173話 成長する敵と新たな力
(いや、なぜマグマ?)
ヨルダウトが立っている直径約30cmの足場。
端の方がポロッと崩れているのを見ると、強度はさしてないようだ。バランスを崩したり、何かの衝撃でマグマにダイブすることになるだろう。
すると、マグマが爆発した。
正確には、マグマから大きな蛇が現れたのだ。
「ふむ。これも悪魔か?」
『いや、これは、ワシが創った魔法生物だ。一匹だけじゃないぞ?それ、倒して見せろ」
「なるほど。魔法で創った蛇か」
見た目は完璧に生きている蛇にしか見えない。
鱗一つ一つすら完璧に再現されている。
そして、蛇が何匹もマグマを裂き現れた。
その数、33匹。
「ほぉ、壮大だな……だが、失せろ」
一睨みする。
それだけで、今まさにヨルダウトに飛び掛かろうとしたいた蛇たちが動きを止める。
『なんだと!?殺気だけでワシの傑作を!?』
「なんだ、この程度なら余が直接手を出すまでもない」
『い、いや、まだだぞ!よく見よ!』
そう言われ、見てみると、中には動き出している個体がいた。
『こ奴らはな、耐性を得るのが物凄い速いのだ。早く倒さなければ、まともな攻撃すら通らなくなるぞ?』
ニヤニヤと意地の悪い表情をしながら笑っているのが分かる。
確かにこうしている間にも、蛇たちは動き出している。
「キシャァアアアアアア!!!」
「喋るのか……『黒雷』」
指先を向け、黒雷を放つ。
頭を貫通され、その巨体がマグマに沈んでいく。
「でかい……全長10mと言ったところか」
『あ、言うの忘れていたけど、そ奴ら再生するぞ。体のどこかにある『核』を破壊しない限りな』
「なんとめんどくさい」
それが、正直なヨルダウトの感想だった。
魔力視で見ても、魔法で創られているため全身が魔力で構成されている。『核』と言われても、分からない。
そして、実際その通りで、頭を貫いたはずの蛇もいつの間に起き上がっていた。
「ふむ。こういった倒せない敵は行動を止める……だったか。なら、手に入れた力を使ってみるか」
『ほれほれ~ん?んん?早うせんとどんどん強くなるぞ?』
「……」
どうやって倒そうかと考えていると、煽るような言葉を投げかけてくる。
「まずは、足場を整えるか」
掌を足場につき、新たな力を使う。
手に入れた力の一つ。水晶の生成だ。
ついた掌から直径一メートルの水晶の足場が形成される。
「使い方は念じるだけ、形はイメージ次第か。特に魔力を使った感じはしない」
少し使ってみた感じだが、この水晶を作る際には、魔力を使わない。と言うのも、作るだけなら何の対価もなく使えると言うことだ。
「無から有を生み出すか……主殿の力に似ている……いや、主殿が創ったのだったな。なら、納得だが……」
一斉に来られれば、いくら足場を強化したとはいえ、動きにくくなるし、もしかすれば壊される可能性がある。
そのため、広げることにした。
水晶の橋がいくつも伸びる。
「強度も中々」
橋を架けたところで、その水晶の橋に向けて体当たりを喰らわす蛇がいた。しかし、水晶は傷一つ付いていなかった。
「魔力を纏わずこの強度……なら次は」
橋から水晶の槍を伸ばす。
橋の近くにいた蛇は、無数の水晶槍に貫かれる。
グツグツと茹っているマグマに触れても融ける様子はない。
「よし、少しは理解した。本格的にやるか」
スッと掌を前に向ける。
すると、ヨルダウトから全方向へ水晶が形成される。マグマが凍り付くかのように、水晶に覆われる。
「チッ、数匹逃したか……」
ほとんどの蛇は水晶に閉じ込めることが出来たが、何匹かには、避けられてしまった。
「これは、声の奴が操っているのか?それとも自身の意思で動いているのか?」
残った蛇の行動を見て、思わずそんなことを考えてしまった。
水晶に閉じ込められ身動きが取れない蛇に、動ける蛇が突撃をし、壊そうとしていた。だが、一向に壊れる様子はない。魔法やスキルは使えないのか、ただの体当たりを繰り返している。
「このままだと壊される可能性もあるわけか……」
ヨルダウトは指を鳴らす。
すると、水晶が粉々に壊れた。
確かにこれなら、全身を壊すことが出来るから、『核』を狙い撃ちしなくてすむ。
「残り三匹。なんか速くないか?」
マグマを遊泳している速さが上がっていた。
「まぁ、関係ない」
今出せる最大出力で水晶を形成する。
先程の比ではない速さで蛇にまで到達し、閉じ込める。
「ッ!また逃した」
二匹を閉じ込めることに成功したが、一匹を逃してしまった。
やはり、段々と速くなっているようだ。
ほぼ無限の射程、高威力の攻撃力、耐久性。
それが、この水晶の利点だ。それに、魔力を纏わせれば、さらに強化出来る。
デメリットと言うデメリットがない。
形成限界もなく、イメージ次第でどんな形でも作れる。
「余の魔力を纏わせれば……」
今までは、ヨルダウトが初めて見た、澄んだ青色の水晶だった。
しかし、魔力を纏わせれば、水晶に初めて触れた時と同じように真っ赤に染まった。ヨルダウトの魔力と混ざり、変色したようだ。
「行け」
紅水晶を伸ばすのではなく、弾丸のように飛ばす。
弾幕が張られ、避けようとするが、全てを避けれるわけがない。少しずつ被弾していく。
しかし、受ければ受ける程硬くなっている鱗に傷は浅くなっていく。
だが、それでいい。
少しの間足止めさえ出来れば、後は、閉じ込めるだけ。
「これで、終わったぞ」
『……ま、まさか、本当にやり遂げるとは……』
愕然とした表所をしていることだろう。
声の主は試練と言ったが、元々ヨルダウトに期待していなかった。適当にあしらい帰すつもりだった。
『戦っているところを見たが、何だその水晶は?』
「これか?アスモデウス殿から貰った武器だ。『落墜の霊剣』と言うらしい」
『まさかあのでかい水晶か!?……あれを扱える者がいるとは……なるほどな。よし、分かった』
力を思いっきり使ったため、マグマがほとんど水晶に変わっている。
その水晶の上に、魔方陣が現れる。
これに乗れば、声の主のところに転移出来るのだろう。
「さて、まさかまた蛇とか出てきたりしないよな……?」
力の確認、まだ全貌を把握は出来ていないが、それでも、十分に有用な能力だった。
それが、確認できただけでも良し、と陣に乗ることにした。
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