146話 命の奪い合い
「レオン!レオンの世界って凄いですね!」
「いやいや、セリスの世界だって凄いじゃないか」
俺たちは、ちょっと前までは、殺し合っていたとは思えない程打ち解け合っていた。
口調も砕け、様付けされていた呼び方も呼び捨てになっている。
それに、セリスの名前を聞いた時から気になっていたけど、やっぱり貴族だったみたい。
そんな感じで、俺たちは、身の上話をしながら、洞穴で話し合っていた。
自分の話や魔法について詳しいことを聞いたり、実際に試してみたり、失敗したり、とにかく友達みたく仲良くなったと思う。上辺の上では。
心の中までは分からないからね。
実際俺は、心を許してはいない。
例えば、能力のことだったり、装備のことだったり、全ては伝えてはいない。
生命線だからな、馬鹿正直に言うやつはほぼいないだろうと思う。
「それで、ポーションってガチャで?」
「はい、装備ガチャで出ます」
仲良くなったと言っても、能力のことはセリスも言っていない。正確には、言ってもいいやつしか言っていない。
「さて、魔法のこととか少し分かって来たし、そろそろ行くか」
「はい!」
ここに来てから8日程経ったけど、服装は変わっていない。だけど、汚れてはいない。地面を転がったりした時、土が付いたりしたけど、時間が経てば勝手に綺麗になったからだ。何か魔法が働いているんだと思う。装備ガチャで私服とか出るわけないと思うし、今着ている服が綺麗なままで使えるようにだと言う配慮?だと思っている。木の枝で引っ掛けてしまった傷も直ったから。
未だにあった人がセリスだけしかいない。そろそろ、本当に見つけて、サーチアンドデストロイで行かないといけない気がする。
それから俺たちは、四時間程探し回って、ようやっと二人目の参加者を見つけた。
「まだあっちは気が付いていないから、奇襲するぞ」
「分かりました」
小声でボソボソと話す。
俺の目の前には、いかにも戦ってますよ的な男がいた。
年齢は30くらいだろうか……。体もがっしりしているし、腰には大剣を下げている。
でもここに来て、見た目が全てではないと知っている。
俺も向こうで筋トレはまぁまぁやっていた方だし、それに、能力でブーストされているから力はある。なのに、単純な力で言うと、俺より細い腕のセリスの方が上だ。(なんか悔しい)
「『氷結』」
セリスが地面に手を付き、魔法を使う。
触れたところからピキッと凍り付き、地面を伝い伸びていく。そして、男まで到達し、俺と戦った時以上にがっちりと凍り付く。
「『火炎弾』×5!」
「なん……ぐあああああ!?」
「死ね!」
男が足の異変に気が付くが、それと同時に俺は飛び出し、火炎弾を五個放つ。
全て顔面に飛んでいき、小さな爆発を起こす。
そして、駆け出し、蠱毒の剣で喉を一突き。
念のために、横に切り裂く。
「ふぅ、殺せた……初めての人殺し……ふふ」
「お疲れ様です」
「ああ、結構簡単……」
『残り80人になりました』
その時、画面が現れた。
「ん?セリスも出たか?」
「はい、残り80人……らしいですね」
「ってことは、こいつで二十人減ったってことか」
まぁ、人数はどうでもいいけど、今は、強奪した能力が気になる。
と言っても、強奪のことは、セリスに言ってないからここでは言えないけど。
「セリスしゃがめ!!」
咄嗟に伏せ、セリスにも警告するが、それより早くしゃがんでいる。
すると、俺たちの頭上をナイフ?が通る。
そのまま背を低くして木を盾に隠れる。
「別のプレイヤーか?クソ面倒な」
「どうします?また、凍らせましょうか?」
「いや、あれは奇襲じゃないと、あまり効果がない。氷結のスピードもそんなに速いわけじゃないから、見て避けられる」
「では?」
「こっちは、姿が見えていないのが厄介だ、ちっ」
魔物と戦っていたため、一匹を倒しても油断せずに奇襲に気を付ける癖がついていたおかげで、今回も分かった。多分だけど、このナイフの投げ主は、さっき倒した男を狙っていたんだろう。そして、それを倒した俺たちに狙いを変えたんだと思う。
ただ、問題はそこじゃなくて、どこから放って来たか分からない、ってことが問題。
一応、少し顔を出して見てみたけど、木があるだけで誰もいなかった。
「セリス、あの草辺りを凍らせて」
「分かりました。『氷結』」
少し離れたところにある草を指差し、凍らせるように言う。
地面を伝い、氷が伸びていき、草まで行き、少しだけ揺らす。
すると、すぐに、揺れた場所をナイフが貫く。
「これは、音?なら、この会話も聞かれているはずだし……」
「どうします?」
「セリス、足に自信あるか?」
「いえ、ステータスが全体的に下がっているので、あまり自身はないです」
「なら、俺が囮になって相手の姿を出すようにしてみるから、そこを仕留めてくれ」
「分かりました」
作戦を伝えると、俺は、飛び出す。木から木へと走って行き、なるべく被弾しないようにジグザグで動く。
「はっはっ、めっちゃ正確に投げるじゃんっ」
これも予想だが、相手は何かしらでこっちの動きを読んでいると思う。視覚がとてもいいのか、聴覚がいいのか、分からないけど、俺が動いたら正確にその場所を貫いている。
結構冷や冷や物だ。こけたりでもしたら、グサグサ刺されそう。
「あそこか!『火炎弾』!!!」
左手をナイフが飛んできた方向に向け、火炎弾を放つ。
森で火を使うな?知らん!そんなことより自分の命が優先だ!それにこんなに木があって邪魔なら焼き払ってしまえばいい。
ただ問題は、そこまでの火力が今の俺の魔法にはないと言うことだけど……そこは、火炎弾の連発で頑張るしかないか。
「『火炎弾』×5!!!」
火炎弾が着弾したところで小さな呻き声が聞こえた気がした。
「そこかっ!!!」
残りの魔力全部を使い切るつもりで、火炎弾を放ちまくる。
「クソっ!」
悪態を吐きながら地面に落ちてくる。
今まで、木の上から投げていたんだろう。
落ちてきたのは、ヒョロヒョロのいかにも根暗?引きこもり?みたいな感じの男だった。
男は懐に手を入れ、追加のナイフでも取り出そうとしたところで、すでに近付いていたセリスに首を刎ねられる。
「はぁ、やっと終わったか?もういないよな?」
「終わりました!」
血の付いたナイフを持ったまま手を振って、俺の方に向かってくる。
ナイフから滴った血が頬に落ちて、なんか怖い。
「あ、ああ、ありがとう」
「はい!」
とにかく移動した方がいい。
一度あることは二度あると言うし、一応周りを警戒し、すっかり愛着の沸いた洞穴に戻る。
「あーーー疲れたぁ」
大の字で寝転がる。
本当に疲れた。別にここでは、正々堂々と戦う必要はない。敵を殺せばいいんだから。
試合開始の合図も必要ない。卑怯?死ぬよりマシだろう?
