表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超越神の世界旅行  作者: sena
第9章 魔術学院編
222/266

219話 序列3位と序列18位

デパートからショッピングモールに変えました。

また後で変えるかも……?

 

 すでに試合が始まってから三分五十六秒経っているようだ。


 目を上に向けると、『3:56』と表示されている。

 テレビなどの電子機器はないようだが、魔力を用いた端末は生産されている。ただ、インターネットはやはりないようだ。


 レインは闘技場の隅々まで観察し、戦っている生徒に目を向ける。

 するとタイミング良く、システィナが戦っている生徒の紹介を始めた。


「あの短い金髪の男子生徒は、二年Aクラスのゴルネイヤ先輩です。男爵家の次男で、土魔法が得意魔法と言われています。岩の弾丸を打ち出す魔法をよく使っているみたいです。見てください。あんな感じです」


 そう言うと、まさにゴルネイヤが岩の弾丸を十数個作り出し、放っていた。


「相手の緑色の短髪の女生徒はジェシカ先輩です。同じく二年Aクラスで、風魔法を得意としています。ジェシカ先輩は多種多様な風魔法を使って相手を近付かせずに遠距離からの攻撃を得意としているみたいですね」


 まっすぐジェシカへ飛んでいった岩の弾丸は、下から吹き上がった風により逸れていく。


「まだ一度も傷を負ったことがないって噂です。そのことから『無傷の女王』や『無敗の風姫』なんて言われてもいます。先輩綺麗な方ですので」

「ほう?無敗……ねぇ」

「ゴルネイヤ先輩は、序列18位。ジェシカ先輩は、序列3位です」

「なら決まっているんじゃないのか?」

「ゴルネイヤ先輩は、もう何度もジェシカ先輩に挑んでいるみたいなんですけど、一度も勝てたことはないようで、多分今日も負けるとは思います」

「にしては、観戦に来ている人が意外といるが?」

「そうなんです。やる度に善戦しているので、見る側としては面白いそうですよ」

「ふむ。見応えがあれば、何度も同じ対戦者同士の試合でも見る人は見る、ってことか。にしても、ジェシカの方は受ける必要はないのに、何度も受けているのか?」

「はい、申し込まれたら、全て受けているそうです。ですけど、その強さもありますので、余程自分の力に自信がなければ、戦おうと思う人はいないですね」


 それもそうだな、と思った。

 実力が知れ渡っている相手にわざわざ喧嘩を売るのは、自分の力に自信があるのか、馬鹿なのか、阿呆なのか、自信過剰なのかだろう。


「風刃、風の防壁、風の弾丸。ふむ、基本的な魔法を更に強化しているのか。まぁ、基礎は大事だよな。ん?あれは……」

「ジェシカ先輩の得意魔法です。突風を上から叩きつけて、行動を阻害する魔法、『風の重圧(エア・プレッシャー)』です」

「ああ、そう」


 見たままを嬉々として説明され、思わずおざなりな返事をしてしまった。

 基本魔法、下級魔法と言われる魔法は、魔法初心者でも比較的簡単に使うことが出来るため、そう言われている。しかし、下級魔法だからといって威力が低く、弱いわけではない。階級と言うのは、扱いの難易度と考えた方がいいだろう。

『火球』も、術者次第、込められた魔力次第で威力が変わる。大量に込められた火球は、国を焼き尽くす程の火力になることもある。


(そう言えば、どこの世界だったか……下降気流(ダウンバースト)を喰らったことがあったな。あの時は、すぐに消してしまったが、ジェシカの魔法はあれの超縮小版って感じだな)


 レインはそう思っているが、風圧はかなりのものだ。

 ゴルネイヤの踏ん張っている足元がひび割れている。徐々に耐えきれなくなっているのか、もう少しで片膝が付きそうだ。


(ああいった魔法に対抗するには、魔力を放出すればいい。だが、その場合相応の魔力を使ってしまうからな)


 ゴルネイヤの額に汗が浮かんでいる。

 疲れているからというのもあるだろうが、魔力が少なくなっているからだ。


(残り二割弱ってとこだな。対してジェシカは半分は残っている)


