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超越神の世界旅行  作者: sena
第9章 魔術学院編
218/266

215話 魔力制御

後でもう一話更新するかもです。

 

 レインの創った異空間にて、システィナの魔法訓練が行われていた。


「……っ」


 今システィナは、地面に座らされ、目を瞑っていた。

 その集中は、ちょっとやそっとのことでは解けないだろう。

 額に浮き上がった大粒の汗が、滴り落ちるが、システィナは汗をかいていることすら気に留めていない。いや、留めることが出来ないと言った方が正しいだろう。それほど集中しなければならなかった。


 システィナが行っているのは、魔力制御。

 それも割とポピュラーな、魔力による身体強化だ。自分の体に魔力を纏わせ、強化する。近接戦を行うものなら必須の魔法だろう。しかし、システィナのやっていることは、魔力に一切の揺らぎを起こさず、()()()()()全身を纏わせないといけない。動いていない、止まっているままでさえ、今のシスティナには神経を使う技術だった。


「右肩、首、背中が弱まっているぞ」


 レインはかれこれ、三十分もの間、この身体強化を続けさせていた。

 そして、魔力が薄くなっているところを指摘し、その度システィナは修正する、ということを何度も行っている。

 普通なら魔力が続かない。元々が薄く纏い、強化率は然程ではない。1.1%程度の本当に些細な強化だが、強化し続けることに意味がある。


 魔力が枯渇しないのは、なくなる寸前にレインが魔力を供給しているからだ。

 これによりシスティナは半永久的に魔力を使えるようになっている。魔力を好きなだけ使えるが、その方法を()()()()()()()ではなく、()()()()()()()()()()()と言う手段を取ったのは、魔力の減り、そしてどのくらい今使っているのかを認識させるためだ。


 レインと違い、システィナは、いや、システィナに限らず人間には総魔力量と言うものが決まっている。無限ではないのだ。自分がどれだけの魔力を持ち、魔法にどれだけの魔力を使っているか、正確に把握しておかなければならない。それは、魔法を使う者にとって当たり前で、必要不可欠なものだ。でなければ、戦いの最中魔力が枯渇するという最悪の事態が起こりえる。


「今度は、左腕が弱まっている」

「っ……!」


 システィナは顔を顰め、更に集中する。

 常に魔力が消費され続けると言う肉体的、精神的疲労。それを維持し続けないと言う精神的疲労。長時間行う魔法行使に消耗するなというのは無理な話だ。それをシスティナは何の反発もせず、レインの言う通りに実行しているのだから大したものだと、レインは思った。


(普通の子供なら泣き言の一つでも言うだろうが、こいつは我慢強いを超えているな。まずは、魔力を使う感覚に慣れてから、総魔力量を増やすか)


 総魔力量、絶対量、保有魔力量とも言われる使える魔力量を増やす方法はいくつかある。

 まず一つ、レベルを上げる方法。これが確実だろう。レベルを上げれば、ほぼ全ての能力値があがるのだから。

 もう一つが、限界まで使い、回復させる方法。これは、筋肉の超回復に似ている。ただ、これには個人差がある。


 どれだけ上がるか、とはレベルが上がるステータス上昇も魔力の超回復を利用した増量方法も個人差が大きく関係する。近接タイプに魔法タイプなど能力値の伸び幅も様々だからだ。


「(ふむ。魔力制御はかなり出来て来たな。疲れもあるだろうが、集中力を切らすことはほぼなかった。これなら順当にいけば、日常的に使い続けることも出来るだろうな)よし、やめていいぞ」

「……はぁーーーーーーーー」


 レインから「やめ」の言葉を発してから、二秒程間があり、大きく息を吐く。間があったのは、集中しすぎて反応に遅れたからだ。そしてそのまま、後ろに倒れ大の字で寝転がる。貴族の淑女としては少々はしたない動作だが、そんなことにも気を使う余裕がない程消耗していたと言うことだ。


「魔力の扱い方は、学院でも学ぶだろうが、俺が教えるのは実戦で使う方法だ。殺し合いを目的とした魔法行使を教える。それは、対人、対魔物戦の両方だ」

「……はいっ」


 言い淀むように間があったのは、これは生物を殺すための訓練だと言われ、戸惑ったからだ。

 システィナの年齢は僅か十五歳の少女だ。生き物を殺すことに抵抗があっても仕方ない。しかし、レインはシスティナの思っていることも分かっていながら無視する。システィナも覚悟を決めたのか、返事はきちんとする。


「今はここまでだな。そろそろ七時半だ」

「ええ!?もうそんなに……」


 システィナの体感としては、何時間も座り続けている感覚だった。

 実際は三十分だったが、それを言ったところで気休めにはならないだろう。

 驚いているシスティナを余所に指を鳴らし、寮室に転移させる。


「わわっ!」

「まず、疲れから取るか」


 いきなりの転移で驚き、後ろに倒れるがそこは高級ソファー。しっかりと受け止め、弾力と柔らかさと伝える。

 ソファーに倒れ込むようにして座っているシスティナへ近付き、その頭を軽く指で小突く。

 その瞬間、システィナの意識は冴え、疲れが吹き飛び、体の汚れも浄化された。


「これから授業があるからな。疲れと眠気、その他諸々、吹き飛ばした。……さて、雪那」

「せつな……?」


 レインがキッチンの方に目を向け、雪那の名を呼ぶ。

「はーい」と言う返事がキッチンの方から聞こえた。

 その声にシスティナが驚愕する。

 男子寮に女子がいることにも驚きだが、レインがそれをさも当然と思っているような感じで呼んだことに大きな驚きを感じていた。


 雪那の返事から数秒後、エプロンを身に纏った雪那が料理を運んできた。朝ご飯だ。朝食を食べるにもいい時間帯。教室には、八時半までにはいればいいため、まだ一時間程の余裕がある。


