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超越神の世界旅行  作者: sena
第8章 外来宇宙編
208/266

205話 レインVS神皇

 

 吹き飛ばされた神皇は地面をバウンドし、フッと姿が消えた。


 地面へ激突し、クレーターを作り止まるはずが、そんな無様を晒す相手ではなかったようだ。

 吹き飛んでいる際中、冷静になったのか、再度レインの前に現れた神皇の表情は最初現れた時と同様無表情だ。しかし、警戒と言うものが神皇から感じられる。


 レインを敵として認識したのだろうか。


 神皇は白いドレスのような衣装を身に纏っている。

 今更ながら戦いに赴く恰好ではない。吹き飛ばされ地面を転がったにも関わらず、全く汚れは付いていない。

 高位の存在なれば、衣装も自分の魔力を具現化した物を着る。それは、生半可な防具などより余程強力だ。レインも今の恰好は、薄手のシャツに少し長めの短パン。恰好だけを見ると、日本での部屋着のようだ。


 レインと神皇の距離は三十メートル程。


(もし、こいつが言葉による能力のみで王を気取っているのなら……つまらんが)


 レインは、神皇の能力を考えていた。


(少なくとも『能力を与える能力』があるはず。それがどんな感じかは分からんが……)


 能力を与える仕方にも色々ある。

 自分の力を分け与える方法。対象の潜在能力を引き出す方法。対象に合った能力を発現させる方法、などなど。


 神皇は十神将に権能を与えていた。

 普通、神の権能と言うのは一人につき一つだ。その神に合った権能を持つ。相性と言えば分かりやすいだろう。

 グーレルが持っていた権能は『大海』。それ以外にもグーレル本来の権能があるはずだ。そしてそれは、水に関することだと分かる。


 そこからレインが考え付いたこと、それは、グーレルの水の能力を強化した権能が発現した、と言うこと。それか、類似した能力を与えた、と言うこと。同じようだが、その二つには明確な違いがある。前者の場合は、力を引き出すと言う意味合いが強いが、後者の場合は、新たな力を与えると言うことになる。


 そして後者の場合なら、神皇自身もいくつもの能力を持っていることになる。

 もしかしたらゼウスのように『全知全能』の力かもしれない。


(まぁ、それはないな……)


 だがレインは、そうじゃないと確信していた。

『全知全能の権能』を持っているのならば、神を創造するなど容易い。気付かなかった、と言うわけはないだろう。自前の兵士をほぼ無限に創り出せるに等しいのだから。捨て駒にするなり、肉壁にするなり、使い道はたくさんある。なのに、それをしていないと言うことは、生命創造系の能力はないことになる。


(根源が何かは関係ない。問題はこいつが言葉以外の能力を持ち、戦えるかどうかだ)


 レインが一番気にしているのはそこだ。

 今まで、神皇は『命令』すればそれだけでよかったのだろう。命令すれば、自分に逆らえる存在もおらず、なまじ他の神より格が上だったために素の力も高く、勝てる神がいなかったのだろう。


(能力にかまけた奴程、頼りにしている能力が使えない時、何も出来ない。しかも、命令するだけで相手の行動を縛れるのなら実戦の経験もないかもしれん)


 そこまで考えたレインは若干焦りを感じ始めた。

 もしかしたらこいつ、戦えないんじゃね?と。


 だが、杞憂に終わった。

 神皇の両手の中に光が生まれた。

 右手には黒く、何もかもを塗りつぶすような黒い光が。

 左手には白く、真っ白で全てを白紙にするような白い光が。

 光が形を取り出していくと、一対の剣が収まっていた。


「お?二刀流か……じゃなくて、白黒の剣とか、俺の主武器(メインウエポン)と被ってんじゃねぇか」


 主武器と言うのは、不知火ではない。

 あまりに強すぎる為、普段は別次元に封印している剣。武器が強すぎると、レインが戦いを楽しめないと言う理由で使っていない。


「ま、いいや。来い、不知火」


 右手を前に出し、呼ぶ。

 蒼い炎が吹き出し、一振りの刀が現れる。と、同時にレインの腰に不知火の鞘が現れる。

 グーレルとワシュイドと戦った時には使っていなかった鞘。黒紫色で、炎のような模様が入っている。


 チンと納刀し、出方を伺う。


 先に動いたのは神皇だった。

 上体が前に倒れた瞬間、レインの目の前にいた。


「……っ」


 左剣を振り上げ、レインの首目掛け斬りかかる。右剣も少し遅れ、首に向け振り切られる。左右の剣が迫り、挟むように迫る。しかし、レインの首に触れる寸前、キンッと甲高い音が響き、左剣と右剣が同時に弾かれる。


