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超越神の世界旅行  作者: sena
第9章 魔術学院編
237/266

234話 発情狐

 

 何とかレインが寮室へ戻った時、深夜四時を回っていた。


 肉体的な疲労はすでに回復しているが、気持ち的に疲れていた。

 怒涛の神の塔攻略で、色々な階層を渡り歩き、果てにはいきなり上階層へ飛ばされると言う悲劇が起きた。そして、白獅子などと言う強魔物が現れ、撃破したものの、その後の転移球を見つけるのに時間がかかったのだった。


 文字通り跳び回り、やっとの思いで戻ってこれたのだ。


 扉を開け中に入り、寝室へと行く。

 寝室の扉を開けると、ベットの上がもぞもぞっと動いていた。薄手の毛布からふさふさの尻尾がちょこんと出て、レインを誘うように左右に揺れている。


 耳を澄ませば、すぅすぅと言う規則正しい寝息が聞こえるため、起きてはいないと分かる。


 誰が寝ているのかは、分かっている。

 元々、レインと雪那は同じベットで寝ていた。その理由も、この寮室は確かに広いが、一人用なのだ。寝室はもちろん一部屋しかない。ならば、一緒に寝るしかないだろう。


 レインは雪那を起こさないよう慎重にベットに近付き、中へ入る。

 精神に引っ張られるように、レインは眠くなり始め、目が閉じていく。


 その時、ふぁさふぁさと雪那の尻尾がレインの頬を撫でた。


 思わずレインはぎゅっと握り締め、ふさふさの尻尾を抱き枕に寝てしまう。


「んっ……ふぇ、主様ぁ……?」


 突然の刺激に微睡みの中から引き起こされる。

 寝惚けたままなため、呂律は回っていない。

 大きくはだけた服のせいで、肩から胸にかけて露わになっている。目を擦りながら、主の帰還を感じ、意識が覚醒へと導かれる。


 しかし、意識は急激に覚醒へと向かわされた。

 レインが無意識にもみもみと尻尾を揉みだしたせいで、快感により起きたのだ。


「え、えっ……こんな真夜中からやるんですかぁ?」


 雪那は大いに勘違いしているが、今雪那がレインからされていることを思えば、勘違いしてしまうのも無理はない。


 尻尾をにぎにぎとされ、その後雪那がレインの方へ寄ったことで、身体をホールドされていた。完全に抱き枕状態だ。


 しかし、すぐに勘違いだと気付いた。

 レインの目が瞑られているのを見て、そっとレインを抱き締める。


「お帰りなさいませ」


 そう挨拶を言いながら、レインの髪を梳くように撫でる。

 それだけを見ると、包容力のある女性と言う感じだが、雪那の顔はだらしなく歪んでいた。今にも、うへへと笑いそうな感じだ。






 朝起きたレインは、雪那を抱き枕にしている状態だと気付き、ゆっくりと腕を解いていく。


「ふぁ……んんぅ」


 大きく欠伸をした後、背伸びをしてベットから降りる。

 その時、左腕をスルスルとふさふさの何かが巻き付いてきた。


「あん?……しっかしよく寝てるな」


 巻き付いてきたのは、雪那の尾の一本だ。

 九尾とは言え、常に九本と言うわけではなく、そして常にふさふさのボリューム満点の状態ではない。今の雪那の尾の数は、四本であり、一本一本の長さと太さは縮小されている。だが、いつでも伸ばすことが出来る。寝るに邪魔になると言う理由で、本数を少なく、大きさを小さくしているのだ。


