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超越神の世界旅行  作者: sena
第9章 魔術学院編
234/266

231話 ゲーム感覚

 

 四階層へと上がったレインは、思わず苦い顔をしてしまった。


 三階層までは洞窟だったが、四階層は違った。

 洞窟内は薄暗かったが、四階層は、少し薄暗い程度まで明るくなっている。だが、レインは常に暗視の能力を使っているようなものであり、真っ暗だったとしても昼と同じように明るく見えているため、光源があるかないかなど問題ではない。


 問題は、四階層が湿地帯であり、レインの目の前には、沼地が広がっている。ドロドロの泥水が湖のように広がっており、所々で毒沼だと思われる場所もある。


「気持ち悪い……ってか、通れる場所が少なすぎるぞ」


 もちろん、木の板で作られている橋はかかっているが、その幅一メートルから一メートル半程度の広さでしかない。一人で戦うには、戦いにくいが動ける程度の広さはあるが、敵が群れで来た場合、とても面倒なことになるだろう。


 しかも、この沼の中にいる魔物と言うことは、泥水を飛び散らしながら襲い掛かってくると言うことでもあり、そのことを思っての言葉だった。


「結界でも張って、このエリアは通り過ぎるか」


 左腕を振るい、自分を中心とした半径一メートルの結界を張る。

 張った瞬間、レインの右側の泥沼が蠢き、何かが飛び掛かってきた。


「やっぱキモい……」


 飛び掛かってきた魔物は、レインの張った結界にベチョッと張り付くようにして止まった。

 襲い掛かってきた魔物は、三十センチ程の大きさで、泥を纏ったカエルだった。一匹が跳ね上がると二匹三匹と飛び掛かってきた。合計六匹のカエルが結界へと張り付く。


「マジでキモイ」


 レインは引っ付いているカエルへ椿を向け、魔弾を放つ。

 胴体を貫かれ、六匹が同時に沼へ落ちていく。


「え……まさか、この沼の中から魔石拾わんといかんのか?」


 思わずと言った感じで漏れ出た言葉は、心の中で言っているつもりだったのに、驚愕のあまりつい出てしまったのだ。


「いや、無視だ無視……知らん知らん」


 かかっている橋を渡っていく。

 飛び掛かってくるカエルの魔物を結界へぶつかる前に、射抜いていく。

 橋自体はしっかりしており、ちょっとやそっとでは壊れない。


 十数メートル進んでところで、突如沼地の一部が爆ぜた。


「なんだ?……デカいカエル、いや、キモ」


 現れたのは、泥沼から飛び出た体調五メートルを超えるカエルだった。ジャイアントフロッグと呼ばれる魔物だ。

 ジャイアントフロッグの目がレインを捉えた瞬間、結界を衝撃が貫いた。


「……後三発程度で割れるな」


 結界の強度は上げていたが、汚れないことに重きを置いた結界のため、攻撃を受け止めることには、あまり向いていない。

 ジャイアントフロッグの攻撃は、舌によるもの。舌での攻撃なら後三発程度を受け止めることが出来る。しかし、その巨体で飛び掛かられれば、結界など一瞬で砕け散ることになる。


 レインは、ジャイアントフロッグが二度目の攻撃をする前に魔弾を放つ。しかし、その攻撃は、ブヨブヨの腹で跳ね返された。


「嘘だろ?……いやいや、そんな馬鹿な」


 魔弾の速度は銃弾と同じ速度だ。数百キロは超える。ただの脂肪で防ぎきれるものではないはずだ。


 レインが魔弾を放った後、横に衝撃が走り抜け、ピシッと結界にヒビが入る。

 もう一度魔弾を放つが、今度のは徹甲魔弾だ。大きさは魔弾と変わらず直径1.7センチ。ただ、コーティングをし、回転力を上げ、更に貫通力を増した魔弾だ。


「はぁ、三発も耐えれんかったか」


 脂肪を貫き、魔石を砕かれたジャイアントフロッグが絶命する。

 結界には、大きくヒビが入り、後一発で砕け散るだろう。レインは再度張り直す。


「はぁ」


 この沼地にいるのが億劫になり、さっさと進むことにした。

 正解のルートを見通し、現れる魔物には見向きもせず、素通りする。僅か十分未満で四階層を攻略した。


 五階層へ上がると、一風変わった景色がレインの目に映っていた。

 疑似的な空が広がっており、鬱蒼と茂る草が広がっている。空には太陽のようなものがある。階層全土を照らすためのものであり、炎で出来ているわけではない。魔法の光と言った方が正確でだろう。


