145話 人間と遭遇……そして
長時間のゲームはやっぱり疲れますねぇ。
なので、その休憩時間に書いてたら出来てました(笑)
それは、装備ガチャを回した翌日に起きた。
いつものように、他の参加者を探しながら、魔物狩りを続けていた。
時には、狼を。
時には、魔法を駆使して、しかも群れを成していた狼を。
時には、角がお立派な鹿を。
時には、どでかい熊を。
特に熊は、危なかった。
避け損なっていれば、腕が食い千切られるか、折られていたか、とにかく片腕使えなくなっていただろう。
うん。本当に死ぬかと思ったわ。
いや、だってね?草木をかき分けて進んでいたら、いきなり三メートルはあろうかと言う熊に「こんにちわ」状態だったんだ。出来る限りのイケメンスマイルで挨拶したが、やはり、攻撃されたのだ。
いやーあの時は血の気が引いたもんだ。
それで、狼の群れにも、この島?森?一番の強力な魔物だと思われる熊も倒せるように、戦い方もガチャで得たスキルや奪った魔法もまぁまぁ使えるようになったと思う。
そんなあくる日。
俺は今、食料を追いかけていると、泉に着いた。
そしたら、目の前に美女がマッパで水浴びをしていた。
ん?何言っているか分からない?まぁ、凄く綺麗な水なんだ。それに、サバイバルしているこの状況、風呂なんてあるわけがない。そう言う俺もこの泉を使って沐浴していた。だから、女性が髪を、体を洗うのは使うのにこの泉を使っているのは、当たり前だと思う。
それも飛び切りの美女なら男からすれば役得だろう。
スタイルもすごくよく、出るとこ出て、なのに、スラッとしている。
そんな彼女を見て、俺がとった行動と言えば。
顔を赤らめて、横を向く?
裸をガン見する?
久しぶりに会った人間に喜んで友好的に話しかける?
どれも違う。
俺の取った行動は、
「ふっ」
短く息を吐き、蠱毒の剣を手に突撃する。
その時、ポケットから砥いだ枝を投擲する。
泉は思いの外浅く、一メートルくらいの深さしかない。
でも、水の中なわけで、陸のように素早く動けるわけではないため、俺の投擲を彼女は腕で受け、浅瀬にいたため、急いで服の置いてある場所まで、水をかき分けていった。
そう、俺の取った行動は、いきなりの攻撃だった。
だが、相手は、戦闘に慣れているみたいで、素早く服で大事な部分だけ隠し、服の中から銀色に光るナイフを取り出し、構える。
「(くそっやれんかったか……)初めまして」
「…………」
心の中で悪態をつくが、顔はいたって無表情で、この森で初めて会った人間に挨拶をする。
その間も、俺は警戒を解かず、すぐに動けるようにしている。
俺は、学んだんだ。隙を見せたり、油断したりしたら、気を狙っている魔物どもの奇襲を受けてしまう、と。
「っ……」
相手も俺を警戒して、何も喋らないが、ジリジリと後ろに下がっている様子から、どうにか隙を探して逃げようとしているようだ。
俺としても、逃げられるのは困る。
出来れば排除したいし、本当に俺が人を殺せるのかも確かめないといけない。出来ないならば、ここで生き残るのが難しいかもしれないからだ。それは困る。死にたくないもん。
だから、一気に駆け出し、距離を詰める。
すると、いきなりのことに焦った顔をするが、次の瞬間には、キリッとした目つきになり、体を隠しながらナイフで受け止めようとする。
「やあっ!」
「っっっ……」
彼女もギリギリと力を入れる。
こっちは、両手で握り、上段からの思いっきりの振り下ろしで、彼女は、咄嗟に小さなナイフでしかも片手で受け止めている。
それなのに、力は互角かいや、彼女の方が上みたいだ。本気で押し込んでいるのに、全く押し込めないんだもの。どんだけ馬鹿力なの?このままだと、逆に押し込まれそうなんだけど……。
「……」
彼女がこの距離でさえ、聞こえないような小さな声で、言う。
俺は、何かやばい感じがして、後ろに飛ぼうとするが、足が動かなかった。
と言うより、ジャンプして下がろうとしていたため、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。
なぜそんなことになったのか、仰向けになった瞬間に分かった。足が地面に凍り付いていたのだ。
そのまま彼女は、俺に覆いかぶさった。
(え?僕襲われちゃう?初めて(笑)だから、優しくしてね?)
そんなことを考え、この状況を楽しんでいると、そうも言っていられないことになった。ナイフを振りかぶり、俺の胸に突き刺そうとしてきたからだ。
「『火炎弾』」
「くっ」
俺は、掌をスッと、彼女の胸に当て、ゼロ距離で火炎弾を放つ。
咄嗟に立ち上がり、何とか直撃だけは避けられた。
(くそっ!これもさけるんかよ!?どんだけ反射神経いいんだよ!こんなことなら、あのでっかいおっぱい揉みながらすればよかった!)