 レインは雪那の寝顔を見ながら、そう呟く。

 ピコピコと狐耳が動き、レインはそれを撫でる。そのまま頭を撫でると、雪那の寝顔が安らかなものから危なげな顔へと変わる。


「おい、起きてんだろ?」

「むにゃむにゃ」

「寝てる奴はそんなこと言わん」


 漫画でもあるまいし、と呟き、頭をポンポンと軽く叩く。

 これは、早く起きろと促しているのだ。

 しかし、スッと伸ばされた腕に絡めとられ、巻き戻されるようにベットへと倒れ込む。


「むぐっ」


 ぎゅっと胸に抱き込まれたレインは、雪那の胸に顔を押し付ける形となる。

 豊満過ぎるその双丘に顔をうずめながら、もがいて抜け出ようとするが、万力のような力で抑え込まれる。

 普段ならば、この程度の拘束を解くことなど造作もない。しかし、完璧にキメられていた。力尽くで解こうものなら関節が折れるだろう。


「ステータスと言うのはこんなにも厄介なのかっ」と心の中で言いながら、雪那の背中へ腕を回し、タップする。


「むがぁっ!むむむぅっ」


 解け、寝たふりするなと言う言葉を込めて言うが、レインの視界は真っ暗に染まっているため、雪那の表情を確認することが出来ない。


 そして雪那はすでに起きていた。

 夜中起こされたかと思えば、焦らすような触り方にムラムラとさせられた雪那は、今発情中だった。


 気持ちよく寝ている主を強制的に起こすことなど出来ず、だからこそ数時間待っていたのだ。そしてレインが起きたのなら我慢しなくていいと、行動を起こしたのだ。


 さすがに窒息と言う無様は晒さないが、それでも息苦しくはある。

 そんなことをしていると、尾が体に巻き付いてきて、その代わりなのか、頭の拘束は若干緩んだ。その隙に、顔を上げる。


「ぷはっ……全く、寝たふりなどしやがって……」

「主様が悪いんですよぉ?あんな状態で放置されるんですもん……このくらいは正当な権利ですぅ」

「……ああ、確か寝る時ふわふわの何かを掴んだ気がするな。なるほど、それがお前の尻尾だったわけか」


 朧げだが思い出した。

 顔に当たっていた何かを思いっきり掴んだ記憶を思い出し、それでこうなっているのかと理解した。


 俺のせいかと、ため息を吐く。


「まぁ、今日は休むつもりだったしな」


 レインは授業を受ける気はなかった。

 やる気がないとも言える。


 自分で決め、神の塔へ侵入したとは言え、戦いの連続と想定外の事態が起こり、そのせいで神経を使うような戦いになった。


 それに、子供と一緒になって学院の授業を受けることに、初めから好意的ではなかったのだ。

 しかし、授業を正当な理由なく休めば、変な噂が立つことになるだろうと思い、()()()()()()()ことにした。


「それじゃあっ」


 レインが休むと言った瞬間、雪那は顔を輝かせた。

 レインは微笑を洩らし、指を鳴らす。


 床に魔法陣が現れ、その中から人形が現れた。正確には、魔法人形だ。

 その魔法人形に幻術と隠蔽をかける。


「これで『俺』として見えるだろうな」


 レインに見えるように魔法をかけた。そして、魔法人形だとバレないように、隠蔽もかけた。学院長が見れば、バレるだろうが、ただの生徒と教師程度ならば隠し通せるだろう。


「会話機能も付けたし、今日一日程度大丈夫だろう」

「はぁい。ふふふ、では早速ぅむぐ」


 ふへへと怪しい声を上げながら、ゴロンッとレインを抱き転がる。そしてレインの上を取り、事を始めようとしたが、レインが雪那の顔を押し返す。


「その前に朝食だ」

「えぇ……」

「えぇ、じゃない。とにかく朝食を作ってくれ。お腹すいた」


 レインは、そのまま雪那の顔を押し返して起き上がる。

 ぷくぅと頬を膨らませ、見るからに不満ですと言っている。

 そんな雪那に笑いかけながらリビングへと行く。レインの笑みに雪那は機嫌を戻し、ついていく。






 それから全ての授業が終わり放課後となった。


 魔法人形から送られてくる情報から、レインはカフェへと向かっていた。

 学院にある飲食店の一つだ。


 レインの通う魔術学院は、全寮制。つまり、寮生活を強いられるのだ。

 理由なく出ることは出来ないため、学院の中だけでも満足のいく生活が送られるよう、施設は整っている。

 ショッピングモールもその一つであり、今向かっているカフェもその一つだ。


 飲食店以外にもブティックや礼服などの店もある。

 庶民も暮らしているが、貴族の割合が多いためだ。宝石店やアクセサリーショップ(魔道具含む)もあり、女子生徒に人気があるそうだ。


「ここか」


 目的のカフェに着き、扉を開ける。

 カランカランッと鈴のなる音がすると同時に、「いらっしゃいませ」と言う言葉をかけられる。そして静まり返る店内。


 見慣れた光景に、レインは反応を示さず、店内を見渡し目的の生徒を見つけ歩いて行く。


 レインがカフェへと来たのは、システィナに呼ばれたからだ。

 一緒にお茶しませんか、と言うシスティナの顔を真っ赤にしたデートの誘いを受けたわけである。


 緊張に舌をもつれさせながらも、一生懸命言葉を紡ぐ様を見て、不覚にも可愛いと感じたのだった。


「システィ」

「あっ、先生!今日はありがとうございます!」

「ふふ、取り敢えず何か頼むか」


 面白いくらい嬉しそうな表情で、礼を言うシスティナに、軽く笑いかけ席へ着く。

 喜びで顔を赤くしていたが、今度は羞恥で赤くする。


 システィナの声はかなり大きく、店内に響いていたのだ。それに気付いたからこそ、頬を染めている。しかしすぐに、にへらと頬が緩む。

 どうやら、来てもらえると思っていなかったようだ。


「先生は何を頼みますかっ?」


 気を紛らわせるように、メニュー表を手に取り、聞いてくる。

 レインはコーヒーを、システィナはオレンジジュースを頼む。


 頼んだ飲み物が来てから、ゆっくりと話し始めた。


「実は……」





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