169話 ヨルダウトの冒険
sideヨルダウト
ヨルダウトは魔界への門を開いてもらい、魔界に赴いた。
いくらヨルダウトでも、魔界の場所は知らない。
行ったこともなければ、普通は行けないからだ。悪魔も魔界から出ることは原則として出来ない。何事にも例外はあるが。ベルゼブブのように。
「ここが魔界……ふむ。興味深いな。人間界より魔力濃度が濃い。それに、体が軽い?」
魔界には魔力に満ち溢れている。
そして、魔界に来て悪魔が強い理由が理解できた。
「環境からして全く違うな」
空は赤く、いかにも、と言った感じだ。
こんな魔力に環境に晒されれば、人間など数秒と待たず、発狂し魔界の環境に耐えることが出来る消滅するだろう。
そう言うヨルダウトも、魔力が身体中に満ち満ちているのを感じられる。
「しかし、暴食の姫……一目見ただけで分かった、分かってしまった」
ヨルダウトは、ベルゼブブと会っていた。
レインと一緒にいるため、嫌でも会うことになるが、その時自分とは存在が違うと分かった。
そして、レインに力を与えられ存在を引き上げられたヨルダウトは、贔屓目に見てもとてつもなく強い。与えられた力を理解し、使いこなし、今ではアシュエルと対等に戦えるまでに至っている。
そして、レインの力は正確にはヨルダウトは分かっていない。とてつもなく強く、自分では絶対に敵わないと分かって入る。それに、レインの正体も知らされているため、納得もいっている。だが、納得しているのと完全に理解しているのは違う。その力の全貌を教えられているわけでも、理解しているわけでもないからだ。
しかも、レインは常に力を外に出していない。
要するに、傍から見ればただの人間に見えるのだ。美しいだけの。
だが、ベルゼブブは違う。
ただの幼女だがヨルダウトは解った。近付くだけで、喰われる、と錯覚してしまう程の威圧感、圧迫感。そして、王としての威風を感じた。それは自分も王だったために分かる。
「『死』……ふむ、即死魔法は聞く、と」
突如襲い掛かってきた下級悪魔に即死魔法を使う。
悪魔と言う程だから即死系の能力は効かないかとも思ったが、きちんと効くようで少し安心していた。
「さて、ここはどこだ?」
今更だが、ヨルダウトは魔界への道は用意してもらったが、それがどこへ続いているのかは知らされていない。
それに、魔界は無法地帯、法も秩序もないと聞いていた。それでも、王がいるように国がある。そして、弱肉強食だとも聞かされている。
「まぁ、知能を持った悪魔に聞けばいいか……」
それから、小一時間程飛び回った。
最初は歩いていたが、飛んだ方がいいと思い、飛行していた。
「ん?あれは……」
人型の悪魔を見つけ下降し、近付く。
「おい、貴様」
「ア゛ア゛?」
濁ったような声を出しながら振り返る。
人型と言っても人間のような顔ではない。悪魔と言える顔だ。酷く醜く、腕はブランと長く、爪は鋭く伸びている。
「ふむ。知能と言える知能があるかは判らぬが、一応喋れるようだな……よし、貴様ここはどこだ?」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「チッ、少し期待したが下級ではそこまでの知能はないようだな」
炎を飛ばし、燃やす。
聞くに堪えない断末魔の声を聞きながら、背を向け歩み続ける。
「休暇を貰ったが、せめて集落程度ある場所に開いて欲しかったが……なんだ!?」
その時、魔力の爆発を感じた。
「向こうに人……いや、悪魔がいるかも知れんな。行ってみるか」
もう一度飛び、魔力を感じた方へ行く。
上空へ上がった瞬間に火の手が上がっているのが見えた。そこへ、飛んでいく。
「争いか?」
ヨルダウトが見たのは、悪魔と悪魔が殺し合いをしていた。
殴って蹴って殴られて蹴られて。そんな原始的な戦いだ。
さして知能がないのだろう。
獣並みの本能的攻撃だった。
「やはり、下級悪魔は獣みたいなものか……ただ、威力が違うな」
殴り飛ばすだけで、ボゴンッと音がし、地面が砕ける。
そして、魔法で地面が抉れる。
「その力はさすが悪魔と言ったところか……しかし、普通に話せる奴がおらんぞ」
悪魔以外にはおらず、その悪魔も四体だ。
その四体が殺し合いをしているだけで、周りにも集落などは見えない。
「もっと、周りと見てみるか」
そう言うと、また空を飛び、探索に向かった。
それから約三十分後のことだった。
「なんだお前は?」
「おお、ようやく話せる悪魔と出会えたぞ」
少しの感動を込めながら、ヨルダウトは言う。
身なりのいい男悪魔だ。それに、少し遠くを見ると、建物がいくつも建っている。
「余はヨルダウト。近くに集落などあるか?」
「向こうに行けば、『色欲』の王が治める国があるぞ」
「ふむ。感謝する」
男悪魔は国があると言う方角へ指を指す。
短く感謝を述べると、ヨルダウトは飛び立つ。
その時、男悪魔がニヤリと笑っていたことにヨルダウトは気が付かなった。
悪魔がただで情報をそれも、見知らぬ相手に教えるなど、しかも、身なりがいいと言うことは、それなりに高位の悪魔だ。だが、悪魔事情をヨルダウトが知っているわけがない。
ヨルダウトは魔界に来て初めて話せる相手に嬉しくなり、無意識で信じてしまった。
それが吉と出るか凶と出るか、すぐに分かるだろう。
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