 ただの草原ではなく、盛り上がった丘がいくつもあり、遠くを見通すことは出来ない。丘と言うより、小さな山とも言える。


 知覚を広げれば、たくさんの魔力が動いているのが分かる。

 ここも獣系の魔物がいるのだろうとレインは思ったが、チラリと視界に入った魔物を見て、その認識を改めた。


「狼……それも炎炎を纏った狼。後は飛んでいる鳥か……他の種類もいそうだな」


 空を見上げると、鳥系魔物が優雅に羽ばたきながら飛んでいるのが見える。

 グリーンイーグルと言う(わし)の魔物だ。レインの真上を飛んでいたグリーンイーグルが急下降しながら向かってくる。風を纏い回転しながら急下降してくるグリーンイーグルの風を、まず分解する。


 一瞬速度が減速するが、一度乗った速度はそう易々と止まらない。特に上から下への重力に沿って落ちる場合は。


 一度消した風を再度纏い直す前に、今度は翼の付け根を破壊する。

 バランスを失い、クルクルと回転しながらレインから逸れ、地面へと激突する。


 グリーンイーグルは翼を広げると、全長四メートルを超える巨鳥だ。時速三百キロを超える速度で地面へと激突したグリーンイーグルは、断末魔を上げながら地面の()みとなった。


「うむ。沼地の魔物よりこっちの方が百倍はマシだ」


 キエエエエエエエッと甲高い鳴き声を上げながら、二羽目のグリーンイーグルがレインを敵と定め、加速しながら向かってくる。


「風を分解、翼を破壊」


 先と同じように対処し、バランスを失いレインから大きく逸れ、地面にクレーターを作る。


 五階層は魔物の数が多い、と言うより、空を飛ぶ魔物が相手だと身を隠していないレインは的になっている。レインを認識した魔物は、同じように急降下してくる。


 しかし、知性のない本能のみの魔物が相手では、レインの相手は務まらない。

 同じような攻撃ばかりで、対処が簡単すぎると。そして、これは戦いではなく作業だと思っていたが、まぁ、こんなものかと思い直し、襲い掛かる魔物を殺していく。


 十数分が経った頃には、殺した魔物の数が十を超えていた。

 もちろん、魔石も拾っている。魔石のみをピンポイントで転移させる魔法を開発し、その魔法を使って収集していった。魔法名称は『収集魔法』。そのままの名前だが、分かりやすくていいだろう。どちらにせよ、無詠唱で使うのだから魔法名はあまり意味がない。


「今度は虎か……鳥ばかりで飽きていたところだ。ちょうどいい」


 丘のてっぺんに登ったレインは、自分を囲むようにジリジリと包囲しながら近付いてくる虎の魔物を見ながら、笑みを浮かべる。レインに殺気を向けている魔物の数、八匹。牙が鋭く長い。サーベルタイガーと言う名の魔物だ。三十センチを超える牙を剥き出しにし、低く唸る。


 レインの背後にいたサーベルタイガーが残りの距離を一気に詰め、飛び掛かる。

 スッと右に移動し、腹へ膝蹴りを喰らわせる。


 上へ吹き飛ばすのではなく、内臓へダメージを与える攻撃だ。口から血を吐いたサーベルタイガーの背を肘で穿つ。ゴキッと言う音と共に地面へと叩きつけられる。


「速さはそうでもないな。気を付けるべきはあの牙だけか」


 今のレインでは、この程度の魔物でもまともに喰らえば致命傷だ。

 サーベルタイガーは第九級魔物に分類される。ステータスは全体的に高く、特に気を付けるべきは、レインの言った通りに牙による攻撃だ。人の肉など骨ごと噛み砕くことが出来る。


 レインはクルリと体を百八十度回転させ、一歩踏み出し、アッパーの要領で掌底を放つ。

 そこには、飛び掛かってきていたサーベルタイガーがおり、タイミングよく顎をかちあげたのだ。開いていた口を強引に閉じられ、あまりの威力に歯が砕け、脳を激しく揺らす。

 ただの掌底ではない。魔力を指向性を持たせて爆発させたのだ。


 地面へと倒れたサーベルタイガーには目もくれず、次の標的に意識を向ける。

 今度は、二体同時に飛び掛かってきていた。右と左の挟み込む攻撃だ。右から襲い掛かるサーベルタイガーを魔弾で迎撃し、左から飛び掛かってくるサーベルタイガーを左頬を叩き逸らす。地面へ着地する前にレインの前蹴りが側頭部を突く。


