176話 始まり
前半はある漫画を読んでいたらいきなり書きたくなって書いたので書いてみました(笑)
うーん、なろうってどこまで書いていいんでしょう?えろも残虐な描写もどの辺までがバンされない範囲か分からないんですよねー。まぁ、書きたければノクターン行け!って話ですよね……
では、どうぞ!
sideレイン
ヨルダウトが魔界からの帰還に戸惑う数時間前。
レインは、人の物語を視ていた。愛憎劇を。
もちろん、作られた劇ではない。
レインの持つ能力の一つ、『全視』を使って視ていた。これは、文字通り全てを見通せる。どんな世界でも、監視防止の結界、スキル、魔法、何を使っても防ぐことは出来ない。
そして、視ている光景を巨大スクリーンに投影して、完全に映画気分で視ていた。
その中の面白そうなものを選んで視ていた。
ある貴族と平民の物語。
王とメイドの物語。
愛し、愛され、裏切り、裏切られ、挙句殺し、殺され。
そんなドロッとした昼ドラみたいなものを視ていた。
「うーん、なんか普通」
しかし、実際に起こっている物を視ているため、最初面白そうと思っても、視ていくと面白くなかったり、最終的には和解したり、レイン的につまらないものだったりもした。
「次だ次……」
右手を前に出し、タブレットの画面をスライドするように、空中を横に撫でる。
すると、画面がスクリーンの画面がスライドされ、次の光景が映し出された。
「お、これは……中々」
そこに映っていたのは、ちょうど浮気しているところが妻にバレたある夫婦だった。
「うんうん、一夫一婦制の場合は浮気しちゃいけないよな」
うんうんと深く頷いているが、その口元はニヤケている。
『ちょっとその女誰よ!!!』
『ち、違うんだ!こ、これは……』
なんて言い訳を述べているが、現場を抑えられた以上言い逃れ出来ない。
「ふむふむ。お、ビンタ」
妻が浮気女の頬をぶった。
それも本気で叩いたらしく、赤く腫れ、唇を切ったのか血が流れている。そんな細部まで綺麗に映っている。
「あ、やり返した」
その後は、キャットファイトと言うには激しかったが、女同士の戦いが始まった。そして、その隙に逃げ出そうとしている旦那。
まぁ、当たり前のように見つかり、逃げ出せないように縛られた。
「ふふ、やっぱ人は愚かだな。こうなると分かっていても辞められない」
誰しも思ったことや感じたことはあるだろう。
いけないと思っていてもしてしまうこと。
ダメだと思っても、続けてしまうこと。
それは人間の業でもある。だが、それでいい。愚かで愚鈍な人間は頭で理解していても行動を起こしてしまう。そんな物語、実に面白い。
抑え込まれ、上に乗られた浮気女が近くにあったハサミを手に取り、妻の脇腹に突き刺す。
大量の血が流れ手を汚す。
カタカタと自分の犯した行動に恐怖し、しかし、これでやっと男を手に入れることが出来ると思い、ゆらゆらと立ち上がり、拘束している男に近付く。
『ふ、ふふ、これであなたは私の……やっと、一緒になれるよ』
『ひ、人殺し!?く、来るな!お前なんか知らない!!!』
『え……』
歪な笑いを上げていた女が男に近付いて拘束を取ろうとしたところで、男の悲鳴に近い叫び声が響く。
まさか拒絶されるとは思っていなかったのか、呆然と立ち尽くす。アニメだと、目にハイライトが消えていることだろう。
殺人まで犯して一緒になろうとしたのに、肝心の相手には人殺し呼ばわりされ、拒絶される。頭が真っ白になり、何を言われたのか分からない。いや、理解したくないのだろう。
「あーあ……その答えは不正解」
レインは先んじて答えを漏らす。
未来を読んだわけじゃなく、精神が不安定な時に、逆撫でするような言葉はより不安定にさせるだけだ。
そして、レインの読み通りに、女は落としたハサミを拾いにいき、再度男に近付き、首に突き刺す。
耳を劈くような悲鳴を上げ、絶命する。
「やっぱ、愚かだな……恐怖に駆られ、現状を相手の今の精神状況を考えられず、咄嗟に言葉を投げつける」
よくあることだろう。
だが、よくあるが、実際に事が目の前で起こると、人は冷静にはいられない。その結果がこれだ。
もし、ここで、「ああ、これで君と一緒になれる」とでも言えば、その場は大丈夫だっただろう。
「どのみち殺人を犯したんだ。どの世界でも、殺人は罪としているからな。この場を逃げられても、長くは持たないだろうな」
事が起こった場所は地球。それも、日本だった。
魔法が使えず超常的な力を持った存在が表沙汰にされず、世間では知られていない中で、だが、警察はまぁまぁ優秀とされる。情事の最中のことだ、証拠となるものはたくさん残っており、証拠隠滅するにもそこまで頭が回っているかすら怪しい。
「はぁ、いいねぇ。女を否定しても地獄、選んでも地獄。どっちにしても地獄。愚かだねぇ」
それから数時間、いろんな世界の愛憎劇、そして、復讐劇を視ていた。
「結構面白かったな。感情を完璧に制御できる奴は一部だからな……そう言えば、ヨルダウトは魔界行ってたな、さてさて、どうしているか、視てみるか」
ふと思い出し、スクリーンの画面を魔界に変える。
その時ヨルダウトは、エリーゼと話し合っているところだった。
「あ、あーー……これは、アスモの近くだったか……うん。ドンマイ」
ヨルダウトが魔界を選んだ理由も知っているが、転移先は決めていなかった。
