32話
少しずつですが読む人も増えて嬉しいです!
これからもどんどん見てもえらえるよう頑張ります!
王都に連れて行かれて今目の前に国王がいる。
何か悪い事したかなと思っていると、誰かが入って来て声をかけて来た。
「お、太樹じゃないか。お前も呼ばれたのか?」
「ん?光輝くんも?」
光輝くんも入ってきた。
呼ばれていたんだろうか?
ここには、僕たち5人と光輝くんたちのパーティー6人が集められた。
他の生徒はどうしたんだろう?
そんなことを考えていると国王から声がかかった。
「よく集まってくれた」
いや、強制だったんですけど?
「この国に迷宮があるのは知っているな?」
迷宮。もちろん知っている。なぜなら今度僕たちが行こうとしていた所だからだ。なぜかこの世界には、国には一つSSSの迷宮がある。もちろんないところもあるけど。
「そこに、1匹の魔物が現れたんだ。それを見た者によると、白い毛並みの獣型の魔物だそうだ。ありえない強さで、SSランクの冒険者が2人も死亡している」
「それでも、シルブリットさんに行って貰えば良くないですか?」
光輝くんが、僕が言おうとしたことを言ってくれた。
いくらその魔物が強くても本気の団長さんに勝てるとは思えない。
「シルブリットには別の任務を与えているため、出来ない。そこで勇者たちに行ってもらいたい」
”様“が抜けてる。少しずつ言葉を崩してきている。まぁ、そんなことは置いといて。
そんなことを言うと、
「分かりました!俺たちにお任せください!」
はあ〜〜。やっぱりだ。このバカ、相談もなしに決めてしまった。
僕のパーティーのみんなは、えーーって顔をしているけど、向こうはなんでか、うんうん、みたいな顔をしている。いつの間に、イエスマンになったのか。精神支配みたいなスキルでも手に入れたのではなかろうかと思ってしまった。
「ところで何階層あたりで目撃したんですか?」
言わなければ、では、頼んだぞ勇者たち!とか言われてすぐに向かわされそうだったから一応聞いた。
「そうだったな、『死の樹海』と呼ばれていて、全100階層あるらしい。と言うのも未だに、77階層で攻略が止まっているため正確ではないが。それで目撃した階層だったな、70階あたりとのことだ。階層主かとも思ったがどうやら違うらしいのでな。其奴がこの国に出てきた場合の被害を考えると迅速に対処したほうがいいだろう。ということで早速行ってもらいたい」
やっぱりか。休みたいんだけどなぁ。
「分かりました。じゃあ、太樹今回は一緒だな!」
なんか、嬉しそうに言ってくるけどこっちは全然嬉しくない。
嫌だなぁと思いながらも今のところこの国にいた方がいいため従っておくけど。
それから、準備する時間くらいはくれるとのことなので、1時間後に迷宮前集合となった。
謁見の間から出て、王城の中にある僕の自室に集まる。
「なんかあいつ勝手に決めてきたぞ」
「そうですね。私たちも行くのに相談や声かけすらありませんでした」
朱莉が珍しく怒っている。
「ひどくないですか?自分たちのパーティーならリーダーが決めてもいいと思いますけど」
唯亜も静かに怒っている。
みんなが少なからず怒っているのには、理由がある。
『死の樹海』。そう呼ばれるブランド王国にあるSSS迷宮は、その名の通りだ。そこに入ったら出られないとかじゃなく、単に死人が出る割合が多いからつけられた名前だ。
10人入って、1、2人死ぬのはまだ分かる。罠にとか魔物が強すぎてとか色々理由はあるけど、この迷宮は、10人入ったら7、8人は死ぬ。
それも、昔のことだが。今は、きちんと高ランクの冒険者しか入れないようにしているから前よりは少ない。それでも、他に比べたら多いことには変わりない。
まだ、ぐちぐち言っているところに、手をパンっと叩き注目を集める。
「そこまでにしよう。もう決まったことだ。ぐちぐち言ってても仕方ないよ。だからこれからのことを考えよう」
「これからのこと?」
「そう。その魔物のこととかね。例えば、その魔物に知性があれば話し合いができるかもしれない」
「魔物に知性ってあんの?」
「高ランクの魔物はあるみたい。竜とか」
「でも、氷の竜は喋れませんでしたよ?」
「全部の竜が喋れるわけじゃないと思う。……それで話を戻すけど、今の僕らじゃ手に負えないような相手だった場合のことを考えないといけないってことだよ」
「それって、太樹以上に強い魔物かも知れないってこと?」
うんと頷く。それに対して、僕の強さを知っているみんなはありえないって顔をしている。
「考えても見て欲しい。樹海の迷宮のそれも下層にいる。外部から来たかもしれない相手だよ?それに、70層で見たって冒険者もそこまでいけるほどの高ランク人たちってこと」
そこまで言うと分かったのか少し顔が青くなっている。
「想定以上の化け物だった場合、逃げないといけないけど逃げれないかもしれない」
「た、確かに。俺たちはまだこの世界の魔物を全部知ってるわけでもないし……」
信介が自信なさげに言う。
「まぁ、その時は僕が囮になるよ。そのうちに全力で逃げて」
「出来ねぇよ!」
健が大声で言う。
「いや、僕だって死にたいわけじゃないから時間稼いだら逃げるよ?」
「で、でも……」
「それに、まだ決まったわけじゃないでしょ?」
半分本当だ。死にたくはないけど、死ぬかもしれないって思ってはいる。今から会う敵は今の自分では勝てないっていう予感がある。
「そうだね」
「私たちはどうしたらいい?」
「最悪光輝くんたちは見捨てていいから」
みんながハッと息を呑む。信じられないって感じだ。
「何も考えずに行動した結果、そうなるんなら仕方ないと思う。それより、回復アイテムもらいに行こうか。あと40分くらいしかないよ」
さっきの話のせいか、緊張しているみたいだ。
だいたいこれまでクラスの誰も死んでないってことが奇跡みたいなものだと思っている。
小説とかだと、ステータスが低い落ちこぼれや虐められている生徒が迷宮とかで捨てられて、チート能力に目覚めて復讐してやるって感じになったり、クラスの誰かが死んだせいで、戦うのが怖くなって引きこもりになる人がいたりするけど、僕たちは全然そんなことがない。
最初は、戦うってこと自体に恐怖していたりする人もいたけど、今では、全員が、そう全員が魔物と戦えるようになっている。思考を誘導されているみたいにそのことに疑問を持っている人がいない。
とにかく今は自分に出来ることを精一杯やるだけだ。