少し、後悔しながら、すぐに上体を起こす。すでに、氷はなくなっていた。
避けたと言っても直撃を避けたと言うだけで、火炎弾がぶつかったところが、火傷している。
「くぅ……っ」
火傷の痛みに呻きながら後ろに下がる。
俺も魔物相手だけど、命を懸けた戦いを続けていたため、死をかなり近くに感じていたからこそ、いざ、刃を向けられ、火炎弾の発動が少しでも遅かったら、そのまま心臓を貫かれていただろう、この状況でも、冷静でいられた。
と言うか、頭は、氷を大量に入れた冷水に浸らせているかのように、冷たかった。
足は実際に凍らされていたけど。
「『火炎弾』×3!」
「くっ!」
掌から三つの火炎弾が彼女目掛けて飛んでいく。
それをナイフで斬り払う。
「嘘!?そんなこと出来るの?」
思わず、声に出して驚いてしまった。
火炎弾は、着弾と同時に小さな爆発を起こす。普通に、剣とかで斬ったとしても、そのまま爆風は喰らってしまう。だけど、火炎弾と同時に、爆風も斬れていた。だから、驚いたのだ。
「しっ!」
「はやっ……!」
ナイフを逆手に持ち、背を低くして、滑るように走る。
初戦の相手がこんなに戦い慣れている相手とか、不運でしかないぞ?
走っている時、胸がブルン!ブルン!と揺れているのに、思わず目を奪われてしまう。
視線に気付いたのか、頬が僅かに赤くなる。
「『水弾』!」
水弾を出し、それを思いっきり、蠱毒の剣の腹で叩きつける。
バシャン!と音がし、水が彼女に降りかかる。
思わず目を閉じたところを、蹴りつける。
「がはっ……」
筋力強化は、腕力だけじゃなく全身の筋肉が強化される。それに、脚力強化で脚力が強化されるため、今の俺の脚力はかなり強い。
その証拠に、ゴリッと言う、鈍い音が聞こえた。
「うぅ……ぅっ」
蹴られた横腹を抑えながら涙目で呻いている。
俺は、注意して近付いていく。
「……さ、……で」
「ん?」
何か呟いているようだ。
だけど、もしかしたら、こっちの油断を誘う罠かもしれないため、剣を前に出したままゆっくり近付く。
「ころ……ぃで」
「殺さないで?」
俺が僅かに聞こえた言葉から推測したことを言うと、コクッと頷いた。
「これって殺さないといけないんだけど?」
「っや……」
涙を流しながら、首を横に、いやいやと振る。
美女の涙顔って妙にそそられるよね?なんでだろう。
「まぁ、いいや。それで、俺が生かして何か得がある?」
「わ、私を……っ好きにしていい、から……」
中々に魅力的な提案だ。
でも、もしだよ?生かしたとして、好きにしていいってことは、傍に置くってことでしょ?なら、いつ寝首を掻かれるのか分からない。いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているのと同じだ。そんな危険なこと出来るかっての。
「魅力的だけど、寝首掻かれるのは、困るからやっぱ殺す」
「ゃ、だ……!しに、たくない……」
さすがに美女でもガチ泣きは少し引く。
まぁ、武器とか奪っておけばいいか。
「はぁ、分かった。だけど、少しでも敵意とか殺気とか感じたら、すぐ殺すから」
「……(コクン)」
頷いたのを見てから、剣を下ろす。
まぁ、殺気とか全く分かんないんだけどね……。いくら戦いに慣れて来たって言っても、そんな不可視なよく分からん殺気とか、平和な世界で暮らしていた俺に分かるわけがない。でも、この状況での脅しには、よく効くだろうな。
「あのバックを取ってきて下さい」
「助かった瞬間、図々しくなったな、おい」
痛みにも慣れて来たのか、顔を顰めながらも、岩陰のところを指差しながら言う。
助けると言った手前、放置するにもいかず、仕方なく取りに行く。
「そこから瓶を取って下さい」
「ほんっと図々しいな!」
試験管のような瓶を取り出し、詰まっているコルクを抜き、彼女の口に突っ込む。
「むぐっ!?」
「はよ飲め飲め」
緑色の液体を飲んでいく。
すると、最初に奇襲で傷付けた腕の傷も、胸にあった火傷の傷も、腹に受けていた打撲痕もなくなり、元の綺麗な素肌になった。
「ポーション?」
「ゴクッゴクッ、ぷはぁ……助けていただきありがとうございます。私はセリス。セリス・スフィ・バンセントと言います」
裸のまま、地面に正座をし、頭を下げる。
背中のラインが美しい。
土下座しているため、お尻が上がり、思わず目を惹かれる。
「俺は、斎藤玲音。玲音でいい」
「では、レオン様」
「まず、聞きたいことがあるんだけど、俺の火炎弾斬ったでしょ?あれどうやったの?」
「ん?普通に斬っただけですけど……」
本当に何言っているのか分からない、と言った感じに小首を傾げる。
「いや、だから、普通に火炎弾斬ったら爆風は受けるでしょ?」
「ん?魔力をナイフに纏わせただけですけど……」
「は?」
言っている意味が分からない。
いや、分かるんだけど、そんなこと出来るの?
