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超越神の世界旅行  作者: sena
第9章 魔術学院編
215/266

212話 寮室

 

 レインが雪那と会話をしてから、教室へ戻ると、そこにはシスティナが尋問のような問い詰めをされていた。おろおろと、困った顔をしながらなんとか答えていたが、その質問の内容が、レインと知り合いなのかとかどうやって知り合ったのかとか恋人なのかとか、答えることが出来ない質問ばかりなため、今にも逃げだしそうにしていた。


 実際、レインと会ったのは今日が初めてだし、父親からも何も聞いていない状態だったため、本当に何も知らないし言えないが、それを言って信じるのは、このクラスにはいなかった。


 いきなり現れ、超がいくつも付く美貌の持ち主が自分から声をかけた相手、と言うのだからこうなるのも仕方ないかもしれないが、システィナ本人からすれば、厄介では済まない。だからと言ってレインが罪悪感などを感じることもないが。


 システィナからすれば幸い、レインがすぐにでも戻ってきたためそれらの方へ生徒が流れていった。

 一息を付きながら、顔には出さないが、それでも疲れたと言う雰囲気が滲み出ている。


 そんなシスティナを一瞥し、レインは次々と降りかかる質問を要点だけ答えていった。


「レインくんとシスティナさんはどんな関係なんですか!?」


 という質問に対して、


「システィの父親から娘に魔法を教えて欲しいと言われてな」


 と簡潔に答える。

 だが、レインへ質問した女生徒や他にも質問待ちをしている生徒が聞きたかった答えではなかった。

 もちろん何を望んでいるのかは分かっている。簡単な話、二人の関係、それも男女の関係を知りたがっている、と言うことだ。それも、レインがシスティナのことを、システィと気安く呼んだことが起因しているだろう。それを聞いた者が「愛称で呼ぶなんてそれ程仲が良いんだ!」と思ったわけだ。


 それからもいくつか、と言っても質問のほとんどがレインの女性関係を問うものだったり、レインの異性への好みを問うものだったりと、かなり偏っていたが、そう言った質問にも適当に答えていった。


 普段なら何人もの人間に囲まれての尋問のような質問攻めをされれば、誰彼構わず、「俺の邪魔をするな」だとか「うるさい」だとか、そう言ったことを言いながら殺していただろう。ここが国が運営する学院だとしても。レインにとってたかが人間が治める国など相手にもならないのだから。


 だが、それでも気分よくとまではいかずとも、それぞれの質問に答えていたのは、ただの気まぐれだった。これからの学生生活、雪那から言われたこともあり、普通に送ってみようと思ったのだ。それなのに、こんなことで揉めたり、殺害などしてしまえば、普通とは遥かに遠ざかる。いくら、人間如きと思っていたとしても、そのくらいは分かっている。


 教師が教室に入ってきて、強制的に質問が断ち切られ、レインとしては助かった。


 レインが編入したのは、二時限目の終わりだったため、これからは三時限目と言うことになる。


 高等魔術学院と言うだけあり、魔法に関することが主だが、一般的なことについても学ぶようだ。

 魔法の種類から、魔力の扱い方。実技でもやるのだろうが、座学でもやるらしい。


(って、こんなこと教えられてもな……)


 レインからすれば、面白くも楽しくもない授業だ。

 一般的なことと言うのは、常識などだ。殺人はいけません的な感じの。

 だが、レインがそんな人間が決めた法などに従うことはないため、これも無意味なことだ。


 要するに、レインにとってはつまらないと言うことになる。それもそうだろう、学生レベルの魔法理論など、大人が足し算や引き算を教えられているようなものだ。


 そんな退屈な授業を終え、ようやく放課後となった。

 もちろんそんな好機をAクラスの生徒が逃すわけもなく、再度レインの元へ行こうとしたが、それより先に、レインは席を立ち、これから用事があるとの旨を伝え、教室から出ていく。


