157話 フードの人物
バトルロワイヤルの時と違い、フィールドを見渡せば全員が見える。
だから、簡単に次の敵を見つけられる。しかしそれは、自分も狙われると言うことだ。
俺は、片っ端から殺していき、ついに、数人にまで減った。
そもそもがこの乱戦に出場出来ているだけで、バトルロワイヤルを生き残った強者だ。俺のように、奇襲や一般的に卑怯だと言われている戦法を取っているとしても、生き残り勝ち残ったのはその人の運であり実力だ。
そして、さすがにここまで人数が減れば、迂闊に行動する人はいない。
俺も、警戒しながら、フードの人物を探す。
(あいつだけは、ぜってぇ殺す)
静かに殺意を募らせながら、決意する。
睨み合ってても仕方ないため、一番近くの人から殺っていくことにした。
けど、
(近くっていってもかなり距離があるんだよなぁ……走ったら反応されそう)
そうなのだ。
俺は自分から先制攻撃を取って優位に立ってから、安全な位置と言うものを取っていた。しかし、ここまで減れば隙をつくなんて簡単じゃないし、逆に俺が隙を作ることになるかもしれない。
(フィールドは広い。なら、走ったりするとすぐばれる。だっ……あれ?フードの奴いなく……)
突如、ゾクッとした。
自分の感に従って、前に全力で飛ぶ。
俺のいた場所に大剣程の大きさの氷剣が突き刺さる。
かなりの速さのせいで、ふくらはぎを斬られてしまった。
(あっぶねぇ!!!もうちょっとで腱斬れるとこだったぞ!?)
冷や汗をダラダラと流しながら、態勢を整える。
足の腱を斬られ動けなくなれば、狙い撃ちされるのが分かり切っている。
「くそがっ!いつの間に回り込んだんだ?」
「……」
俺たちの距離は、僅か五メートル程しかない。今の俺なら一息で詰めれる距離だ。
一歩踏み出し、攻撃するも、下がりながら遠距離攻撃するもいいのに、なぜか動けない。
チラッと後ろを見ると、俺たちの戦いを開始の合図に他にも戦い始めた。
けど、そんなこと気にしていられない。
「こうなったら、俺から攻めるのみだな……!?」
俺が攻撃しようとした瞬間に、また氷剣が飛んでくる。
今度は三本だ。
しかし、きちんと見ていたため動きを捉えることが出来る。
一本を白い鎌で斬り払い、一本は黒い鎌で斬り裂く。
黒い鎌『悪女』の方は、精神を斬るが、魔力を流せば魔法も普通に斬れる。
最後の一本を手で掴み、投げ返す。
「っつ!……くそ!たったこれだけで凍傷かよ!」
一瞬にして冷たく感覚が薄れていく手を見ながら、吐き捨てる。
青白くなり、血の気の引いた手に、魔力を流し何とか中和しようとするが、中々冷たさは引かない。
「魔法による効果は、魔力で中和出来るってのはいいけど、どんな低温だよ?」
グーパーと繰り返しながら、感覚が徐々に戻ってきたことを確かめていると、またもや先制を奪われた。
今度は、氷剣を飛ばすのではなく、直接両手に握り俺の方に向かってくる。しかも、いやらしいことに、剣の長さが違う。
「チッ……まずは顔を見せろ!」
念じて鎖を動かす。
白い鎌は、地面スレスレを這うように。黒い鎌は、上空へ向かい、死角から突くように動かす。
「……っ」
「『火炎弾』!『水獄』!」
右手を向け、火炎弾を飛ばす。
狙い通りに横にステップで避けた瞬間、そこを『水牢』を改良した『水獄』で閉じ込める。さらに、そこへ、鎖鎌で『水獄』ごと斬り裂く。
スパッと水の檻が斬れ、中にいたフードの人物も殺せたかに思えたが、やっぱりそんなに簡単じゃなかった。
いつの間にか俺の後ろまで回り込み、その氷剣を振り下ろす。
「だと思ったよ」
「っ!」
今までのやり合いから、なぜかここぞと言う時に決まらないのは、分かっていた。今回も水獄に閉じ込めてしまえば大丈夫だと思っていたけど、念のために警戒していてよかった。基本奇襲と言うのは、後ろを取ってしまうもの。だから、警戒していた。
鎖を一瞬で戻し、俺を囲むように回転させる。
竜巻のように回転しだした鎖鎌に氷剣がぶつかり押し込み合いになる。
だが、俺の鎖鎌は斬れず折れずだ(たぶん)。普通にぶつけたならただの鍔迫り合いみたくなったかもしれないが、回転させたことにより、氷剣がギャリギャリと削り取られていく。
「ぁっ!」
「しっ」
ついにポキッと折れ、フードに切れ込みを入れる。
パサッとフードが風で浮き上がり、その素顔が明らかになる。
「女……?」
「…………見るな!」
消え入りそうな声で呟くように言う。
見るなと言う割には隠そうとはしない。そんなことしたら、最大の隙を生んでしまうからだ。
「俺的にはどっちでもいい。お前は殺す」
「…………」
確かに、小学生か中学生くらいに見えるけど、それで手を抜くなんてことは絶対にしない。ってか、そんなことやってたら、俺が殺されるわ。
無言で、黒い鎌を地面に沈み込める。
バレないように、足の裏に隠しながら。
鎖を伸ばし、フード少女の元まで伸ばす。
「…………っ!」
「やっぱそう来るよな!」
再度氷剣を作り出し、突撃してくる。
それに合わせ、俺も走り出す。
白い鎌をクルクルと回転させ、上の方に投げる。
(当たり前に上に注意が向くよな?)
