13話 暴龍騎士団入団 後
しばらく歩くと、イヴァンが立ち止まり静かにとジェスチャーをし草陰に隠れた。
「この先に、気配がします」
小声で教えてくる。木影にゆっくり移動し、確認する。
「ゴブリンだ」
「な〜んだ。ゴブリンっすか」
みんなが緊張を解き、武器を構えながら木影から出る。グレースが無造作に近づき短剣を構え突撃する。間合いに入り剣を振る瞬間、
「グギャ!」
ゴブリンがニヤリと笑い、グレースの首がぐるりと回り落ちた。
「なんだと!?」
「イヴァンさん!ゴブリンを鑑定してください!」
とっさにまた木に隠れ、イヴァンに鑑定をするようにクロエが言った。
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【種族】ゴブリン族 【性別】雄 【年齢】1歳
【称号】迷宮魔物
【Level】150
【HP】100000/100000
【MP】100000/100000
【STR】100.000
【VIT】100.000
【DEX】100.000
【AGI】100.000
【INT】100.000
【スキル】
[剣術Lv.8][身体強化Lv.8][気配察知Lv.8][状態異常耐性LvMAX]
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「ひっ!」
鑑定してゴブリンのステータスを見たであろうイヴァンが顔を青くし小さく悲鳴を上げた。
「おい!教えろ!」
小声でミゲルが怒鳴る。その時、グレースのいた場所を視線が通った。
すると、ねじ切れた首が煙を上げ、修復していた。目を覚まし、自分の顔をペタペタと触り、ついさっきまで切れていた首を触った。混乱しているはずだが、ミゲルたちと目が合い急いでこちらに走ってきた。
「どうなってるんすかこれ!」
「い、いや分からん。が、多分あの方が言っていたことは本当だったってことか!」
「あの、この迷宮の中では死なないっていう話しでしたね」
「それより。おい!しっかりしろイヴァン!お前が見たステータスを教えてくれ!」
いつまでも放心しているイヴァンの肩を揺さぶりながら声をかける。「お、おおお落ち着いて聞いてください!」お前が落ち着けよと、ここにみんなが思ったが口には出さず、「ああ」といい聞く体制をとった。
「れ、レベルは150で、ステータスは全部10万です。スキルは剣術スキルレベル8、身体強化スキルレベル8です!それに、気配察知レベル8で状態異常耐性レベルMAXです!」
『なっ!?』
聞いたステータスに絶句する。ゴブリンは普通3〜10レベル程度の魔物。それが10倍以上のレベル差、しかも10万の能力値、はっきり言って異常だ。
「やばいほんとにやばい!ゴブリンと言えば1匹では移動しない!周りに仲間がいる可能性がある!」
「な、なんなんっすか!ありえないっす!」
「鑑定に間違いはないのですか?」
目の前の1匹に注意を払いながら、周りにも気を配る。だが一向に仲間が現れないため他にいないと判断する。
ミゲルの今のレベルは67。この中では、最高レベルだ。瞬時に状況を判断し策を練ろうとする。
だが、
「くそっどうしたら。レベルの割に能力値が高すぎる!」
「ミゲルさん。罠に嵌めるという手はどうでしょうか?」
「罠?どんな罠だ」
「まず、私が土魔法で落とし穴を作ります。その後に、攻撃魔法を放ち攻撃します。それでも倒せないようでしたらここで魔力が切れてもいいので倒せるまで攻撃し続けましょう」
確かに、グレースを攻撃したその動きは見えなかった。あの速さで動けるのなら攻撃自体を当てられない。まず、足を止めないことには意味がない。それなら落とし穴というのも悪くない。と言うかそのくらいしか止められないだろう。