「セリスが出かけている間に、回そ……ガチャ」
能力ガチャの方をタッチし、11連を回す。
出てきたのは、『D:筋力強化』『D:炎耐性』『A:裁縫』『C:魔法耐性』『C:脚力強化』『D:水牢』『D筋力強化』『D:思考加速』『B:索敵』『C:魔法耐性』『D:治癒強化』
「結構当たり多いな……ってまた、裁縫?しかもAランクだし。まぁ、有用なやつもあるしいいかな。身体強化系はいくつあってもいいし、魔法耐性も何気に嬉しいな」
それで、今のステータスはこうなっている。
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【名前】斎藤玲音 【GP】2630
【生命力】5540/5540 【魔力】6800/6800
【能力】『S:強奪』『S:裁縫』『B:索敵』『B:剣術』『C:筋力強化』『C:脚力強化』『C:魔力強化』『C:魔法耐性』『D:槍術』『D:鎖鎌術』『D:投擲』『D:炎耐性』『D:聴覚強化』『D:治癒強化』『D思考加速』
【魔法】『C:光の矢』『D:火炎弾』『D:水弾』『D:水牢』
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「おお!初のCランク魔法だ!初の生命力も上がって、魔力は6000越え……火炎弾一発が魔力30だから、軽く200発以上は撃てるな」
新しく手に入れた魔法、『水牢』は、必要魔力70で、人一人くらいの大きさで水の檻を作り出す魔法だった。
それで、魔力を自分で動かすことで知ったけど、Dランクの火炎弾でも、必要魔力を超す魔力を込めれば多少威力が上がるみたいだ。でも、どれだけでも込めれるわけじゃなくて、倍率にすると、1.1倍とか、そんな感じのちょっと上がるくらい。まぁ、等倍よりやマシかなって感じだね。
それに、念願の能力の一つ、『索敵』。しかもBランク。
範囲は、100メートル。使ってみた感覚からして、こうなんていったらいいか、ソナーに近い。ブゥンと波っぽいのが俺を中心に放たれるって感じだ。
このゲームの仕様から、この感じは、俺だけにしか分からないと思う。相手も同じ能力を持っていたら、分からないけど。
「…………やっぱこれ、見ないといけないよな?」
そう言って、目をやったのは、『S:裁縫』の能力だ。
最高レア度のSランクにまで、上がった能力。
「Aランク二つでランクアップ?Dランクは、三つだよな?まだその辺は分からんけど、新しいスキルより、今あるやつを使いこないした方が強いんだよな」
ゲームだと新しく手に入れた能力も魔法もすぐに使えるけど、現実だとそうはいかない。
ガチャで手に入れれば、最低限は使えるけど、それだけだ。
使い方次第ではそんなに使えない能力も化けるかもしれない。
「とにかく詳細を見て見んと、少し、いや、めっちゃ気になるんだよな……」
◇◇◇◇◇
『裁縫』 Sランク
神業の裁縫技術を扱える。
全てを縫うことが出来る。
針を必要とせず、手で触れた場所を縫合することが出来る。
能力者を中心に、半径50cmは手を触れずに縫合出来る。
一センチ縫うのに魔力を十使う。
Aランク時より、より丈夫に縫える。
◇◇◇◇◇
「はぁーーーやっぱり、強いんだよなぁ」
能力の詳細を見て、ため息を吐く。
強い、文句なしに強い。だけど、『裁縫』……なんだよなぁ。
「やべ、そろそろ帰ってくるな」
コツコツと足音が聞こえたところで、ステータスを消し、横になる。
と言ってもステータス消さなくても俺以外には見えないけど。
「レオン!見て下さい!これ!」
そう言って見せたのは、後ろ脚を握ったままぶら下げた猪だった。
ただの猪なら俺もびっくりはしないけど、なんかすっごいでかい。身長高めのセリスが隠れている。
セリスが手を放すと、ドシンッ!!!と大きな音を立て、洞穴が揺れる。
「え、おい待て!崩れる!!!」
「え、え?」
案の定、洞穴が軋みだして、崩壊しだした。
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