「どうぞぉ」

「ああ、さて、いつまでもボケーっとしてないで、こっちにこい」

「は、はい!」


 雪那を見て、固まっていたシスティナに、一足早くダイニングへ行っていたレインが呼びかける。

 レインの呼びかけにハッとしたシスティナが躓きそうになりながらも駆け足でダイニングへ移動する。


「座って食べろ。雪那に二人分用意させたからな」

「分かりましたっ」


 今回雪那は自分の分は用意していない。

 別に椅子が二人分しかないわけではない。ディナーテーブルは、最大八人分。長方形のテーブルに、テーブルクロスがかけられた、レインの城にあるディナーテーブルの縮小版、小型版だ。木ではなく大理石で出来た机のため重いが、重力魔法がかかっており、その辺の木より軽い。プラスチック並みだ。だからと言って風で吹き飛ぶようなものでも、当たれば動くようなものでもない。床と位置を固定しているからだ。


「それで……あの、そちらの方は?」

「ん?ああ、雪那のことか。俺の配下、とでも思っていろ」

「分かりました」


 レインに詳しく話す気がないのを悟り、身を引く。

 知られたくない、話したくない、ということがあるのは、貴族なら知っている。言えないこともあるからだ。それに、自分に聞く権利がないことも知っている。


 それからの会話は少なく、システィナが口を開くのは、魔法について聞くことのみだった。

 それに対してレインは、一つ一つの疑問に答えていった。

 実戦で体感しなければ分からないことではなく、魔法の種類とその応用。自分にあった魔法の使い方。レインはシスティナの使う、いや、使える魔法を知っている。炎魔法の基本的魔法、火球から(アロー)系、(ランス)系、そして、システィナのオリジナル魔法と言える炎の鞭打。


火球(ファイヤーボール)炎の矢(ファイヤーアロー)は、牽制に使った方が効果的だろう。学生ならば、学院で教えられる魔法を主に使ってくるだろう?」

「確かに、序列戦でも下級に位置する魔法が連発されます」

「まぁ、下級魔法を使うのは単純に必要魔力のせいだろうが、使い勝手がいいってのも一つの理由だ。連射もしやすく、単純な魔法なためイメージもしやすいからな。火球、水弾、風刃、この辺りだろう」

「そうですね。確かに先生の言った魔法を使う生徒は多いです」

「だろうな。基本魔法と言うのは学院が教える基礎魔法。魔法適性がある者なら誰でも使える魔法を教えないといけないからだ。入学生ということもあり、複雑な魔法は教えんだろう?」


 その通り、というように頷く。

 魔法を習いに習得するために来る生徒に、いきなり上級魔法などを教えても理解できるわけがない。何事にも基礎が大事だ。それは魔法も同じ。


「だが、システィ。お前にはお前の魔法があるだろう?」

「はい」

「ならそれを使わずしてどうする。魔法と言うのはイメージ次第。同じ魔法でも同じ魔力を込めたとしても、イメージが強固な方が勝つ。炎魔法の場合は、より熱く、よく激しく、燃え盛る火をイメージする。想像力と言い換えてもいいな。魔法の効果の過程、結果を強くイメージする。学生なら特別魔力量が多い奴は少数だろう。なら、それ以外で勝て。戦いは実力と戦術だけが全てではないが、一流ですらないお前らが考えることじゃない」

「……はい」


 一流じゃないと言われ、しゅんとした顔で返事をするが、反論はしない。理解(わか)っているからだ。

 若干落ち込んだシスティナにレインはフォローの言葉をかける。


「俺に鍛えられるんだ。超一流程度にはなれるだろうさ……頑張ればな」

「はいっ!」


 それが気休めだとか夢物語だとか思ったが、システィナは元気に返事をする。

 レインの言葉を信じていないわけではない。むしろ、自然と信じてしまう。もしかしたら、と。


 それから上機嫌で残りのご飯を食べきる。

 その動作は丁寧だった。貴族令嬢として育てられただけはあるようだ。


 朝食を食べ終わるとすぐに食器を下げる。

 そんな雪那に目もくれず、システィナへ声をかける。


「その前に、制服はどうした?」

「あ、持ってきてません」


 レインの恰好は相も変わらずバスローブのままだ。

 対してシスティナは動きやすい部屋着。学院指定の運動着ではないし、制服でもない。つまり、これから一度部屋に戻らないといけないことになる。

 もう八時を過ぎ、十分を少し超えている。後十五分くらいしか残っていない。これから女子寮に戻るにも、時間がかかり着替えるのにも時間がかかるだろう。

 ならば、と。


「……これでいいか?」

「わぁっ……!」


 レインが指を鳴らすと、システィナの頭上に魔法陣が現れ、頭から足に向け通り抜ける。

 通り抜ける端からシスティナの部屋着が制服へと変わっていく。

 レインの服装も同じように制服に変わる。


「荷物は何かあるか?」

「いえっ、持ち物はないので、このままで大丈夫です!」

「うむ。なら、いくか」


 席を立ち、部屋から出る。

 この時、レインの脳裏に浮かぶことがあった。


(これって、俺が編入当日に女を連れ込んだって思われないか?)


 と。朝、一緒に登校する。確かにそう思われても仕方ないだろう。

 しかし、すぐに頭を振り、その考えを捨てる。どう思われようと関係ない、と。






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