 チラッと上を見上げ、時間を確認する。

 試合時間は、五分を超えている。

 このまま『風の重圧』を受け続けるだけならば、いずれ魔力が枯渇し、負けるだろう。


「やっぱり、ジェシカ先輩が勝ちますよね」

「そうだろうな。使用魔法の数が違いすぎる。基本的にゴルネイヤの攻撃は効いていない」


 ゴルネイヤは確かに強いのだろう。

 160人いる中の18位。だが、相手が悪く、手持ち魔法との相性が悪すぎる。

 ゴルネイヤの岩の弾丸を、ジェシカは風を動かすことで容易く逸らすことが出来る。


「だが、このままでは終わらないようだぞ?」

「え?それはどういう……」


 レインは答えず視線を向ける。

 システィナもつられるように見る。


 ゴルネイヤが地面に手を付く。

 それは傍から見れば、風圧に耐えきれず、手を付いただけに見えるだろう。しかし、レインは気付いていた。

 ジェシカも違和感を感じたように眉を顰めるが、少し遅かった。ぐらっと体が傾き、ジェシカの体が地面に沈む。いや、正確には、地面が陥没したのだ。所謂落とし穴。


「あ!」

「ジェシカの足元を崩した」


 そのせいで集中が途切れ、魔法が効力を失くす。

 風圧が消え、ゴルネイヤが地を蹴り、近接戦に持ち込むつもりなのか、距離を詰める。

 走っている最中に、ゴルネイヤの手の中に岩の槍が収まっていた。


「近接武器!?」


 システィナが驚く声を上げる。

 その様子から、ゴルネイヤは近接戦をする、ということを知らなかったと分かる。


「あ……」


 ジェシカまで後一メートルと言った所で、ゴルネイヤの体が吹き飛んだ。

 落とし穴にかかり、砂煙が立ち込めていたが、ゴルネイヤが吹き飛ぶときに、砂煙も一緒に吹き飛んだ。つまり、ジェシカの魔法攻撃だと言うことだ。


(強風を生み出し、指向性を持たせたのか。単純だが、それ故に効果が高い)


 レインの思った通りのことだった。というより、レインの眼には、視えていた。砂煙の中が。


 ジェシカは、崩れた態勢を風ですぐに立て直し、後ろに飛んだ。砂煙に紛れ姿を消し、隙を待つと同時に魔法を発動準備を整えた。そして、ゴルネイヤが距離を詰めてきた時、溜めていた魔法、つまり風を放った。それは、砂煙とゴルネイヤの体を壁まで吹き飛ばしたのだ。


「決まったな」

「は、はい。まさかゴルネイヤ先輩が近接戦を仕掛けるなんて……ジェシカ先輩は知っていたんでしょうか?」

「さぁ?ただ、ジェシカは風魔法が得意なんだろう。なら、風を読んだんじゃないか?」


 レインの推測は正解だった。

 ジェシカは自分を中心とする小さい範囲だが、風を読むことで敵の動きを察知していた。

 一メートルまで待ったと言うことは、最低半径一メートルなのだろう。


「さて、行くぞ。後十分くらいで授業だ」

「はい!」


 試合時間、八分二十三秒。

 教師が戦闘終了を告げ、意識を失っているゴルネイヤへ近付いていく。

 それを見届けずに、レインは闘技場を出る。


 教室までの廊下でシスティナは、興奮冷めぬ様で話しかける。


「凄かったですね、先輩方!」

「そうか?試合自体は長かったが、終わってみれば一方的だっただろう?」


 その通りだ。

 ゴルネイヤは、ジェシカの攻撃を完全には捌ききれず、頬や腕に切り傷を付けていた。対してジェシカは、ゴルネイヤの攻撃を全て避けていた。岩の弾丸を真正面から跳ね返そうとすると、岩の重さ、速度もあり、かなり魔力を消費してしまう。だからこそ、逸らすことで消費魔力を最小限にすると言う方法を取っていた。戦い方が圧倒的に巧いのだ。


