21話 模擬戦
少しづつ読んでくれている方が増えて嬉しく思っています!
これからも頑張っていきたいです!
魔法にほぼ不可能はない。
そう思えるほど、魔法とは素晴らしいと思った。
なんで、日本に、地球になかったのか疑問を抱き、怒りすら覚えるほどだった。
例えば、回復の魔法があれば怪我や致命傷の怪我さえ治せるだろう。
それに、魔力があれば、色々なことができる。
腕を魔力で強化すれば腕力が上がり、足を魔力で強化すれば速力が上がり、目を強化すれば視力が良くなり、全身を強化すれば全身の強化ができる。それに、攻撃力だけじゃなくて防御力も上がるため、階段から落ちた程度じゃ怪我すらしなくなる。
まあ、でもそんな事にはならないだろう。と太樹は思う。
日本では、なまじ文明が進み、政府による統治がされているため、国に強い魔法を使える人は無理やり徴収されるだろう。それに、医療なども発達しているから、人体実験もされると思う。日本では、人体実験など非人道的な行為は行われていないように感じるかもしれないが、絶対に行われると言う自信が持てる。
「まあ、そんなことは置いといて、色々試して見たらスキルを入手できたんだよなぁ」
そうなのだ。魔力で体を覆って見たりしたら、『魔力鎧』と言うスキルを入手出来た。
他にも、属性魔法も試して手に入れた。ミスラさんが言っていた基本属性は大体出来たと言えるだろう。特殊な魔法、空間魔法などは、多分魔力が足りないために発動できなかったってことだろう。
それで今僕は何をしているかと言うと、いつものごとく訓練場で練習している。
今は、真剣を持ってやっている。最初に、好きなの武器を選んでいいと言われたのは、僕たちが使う武器を確認するためだろう。
僕のクラスは、30人いる。それだけの武器を、しかも一級品の武器を揃えるのは難しかっただろうけど、そこは、勇者ということで優先して配られたみたいだ。
訓練場で、一之瀬光輝と向かい合っている。
「………………なぜこうなった?」
「いくぞ!太樹ッ!」
「え〜」
なぜか下の名前で呼んでいるし、しかも向こうは自分のユニークスキル『聖剣召喚』で召喚した聖剣を構えている。
それに対して、僕は、貰った片手剣だ。いくら一級品だとしても、聖剣と打ち合えば刃が欠けたりするだろう。
本当になんでこうなった?
「うぉぉぉぉおおおお!!!」
突進している。上段に構え、振り下ろしてくる。
剣を交えずに剣の軌道を見て、左足を一歩下げて躱す。そのまま逆袈裟斬りに繋げ、斬りかかってくる。
それを全部半身で躱す。
「はああああああ!!!!」
今度は、突きを放ってくる。
「なっ!?」
もちろん驚愕の声は、僕じゃない。光輝の声だ。
なぜなら、聖剣の剣先に僕の剣の剣先を当てて受け止めているからだ。
そんなことしたら、強化込みの聖剣の全力一点攻撃に馬鹿正直に付き合ったわけではない。剣自体を魔力で覆って強化している。剣を良く見れば淡く光っているのがその証拠だ。本当に魔力は便利だ。それでも、剣芯に微かに罅が入っている。
「全くせこいよね。その聖剣召喚のスキル。反則だよ」
「それは俺のセリフだよ。スキル使ってないんでしょ?それに、強化値なしのステなら俺の方が上のはずだ。それでも、ここまで一方的になるってことは、俺たちの技術不足ってことだ」
全くやれやれだよ。なんて言いながら手を横にやってその動作をする。
イケメンがやるだけそんなことでも様になっている。少しイラッとくる。
光輝の取り巻きがキャーキャー言っているのもなんかイラつく。
無意識にこんなことを言ってしまった。
「光輝くん。もう一回やろっか。今度は、全スキル有りで」
「え……」
「もちろん強化値は10倍までにしてそれ以上はあげないよ」
「り、りょうかい」
戸惑ったような返事だったが、すぐに剣を構えた。
へえぇ。10倍と言っても、1万前後のステータスになる。
それに、昨日の夜寝る瞬間に思いついて完成させたスキルを使った。
もともと持っていた剣を、鞘にしまった。そして、両手ぶらんとさせて剣を持っているように少し手を緩める。