心の中でニヤリと笑い、白い鎌を落とすように動かす。
それを氷剣で受け止めようとするが、俺の鎖鎌の一番の利点は、縦横無尽に動かすことが出来るところだ。
氷剣に当たる瞬間を見極め、軌道を変える。
頭を狙っていた軌道を首を狙うように変えるが、氷の盾を作られたことで防がれる。さらに何度も動かし、斬っていく。氷剣で受け止められ、弾かれ、氷の盾で受け止められ、流され。
(でも、そっちは囮だ!)
地面に忍ばせていた黒い鎌を地面から出し、背後から斬りかかる。
(こういう時、念じるだけで動かせると微調整が楽だよな)
音もたてずに、フード少女の胸を串刺しにした。はずだったんだけど、後少しの所で気付かれた。それでも、片腕を斬り飛ばすことが出来た。実際には、外傷はないけど。
「…………うぐぅ!」
「終わりだ!」
黒い鎌をそのまま巻き付けるように動かす。
鎖が雁字搦めに少女の細い体を折らんばかりに締め付ける。
「…………あぐぅ!?」
さらに締め付ける。ボキボキと背骨の折れる音がしたが、それだけじゃなく、白い鎌を手元に戻し、締めていない頭上から振り下ろす。
「無駄な足掻きをするな!」
「…………ああああぁぁ!?」
頭上に氷の盾を作り出し止める。
だが、咄嗟に作った盾だ。俺の鎌の切れ味を受け止めることなど出来ない。僅かばかりの抵抗の後、盾ごとスパッと斬り裂いてフード少女の頭をかち割る。
「はあっはあっ……」
終わったと思った瞬間どっと疲れが押し寄せてきた。
思った以上に緊張していたみたいだ。それもそうか、今もどうやって姿を消したり、俺の水獄から逃げられたのかは分からない。しかし、そんな方法を持っていたことは確実なんだからな。今回も、締め付けながらも、いつ逃げられるか警戒していたわけだからな。
「まぁ、姿を消すにしても何か条件があったとか……か?」
まぁ、考えても仕方ない。終わったことをぶり返しても意味はない。ってことで、他の差し迫った問題を考えよう。
「次は あんたか?」
少し前。
俺が止めを刺そうと白い鎌を振り上げた辺りから見ていた人物に声をかける。
「ああ、気付いていたか。そうだ。次は私の相手をしてもらおうか」
太い声で言う。
大体、こいつが、変な気配を垂れた流しにしていたせいで、気を使わないといけなかったんだ。探索を使っている俺には、人の動きが分かる。でも、こいつは、何と言うか変に気配が薄かった。
背にある大剣を取り出し、構える。
素人の俺からしても、めっちゃ様になっている。
「はっ!」
「ってはや!?」
一瞬で距離を詰め、その巨大な大剣を振り上げる。
上段からの振り下ろしに、鎖を盾に受け止める。だが、一度だけでなく、何度も振られる大剣の剣圧に吹き飛ばされそうになるのを、必死に耐える。
(クソっ!こんなの、化け物じゃねぇか!)
身体能力だけでこの威力。どれだけの筋力なのか想像もつかない。
ただ分かっていることは、一度でも喰らえば俺の体はバラバラになるってことだ。
「おらああ!!!」
「圧が増した!?」
声を上げ、振り回すと、剣圧が上がった。
このままでは、絶対に斬れないと記載されていた鎖まで斬れそうな勢いだ。
(まずい、まずい!このままだと……早く態勢を整えないと!)
だけど、この状態で重心が少しでもズレ、踏ん張れなくなれば、押し込まれ逆に鎖は斬れずとも弾かれたり、押し切られたりする可能性は高い。そうなる前に……。
「おおおおおおおおおお!!!」
「また、上がった!?(これ以上は……!?)」
嵐のような連撃に耐えることしか出来ない。
他のことに意識を割けばそこで終わり。
そんな時、突然閃いた。
耐えきれないなら耐えなければいいんじゃね?と。
(この際腕の一本でもくれてやる!……痛いのいやだけど、まじで)
でもそうしなければ、死ぬならやるしかない。
「はああああ!!!!」
魔力を流し、鎌を大きくする。
それを回転させ、連撃を強引に止める。ただ、それだけでは、態勢を崩すには及ばないため、すぐにまた連撃に移るだろう。その前に、やる。
「鎖よ!」
言葉にしなくてもいいけど、念じるにはその動きをイメージしないといけない。そのイメージ強化のために言葉にするのはより繊細な動きをするのに役立つ。
だけど、やっぱり腕を失うのは嫌だ。と言うわけで、鎖を腕に巻きつける。
「らあああ!!」
それで、そのまま殴りつける。
「ぐああああ!!」
ちょうど剣を振ろうとしているところだったため、綺麗に決まった。
腹に突き刺さり、接触した瞬間に鎖を回転させる。即席のドリルのような感じだ。
「ぐぼぉおおおお!?」
「はああっ!!!」
腕を腹に突き刺したまま、残りの黒い鎌の方も腕に巻きつける。しかし今度は、拳の先に鎌を小さくした刃を付ける。そして、殴る。
「ガアアアアアア!?……っ」
今度は腹ではなく、心臓を殴りつけ、鎌で突き刺す。
耐久が高かったのか、中々死ななかったが、さすがに心臓を串刺しにされ、腹に穴を開けられたら、生きられない。
「まじ、きっつ……精神的にも肉体的にも疲れたわ……」
俺としたことがいくら疲れていてもこんな戦場の中でドサッと座り込むことはいかがなものかと思う。でも、座らなければ倒れそうだったから仕方ないか。
「他は……」
残りの者たちを見ると、残っているのは、三人程。
それも、戦っている途中だ。俺が少しくらい休んでも気が付かないだろう。と言うか、休まないと、体力が持たん。
「ちょっと……横になりたいなぁ」
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