『主様よかったのですかぁ?』


 その時レインの頭に突如声が響いた。

 雪那が『念話』を用いて話しかけてきたのだ。


『クラスメイトとの会話のことか?それなら、めんどくさいだけだ。授業も受ける歳でもない。つまらない授業に時間を割くくらいなら、戦っていた方がマシだ』

『そう言わずにぃ……青春を謳歌してはいかがですかぁ?』


 などと、自分のことを棚に上げている雪那にイラっときたが、すんでの所で抑え込む。

 レインからすると、子供のお守をしているようなもの。


『それに、今日中にやることがある』


 そう、何もレインは嘘で教室を抜け出たわけではない。

 質問攻めにあうのが嫌だからと言う理由ももちろんあるが、それ以上に、今日中にやっておかないといけないことがある。


 レインが教室を去り、向かった場所は寮だった。

 魔術学院は、全寮制となっている。もちろん男子寮と女子寮は分けられている。

 BからDクラスには。二人一部屋。Aクラスは一人一部屋が与えられている。

 Aクラスと言うのは、それだけ実力を持っていると言うことだ。つまり、それに応じた権利も与えられている。訓練室の優先権や書物の閲覧権など。


 レインは今日から自分の部屋となる場所に向かっていた。

 扉の前で、教師から与えられていたカードを取り出す。そこには、『一年Aクラス、レイン・ニヒリティ』と表示されていた。このカードは部屋の(キー)であると共に、この学院での身分を表すものでもある。名前の下の所に、『序列外』と言う文字もある。これは、この学院での公式序列を表している。


「決闘……とかがあるってことだよな」


 誰ともなく呟くレインの声は廊下を反響することもなく消えた。

 カードを取っ手の上にある液晶のような場所に当てると、ガチャと音がし、扉が開く。


 中に入り、入口の所にあるスイッチのようなものに魔力を流す。

 すると、電気がつく。と言っても、この世界で電気を使って灯りを付けているわけではないため、正確には魔法による光だが。


「部屋は……狭い」


 レインは小さいと言っているが、学生がしかも寮の部屋としては充分過ぎるくらいに広い。リビング、ダイニング、キッチンのLDKの部屋だ。それぞれが広くゆったりとしたスペースがあり、寮とは思えない程だ。しかし、レインはついこの間まで、城に住んでいた。寝室だけの広さでも、この部屋三つ分は優に超える広さがある。そんな所に住んでいた身からすれば、狭く小さいものに見えても仕方ないだろう。


「だがまぁ、ただ生活する分にいいか。ここで、魔法を使って戦うわけでもないからな」


 そもそも部屋とは戦いをするための場所じゃない。

 部屋でも浴場でも吹き飛ばされるようなことは、当たり前だがない。あったレインの方がおかしい。


「さて、生活するための品、要り様があれば、伯爵が全て用意すると言っていたが、俺に限れば、その必要はない」


 伯爵ともなれば、お金は多分にあるだろう。

 人一人の生活を満足に送らせるだけの資金はあるはずだ。しかし、レインの場合は、創造(つく)ればいいのだから、基本的にお金はいらない。

 食器にしろ、家具にしろ、寝具にしろ、必要な物は創れる。しいて言うならば、世話人の存在だろうか。普段はセバスがいるため、レインはほぼほぼ何もしなくてよかった。しかし、今回は、レイン(プラス雪那)だけだ。使用人、及びメイドたちを連れてきていない。五帝すら連れてきていないのだ。完全な一人(プラス雪那)旅となっている。


「雪那。お前、料理出来るか?」


 その声音からは、あまり期待していない、と言っているのがありありと伝わったが、レインの予想はいい意味で裏切られた。


「出来ますよぉ?」


 レインの影から出た雪那は自慢するように言う。

 そのことに、レインは驚きの声を上げた。


「マジか……アシュリーのような毒物じゃないだろうな?」

「当たり前ですぅ」


 何を言っているのか分からないとばかりの視線を受けたレインは、ひとまず安心した。これから、()()()()()()()()()、真面目に命に関わることになるだろう。


「なら、家事類は任せた。今回は、お前以外は今の所呼ぶつもりはないからな」

「ふふ、新婚旅行、みたいですねぇ」


 上機嫌となった雪那は鼻歌でも歌いだしそうな感じで、キッチンへ行く。

 離れていく気配を感じながら、レインはやるべきことに意識を向ける。


「まず、身体能力から下げるか……」


 レインのやるべきこと。

 それは、己の力を制限すること。普通に生活するなら、超常な力は必要ない。そのため、まず、『全視』や下位互換たる『千里眼』などの見通す系の能力を封印した。と言っても、使わないと言うだけで、実際能力の封印をするわけではない。

 そして、身体能力の制限。


「取り敢えず、一般人の十倍程度でいいか」


 この世界の一般人の成人男性のステータスは、オール100前後。生命力(HP)魔力(MP)が200~300と言ったところだ。レベルが上がっていれば、オール200程度には上がっているが、そのくらいは誤差の範囲だろう。