「それに、ジェシカの方はまだ本気じゃないぞ」

「え!?そうなんですか?」

「ああ、遠距離攻撃が得意ってなっているみたいだが、近接戦まで許す相手がいなかったってだけだろう」

「た、確かに、言われてみれば……」


 呆然とした表情で、ジェシカの試合を思い出しているのか呟く。


「風で相手を圧し潰す。それは上から下へってだけじゃない。あの最後の攻撃、横にも使えるってことだ。あれをどうにかしない限り、近付くことも出来ない」

「な、なるほど。……先生なら勝てますか?」


 納得した顔で頷くシスティナが、意地の悪い顔をしながら聞いてくる。


「当たり前だろう。俺に勝てる奴はいない」

「ふふふ、さすが先生です!」


 レインの言葉にシスティナは微笑みながら凄いと言う。

 信じていないから笑っていると言うより、その自信過剰とも言える言葉が面白くて笑ったと言った感じだ。


「そう言えば、序列外って言うのはなんだ?」

「あ、それは、まだ序列戦をしたことがない人のことです。生徒の中には、特に一年生の中にはまだ入学して一ヵ月程なので、序列戦を行ったことがない人も結構いるんですよ」

「ふむ。それで、上位が上の奴が受ける理由は?自分より下の順位なら勝ったとしても意味がないだろう?……ああ、なるほど。序列が上の奴が負けた場合、序列外となるわけか」

「その通りです。抜けた順位に勝った人が入る形ですね。それで、受ける理由ですが、その時は何か賭けを行ったりしているみたいです。ええと、カードありますか?」

「ああ」

「裏を見てください」

「0、とあるが?」

「ええ!?お金持っていないんですか!?」


 どうやらこの生徒手帳もどきには、入金機能があるらしい。

 レインはこの世界の紙幣のことを全く知らない。街を雪那とデートしていた時も、お金を使うことがなかったため、調べてもいなかった。

 聞く限り、クレジットカードのような物でもあるみたいだ。


「この学院では基本的にお金は必要ないんです。でもそれは、Aクラスの特権でもあるんです」


 どうやら、学食が無料で食べれたのもAクラスだからだそうだ。

 Bクラス以下の生徒は、学食はお金を払い食べるようだ。それに、学院の中にはショッピングモールもあるようだ。寮室にキッチンがあるのは、そこで食材を買い、自炊出来るようにというわけらしい。


「なるほど。ショッピングモール、確か、街の方も二階建て以上の家も結構あったな」


 進むところは進んでいる世界のようだ。

 中世と現代が混ざり合った世界。それは、過去に来た日本人が関係していそうな感じだが、詳細は分からない。


「移動手段はどうなっている?」

「街の方ですか?魔導車と言われる道具があるんです」

「車か。馬車はないのか?」

「馬車ですか?ありますよ。魔導車は、魔力をかなり使うので、高位の魔法師が必要なんです。でも、高位の魔法師はどこも貴重な人材ですので、しかも魔法師にとって魔力とは力の源なので、貴族が移動する時くらいにしか使われません。その代わり、馬車以上の速さで移動できるので、急ぎの時はよく使われます」


 システィナの説明はほとんどあっている。

 間違っているのは、魔導車を動かすのに、高位の魔法師が必要という点だ。別に魔法師が必要なわけではない。大量の魔力を持っていれば、誰でもいい。例えそれが、農民だろうと戦士だろうと、魔力を持つものなら誰でも動かせる。ただ、長距離を移動するなら大量の魔力が必要になり、大量の魔力を保有しているのが、高位の魔法師、というわけだ。


「ふむ。まぁ、学院にいるうちは、関係ないな」

「はい、そうですね。学院は広いですけど、歩きですし」


 話しながら教室に向かっていたが、すでにAクラスの標識が見えている。いつの間にか、ついていたようだ。


「午後の授業を受けたら放課後は訓練だ」

「はい!よろしくお願いします!」






評価、ブックマーク登録、感想、ありがとうございます!

励みになりますので、入れて貰えると嬉しいです!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