31話 大人の階段
side大西健
「おい。太樹にはバレてないだろうな?」
「うん。大丈夫……なはず」
「まぁいいや。それじゃ、行こうか!」
俺たちは、いま夜の街に来ている。
所謂、えっちなお店があるところだ。
この世界に来て、訓練に魔物との戦いに迷宮での戦い。ほとんど、戦ってしかいない。
俺は自分のことを、中の上だと思っている。それなのに、彼女いない歴=年齢だ。
信介も同じ状況ということで、いまここに来ている。
この世界は、文明が中世レベル。と、いうことは、だ。奴隷とか娼婦もまたいるということ。
高級娼婦は高いが、俺たちの稼ぎなら十分に払える。
「よ、よし!」
「ゴクリッ」
デカデカとしてある看板が目に入る。
目を横に向ければ、布の少ないヒラヒラとした洋服とも言えないような布切れを着て、一生懸命客寄せをしている。
溢れそうな胸に目を吸い寄せられるが、我慢して振り切る。
今からそれ以上のことをするから我慢我慢。
「いざ行かん!!!」
今日!俺は!大人の階段を登る!
side佐藤太樹
「なんか、二人が浮ついている」
昨日の夜にどこかに出かけたと思ったら朝帰り。
何をしていたかは分かるけど、「また来てね♡」とか言われて骨抜きにされてない?
キャバ嬢に貢ぎまくるやつみたいに稼ぎを全部注ぎ込まなければいいけど……。
「おーい、二人とも!」
「どうした?へへへ」
「…………おめでとう」
「べべべべべべべべべべべつに!?べつに何もありあせんけど!?ね、ねぇ、信介さん!」
「そそそそそそそそそそうです!なんも!ほんとになんもありませんでしたよ!?」
「いや、そう動揺し過ぎでしょ」
「え、いや……こほんっ。なんもなかったぜ!」
顔を真っ赤にして言い訳しているけど、バレバレでしょ。
「……………………娼館」
ぼそっと呟いたら、大袈裟すぎるほどビクッとする2人。
「え、なんで?さてはつけてたな!?」
「いやいや。その反応で丸分かりでしょ」
「がーん。健!どうやらバレてるみたい!」
「なんで僕誘ってくれなかったのさ?」
「な、なんかさ?ほら、ね?」
「ほら、ね?じゃないよ。全くひどいよ。2人だけで行くなんて。ここの娼館は美人揃いなんだから」
「だって、……今何つった?」
頭までピンクになったのか?
「ひどいよって」
「いや、そのあとだよ!美人揃いとか言ってなかったか!?」
「うん言ったよ?」
「なんで、知ってるんです!?」
信介が聞いてくる。
「当たり前じゃん。僕も行ったことあるからだよ。すごいよね、さすが異世界って感じ。美人が多いよね」
あはは、と笑っているとへなへなと座り込んでしまった。
「どうしたじゃないよ」
「そう言えば、一緒の宿に泊まってるけど時々部屋からいなくなる時あったけどもしかして……」
「うん、多分あってる」
「ちくしょーーーー!裏切り者め!!!」
自分のことは棚に上げて盛大にブーイングしてくる。
その時、女子メンバーが声をかけてきた。
「おはよう」
「おはようございます」
「うん。おはよう」
「それで、2人は何を?」
「え、俺たちはべつに?だよな、信介?」
「そ、そうですね!なんも、ないです!」
怪しいが突っ込まないことにしたのか、ずっしりと重そうな小袋を3つ差し出してくる。
「これは、昨日の買い取りのお金」
「私たちが先にもらってきたよ」
「お、ありがとう!」
重たい。ステータス的には全くだけど、気持ち的に気分がいい。
「今日は一日遊ぼうか?」
みんなに今日は迷宮やギルドでの依頼をせずに久しぶりに遊ぼうと言った。
「賛成!!!」
「最近ずっと迷宮やらなんやらで大変だったので……」
「それで、どうする?」
遊ぶことにしたのはいいけど、ここは迷宮がSランクの迷宮がある。
このレベルの魔物を倒せるなら、実入りはいいから冒険者が結構いる。
それに合わせて、武器屋防具屋といった冒険者御用達の店が多い。女子の好きなショッピングなどがあまりできないと思う。アクセサリーと言っても無骨なものになる。市販の物だし。
「一緒に武器屋なんてどうですか?」
「お、おう。女子からの提案とは、びっくりだぜ……」
確かに、唯亜からの提案だけど、よく考えればこちらにきてからその類の店に入ったことがない。
必要なものは、王家が用意してくれたし、必要性を感じなかったからだ。
「じゃあ、行ってみる?」
それから、武器屋を転々と回って見ていった。
やっぱり自分たちが使っているようなレベルではなかったため、買わなかったけど、唯亜がかなりの武器マニアだということが分かった。幼馴染みだという朱莉も全く気付かなかったらしく、武器を、刃物を見ている唯亜の顔を見て引いていた。
そんな感じで、買い物?を続けていると、向かいからこっちに向かって来ている人物を見かけた。
「サトウ様ですね?王国の方までお願いします」
有無を言わさずに言われて、連れて行かれた。
何が起こってるの?