「僕もいいと思います!でも、どうやって落としましょうか?」
そうなのだ。罠を仕掛けるのはいいとしても、嵌ってくれなければ意味がないのだ。
考え込んでいると、アルフが提案してきた。
「それでしたら、さっきの場所に仕掛けましょう。あの場所は木が密集して他の場所に比べて一本道に近い。なので、その道に2メートルくらいの穴を出来る限りたくさん作ります。なるべく穴と穴の間を狭め逃げられないようにするので、……グレースさんあなたに、誘き出して欲しいんです」
「うちっすか?確かに一回やられているか楽な相手って思われているかもしれないっすね」
死んだことについてはもうどうも思っていないのか、作戦を聞いている。
ミゲルは、魔法を使えないためどうしたらいいかアルフに聞く。
「俺は何をやったらいい?」
「あの敵には近づかないほうがいいでしょう。なのでミゲルさんには、離れたところから見ていてもらいたいんです。それで、もし、もし魔法を放ち続けても勝てないようだったら危険かもしれませんが、穴に飛び込み剣で刺し貫いて欲しいんです」
「確かに危険だな。だが、分かった。それでいこう」
死なないことをいいことに、捨て身覚悟でも刺突をしろとのことに納得した。
それから、イヴァンがゴブリンを監視し、アルフが落とし穴を作った。
準備が整い作戦を開始する。グレースは、誘い込むために向かっていった。
「じゃあ、作戦を開始するぞ!」
合図で始まり、前方からグレースが走って来るのが見えた。最初の落とし穴がある直前に木に向かって飛び移り、そのまま木を使って地面を踏まずこっちにきて合流する。
ゴブリンは遊んでいたのかグレースに追いつかない程度の速度で追いかけていたため、グレースがジャンプした場所をしっかり見ていた。
そのため、警戒し止まったままこちらを睨んできた。
「おお〜いこわいっすかぁ〜?こっちにくるっすよ〜!」
グレースが挑発したら、面白いように怒り何も考えずに突っ込んできた。全く移動している姿は見えないが、ズゴンッ!と大きな音が立ち砂煙が立ち込めた。
「今だ!ありったけ魔法を打ちこめ!」
その言葉を合図にたくさんの魔法が穴に向かって放たれる。
アルフが火の玉を、クロエが水の槍を。ん?水の槍?
「ええ!クロエ、お前水魔法使えたのか!」
「え?ええ、少ししか使えませんが、このくらいは出来ますよ」
軽口を叩いているが手を休めずに、魔法を撃ち続ける。
何十何百と魔法を撃ち、2人が一息つき肩で息をする。
「はあ、はあ、はあ。これでどうですか!」
砂煙が立ち込める。
晴れると、呻き声が聞こえてきた。
「効いてるぞ!だが、倒し切れていな。よし、俺の出番か!」
「はあ、お願い、します。ミゲルさん!」
叫び声を上げながら一直線に突っ込んでいく。少しでも威力を上げるために剣にありったけの魔力を注ぎ込み、近くの木に飛び乗りそこから落ちるように剣を突き刺す。
「おらあああああああああ!!!」
「グギギギイイイーーーーグギャ?」
心臓を刺し貫いた。
その時に、とてつもなく力が上がったのを感じた。
「勝ったのか……?」
「勝ちましたよね?」
「勝ったっす!勝ったっすよ!」
みんなで喜びながら、女子は抱き合いながら喜んでいる。
いくら、魔力で強化してもあの防御は貫けない。攻撃が通ったのは、魔法の攻撃が思いの外効いていたのと火と水で軽い水蒸気爆発が起きたことで、ゴブリンの皮膚が炭化してかなり防御力が下がっていたためである。
休憩していたら、
「グギャギャ」
「グギギギ」
「ギャギャギャギャ」
3匹のゴブリンが現れた。
『ギャアアアアアアアアア!?!?」
「むりむりむりむりむり!」
1匹でも運が良くて勝てたのに、3匹は勝てない。
「逃げるぞ!!!」
ミゲルの掛け声で、いっせいに逃げ出す。