ランダムで魔界のどこかに繋がるように、門を開いたため、レインも転移先を知らなかった。そして、今ヨルダウトがいる場所を知ったが、まさかアスモデウスのところだとは思っておらず、思わず励ますような言葉が出てしまった。
「まさか、アスモも俺と関係のある奴を死ぬまで吸い尽くすことはしないだろうが……それに、元気だしな。うん、大丈夫だろう」
ヨルダウトの顔を見ても特に疲れているような感じはせず、さらに、エリーゼと楽しく話している様子からは、アスモデウスが手を出していないと判断し、一応安心する。
「まぁ、もしもの場合でもヨルダウトも無抵抗じゃないだろうしな。それに、この吸血鬼……んー、いつだったか。アスモが話していた気がするが、正直その時興味なかったんだよな。お、あれは、召喚を応用した魔法、いや、特殊スキルか。魂無き肉体を作る……って、あの水晶、アスモにやった霊剣、まさかヨルダウトにあげたのか、ったく、ベルはきちんと制御出来たと言うのに……」
呆れたように、言う。
アスモデウスだけじゃなく、他の王たちにも試練的な感じで、あげていた。
もちろん、扱える者も扱えない者も出てくるが、扱えたらいいな、程度の気持ちで与えたため、そこまで気にしていない。
「ヨルダウトなら使えるか……多分。吞まれたらそれまでってことで、それで、あの魔物、吸血種か?すっごく不安定なのに安定している。どんな確率だよ」
実際、ウルが出来る確率はとても低い。出来たとしても、それを操れるかどうかは別の問題。だからレインは、不安定なのに安定していると表現した。
それからひと悶着あり、ヨルダウトが魔界から帰ろうとしているところで、転移門を出す。
「まだ、ヨルダウトは魔界に門を作れないからな」
転移陣を出した時に、それは唐突に起こった。
ーーバリィィィイイン!!!
と、大事な何かが砕ける音がした。
「これは……!そうか……クク、ふふふ……アハハハハ!!!やっとか、やっと干渉しだしたか!」
その砕ける音は、一定以上の強者が感じていた。
これからよくないことが起こると、漠然ながら感じていた。
「いいぞ!よくやった外来の奴ら!さて、神界諸君!総力を挙げ対応に当たれ!でなければ本気で神界が消滅するぞ!」
砕ける音。
それは、外来宇宙とこっちを隔てる次元層が砕かれた音だ。いずれ、時間が経てば戻るが、それでも、お互いがお互いの存在に気が付いた。なら、やることは一つ。戦争だ。和平などレインが許さない。
★★★★★
side???
そこは、白い柱が一定間隔で建ち並んでおり、清潔感と気品がある構造となっている。
外から一望すれば、神殿、と言う言葉が一番合うだろう。
まさに神の住処。
そんな神殿の一角に、『神』と呼ばれる存在がいた。
「神皇様。我ら十神将総員、揃いました」
「ああ、よくぞ集まってくれた」
神皇様と呼ばれる人物は、白い装束を纏い、髪色は艶のある黒髪、漆黒の瞳を持つ女性だ。
十神将と呼ばれる者たちは、神皇様に使える騎士と言ったところだろう。
十神将の誰もが隔絶した力を持っているが、神皇様はまさしく次元が違う。
十神将の皆が、陶酔したような顔で神皇様を見ている。
「ワシュよ。外へ行く用意は出来ているな?」
「はい、いつでも行くことが出来ます」
「敵戦力は?」
「敵の戦力は侮れないと思われます。数で言えば、我らが負けております。得た情報からすれば、我ら十神将には個々人では及ばないまでも、我らに近しい力を持った存在は確認されております」
「そうか。ならば、我とどちらが強い?」
「それはもちろん、神皇様でございます。貴方様に勝る存在などおりません」
深く頭を下げ、心から思ったことを述べる。
その言葉に対して、神皇様はそれが当たり前だと言う態度で微笑む。
「では、出陣せよ。奴らの領土を我らの物にするのだ!」
『はっ!』
十神将の全員が深く頭を下げる。
それを見届けると、神皇様はフッと姿を消す。
「さて、神皇様は仰った通りに行動するのだ。だが、決して相手を侮るな」
「本当に、俺らの敵になりえるのかよ!」
「そうだ。一対一なら我らが負けることはあり得ないだろう。だが、数で言えば、こちらの十倍どころではない。神兵を全投入したとしても、数で負ける。貴殿らの想像以上の戦力が待っておる。油断はするな。徹底的に排除しろ。情けをかけるな」
「了解だ。あんたがそう言うならホントのことなんだろうさ!」
「私も疑問には思っていることだけど、未知の敵だからね。慎重になっていてもいいんじゃない」
次から次に思い思いのことを話し、それに対して、神皇様にワシュと言われた者が答えていく。ワシュは十神将のまとめ役なのだろう。
同格の者たちにすら信頼され、尊敬されているのが分かる。
「それと、神皇様の眼にも視えない時があったらしい。十分に気を付けよ」
「それって、神皇様より、強ぇ奴がいるかもしれないってことか?」
「いや、それはあり得ないだろうが、それでも、警戒するに越したことはない。もし、神皇様の眼から逃れる者がいるのならば、危険だ。貴殿らでも一対一では決して相対さないようにしてくれ」
「分かった」
「警戒は怠るなってことね」
それから、誰が一番最初に出撃するか、と言う話でもめながらも、纏まっていった。
「じゃあ、一番乗りは俺だな!」
「チッ……仕方ない。最初は譲ろう」
「……では、決まったな。全ては神皇様の為に」
『全ては神皇様の為に』
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