150話 死闘の余韻
「……ん、んぅ?」
俺は、目をこすり上体を起こす。
半日程寝ていたみたいだ。
「ちゃんと洞窟まで連れてきてくれたのか……体は完全に治ったみたい。問題は剣だけど……」
失った蠱毒の剣の姿を思い出し、ため息を吐く。
探索を使い周りの状況を確認する。
近くに人の気配は全くない。セリスも出かけているようだ。
「今のうちにガチャを回しておこう……装備……よりもスキルかな」
昨日の死闘の時に勝敗を分けたのは、圧倒的な経験の差もあるが、やっぱりスキルの差も大きかった。Aランクだと思うが、その力はSランクに匹敵すると思う。それに明らかにこっちのステータスを知っていた。何かステータスを隠す能力とかが欲しい。
「ってことで、能力ガチャ」
11連を回す。
出てきたのは、『C:筋力強化』『C:性技』『D:精力増強』『C:炎の壁』『C:筋力強化』『D:思考加速』『D:精力増強』『B:覚醒』『C:魔法威力強化』『B:闇の衣』『D:魔力強化』だった。
「いや、ちょっと待て」
全部のカプセルを開け、一つ一つ確認しながら思わず突っ込んでしまった。
「なんだよ……『性技』とか『精力増強』とか完全にエロ方面じゃねぇか」
冷静に突っ込む。
もう、このガチャに激しく突っ込むのも疲れてきた。また、11連を数回しか回していないのに、まだ一度もネタ能力が来なかったことがなかった。しかも今回は、本当にこの森で必要ない能力が出てきた。
「まじで何なんだよ……おかしいだろ……セリスか?セリスがいたからこんなスキルが?確率操作でもされてんのか……」
思わず、運営の意思が介入しているのを、疑わずにはいられない。
これは、天からの女を犯せと言う、天啓かもしれない。
「馬鹿だろ……大体こんなところで、性欲に任せるやつとかいるのか?」
疑問に思う。
突然拉致され、こんなどこともしれない場所に連れて来られ、殺し合いを強要される。自分以外の周りは全員敵、自分しか信じることが出来ない状況で、しかも、全員のステータス的には平等だ。つまり、能力的には同じなわけで、ちょっとしたことで死んでしまうくらいの脆弱さ。もし、欲にかられ襲い掛かったとしたら、反撃をくらうかもしれない。それに、行為の最中は完全な無防備だ。相手が女でも頸動脈を数秒、懐にでもガチャで手に入れたナイフなど小型の武器を忍ばせ、心臓を一突き、それだけで終わる。そんな危険を冒すやつとかいるのか、疑問だ。
少なくとも俺は、そんな危険冒したくない。
「まぁ、いいや、突っ込むのも面倒、使えるスキルから見ていくか……」
今回は、エロ能力を無視すれば、魔法系が多い。
『炎の壁や『闇の衣』……そして何と言っても、Cランクの『魔法威力強化』だろう。詳細を見ると、威力を1.5倍にするらしい。この感じだと、Bランクで2倍と言ったところか。
「『炎の壁』はそのままだけど、『闇の衣』は防御力を上げる魔法……身体能力は微量上昇って言ったところで……魔法防御をかなり上げるみたいだな。その割合……50%カット!?まじでか……威力半減」
ゲームでダメージ軽減系のスキルとかよく見るけど、それも大きく分けて二種類あると思う。
一つは、何ダメージまでを軽減と言うもの。
一つは、ダメージ何%カットと言うもの。
もちろん後者の方がいいと思う。レベルも上がり、敵のレベルが上がって攻撃力が上がっても、必ずその%は軽減してくれるのだから。つまり、序盤から終盤まで使えるってことになる。
今回は50%カット。半減の能力だ。
例えば、攻撃力10なら5に……100なら50に。
このくらいのダメージならあまり大差ないかもしれないけど、それが、10万とかになれば、5万の軽減。とても素晴らしい。思わず感嘆の声を上げる。
「しかも副次効果として、魔法で受けた副次攻撃をある程度無効化してくれる……」
魔法による副次効果と言うのは、例えば、炎の魔法なら、受ければ魔法のダメージプラス炎のダメージも喰らってしまう。炎なら火傷、氷なら凍傷と言った感じだ。
「そして、一番はこの『覚醒』どっちかと言えば、Sランクで欲しかったぞ」