「なっ!なんんだそれは!」
「ん?これ?えーと魔法剣ってところかな。どうせ光輝くんは、聖剣を使うことは分かってたからね。ならそれに匹敵する武器を使わないと、切り結ぶことができないからね」
そう言って僕の両手にあるのは、右手に赤く燃え盛っている炎の剣、左手に冷気を纏っている氷の剣。
どちらもとても魔力を使って創っているためかなり丈夫だ。
「炎剣と氷剣ってところかな。その聖剣とも打ち合えるほどだよ」
短時間だけど。と聞こえないように小声で言いながら集中する。
光輝くんの額に汗が浮かんでいるのが強化した目に映る。
「かかってこないの?なら、僕からいくね」
ゆっくり歩きながら距離を詰める。残り5メートル程になってたら右手の炎剣を振るう。
光輝くんは、届かないはずの距離で振るったことに怪訝な顔をしたがすぐに回避に移った。
なぜなら、炎の斬撃が飛んだからだ。
よくアニメなどであるような飛ぶ斬撃、『飛斬』ってやつだ。その炎バージョン。
「ほらほら、どんどん行くよ!それそれ!」
「ぉお!……うわっ、くそっ!」
文句を言いいながらも、躱したり剣で打ち払ったりしている。
それでも、何十もの炎と氷の斬撃全てには対処できない。少しずつ掠り始めた。その時、ついに、胴体に直撃した。
「クッ、さすがに温存したままだと避け切れないか!」
「それも勇者のスキルかな?」
光輝くんの体を金色の光が纏っている。鎧のようだ。この斬撃を受けて傷ひとつ付いていない。
「すごい硬度だね、その鎧」
「『聖鎧』っていうスキルだよ。これを纏っている限りもう攻撃を受けない!」
鎧を過信しているのか一直線に向かってくる。
左手をこっちに向けて、光の矢を放ちながら距離を詰めてくる。右手に持っている聖剣に黄金色の光が纏わり付く。
「はああああああ!!!!黄金斬撃!!!!!」
なんか必殺技っぽいことを叫びながら聖剣を振りかざす。
そこまでされたらこっちも多少本気で行かないとね。
左右の魔法剣に残った全ての魔力を注ぐ。炎の剣が赤から白色の炎になり、氷の剣がより冷気を放出する。最低でもマイナス200度にはなっているだろう。
「それっ!!」
やる気のなさそうな掛け声を出しながら、バツをの字に剣を振る。
クロスして放った斬撃が聖剣の一撃を食い破る。
「ぐわああああああああ!」
聖鎧ごと砕かれ肉体を切り裂きながら、その衝撃で訓練場の壁に叩き付けられ気絶した。
その様子に悲鳴が上がる。
「きゃああああ!光輝くん!!しっかりして!!!」
「おいおい何もそこまでする必要ないだろ……」
取り巻き女子の一人が一生懸命回復魔法をかけている。
健も若干引いたように言ってくる。
「はいはいどいてどいて」
「まだ何かするつもり!?」
「いいからどいて。治すから、それに、そんな深く斬ってないよ」
そう言いながら、まだなんか言っている女子を無視して光輝くんに手をかざす。
白い光が光輝くんの体を包んだ。そうすると、傷口がみるみる塞がっていった。
「こんなもんかな。これでどう」
「あんた本当に何者?」
「そうだよ、いつの間に回復魔法なんて……」
「私も回復の魔法使えますが、そんなに早くは出来ませんよ!」
「魔法ってのはイメージって言ってたでしょ。要するに、きちんとしたイメージがあれば魔法は発動するってこと」
魔力も使い切っていたが、『魔力急速回復』のスキルを得たことで自然回復よりかなり早く回復できるようになった。
魔法の効果を補助するような称号を手に入れたのも大きい。
「しばらくしたら目が覚めるはずだから、それまでみんなも訓練しないといけないよ。僕たちくらいには動けないと、この世界には、魔物がいるらしいからね。アニメとかよく見る人は分かっているんじゃない?」
「確かに、今のままだと魔物を前にしたら体が動かないってことになりそう」
確かに、と同意して練習の続きをし始めた。
まあ実戦と訓練は違うんだけどね。と思いながらも口にはしない。
そろそろ、動きがありそうだね。