 レインの言っている一般人と言うのは、100と200の中をとって150。つまり、1500程度にすると言うこと。


「ここまで低くすれば、大丈夫だろう」


 一般人からすれば、1500と言う能力値は高く感じるかもしれないが、これが魔物を相手にする者たちだったら、低すぎる。ドラゴンなど高位魔物からすれば、鼻息一つで殺せる程度のステータスだ。だが、レインは全く悲観していない。むしろ、楽しそうな表情さえ浮かべている。


「ここまで弱くしたんだ。さすがに()()()()()()()()()()()()()


 そう。これから人間、しかも学生を相手に戦うことが多くなる。今までのままだったら、()()()()()()()()()()()()。のみならず、くしゃみから大声、瞬きから心臓の鼓動に至るまで、たったそれだけで殺してしまいかねない。レインからすれば、それほど人間と言う生物は弱いのだ。


「魔力は……減らすか。使用量を決めるか。何かしらの制限をかけた方がいいな。だが、まずはクラスのレベルを見てからにするか。あの転移者は、膨大な魔力を持っていたからな」


 転移者、翔太はスキルのおかげもあるが、かなりのレベルに達していた。そして、魔力もそれ相応に高い。学生レベルの総魔力量ではなかった。一人だけ桁が違ったのを、レインはステータスを確認した時に知った。


「千は少なすぎるな。十万……でも、中火すら使えない」


 魔力制限するとなると、これから主武器となる『妖刀・不知火』の基本能力すら使えなくなる。辛うじて、弱火までは時間制限付きで使えるが、中火を使えばものの数秒で魔力が枯渇する。


「魔力は不知火の技には必要不可欠。しかし、そうなれば、わざわざ手加減する必要がなくなるくらいに弱体化する。不知火の性能はそこら辺の魔剣聖剣など相手にもならんが、高位の武器が相手なら基本性能だけではちと厳しいな」


 と、そこまで考えて、思考を止めた。

 後々、強すぎると感じれば、その都度修正すればいいと考えたからだ。そして今は、まず、身体能力を下げることから始めた。


「身体能力をオール1500にして、魔力は今の所このまま……っと」


 レインの足元に魔方陣が現れ、光を放ち消えた。

 その瞬間感じる、全身の気怠さ。

 いきなり、身体能力が落ちて、死に瀕するような熱をひいているかのような怠さを感じる。


「ふむ。人間とは、こんな思い体で生活しているのか。大変だな」


 腕を動かし、足を上げ、体の調子を確かめる。

 今回は、段階的に封じていくわけではなく、ごっそりと一気に落としたため、凄まじく体が重くなったかのように感じた。だが、数分もしていれば慣れ、動けるようになった。


「パワーもスピードも落ち、今のままなら、五帝相手はちと厳しいぞ」


 そんな弱気な言葉とは裏腹に顔には笑みが浮かんでいる。

 獰猛な、凄惨な笑みとも言える笑顔が。


「スキルは封じんでもいいだろうな」


 スキルは身体能力と違って、封じなくても使わなければいいだけだ。


「こんなもんか……」


 と、一通り終わったところで、雪那からの声掛けがあった。

 どうやら、夕食を作り終えたようだ。

 レインは、呼ばれると、ダイニングへと赴き、椅子に座る。


 用意された料理は確かに美味しそうな匂いを放っていた。

 だが、油断はしない。なぜなら、アシュリーの料理(?)も匂いはなぜかいいのだ。問題は味。


 今回、雪那が作ったのは和風料理。

 味が分かりやすい、味噌汁を手に取り、啜る。


「っ!これはっ」

「どうでしょうかぁ?」


 眉を寄せ、少し不安げに尋ねる雪那。

 美女とは困った顔も様になっている。

 レインの反応は、


「……美味い」


 そう言った瞬間、雪那が花が咲いたような笑みを浮かべた。

 レインの感想は率直なものだった。きちんとした手順通り、魔法など使わず、全てを己が手で作ったことが分かった。

 その味は、最近になって料理をしだしたエレイン以上のものだった。


「料理はよくするのか?」

「あまりしませんがぁ、得意ではありますよぉ」


 その言葉に偽りなし、そう感じる程、確かに美味しかった。


 レインが口を付けたのを待ってから、雪那も自分の分に手を付ける。


 二人揃って食べている様は、確かに新婚と言えなくもなかった。






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[一言] いやぁ今日もいいですね! 毎日投稿なので、いつも見れてうれしいです! これからも頑張ってくださいね!
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