 レインがしたのは、居合斬りだ。しかしすでに不知火は納刀されている。と言うより、神皇はレインが不知火を抜いたことにすら気が付かなかっただろう。


 だが、神皇もそれだけで攻撃をやめることはない。

 弾かれた剣を手首を切り返すことで再度斬りかかる。


 何度も斬りかかるが、レインの肌に触れる寸前、やはり弾かれる。

 レインの手は不知火の柄に置かれているだけで、握り締めてはいない。


「っ……!」


 このままでは埒が明かないと一度神皇が距離を取った。そこをレインは追いかけるように走る。いや、走ろうとした。しかし、足が動かず前のめりになったところをレインの頭上へ飛んでいた神皇が左剣を振り下ろす。


「おっと……よかったよかった。一応、剣技はあるらしいな」

「……」


 レインの傲慢ともとれる言葉に顔色一つ変えず聞き流す。

 完全に不意を突いた攻撃にも不知火を掲げることで受け止めている。その時、グンッとレインの体が地面へ沈んでいく。左剣の重量も上がっていそうだ。レインの体感ですでに一トンを超える重量となっている。

 このままでは地中深くに落とされると考えたレインは、地面を強化する。

 強化すれば、後は自分の力で耐えればいい。グイと押し上げるようにして弾き飛ばそうとした時、左から黒剣が迫る。狙っている場所は、胸の辺り。心臓まで斬り裂くつもりなのだろう。


「『断壁の蒼炎盾・多重』」


 蒼炎の花弁の盾が八つ連なるようにして現れる。

 四枚までを抵抗なく斬り裂き、六枚目で減速し始め、七枚目で威力は四分の一程になった。八枚目で止まり、ギリギリとせめぎ合っている。


「不知火……弱火」


 不知火が蒼炎を纏う。そして、狐火が五つレインの頭上に現れ、神皇に向け飛ぶ。それを、レインの心臓を斬り裂こうと盾とせめぎあっていた左剣で斬っていく。

 相変わらず右剣は不知火ごとレインを斬り裂こうとし、左剣はレインが次々と飛ばしてくる狐火を斬っていく。その数、二桁を超え三桁に突入していた。


「不知火……中火」


 不知火が纏っていた蒼炎が更に激しく燃え盛る。

 そして、レインは体の力を抜き、神皇の懐へ滑り込むように入る。左拳を神皇の腹へねじ込む。


(剣術も中々……そして体術も)


 レインは神皇の力を測りながら、少しずつギアを上げていく。

 今のところ、技術の面で言えば、及第点を上げてもいいかな?程度だが、まだ始まったばかりだ。


 レインの左拳は戻していた左剣の柄で受け止められていた。

 神皇は左足を前に出し、上体を逸らし、左剣を掬い上げるように斬り上げる。


「不知火……業炎火葬」


 レインは飛び退り、魔法を使う。

 神皇の周りを炎が囲い、竜巻を作る。


「染まれ」


 紅く燃えていた炎が蒼く染まっていく。

 温度はぐんぐん上昇し、竜巻の周りの空間が歪む。


「不知火……一ノ太刀・瞬閃火」


 不知火が纏っていた蒼炎が収まり、刀身が蒼く染まり、上段に構えたレインは不知火を振り下ろす。

 パカッと竜巻ごと斬り裂かれる。


 竜巻は斬り裂かれたが、神皇は頭上で剣をクロスしながら受け止めていた。

 その身は僅かにも燃えておらず、ドレスすらも焦げ付いてさえいない。ただ、斬撃の衝撃は凄まじく、受け止めている神皇の足がズシンッと沈み、大きなクレーターを作っている。


(普通の攻撃はほぼほぼガードしてくるな。魔法も正確に核を斬っている)


 レインは神皇の能力を改めて確認していた。

 眼もよく技術もある。自分の肉体も完璧に近いレベルで制御している。グーレルよりも技術面で言えば上だと感じた。


 その時、フッとレインの前から神皇の姿が消えた。レインは振り返ることもせず、前に三歩移動することで後ろに現れていた神皇の斬撃を避ける。今度は、右に二歩。そして、後ろに二歩下がる。僅かな移動で神皇の攻撃を次々と避けていく。