 グッと足に力を入れ飛び上がり、クルクルと回りながら魔弾を乱射する。しかし、照準はしっかりと定めており、一発さえも外れていない。発射した魔弾の数は五十を超えるが、当たった数は数発だ。それでも牽制の役目は十分に果たした。


 レインは着地と同時に、一番近いサーベルタイガーに突撃する。


「ふっ」


 椿を魔力で纏い、グリップの底の部分で殴りつける。

 一撃喰らわせれば次へと向かっていく。


「残り五」


 咆哮が空気を震わせ、飛び掛かってくる。

 行動は数パターンしかない。飛び掛かるか、そのまま襲い掛かるか、背を低くし直前で飛び掛かるか。自分の武器をよく分かっているため、攻撃の幅がそこだけに限られるのだ。噛み付こうとしているのが、見え見えなのだ。ならば、対処は簡単だ。爪による攻撃もあるが、サーベルタイガーに限って言えば、そこまで脅威とはならないと、考えた。


「チッ……数が多いと速度が問題だな」


 レインはいくら能力値を下げようとも、音速程度の攻撃ならば見切れる。しかし、その速度についていくだけの身体能力がない。

 今回の場合だと、単純に手数の問題だ。一体、二体ならば楽に対処できるが、四方から攻められれば同時に、と言うのは難しい。


 そのため、前方にいるサーベルタイガーへ突撃した。

 レインの急な行動に動揺したように一瞬体が固まったが、近くに来たのなら幸いと、右足を振り上げる。レインはピタッと止まると、鼻先を爪が掠るように通っていく。その瞬間、再度踏み込み額へ銃口を突き付け、魔弾を放つ。


 放った直後、すぐに椿を後ろへ向け、魔弾を放つ。

 今まさに飛び掛かろうとしていたサーベルタイガーの右目を貫き、脳を破壊する。


「残り三か……ふむ。魔弾だけでも意外と戦えるな」


 残り三体となったサーベルタイガーが警戒するように、レインから十メートル程距離を取り、ゆっくりと回り出す。

 仲間がやられて警戒するだけの知能はある。


「さて、と……さっさと終わらせるか」


 レインはここに来て初めて身体強化を使った。

 強化倍率は五倍。元の能力値がレベルアップにより2500となっているため、12500だ。


 一瞬で十メートルの距離をゼロにし、頭を掴み上げる。

 いきなり目の前に現れたレインへ驚愕し、後ろへ飛ぼうとするが、それよりも速くレインの手が掴み上げ、宙へ持ち上げられる。ぶらぶらと宙にぶら下がりながらも、前足をジタバタと動かし、引っ掻こうとしている。


「ふんっ」


 それをひらひらと避けながら、地面へと叩きつける。

 グシャッとした肉を潰す感触が手に伝わる。次の瞬間には、別のサーベルタイガーの背後に出現していた。手刀で背骨を砕き折り、爪先で腹を蹴り上げる。


 最後の一体となったサーベルタイガーが逃げるように背を向ける。


「終わりだ」


 魔弾十発を同時に発射し、背を向けたサーベルタイガーの体に風穴を開ける。


「こんなものだな……五倍なら五分程度、持つ……か」


 魔力での身体強化には、当たり前だが魔力を消費する。いくらステータスが低くとも強化すれば、高くなる。しかし、魔力も制限しているレインは、無茶な強化が出来なくなっている。そんなことすれば、一瞬で魔力が消し飛ぶからだ。そのため五倍と抑えたが、それでも体感で五分持つか持たないかと言ったところだった。


「魔弾でも魔力は使うし、そこに身体強化まではやってられんな」


 結論、そうなった。

 魔弾を主体とした戦いをするか、身体能力あげて戦うかのどちらかならば、魔弾を使う。それは使い勝手がいいと言うことでもあるが、近距離中距離遠距離とバリエーションが豊かだからだ。身体強化であれば、近距離に限定されてしまう。


「しばらくはこの戦い方でいいか……なるべく魔力を使わない方針で」


 本当にレインからすればゲーム感覚だった。

 始めたばかりのゲームで、徐々にレベルを上げていき、使える魔力と能力が増えていく。それを現実で行っていた。レベルが上がることで上昇するステータスの能力値も一律にし、魔法は使える魔力と相談して改良。威力より効率を重視した魔法。今使える魔法を作るのもレインの楽しみの一つだった。


 そんなこんなで五階層を攻略し、それから四時間後、レインは二十三階層にいた。


「なんで?」








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