魔法だって、別にイメージして、魔力を練ったり、術式を編んだりって言う、よく異世界物であるような魔法ではなかった。
ここで使う魔法って言うのは、技名、俺の場合は、『火炎弾』と言うだけで、炎の弾丸が現れる。
技名を言うと、体にある魔力が勝手に動き、魔法を構築するようなんだ。だから、対象に向けて放つだけでいい。俺の場合は、照準を合わせるため、手を相手に向けたりだとかして、狙いを定めている。
だから、自分で魔力を動かすって言うことを考えたりはしたけど、実際に試したことはなかった。
「ここでは、なぜか、私が使っていた魔法も使えなくなっているので、戦いにくいです」
「使っていた魔法って、魔法とかがあったのか?」
「はい?当たり前のことをなぜ聞くんです?」
まじか……。ってことは、もしかして、セリスと俺って別の世界の人間ってこと……か?
「もしかして、魔物とかもいた?」
「はい、いましたよ?元の世界では、竜殺しの称号を得ていました」
ムフン!胸を叩き、その豊かな胸を張る。
その時、ポヨンッと揺れる。
(って、竜殺し!?ドラゴンスレイヤーってやつかよ!?まじか、だから、こんなに強かったのか。よく勝てたな、俺)
一瞬背筋が冷えた。
慣れない力に慣れない武器だったと言うことと、奇襲で片腕に力を入れにくくしていたから、勝てたって言うのもあるだろう。
「これで確信がいったわ」
「何ですか?」
「俺たちは別々の世界からここに集められているってことだ。もしかしたら、俺たちだけじゃなく、他のプレイヤーも別の世界かもしれないな」
「え!?そんなことが……?」
「まぁ、これだけのことが出来る相手だからな。驚いていても仕方ないだろうけど」
竜がどのくらい強いのかは、想像でしか分からないけど、少なくとも弱いってことはないだろう。その竜殺しが出来る程の実力を簡単に抑えて、さらに使っていた魔法すら使えないように阻害している。つまり、そんな簡単に人の実力を抑えることが出来る存在が相手なんだから、いちいち驚いていても仕方ない。
「それで、魔力を自分で動かすっと……」
火炎弾を使う時に、俺の体にある魔力が動く感覚は分かる。
なら、それを自分で同じような感覚で動かしてみるだけだ。
「魔力での身体強化は出来ますけど、魔法へ変換することが出来ないんです」
「なるほど、魔法は自分では使うことが出来ないけど、魔力は動かせるってことか」
自力で動かしてみようと、体を力ませる。
ムムムッと全身の筋肉に力を入れる。
なんか違う。
なんかこう、温かくなってたんだよなぁ。
あ、この感じ。
ムズムズともう一つの血管みたいな感じで、温かな力が全身をゆっくりと移動する。
「お、おお?これだこれ!んで、そのまま、剣に」
蠱毒の剣にその温かな力を注ぎ込む。
すると、蠱毒の剣が淡く発光し、紫色の靄が刀身から発せられる。
「うぉお!……はっ」
とことこ、と木の所まで歩いて行き、木に突き刺す。
抵抗を全く感じさせず、突き刺さる。
刺さった所から、徐々に紫色に変色していく。
「あ、あれ?この毒って生物以外にも効くの?」
疑問に思ったが、蠱毒の剣の能力を思い出し、納得する。
「確か、魔力を注げば猛毒が何とかって、あったな」
なんか、このまま手元がミスって自分を傷付けてでもしたら、まじで死にそう。と言うより、苦しそう。
もう確認も済んだし、魔力を注ぐのをやめて、元の通常状態に戻す。
「サンキューなるほどね、これはいいわ」
「さんきゅう?役に立ったらよかったです」
「まぁ、取り敢えず、服着たら?」
「あ」
今の今まで、セリスは裸だった。
俺からしたら役得だし、本人も上も下も隠さずにいるから、見てくださいって言っているのか思って、何も言わないでいたけど、そろそろ場所を移動したいから服を着るように言う。
「これは、お見苦しいものを」
「いいや、それがいいなら、そのままでもいいけど?」
「い、いえ!」
照れたように顔を赤く染め、いそいそと服を着る。
「服着終わったら、行くぞ」
「分かりました」
今まで裸で話していたことを思い返し、もじもじしている。
まぁ、抱くつもりは全くないんだよね。
(言わなかったら、裸のままだったのかな?少し気になる)
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