147話 ゲームの裏側
sideレイン
ホログラムの画面を無数に出し、全フィールドの光景を映し出し見ていた。
今回のレインの行っているデスゲームでは、人間だけ集めたわけではない。
ある所には、獣人のみで、ある所では、エルフのみ、ある所では、魔族のみ。
だが、大半が人間だ。
人間は全体的に劣るが、数が多い。それに、それだけ多いとなると、中にはとてつもない低い確率で、強者となりえる者が現れる。アシュエルのような、超越個体だ。
本当に人間はか弱く、脆い。
エルフには魔力で劣り、獣人には身体能力で、魔族にはその両方で。だからこそ、混同してしまうと、その時点で平等ではなくなるのだ。だから、『種』だけは別々に分けたわけだ。
ここで選んだデスゲーム参加者、もとい、候補者は適当に選んだわけではない。
その世界で、才能がありそうな者を選んだ。それでも、元々処分するつもりだった世界の人間たちだ。それほど期待を込めているわけでもなく、ただ面白くなるようにとしただけだった。そのための、『能力ガチャ』と言った確率による能力の会得。武具による差もなくすために、『装備ガチャ』を創った。
スキルレベルは、ガチャで被らせることでしか上がらず、魔法も元の世界で魔法を使っていたとしても、使えない。それでも、魔力だけは操作出来、身体強化だけは出来る。だけど、その魔力さえ全員が決まった量しか、最初は与えられていないため、長時間は強化することが出来ない。
「そして、初っ端からSランクのスキルを手に入れたのは、全フィールドでたったの4人。ふふ、いいな。凄くいい」
レインは、特別に観測用に創ったこの空間で、寛ぎながら見ていた。
「いやーこいつ面白いな」
ケラケラ笑いながら見ている画面の先では、ある参加者が森を走り回っていた。参加者の名前は、斎藤玲音。Sランクの強奪を入手した人間だ。
ゲームになるように、例えSランクでも制限を設けている。そして、『強奪』スキルの中でも上位に入る程のスキルだが、自分で殺さないといけない。だから、このスキルに直接的な攻撃方法はない。自分の力で敵を殺し、その敵から力を奪うからだ。
だから、斎藤玲音が手に入れたのは運がよかったが、一番最初のガチャで手に入れたのは運が悪かったとも言える。
「それに、こいつ、開始一週間も誰とも会わずに、魔物だけ狩ってGPを貯めるとか……いや、会わない、と言うより会えていないのか」
レインが、斎藤玲音を見ているのにはもう一つの理由がある。
それは、レイン好みの性格をしていると言うことだ。その心の奥底では、日々のつまらなさに飽き、だけど、表面上は周りに合わせていたため、しかも長い期間自分を偽ってきたために、心の奥底からの欲望に気が付いていない。でも、レインは視て知った。それに、魂を視て見ても、人間とは思えない。なぜなら、悪魔の如き真っ黒の魂で、肉体と言う殻さえなければ、世界を飲み込もうと際限なく肥大化しそうな、そんな暗い輝きだった。
「アシュリーも分かるか?」
「はい、あの子供……ええっと誰だったかな?レイン様が世界にいた時に出た契約者の」
「ああ、ミナリスだったか、そう言えば、世界を消す前に悪魔になっていたから、魔界に戻ったはず、だな。しかし、確かにな。ミナリスと同じくらい。人間のままで、しかも平和な世界でこれ程染めるとは、面白いな。しかも、自分では気付いていないのもまたいい」
レインは、別のホログラムを見て、
「後は、こいつだな。レア中のレア。『即死』のスキル。いやー面白半分に入れてみたが、確率的には、0.001%程度のはずだが、運がいいな」
「『即死』……触れた相手を必ず殺すスキルだよね?」
「ああ、その代わり魔力を大量に使う。与えた魔力は最初は1000。その中から、一度の使用で800を使う。誰かに使うんなら一回勝負だ」
「でも、最高キル者だよ?」
「まぁ、一週間で7人も一人で殺しているんだ。他にも有用なスキルも魔法も手に入れているし、これは素の状態で運値が高いっぽいな」
「いいんじゃない?」
アシュリーのレインの性格を読んだ言葉に笑いながら頷く。
その時、
「見つけたぁぁぁああああ!!!!」
と、声が聞こえた瞬間、ホログラムが横に斬り裂かれた。
ピシッと空間が剥がれる音がする。
レインの創った空間だ。もちろん、強化されているし、簡単に壊すことは出来ない。
それに、非物体のホログラムも同様に斬り裂いたのだ。これを成したのが、とてつもない実力の持ち主だと分かるだろう。
「見つけたわよ!馬鹿師匠!!!」
レインのことを馬鹿師匠と言った者、紅い髪をポニーテールで纏め、ビキニのような服に、短パンで動きやすさ重視の服装だ。活発美少女と言う言葉がよく似合うだろう。
「何をする、我が弟子よ」
「ちょっとどういうことなの!私がいた世界が急に消えたんですけど!?」