 そして正面からの攻撃は受け止めずに、ギリギリで見切って避け、カウンター気味に斬りつける。しかし、どちらかの剣で受け止められるが、その度に大きく吹き飛ばす。


(スピード、いや単純に速くなっただけじゃないな。気配の断ち方、剣筋、力が一段階上がった)


 地面を蹴ると同時に気配を遮断したり逆に殺気と混ぜ膨らませたりすることで、レインの感覚を鈍らせながらの剣戟。それらが息をするかのように神皇は行っている。


(この戦い方、初めからの強者がするものじゃない)


 これだけ剣を交えれば気付く。

 きちんとした技術に基づいた攻撃だと言うことに。実際、鍛えるために鍛錬したかは別として、理にかなった動きだ。


(それに、グーレルと違って合理的な攻撃……ふふ、楽しいな)


 神皇の攻撃は、先読みや駆け引きをした攻撃だ。

 一歩や二歩なんてものじゃなく、百歩も二百歩も先を読みながらの攻撃。未来予知に近いことが出来なければまず不可能な芸当だろう。グーレルは反応は出来ていたが、それは感によるものが大きい。多分、ほとんど何も考えず、その場その場で行動している脳筋なのだろう。


 その時、レインが初めて神皇の気配を掴み損ねた。


「おっと……!」


 紙一重で避けていた攻撃を大きく後ろに飛ぶことで躱す。


 普通に二人は剣と刀で斬り合っているが、魔法(能力)による攻撃ももちろん行われている。

 斬り合っている最中にも、風の弾丸、重力の波による攻撃、空気を圧縮し解放する暴風による攻撃だったり、目に見えない攻撃を主とした魔法がレインを襲っている。特にレインが困るのは、重力の波による攻撃だ。急にグッと重くなったかと思うと、フッと力が抜けるかの如く重力がなくなる。他にも横から着たり、斜めからきたりと忙しない。


「……」


 神皇がボソッと呟くと、空から一筋の線がレイン目掛け落ちてくる。それは、雷だ。しかし、グイッと何度も空中で曲がり、軌道を読ませないよう動きながら落ちてくる。


「不知火……炎狐」


 ビュッとその場で不知火を振り、飛び散った蒼炎が狐の形をとる。

 蒼い炎の狐が三体現れ、レイン目掛け落ちようとしている雷へぶつかりにいく。三匹が同時にぶつかり、雷を相殺した。


「…………よ」

「ん?」


 小さく呟いた神皇の姿が消えた。

 レインは大きく右に飛び、来る斬撃を避ける。先程までレインがいた地面がパカッと斬り裂かれた。深く深く、地面に亀裂が入っている。


(強化せよ……ってところか。自分に使ったのか?)


 囁き声ともとれる程小さなものだったが、レインには届いていた。

 呟いた後、急に動きや力、全ての能力が上がった。


(一段階……いや、二段階は上がったな。斬撃の威力にあの速さ。普通の身体強化ってわけじゃないみたいだし……かと言って、魔力を使ってないわけではない……)


 レインの眼には、神皇の体に高密度の魔力を纏っているのが視えている。その密度たるや、並みの神数十人分を優に超える量が圧縮されている。それだけでも超硬度の鎧のようなもの。


「ふっ!」


 更に速さが上がったが、きちんと視て避けたり防御する。

 レインの攻撃はほぼほぼ防がれるが、レインは手数より威力に重視を置いた攻撃をしているため、受け止めれば必ずと言っていい程吹き飛ばされる神皇。


 レインのただの斬撃では、神皇の肌を傷つけることが出来ない。魔力を焼き切ってはいるが、纏っている魔力の表面を切り裂くにとどまっている。


(すんごく硬ぇ……魔力が減った様子もなし。なら、実質無限の魔力ってところか。なら、突然魔力切れで戦えないってことはないな)


 つまり、この楽しくて楽しくて堪らないこの戦い(殺し合い)を続けることが出来ると言うこと。


「くひぃ……いいねいいねっ!最っ高だよ!」

「……っ!」


 空から降り注ぐ雷の雨を避けながら神皇へ接近、不知火で斬りつけ、拳で殴りつける。


 レインのテンションは最高潮にあった。

 グーレルとワシュイドと戦っていた時以上の身体能力で、動き回っている。それに付いてこられる神皇へ歪む笑みを抑えられない。


「さぁ!もっと楽しもうかっ!」






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