結構たくさんある。他にもあるかもしれないけど僕は今のところこのくらいしか知らない。
光輝くんの聖剣、正直に言ってクソ雑魚だけど、これから強くなるなら脅威になるだろう。
そんなこんなで、もう何試合かしてボロボロにされてしまった。