「ん?ああ、かなりの数消したからな。その中に入ってたんじゃね?」
「入ってたんじゃね?じゃないでしょ!」
怒り心頭なご様子だ。紅い髪を逆立たせ、身から出る莫大な魔力が放出され、ポニーテールがゆらゆらと揺れている。
「まぁいいではないか、アシュリーもそれを下げろ」
「……」
最初の攻撃ですでに攻撃態勢へと移っていたアシュリーに魔法を解くように言う。
「それで、どのくらいぶりだ?」
「三億七千六百五十四万五千四百八十七年六ヵ月ですわ!」
「よく覚えてんなぁ、何?そんなに俺に会いたかったのか?」
「そ、そんなわけないでしょ!?」
今度は怒りではなく、羞恥で顔を赤く染めている。
照れ隠しなのは明らかだ。
「それだけあれば、男の10や100は出来たんじゃないか?」
「ッ……!」
キッと睨みつけ、益々顔を赤く染める。
「その感じ、もしかして一人もいないのか?」
「仕方ないよレイン様」
「はぁ、まさか俺に操をたーー」
「黙りなさい!」
レインの言葉に地面を蹴り、突撃する。
手に持った漆黒の剣をレインに向けて振るう。
「今は遊んでいる暇はないんだ。次元の彼方へ行ってこい!」
「なあああああああ!?馬鹿師匠!!!覚えてろなさいよぉおおおおおおお!?」
突撃したところに、陣が現れ、ぶつかる。
吸い込まれるように、恨み言を述べながら姿が消えていく。
「もう、せっかく創った空間を思いっきり切断しやがって」
と言っても指を鳴らせば、あら不思議、元通りになった。
「さて、お?また人数が減ったな」
「そろそろ、半数くらいになるかな?」
side斎藤玲音
あれからまた、一週間が経った。
俺たちは、新たに手に入れた『探索』の能力をフルに使い、他の参加者を殺していった。
セリスが足止めをし、俺が止めを刺す。このコンボが中々に凶悪だった。それに、もうすでに二週間は経っている。常にいつ戦闘が始まるかも分からない、そんななかで精神が疲弊している者も結構いた。寝ているところを、セリスと最初会った時と同じように、水浴びをしているところ、食事をしているところ。そんなところを狙っていった。
俺たちの殺した数は、すでに2人で10人を超えている。
そして、強奪の能力で俺の総魔力量も一万を超えた。それに気付いたことがある。生命力とは、多ければ多い程、治癒能力が上がるらしい。かすり傷程度なら一瞬で直ったからな。びっくりだ。
「セリス、気が付いてるか?」
「もちろんです」
「少し前からこっちを監視しているやつがいるよな」
「放置しときましょう?仲間がいるかもしれませんし」
人数が減ってきてから仲間を組む者も出てきた。
それによって、参加者の減りが加速したりもしたけど、まぁ、俺にとってはいいことだよな。
「そうだな。残り47人。仲間を作ったやつもいるし、そうすれば、一気に減らせるな」
「では、そうしましょう!」
それから俺たちは、普通にご飯を食べ、近くの泉で沐浴をし、新たな寝床で寝た。
俺の愛着の沸いていた洞穴はセリスのせいでぶっ壊れてしまったし。
ここは、前より、大きめの洞窟だ。反対側からも抜けられ、洞穴より頑丈だ。簡単には壊れないだろう。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
俺たちは寝る。
まぁ、寝ているフリだが。
ほら、狙い通りに来た。
ザッザッと小さな足を擦る音が聞こえ、『探索』を使い人数を確認する。
その数、4人。俺たちの倍だ。だけど、関係ない。
なぜなら、
「『火炎弾』『水牢』『閃光』!!!」
3つの魔法を同時に放つ。
火炎弾で一人を殺し、水牢には一人を閉じ込める。
閃光で一人の頭を貫く。残り一人は、悲鳴を上げ、背を向け逃げ去っていく。
閃光は、Cランクの魔法だ。大きさはさほどでもないが、貫通特化らしく鎧を着たやつすらも鎧ごと貫通した。頭を貫くくらい簡単ってわけだ。
「セリス!行くぞ!」
「……」
「セリス?おい!」
「すぅすぅ」
「寝るな!」
「ふぇ?」
寝ているフリで油断を誘うっていう作戦だったが、まさか本当に寝るとは……。
頭をスパンッ!と叩き、起こす。
「ふぁ~おはようございます」
「ああ、おはじゃなくて!行くぞ、敵襲だ!」
「え、は、はい!」
敵襲と言ったところで、ようやく現状を理解したのか、寝ぼけていた目をキリッとさせ、起き上がる。
「さて、鬼ごっこか?」
「鬼ごっことは?」
「鬼が人間を捕まえるんだ。人間は鬼に捕まらないように走って逃げる。そんな遊びだ」
そうなんだが、ちゃんと教えるのがめんどくさくなり、適当に教え、探索を使いながら追いかけていく。
「行くぞ!」
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