その効果を見て、思わず口に出してしまう。
その効果とは、全ステータス2倍と言うもの。時間制限があるものの『生命力』『魔力』すらも2倍になる。効果時間は5分と短く、使った後には、酷い筋肉痛が襲ってくるらしいがそれでも、魅力的な能力だ。
「制限時間5分。まぁ、切り札に出来るし、でも、使い方を間違ったら自滅……面白い」
ニヤッと笑う。
俺は、あの死闘……と言うより、まさに死にかけた時感じたことがある。それは、死への恐怖ではなかった。全身が砕けるような衝撃を特に腹に感じ、大量の吐血と頭にも衝撃を喰らったせいで、脳震盪を起こしていた。それでも、その時感じたのは、かつてない興奮。別に痛みを感じることに快感を得るような度し難い変態ではない。断じて。
絶頂にも勝る興奮を感じ、心臓が重傷で血を流し過ぎていたのに、早鐘のように鳴り響き、血液をかつてない速さで循環させていた。ドクン!ドクン!ドクン!と鳴り、血が巡り、吐血する。完全に悪循環だけど……そのせいで死期が早まったのだけど……。
「あの感覚が……また……」
死ぬ直前世界がスローになる見たいなことを聞くが、そんなのあり得るはずがないと思っていた。
実際に、遅くなったわけじゃなく、かつてない程俺が集中していたってだけだと思う。それでも、頭が沸騰するくらいの熱を放ち、それと同時に氷のような静けさも同居していた。
矛盾してる?確かに、そうだが、そうとしか表現できないのだから仕方ない。
「さて、この『覚醒』があれば、変態クラスの相手でも勝てるだろうし……次は、蠱毒の剣に変わる武器が欲しい。出来れば槍は勘弁してくれ……長物苦手なんだ」
『逆撫での槍』を『槍術』を持っているため、使ってみた。そしたら、確かに分かるのだが、なんかしっくりこないんだよなぁ。
「だから、蠱毒の剣に並ぶ剣をくれ!」
願うような気持で、『装備ガチャ』を回す。
出てきたのは、回復アイテム3つに、使い捨ての攻撃アイテム2つ。そして、ランクの低い大剣と投げナイフに最適な短剣。
「やっぱり、簡単には来ないか……」
落胆していた時、☆3の数字を見た。
「ん……?……お、おお!!!これは!……『乙女と悪女』?なんだそのギャグみたいな名前の武器は……」
『乙女と悪女』と名のついた武器は、幸いなことに鎖鎌らしかった。
1m程の鎖の両端に片方が白の片方が黒の小ぶりだが、人の首程度軽く刈れるよな鎌が付いていた。そして、鎖の中心には、腕輪のようなリングが付いている。
「腕に嵌めるのか?」
腕輪のようになっているそれを、腕に嵌める。
すると、カッと光を放った。思わず、目を閉じ開けると、鎖鎌が消えていた。
「あん?……あ、この痣……まさか」
嵌めた左手首の所に、『乙女と悪女』を小さくしたような絵が刺青のように入っていた。
「っておい!これどうすんだよ!?せっかくの☆3の武器だぞ!?ちょっと!聞いてますか?おーい!」
傍から見ると俺のしていることは、自分の腕に向かって話しかけているヤバい奴だろう。だけど、そんなことはどうでもいい。俺の高ランク武器が消えたのだ。焦りもするわ!
「こういう時はアニメの主人公たちはどうしてたっけ……確か、こんな時って魔力を流せば、それか念じるか……」
取り敢えず「出ろ」と念じてみる。が、やはり反応なし。
ならば、と魔力を流してみる。
少量では反応しないため徐々に流す魔力を増やしていく。
すると、刺青が黒と白の光を放ちジャラと言う音と共に手首に腕輪が嵌った状態で現れた。
「おお、やっぱりこれでよかったのか……にしても、これ出すだけでも1000くらいの魔力が必要だったんだけど……」
ここに来た当初ならば、自分の全魔力が『乙女と悪女』を使うために必要な最低限の魔力だった。だが、今の俺からすればその程度の魔力あってないようなものだ。
「この鎖、短いよな。近距離武器ってわけじゃないだろうし……まぁ、詳細を見ればいいか」
そう思い、『乙女と悪女』の能力を見て、再度驚愕の声を上げてしまった。
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