14話 任務
迷宮に潜ってから、5年が過ぎた。
1層にはゴブリンしかいなくて、でも異様にレベルは高い、それに最高で5匹集まっている奴もいた。ミゲルたちのレベルも上がり、全員が80を超えミゲルに至っては100間近となった。
2層からは、何かに特化した魔物が現れた。足が異様に速いウルフ系の魔物、力だけが異様に強いゴリラ系の魔物など、初めて対峙した魔物には毎回最初は死にながらも攻略していった。
最初に言われていた通り、宝箱が置いてあり、その中には武器が入っていた。序盤に手に入れた武器ですら1級品で、10層を超えてから手に入るのはどれも、魔剣聖剣クラスばっかりだった。
約1ヶ月後に、10層に到達しボスにあった。最初のボスはミノタウロスで、迷宮ではよく出てくる奴だったが、レベルが200と跳ね上がっていて、ステータスも満遍なく高かった。ミノタウロスなんとか倒し、レベルが100を超えたあたりからからボス以外には、5対1なら不意を突いて全力攻撃をすれば倒せるようになりレベル上げの効率が上がった。
20層、30層と攻略していき、40層になって躓いた。
この時に、全員のレベルが500を超えていた。ここに到達するためにも何千回も死んだが、40層は次元が違った。何度も何度も死にながらも何とか勝つことはできた、その時に進化し上位人族となった。レベルが1になって焦ったが、ステータスの値が上がっていた。スキルも覚え、ほとんどがMAXまで上がったし、武具も揃った。だが、41層からまた地獄だった。
何とか、50層まで到達し、相対したのは龍だった。また、何回も挑戦したがなかなか勝てず、策を工夫しながら勝った頃には、レベル250越え。
攻略し終えたらアナウンスが流れ最初にいた場所に転移させられた。
そこに戻ると、700人全員が戻っていた。
一人一人が歴戦の戦士、死線をくぐり抜けたどころか何度も死に、それでも立ち向かったため悠然とした態度をとっている。まだ十代であろう少年少女でさえもが、だ。
やはり、自分たちと同じく上位人族になっているのを見ていたりすると、扉が開き6人が入ってきた。
今度は、自分の意思で跪く。なぜなら、ミゲルは自分のことを、最強の一角と呼べるほど強くなったと確信しているからだ。
それなのに、レイン様以外の5人にすら全く敵う気がしない、力の一端すらも感じることができない。
この場にいるすべての人は、おそらく自分の意思で跪いているだろう。
「面を上げよ」
優しげな声が聞こえ顔を上げる。
「よく頑張ったな。お前たちには数年の時間が経っているが、こちらでは数日しか経っていないため心配するな。上位人族になった時自分たちにあったスキルを授けた。あとで効果を確かめるといい。それと紹介しよう。入れ」
扉が開き7人が入ってくる。一眼で最高級の武器防具だと分かり、それを使っている人物も人外の領域だとわかる。
「この7人がお前たちの隊長になる。この者らは、聖人の域まで達している。上位人族が進化すると到達できる場所だ。進化するための条件の一つは、魂を鍛えることだ。意味は、よくわからないだろう?簡単だ、迷宮でお前たちは何を多くしていた?何千回も何万回も死んだだろう?それも即死ならまだいいが、四肢欠損になったりした事もあったはずだ。痛みを感じながらも死に、また死に、その繰り返しが魂を強くしていった。その進化は自分の鍛錬の末のものだ。誇れ、その力を、くじけなかった自分を。また、訓練したくなったら遠慮無く言え。では、最後によくやったなお前たち」
「よくやった」その一言で、今までの努力が全て報われたようだった。
柄にも無く泣きそうになるのを我慢しながら、忠誠を誓った。自分の才能を見いだしてくれたことにもだが一番は、社会の屑だった自分に騎士という役職を与えてくれた、あれほどの方が自分を。感激のあまり涙している者もいるほどだ。
それから、力を手に入れたからといって図に乗るなよと言われたが、あれだけのことを見せられたなら歯向かうのでは無く信仰すら目覚めるだろうと思っていた。
それから、時間が経ちレイン様から雷千獣の討伐を命令された。しかも、強化個体のようでギルドでは手に余るとのことだ。
「雷千獣かぁー。前だったら逃げることすら出来ずに喰われるよなぁー」
「あはは、確かにな。てかこんな人数いるか?」
「いや、俺たちなら団員1人2人で事足りるぞ」
そうなのだ。今20人程いる。考えてみて欲しい。レベル200越えの進化した者の20人の集まり。どこかの特殊部隊かって話だ。実際は、ただの隊員の一部なんだが。
話しながらも、きちんと列を組みながら騎士団としての心構えを持ちながら移動している。
撃樹の森に着いた。
森の中に入り、奥に進んでいくと、焦げた木や地面があった。
「この辺りにいたみたいだな。まだ焦げ目が新しい」
探っていると、獣の声が聞こえてきた。
声の聞こえる方に行ってみると、身体からバチバチと紅い雷を出しながら佇んでいる目的の魔物を見つけた。
「確かに、SSSランク上位にまで上がっているな。でも全く問題ない」
「で、誰がやるか?」
「なら、俺がやっていいか?」
試したいことがあったので、手をあげならやりたいと言った。
「ミゲルか。みんなもそれでいいか?」
了承をもらったため、剣を抜きながら雷千獣に近づく。
腕をだらんと下げて油断いているように見えるが、全く油断してない。雷千獣まで10メートルになったところで、手に入れたスキル神速を使い雷千獣の首目掛けて水平に剣を振り抜く。
唸りながら警戒していたのに、全く反応すらできずに首を斬られた。あまりの速さに未だに首が繋がったままだ。そのため、『グラアアアア』と言いながら駆け出そうとした瞬間首が落ち、完全に絶命した。
「相変わらず速いな」
「ヒュー!さすがミゲルだぜっ!」
この中にも神速を使ったミゲルが見えていたのはほぼいないだろう。
「でもなんで、レイン様はこの人数で行かせたんだろうな」
「そこなんだよな〜。いくらSSSランクでも俺たちはあの迷宮や俺たちのために新しく一人一人に創ってくれた専用の迷宮では、常にSSSランクの魔物と戦っているからな。なんでだろ?」
疑問を話し合っていると気配がした。唸り声が複数、前後左右からした。
「なるほど、そう言うことか。複数いたってことね」
「……28、29、さっきミゲルが倒した奴含めて30匹か」
「じゃあ1人1匹、余りは早い者勝ちって事でいいな?」
そう言いながら早速1匹目を倒しにかかっている。
戦闘が、いや蹂躙が終わったのは5分後だった。ほんとは、1分で終わるはずが3匹程怯えて、紅い雷を全方位に向けて放ち目眩しにしながら逃げたため追いかけていたから意外に時間がかかった。
「こいつら終わりだよな?」
「多分もういないだろう。帰るか」
息ひとつ乱してもないし全く疲れていない。この程度の魔物では相手にすらならなくなった。だんだん戦闘狂じみてきたなと苦笑しながらみんなに続いて帰路に着く。